腐女子の小説部屋

創作BL小説を綴っています。ご理解の有る方【18歳以上】のみ歓迎致します 申し訳ありませんが書く時間を最優先にしたいのでリコメは基本的に致しません。 要望・お礼などは「日記」記事でお応えしますが、タイムラグがあることも多いです。

気分は クリスマスの後→年越し

気分は下剋上 ゆく年くる年(I5禁)10

 最愛の人が床に跪いてベッドに腰を下ろした祐樹の半ば育った欲情と愛情の象徴を紅に染まった唇が(くび)れの部分を挟み込んで舌全体が先端部分を満遍(まんべん)なく舐めてくれる。
 その健気で淫らな奉仕に視覚と触覚が紅色の火花を散らすような錯覚を覚えた。小さな、そして濡れた音が寝室に微かに響いて溶けていく。
「……聡の口での愛の仕草も、最高に良いのですが……。今年、初めての愛の交歓がこのような形では何だか申し訳ないような気が致しまして……。一緒に気持ち良くなりたいです」
 あくまでも対等でありたいと思ってしまう。たまにはこうして最愛の人が祐樹の性感を高めてくれる姿を見るのも良いとは思うが今夜だけはお互いがお互いを愛したいなと痛切に思った。
 労わるように頭をポンと叩いて髪の毛を梳いた後に、育ち切った祐樹のモノを捧げ持った手首をバングルごと優しく引きはがした。
「ベッドに上がって下さい……私も聡を愛したいので」
 最愛の人が艶やかな眼差しで祐樹を見て了解という感じに瞬いている。彼が紅色の濡れた唇を祐樹の愛情の象徴から離すと祐樹の零した水晶の雫が束の間の銀の架け橋で繋がった。紅色の唇と祐樹の育ち切った場所を繋いだ淫らな愛の架け橋だ。
「ベッドで……続きをしても良いか?」
 紅色の唇がお年玉を強請る子供のような無垢な言葉を紡いだ。
「勿論です。聡の口技も絶品ですからね。ああ、舐めて下さっていたせいで聡の花芯も半分熟していますね……」
 先端部分は花の蜜を零したように艶やかに濡れている。
 祐樹はベッドサイドのテーブルの抽斗(ひきだし)を開けて取って置きのボディローションを出して指に(まと)わりつかせた。
 二人が初めて結ばれた第二の愛の巣の大阪のホテルで売っていたものだが、最近では違った物に換えられていて入手困難な物になっている。だからこそ貴重な物なのだが、最愛の人はこの香りを物凄く気に入っている。
「懐かしい香りですよね……。聡と初めてこういう関係になった時のことを想い出します」
 ローションで濡れた指を最愛の人の紅色の顔の前で振ると爽やかな香りもどこか淫靡さを秘めていて、愛の行為に相応しい。
「ああ、その香り……。祐樹との大切な、そして無我夢中だった想い出を想起させてくれて……」
 花芯がより一層熟して震えている。その淫らな動きに伴って先端部分から一粒零れて水晶の煌めきを放ってシーツに落ちていく。
「聡はその行為を続行してくださると嬉しいです。ただ私も口で聡を愛したいので。身体の上に乗ってください」
 どういうコトを祐樹が望んでいるか具体的に分かった最愛の人はベッドに横たわった祐樹の上に紅色のしなやかな肢体を重ねて先ほどの愛の行為を再開した。
 上顎のざらついた部分で祐樹の先端部分を擦ってくれているのが最高に気持ちいい。祐樹も同じように顔を動かすと紅色の肢体がヒクリと反った。その動きを利用して未だ白い双丘を割り割いて花園の門を指で叩くとしどけなく開いていく。
 祐樹の指を歓迎するように。二本の指を花園に挿れると熱く厚いシルクが祐樹の指を歓喜したように包み込んでくれる。
 お互いの口と、そして祐樹の指が奏でる愛の行為の曲が寝室を濡れた薔薇色に染めていくような気がした。
 濡れた舌が裏側の筋を辿ってくれるのも物凄く良い。祐樹も同じように舌を動かしていると、何だか自分の口で自分を慰めているような錯覚を覚えた。多分最愛の人も同じような悦楽を感じているようで、熱い溜め息を零しながら愛の行為に耽っている。
「あっ……。ゆ……祐樹っ……。そこはっ……()ぃっ……」
 花園の中の凝った部分を指で強く衝くと甘く濡れた声が切れ切れに上がった。祐樹の口の中に収めた愛しい熱さと硬さが更に増して爆発寸前といった感じだった。
「私もとても気持ちが良いです……。そのまま口の中で聡の真珠の放埓をばら撒いてください。私も聡の口の中で……」
 最愛の人は器用に喉を開いて頭を上下に動かしている。その精巧な動きと喉の感触が堪らなく良い。根本まで祐樹の屹立を迎え入れたかと思うと直ぐに頭が上がる。その上下運動から(まろ)やかな薔薇色の愉悦を感じるのは不思議だったけれども。祐樹は喉を開くという愛の行為が上手く出来ない。その代わりに花園の中にローションを絡めた指をもう一本増やして更に硬度を増した凝った蕾を指で挟んで小さな先端部分に円を描いた。祐樹の口の中の最愛の人の花芯も大きさを増して無防備に震えている様子が愛おしくてならない。
「あっ……。ゆ……祐樹っ……もうっ……」
 濡れた艶やかな小さな声が限界を訴えている。
「私もです。お互いの口の中で、ね……」
 そう低くて甘い声で(そそのか)すと最愛の人の白い蜜が祐樹の口の中に弾けた。ほぼ同時に祐樹も最愛の人の口に真珠の放埓を放つ。
 熱い息を零す弛緩した肢体の足の付け根の内側に唇を押し当てて強く吸って甘く噛んだ。
「紅い情痕……。ここだと誰にも見えないので良いでしょう?」
 小さな紅い薔薇のような刻印が浮かび上がる。
「祐樹……だけ……ずるい……。私も……」
 最愛の人がむずかるような甘い声と共に太ももの付け根に唇を落として強く吸ってくれるのもとても気持ちが良かった。
「これで私と祐樹の情痕がお揃いになった……」
 満足そうな艶やかな声がシーツの白を紅く染めていくような気がした。実際、祐樹の太ももの付け根には紅い情痕がくっきりと付いていたし。
「聡の絶妙かつ精緻な口技も最高でした」
 向き合って唇を重ねようとしたら、紅色に染まった怜悧で端整な顔が逃げていく。最愛の人は口で愛してくれた後にキスを交わすのは遠慮があるらしい。そういう奥ゆかしさも大好きだが。
「年の初めの愛の交歓ですよね。抵抗が有るのは分かりますが……。どうしても深いキスがしたいです……」
 真剣な眼差しで訴えると(つや)やかに潤んだ瞳が逡巡に揺れていてとても綺麗だった。





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気分は下剋上 ゆく年くる年 9

「お(せち)料理は元旦の朝に祝うものだと思っていた……」
 最愛の人が幸せそうに善哉(ぜんざい)の中に入っているお餅を薄紅色の唇へと入れて美味しそうに食べている。
 善哉の上に載っていたせいで小豆(あずき)色に染まっていない白いお餅と花のような唇のコントラストに見入ってしまった。
「そういう家もたくさん有るとは思います。特に京都は室町時代から続くとかそういう旧家も多いですし。家々によって異なるとは思いますが、ウチの実家では、先ほどのように紅白歌合戦を観ながら年越し蕎麦を食べて大晦日から元旦にかけて初詣をした後で眠りについていましたよ。貴方も大掃除とかお節料理で大変だったように……」
 最愛の人が少し困ったような薄い笑みを浮かべている。白皙の肌が部屋の暖房と善哉などで温まったせいか薄い紅色に染まっているのも瑞々しさが際立っていた。
「大掃除は流石に時間がなくて家事代行を頼んだので、お節料理だけしか作っていないな。だから祐樹のお母様の半分の労力しか使っていない」
 若干華奢な肩を竦めると襟ぐりの深い室内着のせいで薄紅色の肌に鎖骨が綺麗に浮き上がる。
「いや、母は専業主婦でしたから。仕事をしている貴方とは自ずから事情が異なりますよ。ともかく、慌ただしい年の瀬に疲れて元旦のお祝いは正午とかその辺りでしたね、少なくともウチの実家では毎年そうでした。ああ、あれは何年前だったか……。家族そろって寝過ごして三時から新年の祝い(ぜん)を囲んだ年もありました。ともかく大晦日って子供心にも楽しかったですよ。何しろ『子供は早く寝なさい』が口癖の母が唯一夜更かしを公認してくれる――ああ、夏にセミの羽化を見に行きましたよね?その絵日記とか観察記録を作るために起きているというのは許してくれましたが――今思えば夜型だったのですね。お年玉で何を買おうかとか色々考えてはしゃいでいた記憶しかないです」
 最愛の人も懐かしそうに薔薇色の笑みを浮かべていた。
「あの時もとても楽しかったな。虫探しとかしたことがなかったので。祐樹といると幼い頃にしたかったことが叶えられて本当に嬉しい。あ!」
 細くしなやかな指がお箸を箸置きにキチンと並べて祐樹の方へとすらりとした肢体を反転させた。
「明けましておめでとう、祐樹。今年も宜しくお願いします」
 頭を下げた拍子に前髪が薄紅色の額に落ちかかって艶やかさを増している。
「こちらこそ……。明けましておめでとうございます。去年同様今年も宜しくお願い致します……」
 祐樹も真顔になってそう挨拶してから頭を下げた。
 二人だけの空間では畏まった挨拶はしていないので妙に新鮮な気分だった。両手で温かくなった薄紅色の頬をそっと上向けて唇を重ねた。
「『姫初め』は二日の風習みたいですが……プレ姫初めというか姫初め・イブとして祝いたいです……、寝室で、ね?」
 唇を離してそう告げた後に顔を斜めにしてより深く唇から口腔へと舌を侵入させた。歯のエナメル質から歯茎、そして最愛の人の舌の付け根を強く弱く貪っていると濡れた水音が二人の唇から小さな愛の曲を奏でているようだった。紅色を増したしなやかな肢体が祐樹の方へと凭れ掛かってくる。
「それは『承諾』の意味と取っても良いのですよね?」
 最愛の人が祐樹のこういう誘いを断ったことはないので――祐樹だって時も場所も問わず求めているわけではなくて、仕事の都合とかはきちんと考えているし、場所は安全だと思う所でしかしていない――今夜もその例に漏れないだろうが。
 ごく薄い最上級のカシミアのセーターのとろりとした滑らかな肌触りを楽しんだ後に、まだ育っていない尖り部分を軽いタッチでなぞるとしなやかな肢体が反って布越しに次第に育っていっているのがはっきりと分かって何だか嬉しい。
「ゆ……祐樹……。寝室に行こう……。私も祐樹を愛したいので……」
 了解の証しに薄紅色の手首に巻き付けてあるバングルの金色のカデナ(錠前)部分に唇を落とした。
「この黒い革のバングルは愛の交歓の時も外さないで下さいね……。白い肌にも良く映えますけれども……紅色に染まって濡れた肌にはより一層調和して綺麗ですから。ああ、バングルではなくて愛する聡の素肌が、ですよ……」
 最愛の人がもどかしそうな手つきで祐樹の着衣を乱していく。その薄紅色の指の鮮やかな動作が瑞々しい淫らさに満ちていた。バングルとカデナが奏でる小さな金属音が愛の交歓の前奏曲のようでとても嬉しい。
「もしかして、そのバングルをして下さっている時からこうなることを期待して下さっていたのですか?」
 祐樹も薄紅色に染まった素肌を露わにしながら聞いてみた。
「明確に期待というわけではないけれど、そうなれば良いなとは思っていた。ただ、朝にお(せち)料理で祝うのなら時間的には無理かもと考えていたけれども……」
 軽く触れただけの胸の尖りは可憐で清潔そうな桃色をしていて視覚的にもかなりの破壊力だった、理性の。まあこの際理性よりも本能の(ほう)が勝っていたが。
 色香と黒いバングルだけを纏った最愛の人を(うやうや)しく寝室へとエスコートした。ただし指と指は強く絡ませていたが。
「その桃色の二つの尖りが深紅へと花開くのももう直ぐですよね……。愛しています」
 祐樹の視線だけで硬度を増す様子がいじらしくて、そして淫らだった。ピンと尖って苦しそうに震えて愛撫を強請(ねだ)っている感じなのも散らされるのを待つ花の風情(ふぜい)だ。
「祐樹、私だって祐樹を愛したい……」
 最愛の人がすらりとベッドから蝶のように身を翻して下りてしまって、意外な動作に目を見開いてしまった。




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パソコン……新しいのを買おうと思っていますが、今月はお財布事情が厳しくてですね 泣
仕方がないのでネカフェで投稿しています。そんなわけでこちらは更新時間がバラバラという……。
お正月編はもう少し続きます。読んで下されば嬉しいです。
   こうやまみか拝









NISAは私、松井証券で口座開設しています♡何より電話対応が良くて好きです!






iDeCoもお世話になっています。全世界・日本のインデックスファンドでこつこつ積み立てしています。





アマゾンは置き配が出来るので猫の砂とか大きくて重いものは全部頼んでいます。顧客担当の方も丁寧かつ親切なので良いですね。








ダイエットしないとなと思っていますが(;'∀')「明日からしよう」とか毎日思っているという体たらくです。
























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気分は下剋上 ゆく年くる年 8

「祐樹お待たせして申し訳ない」
 最愛の人が大きめのトレーを持ってリビングに入って来た。
「いえ、私こそお手伝い出来なくて申し訳ありません」
 キッチンに手伝いに行こうとしてつい画面を見てしまって弄っていたスマホをテーブルの上……ではなくソファーの肘掛けに置いた。最愛の人が作ってくれた物を飲んだり食べたりする時間にスマホは不要なので。
「いや、それは構わないのだが……。どうしてスマホを?」
 最愛の人が焼こんがり焼き目のついたお餅入りの「ぜんざい」と黒く鈍い光を放っている昆布の小皿に塩を形よく盛り付けたモノと――多分祐樹があまり甘い物を好まないので口直しの積りなのだろう――そして、湯気を立てている梅昆布茶を手際よく並べてくれている。
 カシミアと思しき室内着はいつも通り襟ぐりの深くて、その上肘までたくし上げているのは「ぜんざい」などを作っていたからなのだろうが、右手の手首にはクリスマスに贈ったバングルを付けてくれている。
 黒い革は紅色の素肌にも良く映えていたけれども白く滑らかな手首にも調和していてとても綺麗だった。
「新年の挨拶にラインがたくさん来ていまして……。こういうのも付き合いですからスタンプだけでも返そうかなと連打していました」
 久米先生には今年の(うさぎ)のではなくて去年用の寅のスタンプを送ったのは内緒にしておこう。
 祐樹は何が何でも土日と祝祭日の休みは死守しているので久米先生は救急救命室勤務で、兎のスタンプを返した清水先生のスマホの画面を見て泣き笑いしているハズだ。
 何しろ世間の皆さまがお(せち)料理で祝う時間にはサイレントキラーの異名を持つお餅を喉に詰まらせた年配の(かた)とか急性アルコール中毒で搬送されて来る患者さんは数が多くて毎年大変だと聞いている。
 ちょっとした笑いを提供するのも祐樹なりのお茶目な労わりだ。
「ああ……、スマホは消音モードにしていたので全然気が付かなかった。ただ年配の教授達はラインをリネと呼んで苦手意識を持っている人が多いので、断然年賀状派だろうけれど……」
 肩を竦めると滑らかな白い素肌に鎖骨が健康的に浮かび上がっている。
「字面だけだと確かにリネとも読めますね。ただ、去年の貴方は各科の皆さんと積極的に親交を深めようとなさっていたでしょう?それなりに来ているのではないかとも思うのですが……」
 ただ、准教授並みのAiセンター長の肩書は持っているものの祐樹の病院での認知度は「香川教授の懐刀」つまり彼の医局で信頼されたり些細ではなるが騒動(トラブル)になりそうなことを回避したりといった職務を担う一介の医局員としての側面の方が高い。
 だから気さくにラインで新年の挨拶が出来ると判断した人が多いのだろう。その点最愛の人は病院の旧弊なヒエラルキー社会では病院長に次ぐ教授職なのでお手軽にラインでご挨拶というわけにはいかないのかも知れない。ただ呉先生とかついでに森技官とは親しい付き合いもしているのでラインは来ているハズだ。
「後で見てみよう……。祐樹。冷めないうちに召し上がれ」
 最愛の人と並んで食する「ぜんざい」の味は絶品だった。
「美味しいです……。そんなに甘くはない点が特に……。それにこの昆布は塩加減が絶妙ですね……」
 暖房が効いているリビングに居たとはいえ先ほどまで底冷えのする京都の町に出ていたので身体はまだまだ冷えている。熱々の「ぜんざい」が喉を通る感触は古い言葉で言えば五臓六腑に染みわたるといった感じだった。それに甘みを抑えた味付けもまた格別だ。
「お汁粉にしようかどうしようかと思ったのだが……、秋のデートで買った小豆(あずき)を有効活用したくて『ぜんざい』にしてみた。それにお正月の縁起物としても善哉(ぜんざい)は『()(かな)』とも読めるのでその方が良いかなと……」
 最愛の人も湯気の立ち昇る「ぜんざい」を楽しそうにごく薄い紅色の唇へと運んでいる。きっと秋の小旅行のことを想い出したのだろう。
「ああ、あの時の……。道理で歯ごたえがコリコリしていてほんのり甘くて……とても美味ですね……。ちなみになのですがお汁粉と『ぜんざい』は異なるのですか?」
 甘味全体にさほど興味はないので細かな名称の差異など分からない。
「関東と関西では呼び方が変わるらしいのだが、関西ではこうして(つぶ)(あん)で作ったものを『ぜんざい』と呼んで()(あん)で作ったものをお汁粉と言うみたいだ。関東では水気(みずけ)というか汁が有ったら全てお汁粉と呼ぶらしいけれど。小豆は祐樹でも無理なく食べることが出来るように甘さを調節してみた」
 最愛の人は右手でお箸を持っているので動かす度に黒い革のバングルが黄金色に煌めいているのもとても綺麗だった。
「そうなのですね……。小豆の甘さはちょうど良いです。料理の名前ってややこしいのですね……水気が多いのでこれも関東ではお汁粉と呼ばれるのでしょうね……。ああ、(うめ)昆布(こぶ)(ちゃ)も昆布の出汁(だし)が良く効いていてその上梅干しも噛めば噛むほど……って、この梅干しとか昆布ももしかして手作りですか?」
 第二の愛の巣とも言うべき大阪のホテルにも梅昆布茶はティーパックの中に混じって入っている。その味よりも深みのある味わいだった。飲む前は単純に顆粒状の物をお湯で溶いただけのようにも思えたが、この梅干しの欠片は本物っぽい。
「実はお節料理に使う昆布と出汁(だし)雑魚(じゃこ)鰹節(かつおぶし)のそれぞれを使い分けしたのだが、昆布単体のお出汁はこうして使えるのではないかなと思って……。梅干しは祐樹と出かけた秋の旅行の時に買ったのを細かく刻んだだけなのだが。ちなみにそちらの塩昆布は内田教授のお歳暮の中に入っていたものだ」
 祐樹の表情を満足そうに見て大輪の花のような笑みに湯気が当たってより一層の艶やかさを増している。
「そんなに手間暇掛けて作って頂いたのですね。明日の朝、いやお昼が楽しみです。貴方の手作りのお(せち)料理とかお雑煮とか……。料理の腕もより上手になって下さっているので……」
 最愛の人が白い花芯のような首を優雅に傾げて祐樹を見ていた。何か不審な点でもあるのだろうか?





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気分は下剋上 ゆく年くる年 7

「いや、感謝をしてから今年はこういうことをしますから見守ってくださいとお願いするのが最も神様に喜ばれるお祈りの方法だと書いてあった。だから多分祐樹のお願いは聞いて下さるだろうな……。それはそうと何をお祈りしたのだ?」
 無神論者の祐樹だったが、そう言われると大変嬉しい。こういう場合は本当に神様のご加護が有りそうで思わず笑みを浮かべてしまった。最愛の人も無神論者だったハズだが、祐樹を見上げて花のような笑みを浮かべている。
「貴方こそ何をお祈りしたのですか?住所と氏名を申告したということはかなり重大なことなのでしょう?ああ、こちらにいらして下さい。きっと他人はいないハズですから」
 病院から近い場所は知悉している。昔から秘密基地を探すことは祐樹の得意技だったが、救急救命室の休憩室で雑談する気分でない時は――心肺停止で搬送された患者さんの命が祐樹の(てのひら)から零れ落ちてしまった場合など――独りになって気持ちを鎮静化させて次の患者さんに向き合うために必要だったので人が来ない場所は数か所確保してある。最愛の人以外には教えたくない場所だ。
「寒くないですか?あと、足元には気を付けて下さいね……」
 何だかお正月早々に風邪や怪我などをさせたら縁起が悪いような気がしたので手袋をまだ付けていない最愛の人の手を恭しく握ると先ほど濡らしたせいか普段よりも冷たい手だった。温めるように手を重ねて軽く擦った。
「有難う。それほど寒くないのは心が満ち足りているからなのだろう、多分……」
 家を出る前に観たテレビでは有名な寺社仏閣には人がたくさん居たけれども、この辺りは静寂そのものだった。人の気配どころか猫一匹もいない感じで、何だかこの世に二人だけしかいないような錯覚を覚えるほどに。
「この辺りは特に穴場です……」
 神様――八百万(やおよろず)という膨大な数が居るそうだが――折角(せっかく)祈った後なだけに神社は避けた。莫大な数の神様の数なので(かぶ)ることは確率論的に少なそうだが万が一ということも有るので神社は避けた方が良いだろうと判断した。何だかお祈りまで反故(ほご)にされてはたまらない気がした。
「こういう場所を見つけるの……祐樹はとても上手だな……」
 最愛の人が感心したような感じで呟いている。祐樹が案内したのは家が取り壊されて大規模工事中といった場所だった。昼間だと風情もなにもない。ぽっかり空いた空間だろうが、夜の闇がそういうことを全て覆い隠してくれている。重機が入って地面まで掘り返している窪んだ場所に二人して腰を下ろした。
「この場所は家を建てるまでの期間限定でしょうけれど……ね。私もこういう場所に来るのは夜なので、建築関係の人とは会わないのが有難いです。次第に家が完成に近付いてくるのを間近に見るのも一興ですけれど……。ここはまだまだ掛かりそうですが」
 祐樹の首に巻いていたマフラーを一旦(ほど)いて最愛の人の夜目にも白い首に回してから祐樹の首と密着させる。何だか二人の体温を分け合って高め合うような不思議な親密感が心をほっこりと温めてくれるようだった。
「先ほどの話だが……」
 祐樹の肩に凭れ掛かった最愛の人が弾んだ声が夜の闇にしめやかに溶けていく。
「神様へのお祈りですか?ちなみに私は公私共々(ともども)充実して過ごせた感謝と、今年も去年以上に貴方と幸せな生活を送りますから見守って下さいとお願いしました。それと、仕事面でも頑張るのでそれも見ていて欲しいですと申し上げたのですが……」
 最愛の人がごく近くで小さく弾んだ笑い声を立てている。多分、同じような祈りを捧げたのだろう。
「私は私生活(プライベート)で祐樹と平穏かつ楽しく暮らせるように頑張りますということと、仕事面では祐樹がより一層の活躍をしますのでその成功を見守っていて欲しいと願ったな……」
 最愛の人が自分のこと以上に祐樹のことを真剣に祈ってくれたことに感謝してしまった。マフラーにくるまれた細い(あご)に指を添える。
「きっと貴方の願いが叶うように頑張ります。住所と氏名を告げたのですから神様も念入りに見ていて下さるハズですしご加護もきっと厚いでしょう。その後押(あとお)しに背中を押されたような感じで更に頑張れると思います」
 誓うように告げてから口づけを交わした。少し冷たい唇に唇を重ねると新年の誓いが心に染み入るような気がした。
「家でゆっくりと過ごすお正月も良いものですね……」
 マンションの正面入り口では門松が二人を出迎えてくれた。出る時は気付かなかったものの、そういうお正月の飾りも厳粛さが漂っていて新年の寿ぎには相応しい。エントランスホールの大きな花瓶にも一際豪華な花が活けてあった。
「そうだな……。私としては祐樹と過ごせるのならどこでも素晴らしい想い出になるけれど……」
 警備の人に新年の挨拶をした後に部屋に戻った。
「何か温かい飲み物でも用意するが?」
 ただいまのキスを交わして指の付け根まで絡ませてリビングに向かうと最愛の人が大輪の花のような笑みを浮かべて祐樹を見上げている。
「コーヒーを一杯頂ければと申し上げたいところですけれど、お正月らしい飲み物を用意されていらっしゃるならそちらでお願い致します」
 嬉しそうに頷いてキッチンの方へ歩む足取りも普段以上に軽やかな感じだった。何が出て来るのかとても楽しみだ。





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気分は下剋上 ゆく年くる年 6

「ねぇ、神様にお年玉をたくさん貰えますようにって祈ったら叶うんかなぁ」
 子供のはしゃいだ声が静謐な夜の闇を弾んだものに換えている。
「いい子にしてたら考えんでもないな。あ、明けましておめでとうございます」
 家族三人でお詣りに来たという感じの父親に声を掛けられた。
「明けましておめでとうございます」
 赤の他人同士でもそういう挨拶を交わすのが如何(いか)にも近所の神社らしくて新鮮だった。
「祐樹、鳥居をくぐる時には正面ではなくて端を歩くものらしい……」
 最愛の人が祐樹のコートの袖をそっと掴んで囁いてくれた。
「え?そうなのですか。教えて下さって有難うございます」
 確かに家族連れも正面ではなくて端を歩いているのでそれが正しい作法なのだろう。
「私がこの神社に休憩に来た時には何も考えずに正面を歩いていたのですが、罰当(ばちあ)たりでしたかね……」
 最愛の人にだけ聞こえる声で告げる。
「日本の神様は大らかなのでそのくらいでは怒らないと思うが。あの家族連れのように手と口を清めるのが正しい手順だそうだ」
 最愛の人が手袋を脱いでコートのポケットに仕舞っている。確かに手を水で清めるのだから手袋は邪魔だろう。白く長い指が夜の闇を優しく照らしているようだった。救急救命室の凪の時間にここに来た時には全く目に入っていなかった手洗い場で――多分正式名称も付けられているのだろうが祐樹は知らない――最愛の人の作法を真似て手と口をすすぐ。
 最愛の人は白く長い指でマフラーも取っているのは神様の前では失礼に当たるのかそれとも水が掛かるのを恐れたかの二拓だろう。祐樹も勿論それに(なら)った。冷たい水が心も身体も清めてくれるような不思議な感覚だった。
「祐樹、これで口を(ぬぐ)ったら良い」
 冷たい水を浴びたせいで白い指がほんのりと紅く染まっている。その指でハンカチを差し出してくれていて、とても綺麗だった。
「有難うございます。こういう作法は全く知らなくて……。社会人として恥ずかしいです……」
 一連の作法を済ませた家族連れはお賽銭箱にお金を入れている。毎年お詣りしているのか慣れた感じだった。
「私もそれほど知らないな。ただ、調べたら直ぐに出て来たので……」
 ハンカチで口を拭っていると最愛の人のマフラーがコートからスルリと落ちかけている。慌ててキャッチして「持っておきます」と告げた。
「有難う」
 最愛の人が花の咲いたような笑みを浮かべている。ただ先ほどの男の子が大きな鈴を滅多やたらと鳴らしていて、そちらの(ほう)に注意が逸れてしまったが。
「子供ってあんなモノですよね。いや私などはよじ登りかけて母に思いっきり叱られたことがあります。あれは確か小学校三年の時だったような……」
 そう言えば神社の作法も母親に教わっていたような気がする。ただ鈴を鳴らすのが面白そうで母の教えは馬耳東風だったけれども。
「祐樹らしいエピソードだな」
 最愛の人の弾んだ笑い声が夜の闇に咲き誇るような感じだった。
「お賽銭ってご縁と五円を掛けて五円玉で良いのですよね?」
 小銭は有ったかな?と財布を取り出して確かめてみた。
「二重にご縁が有りますようにと二十五円とかでも良いらしいけれど」
 最愛の人が囁くような感じで教えてくれる。普段休憩に来た時には単なる空間に過ぎなかったのにこうして儀式めいたことをしていると神聖かつ厳粛な空気に変わって行くのが神社という場所らしい。
「それだったら三重(さんじゅう)とか四重(よんじゅう)とか延々続きますよね……」
 取り敢えず55円を出して賽銭箱に入れた。鈴をなるべく厳かな感じで鳴らした後に、最愛の人がするように腰を90度に折る動作を二回繰り返してから両手をパンパンと叩く。所謂柏手(かしわで)というモノなのだろうか?何だか厳粛さが増したような気がするのは神様がお願いを聞いて下さる用意が出来たからなのだろう、多分。
 最愛の人が手を合わせて何かを祈っている雰囲気だった。祐樹も思いつく限りの「願いごと」を心の中で神様に告げた。
 最愛の人がごく小さな声で住所と名前を告げている。そういうモノなのかな……と思ったが、そこまでする必要はない気がして二人して鳥居をくぐった。最愛の人がしなやかに身を翻して神社へと向き直って一礼をしている。そうしないとご利益(りやく)がないような気がして祐樹も頭を下げた。
 神社を(あと)にして歩き始めると何だか心が引き締まったような気がした。気のせいかも知れないが。
「お預かりしていたマフラーをお返ししますよ……」
 腕から二本下げていたのを最愛の人に差し出すと一瞬考えたような()が空いて、祐樹のマフラーを選び取って首に巻き付けている。
 そのいそいそとした感じがとても愛らしくて可憐な趣きを放っていて思わず唇を弛めてしまった。
「住所と名前を仰っていましたよね?あれはどういう意味が有るのです?」
 最愛の人のマフラーを首に巻くと温かさと共に最愛の人がつけているコロンの香りが匂い立つようで、何だか更に親密さが増すような気がした。
「ああ、お祈りをした人を神様が特定出来るように、他の人と間違えないように念を押したのだけれども……」
 え?と思った。
「もしかして、住所と氏名を言わなければお祈りも他の人と間違えられるのですか?申告した方が良かったです……。重大なお願いをしたというのに……」
 基本的には神も仏も信じていないけれども何だかがっかりしたというか重大なミスをしてしまったような気がした。
「重大なお願い?具体的には……」
 最愛の人が幸せそうに祐樹のマフラーにくるまった首を傾げて祐樹を見上げている。
「まずは一年を幸福に過ごさせて貰った感謝をしてから」最愛の人が切れ長の目を(みは)っている。
「何か?」
 神様的にはマズいことを仕出かしたのだろうか……。





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