一人腑に落ちた感じのコナーズ先生は話を続けている。
「その尊敬する上司がベルリンのレセプション会場でそう言ってくれたから田中先生もいつか来るべき国際公開手術のために英会話もマスターしようと考えたのかね?」
コナーズ先生は興味津々といった感じだった。
「全くその通りです。何としても尊敬する上司と外科医として肩を並べたいと熱望しましたし、発奮しました。アメリカ英語になってしまったのは香川教授がアメリカ英語の方がお得意だったからです」
外科医としても人間としても尊敬している最愛の人だ。プライベートでは申し分のない恋人だけれどもそれは秘密というか他人に言ってはならないだろう。
「なるほど……。だから田中先生の方が呉先生よりも英語が上手いというわけだな。パリ大学での英語もかなりレベルが高いようだったけれども、ネイティブとは言い難いなと内心思っていた……。ただ、日本人の発音という感じではなかったのも事実だが。
呉先生の講演は実に興味深かったし、その後の質疑応答の答えも的確で分かりやすかった。うつ病がメインだったが、他の精神疾患とか発達障害に対する発表も聞きたいと素直に思える内容だったので、是非ともオファーをしたいと思っている精神科医も多いだろう。私も個人的に聞きたいと切望している。質疑応答で8割の人間が挙手するというのも彼の発表が素晴らしかった証拠だろう」
そういえば、映画「ジュラシック・パークⅢ」」だったかで「Ⅰ」の主役の恐竜学者、いや古生物学者だったかも知れないが祐樹には専門外なので良く知らない。ただ、それが学会ではなかったと思うが一般人も入ることの出来る講演会で自分の研究を発表した後に質疑応答の時に挙手がざっと9割だったと記憶している。しかし、その博士が「ジュラシック・パークに関しては何も言えません」と言うと手を下げる人が多くて「恐竜生産した島についてもノーコメントです」と言ったら挙手し続けている人は殆どいなくなったと記憶している。最愛の人と異なって記憶容量の少ない祐樹の脳なので細部は覚えていないので細部は間違っているかも知れないが大まかなところは合っているハズだ。
一般人が入場出来る講演会と専門の医師や興味のある医師だけを対象とした学会という点は異なるのかも知れないけれども、呉先生の発表に興味を持った専門医がそれだけ多かったということだろう。
「有難うございます。病院の名誉ですのでコナーズ先生も是非要望を上げて下さいね」
本音は呉先生が精神科の医局で株を上げて相対的に真殿教授の株を下げるということだったが、そこまで白状してしまうほど祐樹も馬鹿ではない。そもそもイギリスの大学には学閥とか医局内の柵といったものは存在しないらしいので話し出すと長くなる。
「ところで、日本には裃と羽織が正装だと物の本に書いてあったのだけれどもどう使い分けするのだろうか?」
先程とは異なった意味で興味津々といった感じのコナーズ先生の質問に戸惑いつつも答えを探す。最愛の人ならば最適解を即座に言うことが出来るのだろうが、祐樹にはそこまでの知識がない。しかし、時代劇とか大河ドラマで見た記憶を遡って多分そうだろうなという答えを導き出した。
「そうですね。羽織袴が正装ですが、商人や武士など身分を問わずに着ることが出来ます。コナーズ先生のお国柄では武士は騎士といったところでしょうか?そして、武士は王様ではなくて将軍に仕えています。将軍は天皇から任命されるのが表向きで、実際は実力的に政治を司っていました。
天皇は千年前には実際に政治を行っていましたが、それ以降は飾り物という感じですね」
コナーズ先生は何だか可笑しそうな表情を浮かべながらも祐樹の解説を興味深そうに聞いている。
「将軍とか将軍から領地を貰った大名に使える武士達が将軍や大名に会う可能性がある『城』に行く時に着ていくのが裃ですね」
多分この答えで合っているだろうと思いながら何とか答えた。
「ほほう、ではお飾りとはいえ天皇、いやエンペラーやキングがお飾りというのは正直驚きなのだが。実際に権力を持っているのがエンペラーやキングだろう。
ああ、しかし、イギリスでも現在では統治していないので同じような感じなのだろうか?……それはともかくエンペラーに将軍が会いに行くという時にはどんな服装なのだろうか?」
服装は一応知っているが、それをどう説明すれば良いのだろう?衣冠束帯と言ってもコナーズ先生は知らないハズだ。
「日本のエンペラーが結婚する時の写真かテレビなどはご覧になられますか?」
コナーズ先生はすっかり冷えたコーヒーを飲んだ後に身を乗り出してきた。
「もちろん知っているとも。何だか何枚も綺麗な色が何重にもなった絹と思しき重そうな着物と袴めいた物を着たのを見た覚えがある。イギリスの戴冠式の時は馬車を使うが、天皇家のパレードは自動車だな……。そのパレードにはドレスとティアラなのであれは日本の伝統的な衣服ではないだろう?」
コナーズ先生の好奇心は留まるところを知らないといったところだ。
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