腐女子の小説部屋

創作BL小説を綴っています。ご理解の有る方【18歳以上】のみ歓迎致します 申し訳ありませんが書く時間を最優先にしたいのでリコメは基本的に致しません。 要望・お礼などは「日記」記事でお応えしますが、タイムラグがあることも多いです。

気分は~花見2023

気分は下剋上 お花見ランチ 2

「すみません、時間が押していまして……。買い物をお願いしても良いですか?」
 新人ナースを引き連れて入って来た心臓外科の看護師長に声を掛けた。
 祐樹はこの医局では一介の医師に過ぎないが、執刀医を務めている医師に対しては特別扱いを受ける権利がある。何しろ、この医局で執刀医を務めているのは教授職でもある最愛の人と――彼には秘書も居るし雑用も頼める――祐樹だけなのだ。
「良いですよ。田中先生のご多忙さは良く分かっておりますから。お買い物リストを書いて貰えれば、この林さんに行かせます」
 病院内のヒエラルキーでは医師の方が上だけれども、看護師を敵に回せば倍返しが待っているし、看護師の世界では悪評が飛び交うというのも専らのウワサなので、祐樹は看護師長を始めとして彼女達には常に愛想よく振る舞ってきた。
 その過去の行いでそれなりの好感度は維持している。
 師長は迷惑がるどころか好意的な笑顔でそう答えた。
 新人のナース教育は重要だけれども、一々仕事を教えるのも大変なのも確かだ。だから、買い出しのお使いを頼むと師長もその分仕事が(はかど)るのだろう。ある意味ウインウインの関係だ。
「お願いします。では、要る物を書き出しますね」
 祐樹が製薬会社の社名入りのメモ用紙に――医局にはそういう物が溢れている――必要な物を最愛の人の好みを考えながら書いていると「田中先生も忙しさに拍車がかかったな」とか「執刀を受けた患者さんの評判も良いし、教授の、ひいては我が香川外科の顔を潰さないのは立派だよ」などの声が聞こえてくる。そういう声を全てスルーしてお買い物リストを完成させた。
 普段は犬のように絡んでくる久米先生は()だ出勤していないのも助かる。からかって遊ぶには格好の人材だけれども、今の祐樹は「ランチデート」のことで手一杯だ。午前の執刀も控えているし。
「これらを買って来て頂けますか?」
 極上の愛想笑いを浮かべて財布から充分足りるだろうと思えるお金を出して林さんに渡した。
「はい。承りました」
 メモ用紙を見た林さんは不思議そうな表情を浮かべていたけれども、新人ナースという立場のせいか何も聞いて来ない。そういう人だからこそ買い出しを頼むのにうってつけだと判断した。
 これがベテランナースなら何かしらの疑問を口にしたりからかって来たりすることは必至だ。
「私のデスクはここなので、帰っていらした時に不在だったら置いておいてください。宜しくお願い致します」
 お釣りのお金は手間賃として林さんに取って貰いたかったけれども、そういう金品のやり取りは建前(タテマエ)上この医局では禁止だ。そして医局内の小姑(こじゅうとめ)と言われている祐樹がそういうことを率先してするわけには行かない。
 ま、彼女には覚えていたらだけれども――忘れる可能性も高い――何らかの形でお返しをしよう。
 執刀は90%の満足と10%の今後の課題を残して無事に終えて手術準備室へと戻ると、最愛の人が使っている第一手術室は「OFF」のランプが灯っている。
 慌てて医局に戻ってデスクの上を見ると「田中先生へ お疲れ様です。全て買えて良かったです。」というなかなか達筆なメモと共に、コンビニのレシートの上には紙で丁寧に包んだ釣銭と思しきモノが置いてあった。
 そういうマメさは看護師としての適性を示している。きっと林さんとかいう人は良いナースになるだろうなと微笑ましく思ったのは一瞬で、中身を確認してから白衣を脱いで医局を後にした。
 コメディカルのランチタイムよりも先に病院を一時抜け出したかった。医師の場合は執刀の都合とか患者さんの容態とかに合わせて昼食を摂れたり摂れなかったりだ。まあ、それも給料のうちだと思えば腹も立たないけれど。
「執刀で疲れたので、少し息抜きをしてきます。何か有れば携帯を鳴らして下さい。宜しくお願いします」
 他の医師から話し掛けられる前にそれだけ言って医局から出た。
 待ち合わせの神社へと心は飛んでいたのだけれども、仕事だけはきっちりとこなしたい。
 最愛の人と二人だけの時に携帯が鳴らないことを祈るしかない。
「お待たせしました。かなり待ちましたか?」
 京都にはこういう小さな神社が無数にあると聞いている。その神社の境内の松の木の近くに佇んだ最愛の人に声を掛けた。
「祐樹、昼間に会えてとても嬉しい。私はそんなに待っていない。8分32秒だな、此処(ここ)に来たのは。ただ舞い散っている桜を見ていたので全然退屈はしなかった」
 最愛の人のたくさん有って数えきれないと祐樹は思っている美点の一つは正直さだ。デート(?)の時に30分待とうが「全然待っていない。今来たばかりで」的なことをマニュアルに書いてあるかのように言う人を個人的には信用しない。
「ああ、この神社の桜も満開の時は綺麗でしたよ。私が見たのは夜桜だけでしたけれど。来年は昼間の桜を是非ご一緒したいです」
 最愛の人の薄紅色の唇が桜の花びらよりも綺麗な笑みを浮かべた。
「それは嬉しいな。期待している。それはそうと、庶民的と祐樹が言っていたのはそういう意味か?」  




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気分は下剋上 お花見ランチ 1

 今、桜はあまり美しくない。朝日に照らされている花が半分で葉っぱが半分といった具合だった。
 そんな桜の木を見るともなしに眺めながら何時(いつ)ものように最愛の人と肩を並べてマンションの敷地から出た。
「今年の桜ももう終わりだな……。お花見とまでは望まないけれども、満開の見事な桜を祐樹と二人だけで見たかった」
 折からの強風に桜の花びらが舞い散っている。そう言えば「今日の天気は晴れただし強風には注意」とテレビの気象予報士だかが言っていたなと思いながら、独り言のような感じで隣を歩む最愛の人が呟きに耳を傾けた後に考える。
 京都は桜の名所と言われる場所がたくさんあるけれども何処(どこ)も土日祝は大混雑だとニュースでも放映していたしナース達も噂をしていた。
 また「例の地震」のせいで顔と名前の認知度が増えた二人が歩くと目立ってしまうのも明白だ。それを分かっているからこその最愛の人の(ささ)やかな望みだったのだろう。
「今年の満開の桜はもう無理そうですけれども……」
 救急救命室はお花見シーズンも、クリスマスなどのイベントシーズンと同様に急性アルコール中毒で搬送される人が増加する。
 恋人同士で過ごすとされているクリスマスは救急救命室の勤務を断固として拒否したせいで、お花見シーズンはその借りを返すためにも勤務に励んでいて、夜桜見物すら出来なかったなと思い至った。
 スマホのアプリを開いて確認した後に口を開いた。
「隠れた名所を知っています。満開の桜ではなくても良いですか?
 それと……ある意味庶民的なお花見をランチタイムに致しませんか?」
 隣を歩んでいた人が期待に満ちたような笑みを浮かべて祐樹を見上げている。
「良いのか?ただ、人目が有るので……」
 眼差しの中に躊躇(ためら)めいた光を宿している。
「人が来ない場所を見つけるのは得意なので大丈夫です」
 小学校の頃からの祐樹の趣味だった「秘密基地探し」が大人になってからこんなに役立つとは思ってもみなかったけれども、病院の敷地外かつ人が居ない場所は全て祐樹の頭の中に入っている。
 敷地内だとナース達が輪になってお弁当を広げて食べていたり――本当は禁止されている――食後の一服を一人で楽しみたい医師が居たりする。
 いくら二人が親しい仲だと病院内では知らない人が居ないほどだったけれども「特別」かつ「親密」な雰囲気を病院内の人に見せる気はない。
「そうだったな。祐樹だけの隠れ場所に招待されるのは大歓迎だ。
 豪華なお花見弁当は祐樹と一緒に執務室で食べただろう?だから庶民的なお花見の(ほう)が新鮮で良いかも知れない」
 満開の桜よりも綺麗な笑みを浮かべた最愛の人に見惚れてしまった。
「ただ、執務室に差し入れが届くかも知れない……」
 最愛の人は執刀予定の患者さんのご家族などからの「寸志」と書いた熨斗(のし)付きの封筒は断固として受け取らないということは患者さん達の「常識」になっている。
 だから返すことが不可能な一流ホテルのランチや老舗料亭の仕出し弁当が届くことは日常茶飯事で、明石の大きな鯛とか生きた伊勢エビや見事な松阪牛なども届いたこともある。料理が得意な最愛の人が腕をふるって祐樹に食べさせてくれたことは言うまでもないが。
「今日差し入れが届いたら黒木准教授とか長岡先生に回して下さればと思います。それでも余るようなら医局に運ばせて皆に振る舞うとか……」
 そろそろ大通りに出るので大急ぎでアドバイスをした。大通りは病院関係者の通勤路になっている。いくら仲が良いと病院の皆が知っているとはいえ、普段は上司と部下の関係だ。
 肩を並べて歩く姿を見て「田中先生が付け上がっている」などと判断されては堪らない。以前は三歩ほど下がって歩いていたのが、一歩だけになったことだけで祐樹的には満足だ。
「ああ、その手が有ったな……。届く分量によっては内田教授の執務室に届けるということも出来るので……」
 一歩下がるために歩みを緩めた。
「待ち合わせ場所なのですが、以前一緒に行った、小さな神社は覚えていらっしゃいますか?」
 卓越した記憶力の持ち主でもある彼が覚えていないハズはないので疑問というより確認だった。
「分かった。祐樹とランチが出来るだけで幸せだから。祐樹も午前の執刀頑張ってくれ」
 満開の花のような笑みを一瞬だけ浮かべた後に教授という仮面(ペルソナ)に相応しい怜悧かつ冷静そうな表情に変わって行くのを見ることが出来るのも祐樹だけの特権だった。
 医局に入って直ぐに最愛の人の術式を確認した。
 祐樹が執刀予定の患者さんの分は既に頭に入っていたので、どの程度のタイムラグが有るのかを頭の中で計算してみる。ただし、最愛の人の秀逸過ぎるメス捌きだけに予定時間よりも早く終わるだろうからそれほど時間はない。「庶民的な」ランチを買いに行く時間の余裕が欲しいところだ。もしくは代わりに買って来てくれるような人が。
 医局を見回して良いコトを思い付いた。




◇後書き◇
季節感無視の拙ブログ小説なので、たまにはこういうのも良いかなと。こちらの話は(多分)短めになります。読んで下されば嬉しいです。


   こうやまみか拝




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