「肥大したら、そうなるようですが……。といっても怪しげなゲイ雑誌なので医学的な根拠には乏しいかと……。都市伝説的に尤もらしく書かれただけかも知れませんし……。
万が一、あくまでも万が一ですが、その記事が本当だったとしても、聡の場合はこのルビーよりも紅く煌めく尖り」
そう言いながら強く指で弾いた
「あっ……。そうされると……焼きティラミスの甘さではなくて……背筋から花園に……かけて……甘くて熱い……電流が奔ってしまう……」
撓った肢体にくっきりと浮き出た鎖骨の窪みを甘く噛んだ。
「聡の場合は、凝った場所単体ではなくて、どうやらこの愛らしく尖ったルビーを愛したら凝った場所が連動しているみたいなので、こんなに真っ紅に染まってツンと尖った時以外は大丈夫ではないかと思います。
怪しげなゲイ雑誌にエビデンスなんて関係ないですから。
それに前立腺の研究者も『その用途』専用に臨床検査に勤しんでいるわけではなくて……前立腺癌とか前立腺肥大についてでしょうし。
それに、肥大の場合は尿が近くなるとかそういうトイレ関係の症状は有るようですが――まあ、それも患者さんにとっては深刻な問題なのも確かです――愛の行為には関係なさそうですし……。少なくとも前立腺肥大に関して感じやすくなるとかのレポートや論文などは読んだことがないのですが……聡はお読みになったことは有りますか?」
読むスピードも速い上に専門分野以外の論文も多数読んでいる最愛の人に念のために聞いてみた。
「――いや、そんな例は報告されていないようだが……。アメリカの泌尿器科学会のレポートにもそういう臨床結果は上がっていないようだ」
怜悧な言葉とは裏腹に祐樹が胸の尖りの輪郭を確かめるようにやんわりと指で弄っているせいで甘くて高い声だった。そのギャップにも物凄くそそられる。
ドアチャイムが軽やかな音を立てて寝室の空気に涼しさを添えているような気がした。
「頼んでいたルームサービスが来たみたいですね。
貴方は寝室で待っていて下さいね。
そういう、愛の交歓の後の――いや小休止ですが、今夜の場合は――甘く薫る肢体は私が独占したいので……」
最愛の人が濃い紅色に染まった頬に苦笑の花を咲かしている。
「この格好でどうやって出ていけと?何をしていたのか一目瞭然だろう?」
彼の言う通り、濃紺の浴衣を肩から掛けただけだったし、肝心の場所は全部外気に晒している。
身支度を整えたところで、糊の効いた浴衣――といっても、最愛の人と祐樹のどちらが零したか分からない汗の雫を吸ってしんなりとしている部分の方が多いが、逆に肢体のラインを露わにさせるので、胸の尖りとかもツンと愛らしく立っているのが分かるかも知れない。
「確かにそうですね。少しだけ待っていて下さいね」
ルームサービスを受け取りに行って驚いた。
アイスコーヒーだけを頼んだ積りだったのに、赤いバラの花束も―-しかも、どう見てもホテルのサービスに含まれているとは思えないほどの量だ――トレーに載っている。
「ご苦労様です。えと、アイスコーヒーは確かに頼みましたが、花束は……」
黒いタキシードを着たホテルマンは慇懃な笑みを浮かべている。
「当ホテルにお泊りの呉様がこちらの部屋にお届けするようにとのオーダーが入りましたので」
ああ、そういうコトかと思ったが、呉先生ではなくて森技官のアイデアのような気もする。
呉先生も――多分森技官のお支払いで――このホテルに泊まっているのだろう。そしてこの部屋を取ってくれたのは森技官だし、名義も彼のを使わせて貰った上にカードではなくて現金で支払ったからには免許証などの身分証明書も提示しているだろう。
このホテルは初めて泊まったが大阪のリッツの場合、現金支払いだと最近は身分証明書の提示が求められる。
多分反社会勢力などが入って来られないようにしているのだろうと推測しているが。
カードの場合、申し込む時に身分証明書も提示するのでそれでチェックをしているのだろうなと勝手に想像していた。
銀行やカード会社では申込書に「反社会勢力排除」の文言が必ず入っていたし――もちろん祐樹はそういう闇の繋がりなどはない――何でも口座を申し込んで受理されたとしても「口座の凍結をする場合があります」とか書かれていた。
だから呉先生名義で泊まっているのだろうなとは思った。
しかし、呉先生なら自分の家に咲いている薔薇を持って来そうなので、この花束はきっと森技官の粋な計らいなのだろうなと感謝した。
「ああ、なるほど。友人の好意でしょう。有難く頂きます」
そう言って銀と思しき大きなトレーを受け取った。
ズシリと重いトレーに、筋力も体力も有ると自負してはいる祐樹だったが、愛の交歓の時に最愛の人を持ち上げるとか、そういうハードなコトをしなくて良かったと思ってしまう。
最愛の人は祐樹よりも華奢だし、平均体重よりは軽いとはいえしなやかな肢体のほぼ全てが筋肉なのでそれなりの重さは有る。
その心地よい重さを持ち上げながら交わす愛の行為も大好きだったが、腕に負担が掛かるのも事実で、そうした愛の行為の後は腕の充実感に満ちた痺れが残っている。
それはそれで良いのだが、銀のトレーがこんなに重いとは知らなかった。
腕にそういう痺れが残っていた場合には落としてしまいそうになるだろうから。
高価そうな絨毯の上に銀のトレーを落としたらどんな音がするかを知りたくはないし、アイスコーヒーを入れたグラスも割れてしまうかもしれない。そういう憂き目に遭ってしまえばホテルマンを呼ぶしかなくなるし、せっかくの「初夜」が台無しになる恐れが有ったので。
寝室に入ると、最愛の人は目蓋を閉じていた。
精神的に疲労もしただろうし、何よりアルコールを普段以上に呑んでいたのでそのせいかな?とこのまま微睡みの国に滞在してもらおうか、それとも起こすべきか悩んでしまった。
これで起きなかったらしばらくは眠りの国の住人になって貰っても良いかな?と唇に笑みを浮かべて、無事に運べたトレーをサイドテーブルに置いた。
そして真っ紅な薔薇の花束を取って紅色に染まった素肌に近づけた。
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