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「夜桜の君……。三度の逢瀬の夜を共に過ごしたが……。
 今を盛りに咲く桜の如く……睦み合う将にその場所が……見事に咲いた……。
 初めての夜には……これほど早く……咲き誇るとは……思いも寄らなかったので……とても嬉しく、そして愛おしく想う……」
 頼長様の熱く荒い息の合間に切々とした言の葉が私の心だけでなく、露わになった素肌にも沁み込んでいくかのようでした。ただ、得心の行く御言葉ばかりではありませんでしたが。
「私も……お慕い致しております。ただ……それは……どういう意味ですか……」
 上り詰めた挙句の果てに白い珠を露よりも繁く迸らせた気怠い身体を持て余していました。そして未だ私の身体の中心を貫いている熱い楔、そしてその奥に注がれた熱い飛沫が身の内側まで頼長様の色に染められていく悦びを感じつつ頭の中までが桃源郷に浮いているような心持ちがして普段とは異なって頭の中も千々に乱れているようでした。
「気付かぬか……。今宵の――少なくとも『所現し』の宴までの、同じ褥の上で……、夜桜の君を……私の愛しい想い人に……変貌させたかった。
 その願いがこのように早く……叶ったのだから、嬉しくて、な……」
 何を気付くのか、桜色に霞んだ頭では答えが出ませんでした。
 「愛しい想い人」と呼ばれたことは、そしてその言の葉に万感の想いを込めて下さっているような風情なのも濃い紅色の雲に乗ったように嬉しく想いましたが。
「夜桜の君は……今まで……色欲が高まった時、どのように慰めていたのか……」
 面白がっていらっしゃる感じでもなく、ただ疑問に思ったことを口にしただけといった感じの御声が夜の闇に溶けていくようでした。
 左大臣の私邸に相応しい大きさの寝殿に――我が邸の倍はあるでしょう――侍る女房殿もおらずに頼長様と二人きりというのは却って小さな声で語り合うのが似合っているような気が致しました。今めかしい雅やかさと匠の心を尽くした昔ながらの豪奢さの巧みな調和が頼長様らしさに満ち溢れていて、邸全体と、そして頼長様の乱れた直衣姿の両方に包み込まれた感じでしたので。
「勝手に動いてしまう……手で擦り上げたり……何かに押し付けたりしておりましたが……」
 頼長様の御笑いになる声が口だけでなく繋がったままの身体の内部からも響いて――その余りの心地よさに身動ぎしてしまって床に擦った胸の芯が熱く甘く熱を孕んで疼きました。
「どの部分を擦ったり押し付けたりしたのか……。白い飛沫を先端から出す場所であろう……」
 首筋を唇が愛おしそうに辿って行きました。その心地よさを知ったのはつい昨夜のこととは思えぬほど濃厚な夜を重ねて来たような心地が致します。
「はい。左様でございます……が……。え……」
 正しき答えが見つかったような気がしました。
「先程までの睦み合いで……、夜桜の君が自らの指で慰めるならば……もう少し時を待とうと思っていた。しかし……この細く長い指は私のを……愛おしそうに擦ったのみで……、しかも私は指一本触れておらぬ……。それなのに……下の口を愛おしんだだけで……堰を切って白い珠を思うさま飛び散らせたであろう。
 そういう身体にしたいとは思っておったが、まだ少し早いかと、開花を待ち望んでいた……それこそ、焦がれるほどに、な」
 今までは逢瀬に逸る気持ちのままに振る舞って参りましたが、仰る通りの有様でした。
「確かに……そうです……。頼長様を身体の奥まで迎え入れることとか……手で、そして首筋や胸の芯で……悦びを……激しく感じて……おりました」
 これ以上紅く染まることはないほど素肌に朱が散っていくのを早鐘を打つ心の臓で感じました。
「真の想いが通じ合った者同士というのは……そういうものだ……。それは男女問わず同じこと……。
 身体の中を貫かれる……その悦びのみを感じているという点では、な。
 私を心の底から求めてくれた証しでもあるので、とても嬉しく想う……」
 喩えようのない誇らしさと共に言い知れぬ羞恥に心と素肌が震えてしまいました。
「――夜桜の君、これだけは覚えていて欲しい。
 男の象徴でもある『此れ』は、な……」
 頼長様のお腰が私の素肌と擦れて濡れた音が、そして割り開かれた場所を小刻みに衝かれて甘い声が出てしまいました。
「ほんの挨拶代わりの交わりであっても……媚を含んだ眼差しや、直衣を掴む女房の白い手の動きで察して……誘いに応じなければならぬ。
 夜桜の君は、色香に靡かぬ『麗しい』人として、宮中の女房から密かな恨み言を囁き交わされていたことを存じてなかっただろう……」
 この場合の「麗しい」は褒め言葉では決してありません。男女の機微を分からない木石のような人間と言うほどの意味です。
 女房殿と一口に申しますが、宮中でお仕えしている方々は皆ご自分の容貌と何かしらの才に自信がある女性で、そういう方の「好き心」を満たしてこそ一人前の殿上人と――私はまだ学問を学ぶ立場でしたので位は頂いていなかったので、本人の耳に入るような非難がましさまでは至らなかったのでしょう――頼長様は仰りたいのだと思いました。
「宮中やそれに準ずる場所で目配せや扇の音、そして袖を引く女房には『挨拶』や『礼儀』としてそれに応えなければならない。そうすることによって良い噂が流れて、帝や上皇様のお耳に届くというのも事実だ。
 その為には『此処』をそそり立たせる術も当然ながら心得ておかねばならぬ。しかし、夜桜の君の場合は白珠が弾ける感触よりも先に身体を開こうとする健気さが勝っておったな……。下の口は己の意思ではどうにもならぬ……。初めての夜を想い出してみれば容易に分かることだ。
 しかも……」
 頼長様が満足そうな笑い声をお立てになる度ごとに、身体の奥まで響いて……熱く甘く奥が蕩けていきそうでした。
 「しかも」の次の御言葉を待ちながら低く高く押し寄せてくる繋がった場所から来る快楽のうねりで宙に浮きそうになる身体と心を頼長様という巌で繋ぎ止めて貰いたくて仕方がありませんでした。




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時間がない!とか言っていますが、ふとした気紛れにこのサイトさんに投稿しました!
いや、千字だったら楽かなぁ!!とか、ルビがふれる!!とかで……。
こちらのブログの方が優先なのですが、私の小説の書き方が「主人公視点」で固定されてしまっているのをどうにかしたくて……。
三人称視点に挑戦してみました!
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