腐女子の小説部屋

創作BL小説を綴っています。ご理解の有る方【18歳以上】のみ歓迎致します 申し訳ありませんが書く時間を最優先にしたいのでリコメは基本的に致しません。 要望・お礼などは「日記」記事でお応えしますが、タイムラグがあることも多いです。

気分は~ 花見2025

気分は下剋上 お花見 最終話(I8禁)  2025

「ん……っ、ゆう……き、来て……欲し……っ」
 艶やかな声が、幾度となく押し寄せる波のような欲情と、これから祐樹が与える確かな熱の(くさび)が与える期待が滲んでいた。
「あ……っ」
 祐樹が花園から指を抜くと惜しむような声と、濃い紅に咲いた花壁が物欲しげに、朝露を渇望する蕾のようにふるふると震えている。最愛の人は必死に呼吸を整えようとしている。その標準よりわずかに薄い唇の(ふち)が、吐息に濡れたまま微細に動く。まるで一枚の花びらが夜露を耐えてなお、静かに風に耐えているかのようだった。祐樹が手を触れずとも、ただ見つめているだけで、あのときの波が打ち寄せる。そんな余韻が、まだ彼の肢体の奥に咲き続けているのだ。
 色香と欲情の証しかまとっていない最愛の人と、紺色の浴衣をまとっている祐樹という今だけの差ができている。白絹の寝具が、微かな動きに反応して囁くように擦れ合う。その上で、最愛の人の肢体が余韻に導かれるままに緩やかに弓なりを描いた。すでに頂きを超えたはずの快楽が、なおも神経の奥をくすぶらせ、意識と無意識の狭間で小さな波紋を生み出している。
 紅色の細い指先がわずかに震え、膝が寄るでもなく開くでもない曖昧なまま沈み首筋の角度ひとつさえ、淫らというより聖なる陶酔を映しているようだった。その姿は、まるで白い花弁の上で最後の甘露を吸い尽くす蝶のように儚く、けれど確かに、愛された者の証を宿していた。
 その静謐な快楽の余韻を見届けたい。最愛の人の肢体をこれほどまでに聖なる淫らさに染め上げたのは他でもない祐樹なのだから。といっても祐樹一人ではなく最愛の人が悦びに溢れて受け入れようとしてくれた結果だった。つまり二人で作った愛の結晶の具現化が今の最愛の人の姿だ。浴衣姿のまま、最愛の人をただ見つめていた。というよりも視線が固定されて動けないといった(ほう)が正解だ。最愛の人は、もうすでに色香と欲情の証――指の痕、汗の微熱、そして潤んだ吐息――それらだけを纏い、まるで花の最盛を過ぎてもなお、香を放つ夜の薔薇(そうび)のように美の極みに咲き乱れていた。祐樹はまだ衣に守られ、最愛の人は本能という真実を曝け出している。衣に守られたままの祐樹と、本能だけを纏う最愛の人とでは、同じ場所にいながら別の位相にいるように見えた。
「ゆ……ゆうき……っ、早く……っ、欲し……っ」
 濡れた艶やかな声が金の粉のような焦燥を滲ませているのも最高にそそる。
「聡、花園の奥処の奥まで感じたいのですが、良いですか?」
 絡繰りのように折れ曲がったその深億は、祐樹しか踏み入られない迷宮だった。その迷宮の感触はふっくらと熱いゼリーのように祐樹の先端部分を包み込んでくれる。
「もちろん……っ、それよりも……っ、早く……」
 干天の慈雨に焦れた薔薇のような切実な色香を声と肢体が放っている。寝具の上から彼の肢体を掬い取って腕に抱き、縁側(えんがわ)に出た。
「二人の愛の交歓を桜に見せつけましょう。きっと桜たちも嫉妬をすると思いますよ。聡の美しさにね」
 桜の花びらを愛の交歓の(しとね)にするのも一興だろう。最愛の人はまだ先ほどの余韻が残っているのだろう、祐樹の首に回した手もそして時折肢体も大きく震えていた。
 祐樹が先に座って、昂った欲情の証を桜の舞う空間に露出させ、最愛の人の背中が祐樹の胸に当たるように導いた。
「愛する聡、私も限界でした……」
 後ろ髪を少し掻き上げて、言葉と共に紅の愛の刻印を押す。この位置ならば祐樹しか気づかないだろう。
「あ……っ、()……っ」
 祐樹の突き上げに花園がふんわりと解けて誘ってくれる。祐樹は。最愛の人の胸の二つの胸の尖りを指で摘まんできゅっと捻ると腰がより密着する。育ち切った花芯から絶え間なく滴り落ちている水晶の雫と祐樹の熱い楔が立てる音は、無垢で淫らな二重奏のようだった。
 先ほど指で育てた快楽の蕾は祐樹の楔に甘美な刺激をもたらしてくれる。最愛の人の自重は奥処の奥の迷宮に誘うアリアドネの糸のようだ。
「……あ……っ」
 最奥まで先端部分が届いたのと、最愛の人が真珠の白濁を放ったのは同時だった。飛び散った真珠にも庭園に舞っている桜の花が宿っているのを見た瞬間、迷宮の奥で、祐樹もまた、抑えきれぬ悦びの奔流を解き放った。
「――愛していますよ、聡。そして、今宵の貴方も最高でした」
 呼吸が収まった後に、祐樹の身体に凭れ掛かって紅色の呼吸を繰り返す最愛の人の耳朶に最も伝えたい言葉を紡いだ。髪の毛から滴った汗が祐樹の唇を濡らすのも「後の戯れ」に相応しい。
「――私も、とても感じた。()すぎて……達する時を……祐樹に告げることさえ出来なかった……」
 そういえば祐樹も告げていなかった。
「それはお互い様ですよ」
 胸のルビーを羽根でも使っているかのような軽さで愛撫した。
「そういう……ソフトな感触もいい、な。強く愛されるのももちろん大好きだ。祐樹」
 最愛の人が紅色の首をふわりと回して唇を重ねてくれた。そんな二人の愛の行為を舞い散っている桜の花だけが見届けていた。

  <完>



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◇読者様へ◇
 2025年春の章、「気分は下剋上 お花見」を、ここでひとたび閉じることにいたします。六月になってもまだ桜を書いているなと、毎晩ふと我に返っておりましたが、ようやく「完」を打てました。
 読み続けてくださる皆様のおかげで、物語はただの画面上の出来事ではなく、どこかにひそやかに息づいている恋へと変わっていきました。
 次回からは「叡知な一日」再開予定、そして「巻き込まれ騒動」を書きます。また別のお話でお目にかかれますように。
 お読みくださいましたすべての方に、静かな春風のような感謝をこめて。
  こうやま みか 拝

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気分は下剋上 お花見 48  2025

「聡……胸の二つの尖りの次はどこを愛して欲しいですか?」
 辛うじて残っている銀の理性のかけらは、風に揺れているようだった。とはいえ、どんな悦楽の深淵に沈んでも理性が完全に消滅せず極小になるだけという点が最高にそそられる。そして几帳面に切り揃えられた親指の爪で尖りを弾く力と速度も強まっていて薄紅色の薔薇の花びらが強風にあおられてルビーをなぶっているような(なま)めかしさだ。
「ゆ……祐樹……っ。そのう……っ」
 視線だけで煽られたのか、甘く蕩けた声も普段より高めだった。そして、直接言うのが恥ずかしかったのか、胸のルビーを煌めかせていた震える手を離し、祐樹の手首を掴んで育ちきって蜜を零している花芯ではなく、双丘の奥にひっそりと息づく花園の入り口に誘ってくれた。
「ゆ…祐樹…っ、こちらを…っ、開いて…欲し…っ」
 最愛の人の精神状態や今宵の感じ方からすれば、ピンと()った花芯ではなくて、そちらの(ほう)への愛撫で乾いた絶頂を迎えられるのではないかとの祐樹の読みは当たっていたらしい。
「分かりました。しかし、そちらの絶頂では立っているのは困難ですよね?」
 祐樹は、さらに香り立つ肢体を布団の上へと押し倒した。白い絹の布団の上に横たわった最愛の人は手折られた満開の桜も霞むほど煽情的な美しさに満ちている。まず薄紅に染まった耳朶を甘噛みすると、白絹の上の紅色の肢体がしなやかに反っている。まるで紅色の太刀魚のような色っぽさだった。
「聡の、天国のような花園に指が()れやすくするために出来るだけ両足を開いてください」
 最愛の人の汗に濡れた髪が祐樹の顔を繊細な秋の草のようになぶっていく。耳朶の肌触りと髪の毛の香りも、先ほどよりも濃厚に薫っているようだった。そして密着した身体にはツンと尖った二つの尖りが硬度を増して祐樹の肌を心地よく刺しているかのようだった。最愛の人の足は淫らな「く」の字を二つ描いたかと思うと、白絹の布団に八重桜のような妖艶さで足を折って、熟れた白桃のような双丘を祐樹に晒している。
 耳朶から首筋、そして鎖骨のくぼみと唇を下ろしていくにしたがってボディソープの香りと彼の水晶のような汗が熱を帯びて唇に塩気を伝えてくれる。二つの胸の尖りに唇が辿りつくと安堵と快楽に満ちた吐息の花を咲かせている。片方は側面を舌で強めに噛んで、もう一個は親指と中指で摘まんで歯の動きと連動させてきゅっと捻った。
「ゆ…祐樹…っ、もっと強く…っ愛して欲し…っ。そして…っ」
 片方の蕾には熱く囁くような愛撫を、もう片方には、舌先でゆるやかな螺旋を描きながら甘噛みを落としながら、しどけなく開いた双丘の門に祐樹の指を二本()れた。すると、花弁が微かに震えて指先を迎え入れ、愛撫が辿り着くべき聖域へと、静かに開かれていった。
「あ…っ、()…っ」
 祐樹の指先が秘められた聖域をそっと奏でると、そこはまるで音を持たない楽器のように、無言の悦びを震わせて応えてくれる。
「ゆ…っ、快楽の…っ…、大波に…っ」
 祐樹の指先に込めた熱は、激しさではなく深さだった。音も立てず波紋を広げる湖のように、快楽は静かに、しかし確実に、彼の内奥を染め上げていった。白く咲かせることが目的ではない。ただ、その奥で何度も震わせる悦びがあることを、そして彼が胸と愉悦の核を同時に愛されるとその悦びに達することは知っていた。
 花弁のように繊細な内壁が指の動きに応えるたび、最愛の人の理性がほんのひとかけらずつ剥がれていく。喉の奥から洩れる吐息も、きつく閉じた扇のような睫毛の震えも、全て快楽の大波にさらわれていく前触れなのも知っている。何もこぼれないのに、最愛の人の肢体は果てていく。――祐樹の指先と唇だけが、その静かな奔流を操っていた。
「ゆ…っ、祐樹…っ、次々と…悦楽の波が…っ。…っああ…また、祐樹に…深くまで…っ、届いてしまった……っ、もう何度目だろう…っ、出していないのに……っ、ちゃんと果てている」
 最愛の人の濃い紅色の嬌声混じりの声は、祐樹への問いではなく、快楽の深さを祐樹に教えてくれる意図を持っているのだろう。白絹の上に紅絹を纏った剣のような弧を描いていた。彼の紅色の足の指が丸くなって震えているのも最高の眺めだった。その姿を見ると、祐樹も昂ってしまう。
「聡…貴方の極上の花園に私の欲情と愛情の象徴を、迎え入れてくださいませんか?」
 こういう状態の時の最愛の人の花壁は収縮を繰り返しているため、挿れにくいのだが、全部収めた時の熱く厚いシルクの動きが精緻かつ大胆に動きながら祐樹を包み込んでくれることは知っていた。その悦楽を感じたい。




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気分は下剋上 お花見 47  2025

「私には、あのイラストよりも貴方の(ほう)が魅惑的に見えます」
 最愛の人の紺色の浴衣に包まれた肢体を手でリードし、正面から向き合った。その過程で肢体から立ち上る芳香がより一層の濃さを放っていて、これからの期待で体温がさらに上昇していることを知る。薄紅色の額にも汗の雫が宿っていて、前髪を後ろに流しながら額の汗の小さな粒を唇で掬った。ボディソープの香りのする汗が味覚にも臭覚にも心地よい悦楽をもたらしてくれる。
 触れられることを待ち望んでいる花のような風情の唇ではなくて、健康的な色香をまとっている耳朶へ唇を移動させた。
「先ほどの約束。覚えていらっしゃいますよね?帯を解く時に……」
 最愛の人が薄紅色の首を縦に振る動作だけでも艶やかで鮮やかなのに、汗の雫がキラキラと飛び散っている様子や髪の毛の香りまでも愛の行為を待ち望んでいる風情なのが堪らない。耳朶を甘噛みすると、浴衣に包まれた背筋が美しく反った。歯に残る最愛の人の耳朶の感触もまるで食前酒のようだった。
「愛する聡……寝室に行きましょう」
 「聡」呼びは、愛の交歓の時しかしないのを最愛の人も知っている。充分に熟した熱を散らそうとするかのように、そして祐樹の愛を確かめるかのように薄紅の唇が祐樹の唇に合わさった。
「この寝室が、最も適していますよね?浴衣にも、そして今からする愛の行為にも……。立てますか?」
 ここまで来る廊下では祐樹の身体に凭れかかって歩いていた。欲情のあまり力が入らなかったのだろう。ただ、抱き上げようとしたら遠慮がちに拒まれたのは彼が祐樹への負担を考慮に入れてくれたからだ。そういう点も大変好ましい。また、祐樹のわずかな力の負担を軽減することで、愛の交歓を濃厚なものにして欲しいと望んでいるのも、剥がれ落ちそうな銀色の理性がそう判断したのだろう。
 その高級旅館を思わせる広い日本間には布団が一式と、桜色の絹を張った行燈(あんどん)が二つ、そして切子細工の水差しが置かれているのも岩松氏からの指示に違いない。
「大丈夫……立てる……」
 廊下で交わしたキスのせいで濡れた薄紅色の唇から艶やかなため息とともに紡がれた。祐樹の要望に何とか沿いたいという最愛の人の深い愛情に、祐樹の頭にも桜色の紗がかかったようになった。
「この距離で……良いのか……っ?」
 祐樹の身体で咲かせられるのを待ち侘びた薔薇のような声と肢体の様子に眩暈がしそうだった。
「それで充分だと思います」
 おもむろに近づいて帯に手をかけた。いつも以上に動く肢体はきっと祐樹の意を汲んでくれたからだろう。行燈の灯に照らされた紺色の浴衣はミヤマカラスアゲハのようだった。一瞬だけ羽ばたいて、床へと落ちるだけに生まれた青く静謐な蝶。
 しかし、それ以上に祐樹の目を射たのは、露わになった肢体だった。蝶よりも滑らかで、欲情の証を尖った二つのルビーや育ちきった花芯の先端から溢れた水晶の雫で表現しながらも、なお冷ややかな印象で光っていた。翅では届かない高みにその肌が、咲いているようで息をするのも忘れるほどだった。
「もう少し、抗ったほうが良かった……か?」
 律儀な最愛の人が紅色に艶めく眼差しに不安の色を滲ませている。祐樹の感嘆の沈黙をそう解釈したのだろう。
「いえ、充分です。愛する聡、まず、どこを愛して欲しいですか?」
 祐樹の視線にあぶられたかのように、胸の尖りは硬さを増して煌めき、花芯は見えない銀の色で天井からつるされたようになっている。そして、先端部分から幹へと水晶の雫が滴り落ちているさまも、壮絶な色香を放っている。
「祐樹……っ、まずは……っ、ここを……愛して欲しい……」
 紅色に染まったしなやかな指が二つのルビーに添えられた。その些細な動きと空気の揺らぎも悦楽に変換されたのか、最愛の人の、色香以外は何も纏っていない肢体が揺れた。
「分かりました……。ただ、聡の薄紅色の指で尖りを弄っている仕草はご自分で愛を求めているようで、何だか盗み見をしているような奇妙な背徳感を抱きます。親指の爪で強く弾いてください」
 濃い桜色の短い爪が二つの胸の尖りを弾く仕草も絶品だ。
「あ……っ」
 微かな声も甘く艶やかだ。ただ自ら愛している場面を見たかったのも事実なのだけれども、祐樹にはもう一つ確かめたいことがあった。




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気分は下剋上 お花見 46  2025

「それも一次資料ではなくて、創作だな……。一次資料として残っているのは、『甲陽軍(こうようぐん)(かん)』だ。それを書いたとされる、武田信玄の家臣の高坂(こうさか)(まさ)(のぶ)が主君との親密さをかなり赤裸々に暴露している。とはいえ、具体的な描写は当然ないが」
 艶やかさを隠そうとしている怜悧な声にもどこか色香が滲んでいる。そして若干汗をまとった指の感触、そしてさらに肢体から薫る芳香が強まったのは、彼の性的なスイッチを押した証拠だ。
「そうなのですね。隠そうとする文化そのものがなかったわけですよね。ごくごく自然に受け入れられていたと。あ!この黒人侍弥助が『勇』と書いていますが、これは半紙に書いているお習字ですよね。手紙や日記という発想がなかった点で、歴史考証家や、この配信者が歌っているような『日本に詳しい人』がいなかったのでしょう。え?X社のイーロン・マスク氏までがこの件に言及しているのですか?」
 祐樹が知らない間にネット上では大変な騒ぎになっていたらしい。最愛の人の艶やかさを滲ませた声や薫る肢体、そして指に宿った汗の雫までが祐樹に咲かされるのを待つ大輪の花の風情だ。性急に愛の交歓へと進んでもいいだろうが、焦らした方が悦楽も深くなる。もう少し指の動きを微細にして、愛の温度を上げよう。
 何しろ最愛の人の浴衣の帯を解くという「悪代官と町娘ごっこ」を是非とも実行したかったので。時代劇では清楚な美しさをもつ女優さんが悪代官に抗っているというのが定番だが、嫌がる人との性行為に興奮するような悪趣味はあいにく持ち合わせていない。しかも相手は、過去に「一夜限りの恋人」、今思えば単なる欲求を解消するだけの人ではなくて、最愛の人だ。じっくりと官能の炎で理性を溶かしてから、「悪代官ごっこ」に付き合ってもらおう。
「――そう……みたいだな……」
 祐樹は指を強く握った後に彼の指の付け根を指先で優しく愛撫した。皮膚の薄い場所は愛撫を素早く取り込むことは知っていたし、しかもそのうえ、最愛の人の弱い場所は知悉している。
「いや、そもそも、あんな立派な甲冑を着た大将クラスの人間同士の一騎打ちだなんてあり得ないですよね。しかも馬にも乗らず、周りに側近の武将もいない状態ではなおさらです。先ほど貴方が教えてくださった武田信玄で思い出しましたが、川中島の戦いで上杉謙信と一騎打ちをしたというのも、後世の創作なのですよね?」
 手の甲を爪で刺激すると、彼の肢体の動きに合わせて、紺色の浴衣からボディソープの芳香が立ちのぼる。髪と同じ香りだが、肢体の熱が上がったせいで濃厚で、そしてどこか官能的な香りだった。
「一次資料と……される『甲陽軍鑑』にも……書いていないので……、創作だな」
 理性の銀箔がはがれたような声と、その合間に混じる、濃い紅色の花のような吐息が煽情的だった。
「そうですよね……。『甲陽軍鑑』を武田信玄に仕えた高坂昌信が書いたのであれば、絶対に書き漏らしたりはしないでしょう。それに高坂昌信が愛していたのか尊敬していたのかまでは分からないですが――」
 最愛の人の手の甲からしなやかな指にかけて祐樹の手を滑らせて付け根を指で強く弱く愛撫してはまた元に戻す。直接触れ合っているのは指だけなのに、肩に乗った彼の頭も動いて祐樹の耳に髪がそよいでいる。
「――武田信玄のことで恥ではなくて戦功になるようなことに言及しないなど、あり得ません」
 甘く蕩けた小さな声が切れ切れに聞こえてくるのも最高だった。川中島の戦いは決着がついていないことは知っていた。そして、武田信玄も上杉謙信も共に病死なので戦で亡くなったとは考えられない。
「先ほどの、『信長と掘りあえ』ですが、覚えていらっしゃいますか?いつぞやの本屋さんでのことなのですが――」
 さらに欲情を煽ろうと話題を逸らした。
「本屋さん……っ、祐樹と……っ二人で……っ、よく行くだろう……っ、どのことだろう?」
 声と吐息混じりの空気の動きは最愛の人に咲かせた桜が散っているような錯覚を抱いた。
「貴方が、何気なく手に取った本があったでしょう?顔面偏差値は世界遺産並みの男性二人が、全裸で激しく愛し合っているイラストをご覧になって固まったことがありましたよね」
 最愛の人の嬌声が羞恥を帯びたように聞こえるのはきっとその時のことを思い出したからだろう。
「――いや……しかし……っ、現実は……、凡庸の……海で……っ泳いでいる……ような、ものだろう」
 期待した通り、いやそれ以上の返事が返ってきたので、祐樹は、この機に乗じることにした。




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気分は下剋上 お花見 45  2025

 やはり、そう疑うのは、最愛の人や祐樹だけではなくて、ゲームをしている日本人の一般的な考えなのだろう。その後、機関銃めいたものを弥助が拾ったかと思えば、海外から来た迷惑配信者を撃ちまくる、日本人には嬉しい展開だ。
 最愛の人と京都で最も美味しいと評判のカウンター割烹の店の帰り道に、祇園を通ると自撮り棒を持って道をふさぐ外国人観光客にうんざりしていた。最愛の人は外科医には珍しく温和な上に気も長い性格なので全く気にしていない様子だった。だが、祐樹は手でなぎ払いたい衝動を覚えたことが何回もあったので、思わず黒人侍弥助に感情移入してしまった。
 障子を開けるのではなく、タックルするのがこのゲームの特徴らしく、きっと例のゲームもそういう誤解に満ちているのだろう。「え?これあれやん、イカゲームやん」配信者は多分、関西の人なのだろう。巨大なダルマが一個だけ置かれた空間に出た。
 イカゲームというのは祐樹も名前しか知らないが流行っていたという記憶がある。最愛の人の頭の重みが急になくなったのが少し寂しい。もしかして、これからの展開に彼が疑問に思っていたことがあるのだろうかと思いながら肩に残った残り香を吸い込んだ。
「この『だるまさんが転んだ』という遊戯はテレビでしか見たことがないのだが……、一般的なのか?」
「そうですね」
 祐樹は、反射的に……(私も遊んだ記憶があります)と言いかけようとして口を閉じた。最愛の人は幼少期からずっと心臓病のお母さまが心配で家と学校の往復だったと聞いている。極力家に居ようとして本を読んだり家事を手伝ったりしていたらしい。当然遊び相手はいなかったと独白していた。
「――『だるま』役の人間が」
 敢えて子供ではなく人間と言ったのも彼の心理的負担を軽くするためだった。
「――振り向く前に停止するという遊びです」
 最愛の人の眼差しが明らかな興味と期待を帯びているのを確認した。
「今度……いや、画面のようにある程度の空間が必要なのです。だからいい大人が興じるのは、他人の目のない場所を選ぶ必要があります。最適な場所を探しますので、その時に遊びませんか?」
 祐樹の言葉にしたがい、最愛の人の表情が庭に咲き誇る桜も霞む、無垢な笑みへと開花を遂げている。
「いいのか?」
 言葉では遠慮がちだったが、表情は、まるで朝露に濡れた薄紅色の薔薇に生まれたての朝日が射したかのようだった。
「もちろんです。日本文化に敬意を表して『指切りげんまん』で約束しましょう」
 祐樹が小指を出すと、弾んだ感じで薄紅色のしなやかな小指が絡められた。
「――指切った」
 絡んだ小指が離れた瞬間に、最愛の人の細くしなやかな指がスマホの画面に触れたかと思うと、動画の再生が中止されて新しい動画に切り替わった。
「祐樹、すまない…」
 慌てた感じで操作しようとする彼の薄紅色の手首を優しく掴んで止めた。
「面白そうな曲ですね。折角の機会なので聞きたいです」
 その曲は先ほどまで見ていたパロディゲームの本元のゲームへの批判や開発会社への皮肉が込められた歌詞だった。「侍 信長 明智 そこにたまたま弥助」というところでは不覚にも笑ってしまった。最愛の人も祐樹の表情を確認した後は笑みの花を咲かせている。
「え?この声は先ほどのゲーム実況をしていたのと同じ人ですか?」
 特徴のあるキャベツのアイコンにも見覚えがあった。
「そうだ。彼が批判を始めたのは問題のゲームの次回作、日本が舞台なのに黒人侍を主人公にしたということではなくて、日本文化軽視がひどいと分かった時からで……」
 その冷静な視点を持った男性の知性は好ましい。
「教えてくださって有難うございます。『とりあえずゲイにして信長と掘りあえ』ですか……。異性愛者の男性はそう受け止めるのですね」
 祐樹の肩に最愛の人の髪の香りと心地よい重さを感じる。
「そうだな。森蘭丸という小姓の存在は明らかに……いや、史実として本当かどうか分からないが、男色家という前提で考えれば、役割的に小姓が『夜伽(よとぎ)役』、つまり江戸時代でいう側室役だったと考えるのが妥当だろう」
 淡々とした怜悧な声がどこか羞恥に震えている蘭の花のような風情だった。
「豊臣秀吉だけが一切そちらの趣味はなかったそうですよね。気を利かせた側近が選りすぐりの美少年を夜伽に差し出したという話を読んだことがあります。その美少年に『昨夜はどうだったか』とその側近が聞いたところ、『そなたに姉か妹はおらぬのか?と殿がお尋ねになり、その後すぐにお休みになりました』との返答に『だから農民出身のような下賤な身分には高尚さが理解できないのだろう』と嘆いたとか。そういう文化は確かにあったみたいですね」
 最愛の人は絡めた指の力を強くしていたが、体温が上がっているのか肢体から薫る芳香も強くなっている。やはり自分の性的嗜好の話を第三者が話題にしているのが恥ずかしいのだろう。宥めるかわりに指を強く握り返した。安堵めいたため息を零した後に言葉が紡がれた。




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