腐女子の小説部屋

創作BL小説を綴っています。ご理解の有る方【18歳以上】のみ歓迎致します 申し訳ありませんが書く時間を最優先にしたいのでリコメは基本的に致しません。 要望・お礼などは「日記」記事でお応えしますが、タイムラグがあることも多いです。

ハロウィン2022

気分は下剋上 ハロウィン企画 最終話

「そうそう、そんな感じです。医師が言うには少し軽薄な感じがしますがキャラクターになり切って頂かないといけませんので……」
 浜田教授も満足そうな笑みを満面に浮かべている。最愛の人も感心したような笑みを向けていてくれていたし、即席のアドリブにしては上手く演じきれたのだろう。
では、その感じで病棟を回って頂けますか?具体的な部屋は柏木先生が把握なさっていますので。柏木先生お願いします」
 浜田教授が呼ぶと変わったサングラス状のモノを装着したスーツ姿の――病院では不文律めいたスーツのコードが有るので真っ青なワイシャツとか黄色と黒のネクタイは許されないだろうが、これはコスプレとかいうモノだ。かく言う祐樹だって白い髪に青いカラーコンタクトとラフな格好をしている――柏木先生が近づいて来た。
「田中先生、良く似合っているな……。その最強感とか不遜な感じは『天上てんじょう天下てんげ唯我独尊ゆいがどくそん』って感じだ。流石は小児科のナースが満場一致で選んだだけのことは有るな……」
 感嘆の声に苦笑してしまう。天上天下唯我独尊……そこまで言われるとは思ってもみなかった
まばたきする度に睫毛が重く感じます。それに視界にも白い毛が入って何だか不快な感じです……。ただ、目の周りの細工は香川教授にして頂きました。外科医にとって目は命ですから……」
 最愛の人を含めた三人の教授の輪から遠ざかったせいか、頭が火山のようなじゅれいも近寄って来たし、その他人ならざるモノもわらわらと寄って来た。中にはムカデみたいなものとかジンベエザメっぽいモノを手にして動かしている人まで居て、この連中と歩くとまさに百鬼ひゃっき夜行やこうといった感じだろう。
「へえ……香川…教授がね。確かに病院一の器用さだから、適任だと思うぞ。良かったな。ま、そういう不満・文句はアニメ会社か作者に言ってくれ……。『小児科病棟・百鬼夜行』に行って来ます!!
 内田教授のような芝居っけは柏木先生には無さそうだ。ごく一般的な報告という感じだったが、こちらもキャラクターに似せているのか普段よりも低いし渋い声を出している。
 現代風の百鬼夜行の――百人は居ないが多分その半数は居るだろうし、ムカデ状のモノを引っ張っているじゅれいも居るので――面々は皆楽しそうだった。
 ちなみにエントランスは吹き抜けになっているので、二階部分は病院関係者で鈴なり状態だった。男女問わず皆がスマホやカメラで撮影をしているようだったし。
「行ってらっしゃい。医療用具などに当たって壊さないように気を付けてください」
 浜田教授が満面の笑みを浮かべながらも注意を忘れないのは流石だった。
「任せなさい」
 親指を立ててそれっぽく言うと、最愛の人が一瞬だけ花の咲いたような笑みを浮かべて祐樹を見た後に怜悧な表情に戻った。
「ハロウィンはもともと、あの世に居る霊がこの世に帰ってくるという西洋の迷信から生まれたものですから、あの世の亡者もうじゃがそんな恰好をしていても全くおかしなことではないです。
 そのじゅれいが悪さをした時には『無量空処』ではらってやるのも良いでしょう」
 最愛の人が祐樹の傍に歩み寄って来た。確か「無量空処」は祐樹が扮したキャラクターだけの得意技なので祐樹に言っているのだろう。
はらわれるのはキャラの設定上仕方ないです……。『領域展開・無量空処』を食らって『何も見えん、いや何もかも見える……何時いつまで経っても情報が完結しない。故に何も出来ない』って渋い声で言うほうが難しいので、食らわないように善良に振る舞います」
 活火山のような頭とか鉄漿おはぐろを塗った――多分、歯に黒いモノを塗っただけだろうが――久米先生の声が聞こえて来た。慌てると何もない所で転倒するという特技(?)を持っているのを知っているせいか、それとも元々のキャラクターに寄せたのか「杖」を持っているところはなかなか気が利いている。
「何もかも見えるから何時いつまで経っても情報が完結しない」という状況がどういうモノなのかサッパリ分からないが、それは祐樹がアニメや単行本を読んでいないからだろう。
 最愛の人の目を見つめて、親指を立てたジェスチャーをすると、口角を上げた薄紅色の笑みが返ってきた。浜田教授も内田教授も頑張れというような眼差しを返してくれたが、この際そちらは正直どうでも良い。
 小児科の病室に入ると、患者さんが飛び跳ねるように迎えてくれた。高度な医療を施すこの病院に入院するからにはそれなりに重篤な子供が多いにも関わらずこんなに元気なのだから喜んでくれているのだろう。
「先生に任せなさい!
 そう言ってみると「はーい!」とか「『無量空処』をして欲しい」とか言われて、リクエストに応えると歓声が上がった。子供達からも、そして病棟に詰めていたナースからも。
「何も見えん、いや何もかも見える。情報が完結しない。故に何も出来ない」
 久米先生扮する活火山頭のじゅれいのリアクションには「全然似てないー!」「声も演技も下手―!!」というブーイングが患者さんから上がっている。子供はある意味正直かつ残酷だ。
 そんな厳しい(?)環境でも祐樹の恰好とか演技は好評で「わー!五・条先生そっくりぃ!!」「その目綺麗っ!!」とか女の子からも三々五々に声が掛かった。
「大丈夫、僕最強だから」
 言い放つと周りの子供だけでなく人の心を持っていない――原作を読んでいないのでもしかしたら違うのかも知れないが――じゅれいまでもが感心したような声を上げた後に、我に返ったようにおどろおどろしい演技へと戻っていくのが何となく可笑しい。普段ならそんなことで笑わないのだが、このキャラクターは常に笑っている感じなので、せいぜい人を馬鹿にしたような笑みをグロスとやらを塗り直して貰った唇に浮かべる。
ハロウィンの日はお菓子を持って来ますから、楽しみにしていてくださいね。イタドリ君はもう患者様なのですから」
 妙なサングラスをかけた柏木先生が訳の分からないことを言って回っているが、多分内田教授か浜田教授からの指示が有ったのだろう。
 病室で子供達から大歓迎を受けていると、こんな格好までして良かったなと思ってしまう。
 ハロウィンの日はもっと演技の精度を上げようと内心思いながら無菌室まで行って、多分完璧な「領域展開・無量空処」の演技をすると、ハードな治療を受けている子供が拍手してくれたことが喜ばしかった。

            <了>






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気分は下剋上 ハロウィン企画 30

「そんなマンガやアニメの中でのみ可能なことを現実には求めませんよ。
 病院一適役だとナース達が選んだ田中先生ですけれど、実際に似せて作ったら想像以上に出来上がったと小児科中が大騒ぎなのです。
 本来ならナース達だけで止まっている情報が、興奮の余り大きな声で言ってしまったらしくて患者様にも知れ渡ってしまいましてね。
 それで、励まして欲しいとかゆっくり見たいとの声が続出した次第です。
 ゆっくり見るのは――香川教授に調整をお願いして頂く方向でお願いしても宜しいですか?病院一多忙な先生であることは重々承知の上です」
 横に佇んでいた最愛の人は「仕方がない」といった感じで笑って頷いている。上司でもある最愛の人なので、その辺りの調整はしてくれるのだろう。
「励ましですか?しかし、このキャラクターのセリフは二つしか言えませんよ。どちらも励ましにはならなさそうですけれど……」
 協力したい気持ちはあるものの、最愛の人とか浜田教授と異なってアニメを全部見ているわけではない。浜田教授が覚えろと言ったセリフと「無量空処」の指の組み方とかのジェスチャーはそれらしく出来るようになったし「大丈夫、僕最強だから」も似せて言えるだけで他はサッパリ分からない。
 元々が模倣もほうなので、オリジナルがなければ何も出来ないのが正直なところだった。
「その点は大丈夫です」
 聞き慣れた声がして、内田教授が最愛の人にお辞儀をしつつ話に割って入ってきた。メイク(?)などの時には居なかった内田教授だが、多分医局の仕事を終わらせて祐樹が最愛の人と抜け出した後に小児科へと来たのだろう。
「病院中に田中先生の再現度の見事さは伝わっていますね。見物に行きたいという病院関係者や患者さんの数は爆上がりしています。
 元々、田中先生にはファンも多いので、そちらは絶対に見に来ると皮算用をしていたのですが、田中先生を知らない患者さんも他科には多数いらっしゃいます。そういう人まで見学料を支払ってまで見に行きたいと。想定していた人数の倍の声を頂きました。そう言って来る人は今後も増えると思いますので、事故が起こらないように考えるのが浜田教授と私の役割なので、その点はお任せ下さい。
 確かにこれは一見の価値のある仕上がりですよね……。
 で、セリフの件ですが」
 内田教授は祐樹の全身を品定めするように、そして満足した眼差しで眺めた後にスマホを取り出してラインのアプリを開いている。
 何故ライン?と思って見ていると、内科医らしいゆっくりとした指の動きでラインのスタンプをタップして祐樹扮するキャラクターを出していた。画面には右親指を立てた姿が描かれていて、さらにタップすると「任せなさい!」と俳優だか声優さんだかの声が聞こえてきた。
「こんな感じでお願いします。
 いやあ、ウチの子に送る時用に有料のラインスタンプを購入していたのが、こんな重要な場面で使えるのは嬉しいです。
 参加料・見物料の収入も大切ですが、それは本番まで取っておくことにして、最も重要なのは小児科の患者さんへの励ましとか気晴らしです。
 予想以上のクオリティーに仕上がったじゅれいの皆さん達は基本的に言葉を発せずに練り歩くだけにする積りでして……。田中先生から励ましの言葉として『先生に任せなさい』と先ほどのラインスランプの音声にプラスして言って貰えればと思っています」
 内田教授の立て板に水といった説明に浜田教授と最愛の人は頷いている。
 他の参加者達は――中には香川外科所属の柏木先生がエリートビジネスマンといった感じのコスプレをしているが、ネクタイの柄がイマイチだ。しかし祐樹の記憶にもあの「どこに売っているんだ」的なネクタイを締めていたので忠実に再現しただけだろう――教授職三人と主役の祐樹、いや多分教授職の威光のせいだろう。遠巻きにして見ていたりスマホをかざして写真を撮っていたりはしていたが、近寄っては来ない。
「分かりました。『先生に任せなさい!』と言えば良いのですよね?」
 「先生に」というフレーズが挟まっただけで後はこのラインスタンプ通りに話せば良いだけなのでその程度のアドリブなら出来る気がする。
「内田教授と浜田教授、どちらの発案かは存じませんが良く考えましたね。私は思いつきもしなかったです。田中先生が演じるキャラクターも呪術高専の先生ですし、小児科の医師もまた先生と呼ばれているので掛詞かけことば的に二重の意味を込めた言葉なのですね……」
 最愛の人が感心したように涼やかな目をみはって唇に――先ほどのキスの痕跡は跡形もない――笑みを浮かべている。
常々、患者様がどうしたら前向きに病気へと向かい合って下さるのかを考えていらっしゃる浜田教授の発案ですよ。偶々たまたま音声付きのラインスタンプを私が購入して持っていただけで……」
 内田教授が謙遜したような笑みを浮かべている。祐樹も最愛の人もラインは使っているけれども、ラインスタンプは無料のモノしか使っていない。そんなことにお金を遣うのは勿体ないと考えていたせいもあったし、無料ので充分意思疎通は出来たので。
 ただ、内田教授の場合、お子さんに喜んで貰おうと購入したのだろう、具体的な金額は分からないが。
「『先生に任せなさい』で良いのでしょうか?」
 普段の祐樹はこんなふうに軽い口調かつ底抜けの明るさでは話さないが、精いっぱい似せて発音した。



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気分は下剋上 ハロウィン企画 29

 愕然(がくぜん)としながらも、最愛の人の唇が祐樹のキスでついた透明のグロスとか言うモノで艶っぽい煌めきを放っている様子に見入ってしまったが。

 祐樹と同様に唇に男性用リップなどを塗らない人なのでその様子は瑞々しい新鮮さも放っている。

「キスした時に、私が付けていたグロスなるモノが貴方の唇に移ってしまったようです。

 綺麗は綺麗なのですが、これでは何をしていたのか丸わかりですよね……」

 思わず天を仰いだ後に悄然(しょうぜん)と肩を落としてしまう。

「あ……これか……?祐樹とのキスで唇が潤ったのかと思っていたのだが、そうではなくて、祐樹の唇の残り香的なモノだったのだな……。しかし、グロスなのだろう?

 だったら……」

 ポケットからテッシュとハンカチを出している。

 ポケットティッシュで唇を細く器用な指先が唇全体をトントンと叩いて油分らしきモノを落としてからハンカチで軽く(こす)っている。そういえば「グロス」には油という意味も有ったなとその仕草を眺めながら思い出した。

 化粧品には当然疎いが、マスカラ――今も瞬きすると視界に入って何だか違和感だ――とかのように原料不明の名称も有るが、リップ・グロスとやらはそのままの意味で助かった。

 そして最愛の人の適切な対処法にも。化粧品には祐樹同様に詳しくないが「グロス」と聞いて油と即座に対処法を思い付いたのは天麩羅(テンプラ)などを家で揚げているからに違いない。一瞬愕然(がくぜん)としたが最愛の人の見事な対処で何とかなりそうだ。あの状態のまま小児科病棟に戻れば、何をしていたか一目瞭然だったわけで、本当に安堵した。

「有難うございます。これでキスを交わしたこともなかったことになりますね……。個人的にはキスの証拠を隠蔽(いんぺい)してしまうのは残念ですけれど……。流石に病院内で貴方とキスを交わしていたことを喧伝(けんでん)する気は全くないので」

「いや、このくらいはどういうことでもないから気にしなくても大丈夫だ……。

祐樹の唇に塗った分も当然目減りしているが、そちらも目敏(めざと)いナース達に気付かれる(おそれ)はあるな……」

怜悧な声が考えに沈んでいる様子だった。

「それは大丈夫だと思います。煙草を吸って来ると言って抜け出したので、紙製の煙草の巻紙(まきがみ)部分に吸着したことにしたら大丈夫です」

 祐樹も最愛の人の天麩羅作りを手伝ったことがある。その時キッチンペーパーだったか、とにかく紙の上に天麩羅を置くと油分がみるみるうちに吸い込まれていったのは見ていたので同じようなモノだろうなと。

「ああ、そういう口実で抜け出したのだったな……。それで大丈夫だろう……。相変わらず祐樹は口実作りの名人だな……」

 (かん)()といったように笑みの花を咲かしている何も付けていない薄い唇がとても綺麗だった。この人に余計な化粧など全く必要ない。「口実作り」というネガティブな言葉も最愛の人の唇から零れると何だか良いモノに思えてくる。

「では戻りましょうか?」

 人の出入りが少ない旧館は当然手入れも行き届いていない。特に二言目(ふたことめ)には経費削減と鸚鵡(おうむ)のように言っているとウワサの事務局長が着任してからは人目(ひとめ)につく新館はともかく旧館は徹底的に無視されているといった感じだ。ただ、紅葉した落ち葉がひらひらと舞って落ちていく中を二人してゆっくりと歩むのは――祐樹の恰好はこの際考えないことにする――中々の風情だった。何だか病院内で散策しているのではなくてどこか別の場所で二人して歩いているような静謐(せいひつ)で親密な空気が流れている。落ち葉のカサカサという音とか最愛の人の白衣の肩に宿った黄色い銀杏(いちょう)の葉っぱを手で取って最愛の人に渡すと、彼は嬉しそうに受け取って極上の笑みを浮かべながら茎の部分を持ってクルクルと回している。

「デートではないが……。これも祐樹の呉れたモノなので宝物にする。祐樹の仮装記念日といったところか……」

 小児科病棟のエントランスホールに一歩入って心の底から驚いた。

 タコみたいなモノとか、祐樹が唯一見た火山みたいな頭の(じゅ)(れい)とか言うモノとかゴツゴツした樹みたいなモノが――ちなみに目の部分からは何故か枝みたいな物が生えている――何故か左肩から腕にかけて布を巻いている。

 高校の時の古文の授業だかで読んだ覚えのある平安時代の百鬼(ひゃっき)夜行(やこう)は何と言うか、色が付いていなかったし、(もの)()とか異形のモノの描写がもっと大人しかったような気がする。

 これが現代の百鬼夜行なのかと感心した。

「なかなかの再現力でしょう?これも柏木先生が特殊メイクのプロを呼んで下さったお蔭です」

 浜田教授が満面の笑みを浮かべて近寄ってきた。

「正直ここまで正確に再現出来るとは思っていませんでした。

 しかし、この(じゅ)(れい)達を見て、子供が泣いたり怖がったりしませんか?」

 最愛の人が細い眉を僅かに寄せて懸念しているみたいだった。

「怖がりそうな患者様のリストは作成してあるので、その病室に(じゅ)(れい)は行かせずに、田中先生のような人間のコスプレをした人だけ行かせます。

 田中先生には追加オーダーをしても構わないですか?」

 ここまで熱心かつ完璧に再現されている催し物は正直小児科のハロウィンイベントという細やかな催し物の枠を超えているような気がしたが、浜田教授や内田教授の――今は姿が見えないようだが――熱意には応えたい。

「追加オーダーですか?良いですよ。何でもします。ただ、宙を浮いたりとか『無量空処』の発動をしたりは出来ませんが……」

 割と本気で言ったのだけれども、浜田教授は心の底から可笑しそうに笑っている。



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気分は下剋上 ハロウィン企画 28

「祐樹の演技も完璧だろう……?何でも、人気の漫画とかアニメは舞台化されるらしい。その時に出演しても良いレベルだ……」

 最愛の人が感嘆めいた声で告げてくれた。

確かに顔立ちは若干異なるものの、彼が――アニメのキャラクターにこういう言い方はおかしいのかも知れないが――持つ強者感とか若干人を馬鹿にした笑みなどは祐樹とは思えないほどの完成度だった。自画自賛かも知れないが。

プロの俳優だか声優だか正式な名称は知らないが出来るだけ似せたとはいえ、プロの力量とか日頃の努力(?)とか練習とかで鍛えていると勝手に予測しているキャリアの違いで、それほど似ていないというか凄みが浅いというか……。ただ「素人なりに頑張りました」的なレベルは超えているような気がする。

 それに技を発動させる呪文めいたものと共に独特の形に指を動かす動作もそれなりに洗練されているのは、祐樹の努力の賜物(たまもの)か最愛の人に組んで見せてもらっていた経験が活きていたかのどちらか、もしくは両方だろう。

「有難うございます。これも貴方がこの上もなく優雅なお手本を見せて下さったからですよ……。しかし、人気のアニメとかが舞台化するというのは初耳です。貴方はどうしてその情報を?

 これなら皆の前で披露しても恥をかくことはないでしょう。一安心です。

 私一人の恥ならば別に構わないと思うのですが、香川外科の代表ですからみっともないところは見せられません、絶対に」

 病院内のイベントとはいえ、最愛の人の医局の看板に傷を付けたくない。香川外科はあらゆる意味で「完璧」だと病院内に誇示しなければならない。

 プライベートでは恋人であっても、公的には香川教授とその医局員だ。

 最愛の人の秀逸過ぎる手技は国内外から患者さんが押し寄せてくるレベルだし、医局内の団結力の病院随一と言ってくれる医師は多い。そういう金看板とか評判に一ミリでも傷をつけたくない。「香川教授の懐刀」として病院内でも認知されている祐樹が、たとえ遊び半分のハロウィンイベントであったとしても完璧に演じたい。

 また、今回のことでアニメは観たらしい最愛の人は普段からそういう情報に触れているとは考えられなかったので。これを言ったのが他の人だったら、スルーしただろうが祐樹的には最愛の人のことならどんな細かいことでも知っておきたかった。

「アニメの動画を検索した時に『お勧めの関連動画』というのが表示されて、そこには舞台版も有った。このアニメだけが特別なのかなと疑問を持って私でも知っている映画の歴代興行収入トップの作品紹介のページに跳んだらそちらでも舞台の紹介もあったので、人気作品はそういうものなのかと思った……」

 忙しい最愛の人が――時間が取れるのは事務作業なども手際が良いためで、並みの人間ならば、二倍三倍の時間が掛かる仕事量だ――そこまで気にしてチェックしてくれたのかと思うと単純に嬉しい。

 他に気になるところはないかと頭の中をスキャンした。他の参加者はその他大勢の役らしいし、祐樹が聞いた範囲だと(じゅ)(れい)とかいう異形(いぎょう)の化け物に扮するようだったので誰が演じているかは分からないハズ……。そういえば柏木先生がサングラス的なモノを掛けたエリートサラリーマンっぽいキャラクターを希望していたなと思い出してしまった。

 柏木先生の演技力は知らないが、彼の場合アルコールさえ入っていなければ何でもソツなくこなす人なのでそう心配は要らないだろうが、多分。

「あのう浜田教授は懐の深い人物なのは分かりましたが……。イベント参加者にお酒なんて吞まさないですよね?」

 念のために聞いてみた。祐樹の知っている地元の秋祭りでは朝っぱらから神輿(みこし)を担ぐ人たちは皆ベロンベロンに酔っていた記憶が有ったので。

 最愛の人はやや薄くて形の良い唇に可笑しそうな笑みを浮かべてから、おもむろに口を開いた。

「大半の参加者は――コスプレイヤーとか言ったような気がするが――医師優先にしたそうだ。ただ、素顔とかがキャラクターと似ている人だと技師とかナースも参加料を支払って貰っていることだし、主要なキャラクターに扮してもらうと浜田教授が言っていたな。

 ウチの病院の医療従事者が、いかにイベント参加中とはいえ勤務時間中にアルコールを飲むようなことはしないだろう。それに小児科病棟を回るのだろう?無菌室の患者さんとは接触しないにしても通常のベッドで療養中の子供達に酒の匂いのする息を吐きかけるような人間は居ないと思う。万が一そんな不心得者が居たら、見つけ次第教授権限で出演者から外すので――」

 祐樹の杞憂だったらしいが、看過出来ない発言があった。

「貴方(みずか)らが外すのではなくて、主催者である浜田教授に報告してください。そして浜田教授の口から注意の上出演者から外すということに。多大な協力者として貴方と内田教授が認知されているのは存じていますが、あくまでも小児科主催のイベントです。

 貴方の口から注意するのは(すじ)が違うような気が致します。ただ、浜田教授はああいうお人ですから気になさらないかも知れませんが……、注意された人間が快く思わない可能性とか更に申し上げれば逆恨みのような感情を抱いてしまうと次期病院長選挙にも響きかねないので……」

 真顔で告げると、最愛の人も徐々に真剣な表情に変わっていく。

「そうだな……祐樹の言う通りだ。以後は僭越(せんえつ)な言動には注意するが、祐樹も今のようにアドバイスしてくれればとても嬉しい。私には気付かない点や至らない点が多々あると思うので、祐樹の病院での経験に裏打ちされた確かな判断力『も』私には必要不可欠なので……」

 了解の証しに最愛の人に唇を交わした。その時にも違和感を抱いてしまっていて。

 唇を離してから後悔した。というか祐樹の浅慮に愕然(がくぜん)としてしまった。先ほどまで最愛の人に色々とアドバイスをしていた祐樹がこんなことにも気づかなかったのかと。





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気分は下剋上 ハロウィン企画 27

 明らかに文字を入力している動かし方だったので。画像撮影とか録画は別に全く構わないけれども、誰に何を送るのかは知りたい。

 速足で最愛の人の近くにまで行った。

「祐樹、もっと大きく足を上げて空中を駆ける感じを出せばもっと良くなると思う」

 最愛の人の演技指導の駄目出しはそれなりに嬉しかった。集中力を何分割も出来るのが外科医の適性で、最愛の人も当然持ち合わせている。

元々小児科のイベントには協力する積りだったが、浜田教授の為人(ひととなり)を知るにつけて更にその気持ちが大きくなった。参加料金とか見物料が小児科に入る仕組みを内田・浜田両教授が構築しているのならその収益が更に増えるように頑張りたいと思う。

小児科のために、ひいては来たるべき次期病院長選挙のために。最愛の人が医師視点での病院改革を目指してくれている。

 今は事務局長が、(もう)けありきの病院改革に乗り出しているが、そのしわ寄せが医師や看護師に伸し掛かって来ているのも実感している。医師やナースが疲弊(ひへい)すると提供する医療の質が落ちるのはある意味当然だろう。

 結果として患者さんに対する対応が疎かになったり有ってはならない医療ミスが起こったりする。

「あの、その画像などを誰に送るのですか?」

 呉先生だった場合――あの先生がアニメやマンガを観たり読んだりしているという話は聞いたことがないが――最悪、森技官と二人して笑われるだけだ。

祐樹的には森技官が「似合いますね」と返信してきた場合でも、入力する時は皮肉っぽい笑みを酷薄そうな唇に浮かべているだろうなと何の根拠もなく思ってしまう。まるっきり祐樹の独断と偏見だったが。

「誰って、祐樹のお母様だが……?」

 嫌な予感が的中した。

「あのう、まだ送信していませんよね?」

 説明が適切にされているのであれば、何も問題はない。ただ画像だけ送って「祐樹の仮装です」程度だと、母は絶対に怒るだろう。「何をチャラチャラ遊んでいるの!?」とか言って。白い髪に青い目だけでも日本式を重んじる母には激怒モノなのに、身体をだらりと伸ばした姿は母にとって「どうして(ひと)(さま)の前でそんなだらしない姿勢(しせい)なの!!??」と超激怒レベルだと思う。祐樹最愛の人は血に繋がった実の息子の祐樹よりも母に可愛がられているので、厳しい面は知らないのだろう。この人は善意で画像を送信しようとしてくれている。しかし、その善意が額面(がくめん)通り受け取られないだろうし、非難の矛先は必ず祐樹に向かうのも分かっていたので。

「え?いや、まだ送っていない。祐樹が『どこに送るのか』と聞いた時に丁度(ちょうど)送ろうとしていたが」 

 ということは間一髪で間に合ったらしい。

「差し支えなければ……ですけれど、貴方のラインを見せて頂けませんか?」

 救急救命室で暇つぶしに見るYuTubeの広告部分では。夫のラインを「盗み見て」浮気が発覚するというお約束の展開がある。「あんなブ〇な年増(としま)、もう女と言えないよw」とかを見て一念発起してサプリを飲んだら30キロも痩せて昔のスタイルと何故か美貌まで取り戻すといった内容だ。そんな便利な代物(シロモノ)が有ったら誰もダイエットなどはせずにCMではなく口コミでそのサプリを買って会社は大儲け出来るハズだ。

それはともかく最愛の人とは一生涯に亘って一緒に過ごそうと誓い合った仲だ。ただ、お互いのスマホは――別に見せても構わない内容しか入っていないが――断ってから見るという不文律めいたものがある。

「ああ、これだが……」

 白く長い指が何の躊躇(ちゅうちょ)もなく差し出された。

『祐樹のこの姿カッコいいと思いませんか?私は()れ直しました』という文面に画像フォルダ(?)の選択画面に緑色もチェックが入っている。

 階段に足を投げ出してだらしなく座った祐樹が青い目をこちらに向けている画像で、化粧室いや控室の鏡で見た時よりも写りが良いのは撮影者のせいかも知れない。

 客観的に眺めると確かにキャラクターに似ているような気がする。目や髪のせいかも知れないし、キャラクターに寄せて普段以上に口角を不敵に上げているからかも知れない。……ちなみに、唇にはリップクリームよりも艶感が出るとのことで「グロス」なるモノを塗られている。

「その文面で送ったらダメです!貴方が『カッコいい』と評して下さったのは素直に嬉しいですけれど、そして更に『惚れ直しました』も更に……。

 しかし『これは病院のイベントで渋々(しぶしぶ)アニメのキャラクターを演じた姿です。お母さまも機会が有ったらご覧ください、アニメ』とかそういう状況説明を入れてください。

 ああ見えて、礼儀作法に(うるさ)い人なのでいくら貴方の前だからと言ってこの寛ぎ切った体勢を見たら絶対に文句を言われます、私にガミガミと」

 緑のチェックを入れたところで気付いて良かったと心の底から思った。

「祐樹が言うのだからそうなのだろう……。ではこの文面はどうだろうか?」

 スマホの入力画面に優雅に指を滑らしながら祐樹を見上げている。

「それなら大丈夫ですね。『ハロウィンのチャリティイベントの一環で、小児科に入院中の患者さんそのご家族のために頑張ってキャラクターに似せました。ちなみに祐樹の大切な目の周りを担当したのは私です。他の人間には絶対に任せられなかったので』と入力して下されば完璧です」

 器用な人は何をしても器用なのだなと感心しながら文字を入力していく白く長い指に見惚れた。

「これを送っても大丈夫か?」

 旧館は明かりも少ないのでスマホの明るさが最愛の人の穏やかで嬉しそうな表情を映し出している。

「大丈夫です。貴方が最初送ろうとした文面だと、貴方宛てには『有難う、画像を送ってくれて』とかの返信しか来ないと思いますが、私には激怒の電話を掛けてくると思われますので……。まあ、こんなふざけた格好もハロウィンならではの仮装ですし……。二人のデートの時の画像とかは私の許可を得ないで大丈夫ですから、ね」

 律儀で真面目な最愛の人は祐樹の母にラインを送る時に一々聞いてくる可能性は高かった。

 動画、先に再生してみませんか?客観的というかカメラが捉えた私の演技もどきがどう見えるのかを知りたいので」




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読者様すみません。ハロウィンていつだっけ?状態になっています……。どうしてこう長くなるのかと思います。もう少しで終わりますので宜しければお付き合いください。
       こうやま みか

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