腐女子の小説部屋

創作BL小説を綴っています。ご理解の有る方【18歳以上】のみ歓迎致します 申し訳ありませんが書く時間を最優先にしたいのでリコメは基本的に致しません。 要望・お礼などは「日記」記事でお応えしますが、タイムラグがあることも多いです。

気分は~不倫騒動 ロンドン編の後

気分は下剋上 不倫騒動 最終回

 内田教授のその元凶は医局の医師なのだから裏切られた気持ちなのだろう。
「内田教授の(ほう)こそ心労で倒れないでくださいね。私たちは予兆を感じ取って警戒していましたし心の準備もしていました。しかし、教授は寝耳に水といった状況でしたので…」
 彼の口調も労わるような優しさに満ちている。
『お気遣い有難うございます。清水研修医の進言の話の途中でキャッチが入ってしまって申し訳ありませんでした。教授や田中先生は精神科医の押し売りめいたことを危惧なさっているようですが、杞憂ではないでしょうか?』
 そうなのだろうか?頼んでもいない医師が付き添って、しかもその料金が加算されると知ったら祐樹などは余計なお金まで請求されたと思うだろう。
「そうですか?それはどのような根拠ですか?」
 最愛の人も祐樹と同じように怪訝そうな表情で聞き返している。
『ああ、教授と田中先生のお耳には入らなかったのかも知れませんね。呉先生が自己紹介をなさった時には精神科医を名乗っていました。そして山氏も『宜しくお願いします』のような肯定的な返事をなさっていました。素人ではなくて専門家に頼むのですから対価が発生することは社会人なら当然の発想ではないですか?香川教授も田中先生もご経験があるかと思いますが、友人ならば『こんな状況だけど病院に行くべきだろうか?』とか言われて『直ぐに病院に行った方が良い』程度の問答ならばお金を取らないでしょう?しかし、山氏の場合、場所は病院でしかも精神科医が臨席したらオフィシャルなモノだと思うでしょう。また、病院はそこいらのスーパーと異なって客である患者の意思を無視して…と言えば語弊がありますが、医師が『MRIの検査が必要です』とか『レントゲンを撮りましょう』と言った場合にノーとは言わないですよね。辛うじて言えるのは『私は閉所恐怖症なのです』程度ですよね。病院によってはオープン型のMRIを使用しているらしいですが、ウチの病院にそんな気の利いたモノはないので何とか騙し騙し検査を行っているのが現状です。あ、話が逸れましたが、そこいらのスーパーだったら要らない物は買わないという選択肢がありますが、病院は嫌々検査を受けてもしっかりと料金は取られますよね。それが常識ですので、呉先生のお会計もすんなりと支払うと考えています』
 オープン型のMRIは頭部の上下左右に空間が有って、明かりも入る設計になっている。祐樹がセンター長を兼務しているAi(死亡時画像診断)センターを使う(?)元患者さんは既に死亡しているので狭いだの閉所恐怖症だのは絶対に言わないのでさして関心はなかった。元患者と便宜上表現したが死者に人権はない。副センター長の野口准教授はオープン型を熱望しているが予算の壁が厚すぎて実現は絶望的だ。
「なるほど。確かにMRIやCTの検査をしますと言って断った患者さんはいないですね」
 最愛の人も内田教授の発想の柔軟さに感心したような表情を浮かべている。祐樹も「心臓の狭窄部分に気になる点がありますので一度検査しましょう」などと言っても有難がられるだけで迷惑そうな顔をされたこともなければ「検査の押し売り」などと言われたことは一度たりともない。内心までは分からないので密かにそう思われているのかも知れないが。
『…それに高額医療費が適用されるので懐は痛みませんし。消化器内科の松本教授には、病棟に移送される予定の山氏には不定愁訴外来受診を強く勧めるように頼んでおきます。あ、ちなみに松本教授と精神科の真殿教授の仲は非常に悪いです。そして真殿教授と殴り合いの大喧嘩をした呉先生のことを尊敬していますよ。出来るならばどさくさに紛れて自分も一発お見舞いしたかったとか言っていました』
 …呉先生と真殿教授は教授執務室の外からも聞こえる大喧嘩をしたのは事実だが殴り合ってはいない。大学病院はウワサが伝播するにしたがって話に背びれや尾びれが付くのでそのせいだろう。
「つまり真殿教授とその医局に専門医の派遣を要請しないということですね」
 何だか小学生の仲間外れのような仕打ちだが、そういう子供っぽい医師も少なからず居るのも大学病院だ。
「内田教授、田中です。先ほど話が出た清水研修医も真殿教授を内心白眼視しているのです。そして呉先生を精神科の希望の星とまで言っていますよ。呉先生に教えを請いたいと熱望しているので、松本教授が呉先生を病室に呼んで出張診療をする時に清水研修医も円強のために付き添うというお願いをしても大丈夫そうですか?」
 清水研修医は呉先生を希望の星と発言していなかったような気がするがこういうプラスの意味での大袈裟な表現なら良いだろう。
『そうなのですね。あの腐った下水みたいな真殿教授の医局から、そのような向学心を持つ医師が出るとは…。しかも、呉先生はパリ大学の精神学会で講師を務められたほどの実績をお持ちなので研修医が目的にするにはうってつけの精神科医ですね。松本教授と相談して清水研修医を呼べるように上手く取り計らいます。この程度しか香川教授や田中先生を始めとする香川外科にお掛けした我が医局の不祥事のご恩返しが出来ませんので…』
 スマホ越しの内田教授の声は革命の闘士というよりも革命に敗れて亡命するか自決するかを決めるような感じだった。
「今日はもう帰宅なさってゆっくりと休んだ方が良いと思います。今過労で倒れたら医局運営だけでなく不倫騒動の陣頭指揮を執る人間が居なくなりますので」
 涼やかな声がしみじみと発せられた。祐樹も同じ思いだったが。
『そうですね。お言葉に甘えてもう帰宅する積りです。また浜田教授も誘って呑みに行きたいですね。では失礼します』
 通話が切れた瞬間に祐樹は最愛の人に満面の笑顔を浮かべた。
「祐樹のそういう太陽のような笑顔を見るとやっとこの騒動が終わった実感がする」
 彼は眩しいモノを見るように切れ長の目を細めているのがとても儚げでそして綺麗だった。
「私たちに出来ることは全てしましたから。後は内田教授が医局の長としてキチンと残務処理をするでしょう。貴方も慣れないことでさぞお疲れでしょう。行きつけのカウンター割烹で二人だけの打ち上げをしませんか?」
 最愛の人は白衣の裾を天使の羽根のようにはためかせながら近寄って来たかと思うと幾分冷たい唇が裕樹の唇に重ねられた。
「それは楽しみだ…」
 それだけ言った彼は舌で祐樹の唇をノックしている。次第に深まるコーヒーの香りのする接吻に不倫騒動の疲れが雲散霧消していくようだった。

  <完>




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やっと「不倫騒動」に「完」が打ててホッとしています。リアルが忙しくて途中お休みしてしまっていましたが、単純計算では半年…。読んでくださった方、コメント下さった方感謝です。仕事と家事でネットに向かう時間を捻出するのが精いっぱいです(泣)誠にすみません。(とっくに桜も散った)「お花見」と「巻き込まれ騒動」そして「叡知な一日)←「叡知な夜」と題名にすれば良かったと後悔中です。この三本頑張ります!
 こうやまみか拝

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気分は下剋上 不倫騒動 175

「医局の一大事なので仕方ないですよ。私も通話を聞いても良いですか?」
 彼は満面の花のような笑みで頷いてくれた。
「祐樹も聞いていると内田教授に断ってからだな。私よりも祐樹の(ほう)が的確かつ簡潔に話が出来るだろうから…」
 付き合ってしばらくの間は確かに言葉数も少なかったし、そもそも会話の重要性を感じていなかったように記憶している。外科医は手技に必要な単語のみで完結するからだろう。
 しかし、今では彼が会話も頑張っている上に卓越した記憶力で相手の名前や所属も全て(そら)んじている。名前を呼ばれた看護師は「まさか教授に名前を憶えて下さっていたとは思いませんでした」と喜色も露わにしているのを一緒に通勤している祐樹は何度も見ている。
 そういえば森技官が彼の手術(オペ)ミスのでっち上げ画像で関係を迫った時に、本当に彼が手術ミスをしたのかを確かめるために呉先生には鬼門というか地獄みたいな救急救命室に渾身の勇気を振り絞って来てくれた。香川外科の一員が救急救命室勤務をしているということを聞いてきたと後で聞いた。心臓外科と精神科では何だか地球の裏側にでもあるように交流もないし、所属している医師の交流はない。祐樹最愛の人は国際公開手術のためにベルリンに行っていたし、手術ミスなどが起こっていないことは医局の医師は全員知っている。祐樹もでっち上げた画像が偽物だと証拠立てて説明した。彼がベルリンから帰国した時には呉先生が森技官を引きずって謝罪に来た。その時に自己紹介をしようとした呉先生に「不定愁訴外来の呉先生ですね。正面エントランスや廊下で二度すれ違っていました」と事もなげに言って精神科の助手までも覚えて貰っているのかと呉先生が感激していたなと思い出した。
「貴方の場合、言葉数が少ないですけれども要点はきっぱりはっきり仰いますよね?だから最低限の時間で最も言いたいことが伝わります。その点私は言葉を尽くさないと言いたいことが伝わらないような気がしてついつい口数が多くなります。私の(ほう)が貴方の仰った的確に、そして簡潔に話を纏めることが出来ないような気がしますが…」
 彼は切れ長の目を瞠っている。
「そうなのか?祐樹の会話力は常々見習いたいと思っているのだけれども…」
 自分の長所は分からないモノなのかもしれない。
「私も最小限の言葉で最大限の効果を上げるために貴方の話術を真似したいと思っていますよ?お互い様ですね」
 思わず唇が弛んでしまった。お互いがお互いを高めあっていることが分かったので。彼も祐樹の目を真っすぐに見ながら薄紅色の笑みを浮かべている。執務用の椅子からすらりと立ち上がって祐樹が座っている応接用の椅子の向かい側に優雅に腰を下ろした。
「あ、裕樹、コーヒーを淹れようか?」
 内田教授がまき散らした書類を手早く、そして繊細な手つきで片付けながら思いついたように言ってくれた。
「有難うございます。貴方の淹れて下さるコーヒーは世界一美味しいですから、疲れも吹っ飛んでしまうでしょう」
 やや薄い唇が花のように綻んでいてとても綺麗だった。
「砂糖とミルクは必要だろうか?」
 祐樹が少し疲れているのを感じ取ったのだろう。
「ミルクは多めで砂糖は控え目でお願いします」
 彼が頷いて立ち上がると白衣が天使の羽根のように翻った。コーヒーの香りが執務室に漂っている。何だかその匂いを嗅いだだけで精神が休まる気がした。
「祐樹、お待たせ。そろそろ内田教授に電話をしても良いだろう」
 目の前に置かれたコーヒーはミルクのまろやかさがとても美味だった。
「そうですね」
 最愛の人もコーヒーを一口飲んだ後にスマホを手に取った。
「内田教授、今お時間宜しいでしょうか?……はい。今私は執務室でして、田中先生が残務処理を手伝ってくれていまして、会話に加わっても良いですか?…分かりました。スピーカー機能に切り替えます」
 白く長い指がスマホをテーブルの上に置いてタップした。
『香川教授そして田中先生もウチの医局員の不始末のせいで仕事が増えたことをお詫びいたします。ああ、山氏の胃潰瘍の件はどうなりましたか?』
 医師らしくまずは容態が気になるらしい。
「清水研修医から連絡がないということは急変していないと思います。点滴で落ち着いたらバックヤードでもある消化器内科に送られると思います」
 清水研修医が他の患者さんにかかりきりになってこちらには連絡出来ない可能性も考えたが、ただでさえ今日一日の心労が祟っている内田教授に言う必要はないだろう。
『それは何よりです。容態が落ち着いたら松本教授の医局に回されるということですね。ストレス性の胃潰瘍でしたらその原因はウチの医局員の不倫が原因なのは火を見るよりも明らかです。呉先生が見せるかどうかを熟慮した画像とはいえ激甚なショックを感じたのでしょうね』
 怒りとため息が同居しているような口調だった。確かに妻の不貞現場の画像を見たら胃に穴が開いてもおかしくないと内田教授は思っているのだろう。
 億が一にもあり得ないだろうが、最愛の人が浮気をしてその画像なり映像なりを見たら祐樹は胃潰瘍どころか脳の血管が切れてしまいそうな気がするので、山氏の容態は他人事ではない。あくまで仮定の話だが。



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気分は下剋上 不倫騒動 174

「慰謝料はそれぞれ九百万円か。破格だな。杉田弁護士の働きの賜物だろうが。養育費は、子供一人当たり4万円というのは妥当な線だろう。財産分与ナシというのもペナルティ的な意味合いだろう。このケースが抑止力になってくれれば良いのだが……」
 九、九百万円…そんなに高価なのか不倫の代償は…。最愛の人が若干疲れた感じで祐樹に笑いかけている。救急救命室でも走り回ることはあるのだけれども、既に慣れている動きをすれば良いだけで精神的な疲労という点では今日の(ほう)が大きい。
「まずはお疲れ様でした。九百万円を支払えと言われたら貯金は吹っ飛びますよね。借金…銀行がお金を貸してくれるか謎ですが、そんな大金と引き換えに不倫するような人はいないでしょう。良い抑止力になると思いますよ。多分キャッシュで払えなくて銀行のローンなどはあるのでしょうか?ああ、銀行の場合は担保がなければ相手にしてもらえませんよね。だったら夢のマイホームを売るとか、親御さんに泣きついてお金を工面してもらうというのが現実的ですね」
 祐樹も彼へと微笑みを返した。九百万円という大金は祐樹に全く関係ないので。そしてお互いが微笑を交わせるというのは幸せだ。
「今日中にこの件は片付けてしまいたいので、内田教授に呉先生の件をお願いすることにしよう」
 不定愁訴外来としては患者さんから予約を受けるシステムになっている。だからあらかじめ話しておく必要もないだろう。
「電話の方が良いかと思います。特に清水研修医の進言は言及なさると良いでしょうね。清水研修医の慧眼とアドバイスは周知徹底すべきです。特に上層部には」
 最愛の人は淡い笑みを浮かべて机上の受話器を取っている。清水研修医が将来的に家業を継ぐのか、それとも病院に残るかは分からないし、裕樹が口出しするようなことでもない。しかし、裕樹が当たり前のように呉先生に無料診断を請うたり呉先生も医師としてではなくて知り合い(?)に付き添うような感覚で行動を共にしたりした件での苦言は重要だ。経費削減経費削減と有難いお経のように唱えている事務局長とは異なって病院全体の収益のことを考えている研修医は貴重だ。そういう大局観を持っていることを教授職に、ひいては斎藤病院長に伝えることも使命だと考えた。
「もしもし香川です。メールと院内LAN拝見しました。お疲れのところ申し訳ないのですが、一つお願いがありまして。山氏が胃潰瘍になってしまいまして。そして救急救命室で処置を受けているのです。ええ、甚大なストレスのせいで。清水研修医はご存知ですか?精神科所属で救急救命室に助っ人に来てくださっている研修医なのですが。ああ、清水病院長のご子息です。そうです。田中先生と救急救命室で親しくしているらしくてですね…」
 白皙の肌に冷や汗が宿っているのは嘘が()けない彼らしくて微笑ましい。ただ、次期病院長を目指すにはポーカーフェイスが求められたり心にもないことをしれっと言ったりしなければならない。その訓練(?)もおいおい行おうと心の中で決意した。
「…そして清水研修医からの進言が有ったのです。呉先生は精神科医ですよね?まあ真殿教授と確執はありますが、それは病院内部のことで患者さんは関知し得ない問題です。専門医に付き添って貰うと当然料金が発生するというのが清水研修医の主張です。私も目から(うろこ)が落ちたのですが…。『何だ、お金を取るのか?専門医の押し売りだ』という批判も出て来るかも知れません…。しかしプロである私たちが無料というのは問題だとも言っていました。あ、すみませんいったん切りますね」
 最愛の人は純白の白衣に包まれた華奢な肩を竦めている。
「内田教授は獅子奮迅の働きを医局で行っているらしい。だからキャッチホンが入ってしまったらしいな…」
 香川外科で不倫騒動は最早(もはや)過去のことになっている。医局で遠藤先生が山ほどのプリンを食べて厄払いをした時にはそういう雰囲気だった。これが香川外科の医局員が当事者だと今頃は彼だけではなく黒木准教授や柏木先生がてんやわんやだろうが。
 それに不倫騒動の一部始終を病院内に周知徹底したのは内田教授の英断だが、マイナスのイメージがどうしても付き纏うので失地回復も指南のワザだと思う。しかし、今までのように隠蔽して当事者を片道切符の系列病院に行かせるのであれば、単に臭いモノに(ふた)というか事なかれ主義だと、人体に触れることに抵抗がない看護師などは続々と不倫の連鎖は止まらないだろうなと思う。今は尿瓶(にょうびん)と呼ばれているが祐樹の学生時代は()びん(・・)と呼ばれていたモノに男性器を入れるという作業にも慣れている。その例でも分かるように一般人が嫌がることも平気で出来る職病の延長で性行為のハードルが低くなっているのも事実だ。ちなみに祐樹も講義の一環で一回行ったが、かなりのご高齢だったので何の感慨もなかった。まあ、若くて綺麗な男性だったとしても平常心を保つ自信はある。その頃は最愛の人と知り合っていなかったので猶更そう思う。




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気分は下剋上 不倫騒動 173

「ストレスの原因が配偶者の不倫だからな。呉先生がレベル分けをして画像を見せたとはいえ、配偶者の不貞行為そのものがショックだろう。それに杉田弁護士がいるとはいえ、離婚訴訟は最も精神的なダメージがあるというのが法曹界で通説になっている。一生を共にしようと一度は誓い合った人の裏切りとか、生活で嫌だったこと・夜の行為が不満だったなどいった生々しい話が続くので」
 祐樹が一生を共にしようと誓い合ったのは目の前にいる彼だけだ。信頼もしているし尊敬もしている。そして彼の性格上浮気はしないと断言出来る。世の中の夫婦の信頼関係が具体的にどうなっているかは知らないし、人それぞれだと思う。ただ、裕樹も彼が浮気したと仮定したら物凄くショックを受けるだろうと確信している。それこそ胃に穴の三つや四つ開きそうだ。専門性に特化した大学病院勤務なので他科の最新の医療についてあまり知らないが、大学時代の講義でストレスが掛かった状態になると人体の中で最も弱い部分に症状が出ると講師が雑談めいて話していたのを思い出した。
 最愛の人の場合、身体面ではなくてメンタルが若干弱い傾向にあるので、不眠症などを発症しそうだが祐樹は胃のような気がする。とはいえ、そんな甚大なストレスを感じたことがないのであくまでも何となくだが。
「それでしたら、胃潰瘍の治療を受けつつ不定愁訴外来に通うようにと主治医から言って貰うことは出来ないでしょうか?消化器内科の教授って確か…」
 大学病院の場合は教授を動かすのが最も効率的だ。祐樹が循環器内科の医局で根回しをしても、主治医が誰かから始めないといけない。そしてその医師との交渉をするにしても日にちが掛かりすぎる。逆に教授職からだと通告なりアドバイスが有った場合は医局の一員としては絶対に拒否出来ない。良くも悪くもヒエラルキー制度が色濃く残っているのが大学病院だ。
「なるほど、時間軸を逆にするのか。レセプト明細などは『円』ではなくて『点』なので医療事務などの仕事に就いていないとさっぱり分からないからな。消化器内科の松本教授は内田教授と親しそうに話しているのを何回も見たし、私が次期病院長選挙に出馬の意向を内田教授に打ち明けた後は積極的に会話の中に加えてくれた。しかし、親しさという観点だと内田教授の(ほう)()があるな、やはり内田教授経由で松本教授に話を持って行った(ほう)が良いだろう。心臓外科の私が松本教授にお願いするというのは医局外からの干渉だと捉えかねられないので」
 教授の義務として出席だけはしていた彼だったが、内田教授の『医療従事者視点での病院改革』に賛同して、彼なりに考えた結果次期病院長選挙に出馬を決めた。そして内田教授は病院の看板教授が裕樹最愛の人である点や、病院長の覚えもめでたい点を考慮して全面的に応援する姿勢だった。教授会でも決意後は積極的に教授たちと話していると聞いている。一介の医局員に過ぎない祐樹は彼からの話でしか知らないが。ああ、そういえば消化器内科の教授は松本だったなと薄くなっていた記憶が呼び起された。
 大学病院は医局外のことに口を出すなどあってはならないという不文律がある。内政不干渉というのは本来国と国との関係性で使われるらしいが、病院にも厳然と存在している。教授職であっても他科の人事などには絶対に口を挟めないし、医局の方針を変えるように要望してもいけないのがウチの大学病院のルールだ。他の大学病院のことまでは知らないが。
「内田教授は呉先生の協力を仰いでいるのをご存知なので話が早いと思います。是非とも松本教授にお願いしてもらえるようにと貴方からメールなりお電話なりで依頼して頂きたく思います。内田教授はまだ執務室ですよね?」
 祐樹と視線を交わらせて会話をしていた彼は執務デスクの上にあるパソコンの画面へと向き直った。
「あ!内田教授からの【謝罪とご報告】メールが来ている。内容も問題ないな…」
 一瞥した彼は少し安堵したような表情だった。ただ、裕樹としては最愛の人が添付ファイル付きのメールを送ったので内田教授はそれをコピペしただけという作業だ。だから間違ったら単なる無能だと思ってしまった。精神的・肉体的にどれほど疲れていようが医師としては言い訳にならないのはある意味当たり前だと思っている。最愛の人も医師として、いや社会人としての常識は充分に(わきま)えてはいるが、きっと不倫という一種の非常事態に直面した内田教授のことを案じているのだろう。世界レベルの優秀な外科医だし、心臓バイパス術の第一人者とも言われている彼だが、想定外の出来事に対してやや弱い側面を持っている。その彼が、医局員と看護師の不倫という想定外の事態に遭った内田教授を心配するのも無理はない。
「それは良かったです。院内LANにも載っていますか?」
 内田教授を疑うわけではないものの、何となく気になって聞いてみた。細く長い指が鮮やかにキーボードの上を動いている、視線は祐樹に注がれたままで。
「今パスワードを入力した。…ああ、同じタイトル・同じ内容が載っている」
 何だか一仕事終えたという感じの彼の笑みが今日の騒動で目まぐるしく動き回った疲れを浄化してくれるような気がする。




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気分は下剋上 不倫騒動 172

「山氏のカウンセリングを精神科医である呉先生にお任せしましたよね?心臓外科医の私達…いや貴方は精神科にも精通してらっしゃるので、私だけかも知れないですが、とにかく専門医が付き添っていたなら診察代金が発生するのが当たり前だと」
 病院では冷静沈着な彼も驚いたように目を瞠っている。祐樹同様にそこまでは考えなかったのだろう。
「…確かにその通りだな。私達は手技込みの治療費を患者さんに支払ってもらっている。会計課を通すのでどこか他人事(ひとごと)というか遠い世界のような気がしていて…。流石は京都一の私立病院の御曹司だな。病院経営についてもお父様から所謂(いわゆる)帝王教育を受けていたのだろう。そういう発想は清水研修医ならではといった感じだが……。山氏は精神科を受診しに病院にいらしたわけではないのが悩みどころだな。何だか押し売りめいた商法のような気がする…」
 祐樹と同じ感想を抱いているようで何だか嬉しい。ずっと一緒にいるので思考法が似てきているのかも知れない。
「それは私も思いました。ただ山氏の容態では必ず高額医療制度を使うことになるので上限額以上の金銭的負担はないのですよね?そして清水研修医は『そんな細かい点まで見ない。自分が支払わないお金なので』みたいなことを言っていました」
 白く長い指を(あご)に添えて考え込んでいる様子だった。
「それは確かにその通りなのだが…。会計課にどう報告するかだな、問題は。そして山氏が細かい点まで気にする性格だったら、明細書は見る可能性も有るだろう?消化器内科に入院することは確実なのだな?」
 再確認といった感じの口振りだ。救急救命室はあくまで臨時というか、容態が落ち着きを見せたらそれぞれの科の病棟に送ることになっている。大学病院の救急救命室は重篤な患者さんだけを受け入れるのが一般的だと聞いているが、救急救命の法律と自称している杉田師長はどんな容態でも受け入れる人だ。彼女の魔法のようなベッドコントロールや確かな実力で裏打ちされているので医師でも逆らえない。だから処置が済んだ患者さんはバックヤードでもある各科に分散させざるを得ない。中には交通事故で機械的に搬送されて治療費を払わずに勝手に帰ってしまう患者さんもいるのが頭の痛い問題になっている。また、野戦病院とはきっとこんな感じだったに違いないと思ってしまうほど血で滑る床を走り回る日もあれば、休憩室でスマホゲームをしたり熟睡したりする日もある。当然ながらどちらの場合でも人件費は発生する。後者の場合は赤字になる。ただ、香川外科から派遣されている祐樹や柏木先生などは心臓外科で費用を賄っているし、清水研修医に至っては祐樹が発案して最愛の人が清水病院長に交渉した結果「高名(こうめい)な香川教授に息子が認められた」と狂喜乱舞して支払いは清水病院長がお小遣いという形になっている。しかし、それでも赤字は埋まっていないのが現状だった。
 だからこそ、救急救命()が救急救命センター(・・・・)昇格を経営面が不安という理由で事務局長が頑強に反対していると最愛の人から聞いている。コロンビア大学だかの有名大学でMBA(経営学修士)を習得した事務局長は一般企業と同様の経営理念を持っていて、赤字部門を切り捨てたいという意向が強い。先ほどヨレヨレになって出て行った内田教授は事務局長とは真っ向から対立していて「医療従事者視点の病院改革」を目指している。赤字でも存続しなければ命は守れない科や室、センターも存在するので事務局長の「合理的判断」に異を唱えている医師や看護師は多い。
「胃に穴が開いているレベルなので入院は確定ですね」
 最愛の人は瞳に深い色を湛えて考え込んでいる。どうすれば「押し売り」というイメージを山氏に抱かせないようにするかを考えているのだろう。執務室に沈黙の(とばり)が下りてきたような感じだが、会話がなくとも気まずくなることはない。同じことを考えているせいもあったし、二人の関係性が強く堅いモノだからだ。
「あ!激甚なストレスが原因ですよね?精神科は素人に近いレベルなのですが…治療には時間が必要ですよね?」
 思いついたことを言ってみよう。彼の該博な医療知識には精神科も含まれている。祐樹の粗削りな意見を彼が修正することによって素晴らしいアイデアになる可能性が極めて高い。
「今の風潮では入院日数削減がメジャーな考えだが、精神科の場合は月単位、長いと十年単位の入院もあり得るな。ウチの病院では受け入れていないが、殺人罪で起訴されても心神喪失と認定されれば無罪になるのだけれども、精神病院に入院し一生を過ごす人まで存在するな。それだけ重い精神疾患だからこそ犯行時に物事の善悪が全く判断出来ないので」
 そんな危険な精神状態の人間は世間から隔離しないと善良な市民が迷惑するだけだろう。
「有難うございます。とても参考になりました。山氏も、消化器内科に入院しても精神的に不安定な状態が続くのですよね?」
 純白の白衣に包まれたやや華奢な肩を竦めているのが鮮やかな印象で祐樹の目を射る。


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