「まあ、大事に至らなくて本当に良かったですけれど、今後は火遊びをなるべくなら止めるとか、後腐れのない厳選した相手とだけにするとかの改善をお願いします。呉先生まで巻き込んだ騒動になるようなことになったら――多分ですけれど、火遊びが露見してしまったら私の恋人に相談が有ると思いますので――今回の件も合わせて報告させて頂きます。
それだけは先に言って置きますね」
森技官に説教が出来る日が来るとは思ってもいなかったが、まあ終わり良ければ全て良しとしよう。
取り敢えず電話もチャイムも切ったし、食べ〇グの運営の方に「悪質なイタズラ」として報告しておけば大丈夫だろう。
「はい、肝に銘じます……本当にすみませんでした」
深々と頭を下げられるとそれ以上言及するのは大人げないなと。
「さて、それぞれの恋人の待つ部屋に戻りましょうか?
今回の騒動の顛末も、疑問点は全て解決しましたから一件落着ということで」
氷が解けてすっかり薄くなったアイスティを飲み干して立ち上がった。
「そうですね。本当に有難うございました。
これに懲りて身を慎むことにします。
精神科専攻だったのが却ってアダになったようです」
再び深々と頭を下げられて、森技官に一つ貸しが出来たようで嬉しかった。
話は終わったので応接室に戻ろうとしたら、森技官が意外な行動に出たので驚いてしまったが。
同じようにアイスティを飲み干した森技官は二人分のグラスを持ってキッチンと思しき方向に消えて行った。
森技官は縦のモノを横にはしないタイプだと思っていたし、盆栽とかそういう趣味の世界ではマメなのかもしれないが、お茶汲みとかそういう家事に類することは全くしなさそうなイメージだった。
祐樹がそうだったように、呉先生との生活で家事を手伝うようになったのだろうか?
厚労省とか派遣先の病院ではそんな気配りはしなさそうではあるし、一応これでも出世頭なので回りが気を遣いそうな感じがする。
祐樹の場合は医局で看護師などの手を煩わすのはタブーなのでセルフサービスが原則だったが。
最愛の人のように秘書が付いているわけでもなかったし。
と言っても根っからの庶民育ちの祐樹は――最愛の人も育ちは庶民だけれども、アメリカで世界的な知名度を得たならそういう好待遇も当たり前だと思うし彼は教授職を特別なモノとは思ってもいないようだし、秘書も病院長に「付いているのが当たり前。で、どんな妙齢の美女が良いかね?」的なことを聞かれたらしいが、実務能力だけを鑑みて停年間近の女性を選んだという彼らしい素っ気なさだった――人に指図してどうこうしてもらうよりも、自分で動いた方が遥かに面倒もないことも知っているので現状で満足している。
しかし森技官の場合はお坊ちゃま育ちだし――詳しくは知らないが――専業主婦のお母様以外にも家政婦さんとかが居ても全く驚かないハイソサエティな生まれ育ちなので、そういう雑務をするのが意外だった。
リビングの向こうからは食器を手で洗う音まで聞こえて来たので尚更のこと。
最愛の人のマンションには食洗器が備え付けてあって――何事も一桁違うのではないのか?と思いたくなってしまう長岡先生が帰国準備で多忙を極めていた彼に代わってあの部屋に決めたと聞いている。
部屋に予め付いていたものか、それとも長岡先生が全権代理を任されていたので購入したのかという点は聞きそびれている。多忙な朝などは最愛の人にお祐樹にとって食洗器は必要不可欠な機械だが、その出どころには興味がない。
そしてマンションにはハウスキーパーが入っているけれども、二人が仕事に行っている間に掃除や洗濯などを済ませてくれるので長い間あのマンションに住んでいながら顔を合したこともない。
そういう機械のように――と言ってはキーパーさんに失礼だろうが――するべきことをきっちりとしてくれて、しかも舞台の上の黒子よりも目立たない存在なら充分に許容範囲だが、対面ともなるとそうはいかないだろうし。
それに森技官が食洗器も使わずに手でコップなどを洗っている図というのは意外過ぎて笑ってしまう。
洗い物などは全くしないイメージだったので。
まあ、呉先生は外見のスミレの花の可憐さとは裏腹にケンカも必要に応じてはするような性格だし特に恋人の森技官に対しては心の底から激怒している迫力は相当のモノだった。
まあ、滅多に怒らないとは思うものの、その破壊力は――そして今回の火遊びが露見したら森技官のメンタルまでやられそうな勢いだろう――凄まじいだろう。
まあ、一度きりの過ちを――と言っても森技官の口ぶりでは何度も火遊びとやらをしてそうな感じだったが――呉先生に知らせても良いことはないだろうし、しかも連日連夜、四六時中デリヘ〇の電話とか食べ〇グで見たとかいうお客さんがこの薔薇屋敷を「民家を改造したバー」という認識で開けて欲しいと怒鳴ったり玄関のチャイムを鳴らしまくったり挙句の果ては門を思いっきり蹴られたりしたらおちおち眠れないのは火を見るより明らかで、睡眠不足とか――そして愛の行為が出来ない状態で欲求不満でイラついているのも分かる。
欲求不満と言えば、何故寝室に大人の「おもちゃ」がこれ見よがしに置いてあったのかは依然としてナゾだった。
始発の時間まで開店しているバーという食べ〇グの情報を鵜呑みにした泥酔客が押し寄せて来るならば尚更のこと愛の交歓は出来ないわけで、欲求不満になりがちだ。
だったら「ハマってしまった」という呉先生がそういう「おもちゃ」に頼らないのだろうか?
まあ「人のセック〇は笑ってはいけない。何故なら貴方も同じようなことをしているから」とか書いてあるものを読んだ覚えが有るので、これ以上の詮索は止めよう。
ただ、森技官は二つのグラス以外にも洗い物を続行している食器の重なる音が響いてきた。
自分の使った食器だけでなくて、多分シンクに置きっぱなしにされてあった食器をまとめて洗う積りなのだろう。こんなにマメだとは思っていなかったし、思いっきり意外過ぎて何だか仰天した魂が大気圏外に飛んで行きそうな気がした。
いつも座り心地の良いソファーにふんぞり返っているイメージしかなかったので意外過ぎて驚愕というか、大袈裟に表現するならばムンクの叫び状態のような心境だった。
リビングで待っていても仕方ないので応接室へと戻った。
すると、最愛の人が助けを求めるような眼差しを浮かべている。
一体呉先生は何を言ったのだろうか?
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最後まで読んで頂きまして誠に有難うございます!
今回4話も更新した理由は二点有りまして。
昼間は銀行に行ったついでにネカフェで原稿書くとかしていまして。そして本日、いやもう昨日ですね。
下書き保存した積りが、公開設定にミスっていました。慌てて下書きにし直ししましたが。だからブログ村とかで新着に載ったのに「記事がありません」のエラーでパニくらせてしまったお詫びが一点目。
そして、親戚からの毎日の電話攻撃で参ってしまって……それを一時でも紛らわせたいなと。
小説書けないメンタルの時も有りますが、今日はそうでもなかったので一種の現実逃避です。
今夜更新分からは三話を目指します!
こうやま みか拝







それだけは先に言って置きますね」
森技官に説教が出来る日が来るとは思ってもいなかったが、まあ終わり良ければ全て良しとしよう。
取り敢えず電話もチャイムも切ったし、食べ〇グの運営の方に「悪質なイタズラ」として報告しておけば大丈夫だろう。
「はい、肝に銘じます……本当にすみませんでした」
深々と頭を下げられるとそれ以上言及するのは大人げないなと。
「さて、それぞれの恋人の待つ部屋に戻りましょうか?
今回の騒動の顛末も、疑問点は全て解決しましたから一件落着ということで」
氷が解けてすっかり薄くなったアイスティを飲み干して立ち上がった。
「そうですね。本当に有難うございました。
これに懲りて身を慎むことにします。
精神科専攻だったのが却ってアダになったようです」
再び深々と頭を下げられて、森技官に一つ貸しが出来たようで嬉しかった。
話は終わったので応接室に戻ろうとしたら、森技官が意外な行動に出たので驚いてしまったが。
同じようにアイスティを飲み干した森技官は二人分のグラスを持ってキッチンと思しき方向に消えて行った。
森技官は縦のモノを横にはしないタイプだと思っていたし、盆栽とかそういう趣味の世界ではマメなのかもしれないが、お茶汲みとかそういう家事に類することは全くしなさそうなイメージだった。
祐樹がそうだったように、呉先生との生活で家事を手伝うようになったのだろうか?
厚労省とか派遣先の病院ではそんな気配りはしなさそうではあるし、一応これでも出世頭なので回りが気を遣いそうな感じがする。
祐樹の場合は医局で看護師などの手を煩わすのはタブーなのでセルフサービスが原則だったが。
最愛の人のように秘書が付いているわけでもなかったし。
と言っても根っからの庶民育ちの祐樹は――最愛の人も育ちは庶民だけれども、アメリカで世界的な知名度を得たならそういう好待遇も当たり前だと思うし彼は教授職を特別なモノとは思ってもいないようだし、秘書も病院長に「付いているのが当たり前。で、どんな妙齢の美女が良いかね?」的なことを聞かれたらしいが、実務能力だけを鑑みて停年間近の女性を選んだという彼らしい素っ気なさだった――人に指図してどうこうしてもらうよりも、自分で動いた方が遥かに面倒もないことも知っているので現状で満足している。
しかし森技官の場合はお坊ちゃま育ちだし――詳しくは知らないが――専業主婦のお母様以外にも家政婦さんとかが居ても全く驚かないハイソサエティな生まれ育ちなので、そういう雑務をするのが意外だった。
リビングの向こうからは食器を手で洗う音まで聞こえて来たので尚更のこと。
最愛の人のマンションには食洗器が備え付けてあって――何事も一桁違うのではないのか?と思いたくなってしまう長岡先生が帰国準備で多忙を極めていた彼に代わってあの部屋に決めたと聞いている。
部屋に予め付いていたものか、それとも長岡先生が全権代理を任されていたので購入したのかという点は聞きそびれている。多忙な朝などは最愛の人にお祐樹にとって食洗器は必要不可欠な機械だが、その出どころには興味がない。
そしてマンションにはハウスキーパーが入っているけれども、二人が仕事に行っている間に掃除や洗濯などを済ませてくれるので長い間あのマンションに住んでいながら顔を合したこともない。
そういう機械のように――と言ってはキーパーさんに失礼だろうが――するべきことをきっちりとしてくれて、しかも舞台の上の黒子よりも目立たない存在なら充分に許容範囲だが、対面ともなるとそうはいかないだろうし。
それに森技官が食洗器も使わずに手でコップなどを洗っている図というのは意外過ぎて笑ってしまう。
洗い物などは全くしないイメージだったので。
まあ、呉先生は外見のスミレの花の可憐さとは裏腹にケンカも必要に応じてはするような性格だし特に恋人の森技官に対しては心の底から激怒している迫力は相当のモノだった。
まあ、滅多に怒らないとは思うものの、その破壊力は――そして今回の火遊びが露見したら森技官のメンタルまでやられそうな勢いだろう――凄まじいだろう。
まあ、一度きりの過ちを――と言っても森技官の口ぶりでは何度も火遊びとやらをしてそうな感じだったが――呉先生に知らせても良いことはないだろうし、しかも連日連夜、四六時中デリヘ〇の電話とか食べ〇グで見たとかいうお客さんがこの薔薇屋敷を「民家を改造したバー」という認識で開けて欲しいと怒鳴ったり玄関のチャイムを鳴らしまくったり挙句の果ては門を思いっきり蹴られたりしたらおちおち眠れないのは火を見るより明らかで、睡眠不足とか――そして愛の行為が出来ない状態で欲求不満でイラついているのも分かる。
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だったら「ハマってしまった」という呉先生がそういう「おもちゃ」に頼らないのだろうか?
まあ「人のセック〇は笑ってはいけない。何故なら貴方も同じようなことをしているから」とか書いてあるものを読んだ覚えが有るので、これ以上の詮索は止めよう。
ただ、森技官は二つのグラス以外にも洗い物を続行している食器の重なる音が響いてきた。
自分の使った食器だけでなくて、多分シンクに置きっぱなしにされてあった食器をまとめて洗う積りなのだろう。こんなにマメだとは思っていなかったし、思いっきり意外過ぎて何だか仰天した魂が大気圏外に飛んで行きそうな気がした。
いつも座り心地の良いソファーにふんぞり返っているイメージしかなかったので意外過ぎて驚愕というか、大袈裟に表現するならばムンクの叫び状態のような心境だった。
リビングで待っていても仕方ないので応接室へと戻った。
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今回4話も更新した理由は二点有りまして。
昼間は銀行に行ったついでにネカフェで原稿書くとかしていまして。そして本日、いやもう昨日ですね。
下書き保存した積りが、公開設定にミスっていました。慌てて下書きにし直ししましたが。だからブログ村とかで新着に載ったのに「記事がありません」のエラーでパニくらせてしまったお詫びが一点目。
そして、親戚からの毎日の電話攻撃で参ってしまって……それを一時でも紛らわせたいなと。
小説書けないメンタルの時も有りますが、今日はそうでもなかったので一種の現実逃避です。
今夜更新分からは三話を目指します!
こうやま みか拝






