「杉田弁護士とは大まかの経緯を昨夜話しました。その上で『引き受けても良い』と言って下さっています。何でも……」
最愛の人のような卓越した記憶力を持ち合わせていない祐樹は不要と判断したら脳の中に作ったゴミ箱ファイルに即座に入れることにしている。杉田弁護士と昨夜話したことはちゃんと覚えていたが、細部はゴミ箱行きになっていて、思い出すのに数秒掛かった。
「ああ、何でも女性の方が離婚を決めてから事務所に来られるみたいですね。そういう腹の括った女性の表情は見て分かるものらしくて、旧姓で呼ぶと物凄く喜んでくれるとか言っていました。私達のように専門性に特化してはいないようですね。逆に男性は再構築を希望して結局は離婚を決断するとか聞いています」
長岡先生はホッとしたような笑みを浮かべた後に祐樹が巻いた包帯を情けない感じで見ている。包帯クリップやテープを使わずに包帯の端を切って結ぶという巻き方は彼女には不可能なのだろう。何せ、彼女は幼稚舎からある学校に通っていてエスカレーター式に医学部まで用意されているにも関わらず、家庭科の授業でごくごく普通のタイトスカートを作る積りが何だか先鋭的なスカートになってしまったとか聞いた覚えがある。そのせいで担任の先生が「成績は充分だけれども、医学部に推薦したら来年から枠がなくなる」と言われたと聞いた覚えがあった。その後、実技テストがない東京大学の医学部に入ったと聞いている。普通の医学部入試には実技がないのは当然なのだが。
「そうなのですね。それほど親身になって下さる弁護士の先生なのですか……。そう言って下さる先生は聞いたことがないですわ。知人の中で離婚に向けて色々情報収集している人が居ますのよ?田中先生、宜しければ杉田弁護士にご紹介をお願いしても宜しいでしょうか?」
昨夜も斬新なアイデアだと思ったが、交友関係がゴージャスかつ華麗な人脈を誇る長岡先生の反応も同様なのできっと皆が求めている人材なのだろう、離婚問題についても。
「それはもちろんです。ちなみに紹介がなかったらダメなモノなのですか?」
長岡先生には絶対内緒だが、そもそもの出会いがゲイバー「グレイス」の無料法律相談だったので敷居が物凄く低い感じだったのでついつい誤解してしまっていた。
「普通はそうみたいですわよ?法テラスという相談窓口は有るのですが、残念ながら所得制限で私達向きではないのです。弱者救済を謳っていますので。後で連絡先を教えて頂けますか?」
乗り気になったのか身を乗り出そうとして机に火傷をぶつけて「痛っ!」とか呟いているのが彼女らしい。
「それは全く構わないですよ。あと、密会現場に駆けつけて来る要員に柏木先生と久米先生を選びました。その時のためのLINEグループも作るのですが、招待しても良いですか?……その場に手術がなければ香川教授も駆けつけて下さる予定なのです。そして、女性が居た方が良いと思いますので、長岡先生がセクシャルハラスメントとお思いにならなければ、ですが」
長岡先生は物に動じない性格だが、部妙な問題を孕んでいるので口調と表情に気を付けた。
「それは全く構わないですわ。当事者の一人は絶対に女性ですからね……」
悪戯っぽく笑みを浮かべているのは祐樹や最愛の人の性的嗜好を知っているという含みなのだろう。彼女は病院内で真実の関係を知っている数少ない一人だ。こういう表情も何だか共犯者っぽくて、信頼の証拠のように思える。
「ではカメラと盗聴器を取り付けに参りましょうか」
火傷は30分で痛みが減退することから良い頃合いだと思ったが彼女は依然として椅子に座ったままだった。言いたいことが有るらしい表情だった。
「教授もいらっしゃるのですか!?もともと責任感の強い人だと思っていましたけれども、そこまで積極的になられたのは田中先生の存在が良い意味で影響しているのでしょうね……」
しみじみとした口調だったのは、最愛の人をアメリカ時代から知っている彼女ならではの心境なのだろう。
「実際のところ、其処は私も内心驚いたのですが、ね」
別に祐樹が勧めたわけではないので肩を竦めてしまったが。
「それで、取説は何処ですか?」
ダメ元で聞いてみたら、彼女は困惑したような表情だった。電子レンジに卵をそのまま入れる人なだけに一切そういうモノは読まないタイプだろうとは思っていたのだけれども。
「きっと何とかなりますよ。トライアンドエラーを繰り返したらきっと大丈夫ですよ」
「多分」と言いかけて止めた。こういう時は強気に言った方が良いだろう。
「そうですわね。私は生憎右手が使えないのでお役には立てないと思います」
済まなそうに頭を下げているが、もともと祐樹一人が触る積もりだった。彼女の不器用さは良く知っている。うっかり他人様に借りた高価な機械を壊してしまったら洒落にならない。
「画面は分割出来るみたいですね」
モニターと思しき物にケーブルを繋いだ。興信所が使う物なので証拠を取るために必要なのだろう、多分。
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2024年09月
「ほう、それは大変興味深い話だ。是非田中先生の見解をお聞きしたい」
その場を代表してアッシュベリー先生が傾聴といった感じを見せてくれた。森技官が血を見たり内臓を嫌ったりするのは最愛の人とのデートの時などに笑い話にしている。その原因をとことん話し合ったことはないので最愛の人も興味深そうに祐樹を見ている、華やかな笑みを浮かべて。
「精神を一点集中させて、他のことは一切シャットアウトしていたのではないかと思っています。少なくとも嗅覚は完全に遮断していたのではないでしょうか?」
「ほう」という感心めいた表情と「果たしてそんなことが可能なのか」という不審そうな表情がその場に居た医師達が浮かべている。
「私も田中先生のプライベートオピニオンに賛成です。日本には『精神一到何事か成らざらん』という故事成語が有ります。正確に言えば中国由来の物ですが。そういう境地に至っているのではないでしょうか?私を含む普通の人には不可能な『精神一到』ではありますが」
祐樹の知る限り最も集中力の高く、そして卓越した記憶力を持つ最愛の人が、ごくごく真面目かつ賞賛の眼差しで言葉を紡いでいる。とはいえ、外科医は集中力を何分割するのが習い性になっているので、彼も「精神一到」の境地に至っていないからかも知れない。大学入試などではそういうふうに勉学に励んでいただろうが。
「東洋には色々と見習うべき点が多いな。それは京都に行ってから色々と聞かせてもらうことにする」
アッシュベリー先生はリカバリー医に指名されるだけあって、錚々たる外科医の中でも別格なのだろう。
「私で良ければ喜んでお教え致しますよ」
大言壮語を言ってしまってから最愛の人に目配せを送った。知識の宮殿みたいな人なので祐樹が返答に窮した場合、さり気なくフォローして貰えるはずだ。他の医師と懐かしそうに会話していた最愛の人は即座に笑みを含んだ眼差しで「了解」と返してくれた。
「さてと。サトシがベルリンで成功した時のレセプションは外科医以外の人間も多数来ていたが、今回は外科医の山盛りといった感じだな」
アッシュベリー先生の感想を聞いて嫌な記憶が脳裏を過った。アメリカで指折りの資産家が彼を見初めて単なる狭心症に過ぎないのに大学病院に入院を希望したという苦い思い出だ。セキュリティの都合とかで病棟を全て貸し切りにするという暴挙も入るお金に目がくらんだ病院長が唯々諾々と要求を呑んだのはまだ理解出来る。しかし、手術が未だ決まっていない患者さんの転院などのため公立病院の折衝のために慣れないことをした最愛の人の苦労とか、そして何よりその資産家の秘書兼ボディガードだかの男性が「祐樹の好みではないか」と勘繰ってしまった最愛の人の「どうしたら事故に見せかけて自殺出来るか?」と延々考えていたと後で聞いた時には心が凍り付く思いだった。その当時は付き合ってはいたものの、言葉を尽くして説明するということが苦手だったので詰ることはおろか聞くことも出来なかったらしい。祐樹の好みだと思ったのはゲイバー「グレイス」で祐樹が口説いていたと誤解している人と同じタイプの人だったからだ。「グレイス」の彼の名前も顔も既に忘却の彼方だし、彼の大輪の花のような風情の人が祐樹の好みだと言ってきたというのに……。
ワイングラスを片手に静謐かつ華やかな感じで佇んでいる彼は今だったら一人で悩まずにきっと祐樹に言ってくれるハズだ。ちなみに資産家から口説かれた彼は背後に祐樹が居ることを知った上できっぱりと「好きな人がいる」と言ってくれた。
「それだけ田中先生の手技の腕前が素晴らしかったということなのでしょう。待機時間に小耳に挟んだのですが、外科医以外は別会場で歓談の場を設けるということになったらしいです」
傍らの医師との会話を終えた彼が祐樹を見ている、我がこと以上に喜んでいるような笑みを浮かべながら補足説明をしている。
「そうなのかい?だったら、今日の主役は後でそちらにも顔を出さないといけないのではないだろうか?」
アッシュベリー先生が真顔でアドバイスをしてくれた。
「いえいえ、私はそんな話は聞いていませんし、職務上大学病院に来てくださった患者さんの手術しか出来ない仕組みです。世界的な政財界の大物にお会い出来る機会が有っても、挨拶しか出来ません」
この話の輪にいるフリーランスの先生達と異なって所謂「営業活動」をする必要もない。もちろん最愛の人も同じ立場なことは言うまでもない。フリーならばそういう政財界の大物と知り合うと万が一に手術が必要となった時に指名して貰えるという意味で営業活動と言うべきだろう。それは口に出してはいけないのは分かっていたので苦笑しながら返答した。この返答で納得して欲しいなと思ってしまう。それに気分が高揚しているので自覚はないものの、きっと疲労も溜まっているだろう。このレセプションが終わったらどっと疲れが出て来るのは火を見るよりも明らかだ。
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「あ……っ、祐樹……っ!悦……っ」
奥処まで一気に貫くと白い枕を紅に染めるような声が聞こえた。繋がった場所からも湿った肌が奏で合う淫らな協奏曲が聞こえて堪らない。さらに祐樹が丹精込めた花園の中は妖しく貪婪な動きで祐樹をもっと奥まで引き寄せている。その強く弱く包み込む淫らなお誘いを遮るように一旦しどけなく開いた門まで退いた。
最愛の人の汗の雫を纏った紅の肢体は腰を高く掲げていて肩甲骨の窪みが一際、鮮やかだ。それに祐樹の指に二つの胸の尖りを押し付けては回すという上半身の動きも我を忘れて快楽の深淵を貪っているようなひたむきな淫らさに満ちている。両手の親指と中指で二つの尖りを強く挟んで人差し指をごく狭い先端宥めるように動かすと、紅の背筋が綺麗で健気な弧を描いている。腰を大きく振ってより奥処を目指した。
花壁の妖しく蠱惑に満ちた締め付け具合も愛の交歓の際は諸刃の刃だ。祐樹だけに誂えられた場所は気持ち良すぎるのだけれども、気を抜くと即座に真珠の放埓をばら撒いてしまいたくなるのだから。
「そろそろ……、放って良いですか……?聡の……極上の花園、とても素敵で、長く居たいのは……やまやまなのですけれども……」
盛りの付いた学生時代でもこんなに早く極めることはなかったような気がする。学生時代と言っても京都府の日本海側の田舎ではそういうお仲間を見つけることは出来なかったし、何より受験勉強で忙しかった。だから祐樹が肉体関係を持ったのは大学に入ってからだ。そんなことを考えながら必死で耐えた。最愛の人は幾らでも調べることも出来そうなのに愛の交歓について頑なに調べようともしない。祐樹が与える愛の手管だけを健気に受け入れてくれる点も大好きだ。だから早い・遅いは気にしないのは分かってはいるものの、沽券に関わるような気がしてなるべく堰を切るのを遅くしている。そんなことを考えているのも当然気を散らすためだった。
「ゆ……祐樹……っ……早く……っ、欲し……っ」
散らされるのを待ち望んだ花のような声が祐樹の愛の鞭撻の音に混じって聞こえる。尖りを愛していた右手をすっと下ろして華奢だけれどもしっかりと筋肉の付いた肢体を指で辿った後に花芯を確かめた。下腹部に付く勢いで反りかえった欲情と愛情の象徴の先端は溢れて幹に零れ落ちている様子だった。最愛の人も絶頂は近そうだと判断した。
「では……、そろそろ……」
禁を放とうと奥処の奥へと灼熱の楔を挿れた。
「あ……っ」
紅の肢体が強張るのと同時に真珠の迸りが祐樹の指をしとどに濡らしていく。その指先の熱さと共に奥処の奥に放埓を放つ解放感で身体も震える。
「祐樹……愛している」
快楽で息も絶え絶えといった感じの声が堪らなく愛おしい。
「私も……聡を愛しています」
ベッドのタオル部分に二人して倒れ込みながら睦言を交わした。
「今夜は何度も愛し合ったせいか、快感が研ぎ澄まされていて……目の前に火花が散っているようでとても良かった……」
花が咲ききったような満足そうな笑みを浮かべている最愛の人が極上の感想を紡いでくれた。
「私は、いつも極上の悦楽を聡から得ています、よ?聡が満ち足りた絶頂を迎えられたようで何よりです。先ほどはタオルで阻まれてしまったようで……すみませんでした。人によっては、ラバーをしていると快楽が鈍るからという理由であまり望まないと言う人も居ますからね。医師としては危険極まりないと諭すしかないのですが……」
腕の中にいる最愛の人の描いたように綺麗な眉が悲し気に顰められたのを見て慌てて言葉を続けた。
「私だって今後、聡以外の人と性行為をする積もりは毛頭ないですけれども、以前はラバーなしなど絶対にしませんでした。二人の初めての夜は突発的に訪れましたよね?だから当然持ち合わせがなかったのですが、その時の快楽が忘れられずにずっと愛の交歓はラバーなしでしています。聡はラバーなしでの行為は初めてでしたし、その上病気はお互いに検査を受けているので大丈夫ですが、聡の身体に対しての負担が懸念事項ですけれども……」
眉が花のように開いている。
「大阪のリッツカールトンで祐樹に初めて抱かれた時は天に昇るほど嬉しかった、な。それに特に負担が掛かっていると思ったことはないし……。祐樹だって、救急救命室から深夜三時に帰宅してくれるだろう?仮眠室で眠った方が30分以上余計に眠れるのに……。個人的には嬉しいけれども……」
最愛の人の秀でた額に張り付いている前髪を後ろに掻き上げながら笑みを浮かべた。
「聡の顔や気配がある方が良く眠れますし、それに一緒に過ごす時間は宝石のように貴重ですので。それに聡の作って下さる朝ごはんを食べないと身体に悪い気がします。全部好きでしていることなので大丈夫ですよ……」
最愛の人は安堵したような笑みを浮かべている。そして祐樹の手を握ってくれた。
「そうか。だったら今のままで良いのだな。完全プライベートなデートも私にとって稀有な宝石のような時間だけれども、心臓外科学会で行先が決まらない旅行もこうして二人して来ることが出来るのだからどちらも捨てがたいな……」
紅に染まった唇が甘い言葉を紡いでくれた。
「そうですね。これからもずっと一緒に学会に参りましょうね。もちろん二人で行先を決めるデートも」
誓いのキスを交わした。
<完>
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読者様はいかがお過ごしでしょうか?最後まで読んでくださって有難うございます。私は家事と仕事で毎日バタバタしています。一話も更新出来ない日もあるかと思いますが、そんな時には「忙しいのかな」と思って頂ければ嬉しいです。
「仙台デート」やっと<完>が打てたのでロンドン編再開します。しますが、色々宿題の多い身ですので気長にお待ちいただければ幸いです。
こうやま みか拝
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本来ならば女性の一人暮らしのマンションに男性が入り込むという行為は常識外れだと見做されるだろう。しかし、長岡先生の婚約者は最愛の人と祐樹の性的嗜好を知っている。旧態依然とした大学病院では許されない性癖であっても、露見したら自分の病院に来て欲しいと熱心に誘われているし、長岡先生は祐樹最愛の人が優秀な内科医として一緒に働きたいと大学病院に無理を通したという経緯もある。だから、彼女のマンションに訪れることは婚約者公認だった。部屋の中も高価な医学書の下にお金持ちの奥様が買うようなファッション雑誌が置いてあってまさにカオスだった。几帳面な人が掃除を始めてしまって、祐樹も仕方なく付き合ったことも何度も有った。お金持ちの奥様が買うファッション雑誌だと分かったのもページを閉じずに放置されていたせいで、その該当ページには祐樹もブランド名だけは知っている広告が載っていて指輪が200万円と書いてあったからだ。そんな本の整理をしていて高価な「内科大全」という本を三冊も見つけたのは祐樹だった。
「何故同じ本が有るのですか?」と彼女に聞いたところ「一々探すよりも買った方が早いですわよ」とかふざけた返事が有ったので、外科ならば購入するが内科までは手が回らない祐樹はこっそりと一冊持って帰った覚えがある。手間賃だと割り切って。最愛の人は無駄に最新式の掃除機で何だか、西部劇で見た覚えがある、砂漠の上のフワフワした丸い草を想起させるナニかをごくごく真面目な顔で吸い取っていた。
そんな彼女なので書類棚の下などは埃が降り積む雪のようになっていてもおかしくないのにと思ってしまった。包帯を巻くなどは目を瞑っていても出来る作業だし、包帯を切って結び目にして終わりにする。
「このビデオカメラらしからぬカメラとか盗聴器は、ああ、このモニターで見ることが出来るのですね。こんな機械を教えて下さるだけでなく、良く貸し出して貰えましたね?」
確か長岡先生は昨日「お勧めの機械を聞いておく」とか言っていたような気がした、多分。
「それが……岩松が懇意にしている興信所の所長さんが大阪出張で関西に来ておりましたのよ。そしてその浮気調査が無事に終わったとかで、後はレポートにして依頼人に渡せば良いからと画像と録音のデータだけは持って東京に帰るけれども、機械などは快く貸して下さいましたわ」
祐樹なら物凄く高価な機械だか器具などは長岡先生に貸すような勇気を持ち合わせていない。何しろ電子レンジに卵をそのまま入れて爆発させたという逸話の持ち主だ。……その時も最愛の人が「気の毒だから掃除に行こう」と貴重な休日を潰された覚えがある。まあ、祐樹としても最愛の人と過ごせるだけで充分幸せだったし、彼の「困った妹」を見る独特の眼差しを拝めるのも心躍る出来事だ。そういう機械音痴の彼女には絶対に貸したくないと思うのは祐樹が狭量だからという理由ではないだろう、多分。
「そうなのですね。当事者が誰だか情けないことにサッパリ分からなかったのですが、私がご一緒して確かめた時と過去一回、長岡先生が異変を察知した時と合計二回ありますよね。そして一週間後に鍵を交換するという教授通達が有ったわけですから、どこからか手に入れた鍵が使えなくなってしまうと分かったと思います。だったら、最後の密会をしようと考えると思います。このモニター類はこの部屋に置いて頂いて、監視を怠らないでいて下さって構わないでしょうか?」
長岡先生は真っ白な包帯を巻いた手が痛々しいが、さほど苦痛を感じていない表情で頼もしく頷いてくれた。
「入院患者さんの容態急変があれば当然駆けつけますけれども、それ以外はこの部屋に居て香川外科の医局の皆さまの相談を受ける立場ですもの。その程度のご助力は致しますわ。それにしても当事者が医局の誰かと言うのが本当に遣り切れない思いですわ、本当に。教授もさぞかしご心痛でいらっしゃったのではありませんか?」
形を整えたと思しき眉が顰められている。
「その通りです。それほど愚痴っぽい人ではないのでお言葉こそなかったのですが、心に痛みを感じていらっしゃる様子でした。当事者同士が未婚の場合は責任を取って結婚をさせるように働きかける。片方が既婚の場合は、慰謝料や養育費も必要だろうと、さほど離れた場所でない病院へと左遷させると。そして、両方とも既婚者の場合は僻地の病院へと仰っていました。また、当事者に配偶者が居た場合には杉田弁護士を配偶者の弁護人にすると内々にお願いしていらっしゃいました。あ!杉田弁護士はウチの大学で医療過誤訴訟の代理人を務めたこともある辣腕弁護士です」
長岡先生は愁眉といった感じだった。
「お話ししたことはないのですが、お二人の共著の本のパーティの時に出席していらっしゃいましたわよね。岩松もその訴訟のことを存じておりまして、あんなに難しい訴訟に良く勝てたなと申しておりました。しかし、弁護士には得手不得手が御座いますでしょ?離婚訴訟と医療過誤訴訟では勝手が異なります。だから離婚専門の先生の方が良くはないでしょうか?」
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「明日は起床時間を定めずに午後まで今夜の愛の交歓の疲労を回復してから、仙台観光をしましょう……」
最愛の人の鎖骨の窪みに紅い情痕を付けながら提案してみる。
「疲労?祐樹にこうやって愛されていると……私はさほど疲れは感じないのだけれども。祐樹は違うのか?しかし、この客室で祐樹と二人で過ごすのも悪くない。祐樹と一緒にいるだけで充分幸せなので」
無垢な感じの言葉が濃い紅色に染まった唇から紡がれた。男性が達すると100メートル走全力ダッシュ並みの疲労を感じると何かの本で読んだ覚えがあるが、最愛の人はそうでもないらしい。華奢な肢体ながらも外科医として体力があるからなのだろうか?
「聡とこうしていると幸せ過ぎて、きっと脳内麻薬が分泌されるのでしょう。私もそれほどでも……ないです。明日の仙台観光も楽しみです、よ」
疲れていないと言えば嘘になるが、やせ我慢の発言をしてしまった。ツンと尖ったルビーに唇を寄せた。唇で啄むと「あ……っ」と甘く蕩けた声がベットの白いシーツを紅に変えていくような艶やかさだ。
「聡はどこもかしこも……とても綺麗ですね。手で、そして唇で触ってしまいたくなります」
もう片方の慎ましやかな尖りを指で摘まんだ。普段よりも熱くなっている尖りが愛おしい。それにツンと愛らしく尖ったルビーは祐樹の指の愛撫を受けて艶やかに煌めいている。
「あ……っ、祐樹……悦……っ」
尖り切ったルビーと同様に先ほどタオルで隠されていた花芯も半ば育っている。その煽情的な肢体を見ていると祐樹の灼熱の楔も育っている。
「愛する聡、大好きですよ。ベッドに膝立ちになってください」
紅色に染まった薫る肢体が純白のタオルの上に起き上がっているのも魅入られてしまう。普段は白い双丘も愛の交歓のせいで瑞々しい紅に染まっていてとても綺麗だった。それに祐樹が引き抜いた時につられて零れた真珠の雫が健康的な色香を放つ太ももの内側に宿っているのも薔薇色の蠱惑に満ちている。
「足を開いてください」
愛の交歓で散々愛した花園の門もぷっくりと熟している感じなのも堪らなく愛おしい。しどけなく開いた門にも真珠の小さな雫が宿っていて、花園の内部の紅壁に映えてオパールのように煌めいている。見ていると堪らなくなって、祐樹の灼熱の楔をヒタリと付けた。
「ゆ……っ、祐樹……、早く来て欲し……っ」
愛の睦言通りに花園の門が愛らしく震えては祐樹を奥に誘い込む淫らな動きを開始している。
「二つの尖りも同時に愛しますから、ね」
これほど熟した花園なので花壁もきっとバターのように祐樹を包んでくれるだろう。
「あ……っ……。祐樹が挿ってきて……っ……、堪らなく……悦……っ」
胸の尖りと花園の凝った部分を同時に愛すると、乾いた絶頂を迎えることが有る最愛の人だ。先端部分を難なく挿れると、花園の中の浅い部分に有る、彼の弱点を衝いてみた。
「あ……っ。蒼い花火が……っ爆ぜているようで……っ、堪らなく悦……っ。それに、頭の中も……っ、祐樹の熱い……欲望で……っ、開かれている……ような……気がする……っ」
開花直前の桜の若木のように撓る最愛の人を二つの尖りとその近くで支えた。
「今は、先端部分でしか感じることが出来ませんが……それでも堪らないほどの愉悦を私に与えて下さっています。凝った部分とか胸の尖りみたいに精緻な感じで弾いて下さって……とても素敵です。花園の奥に入っても良いですか?聡の極上の花園はとても気持ちが良いので……。腰を回して花壁を堪能するか、ゆっくりと衝くかどちらが良いですか?私はどちらでも構わないです……」
思わせぶりに凝った場所を小刻みに衝いて最愛の人の選択に委ねた。
「あ……っ、ゆっくりではなくて……っ、激しく動かして欲し……っ」
銀の鈴のような声が紅色に艶めいている。
「分かりました。激しく、ですね。くれぐれも舌を噛まないように注意して下さいね」
一旦門辺りまで退くと、祐樹の真珠の放埓も出て来ている。花園の中もしとどに濡れていたが。
「私の愛情と欲情の象徴を花園で充分に味わって下さい」
これは最愛の人に心の準備を促す合図だ。
「分かった……っ、祐樹、愛している……っ」
淫らに熟した花園とは異なって健気で無垢な声がベットのシーツに零れ落ちていくような錯覚を抱いてしまう。身体を離して反動をつけてから思いっきり挿れた、深くまで。
「あ……っ、悦……っ」
湿った素肌が奏でる音と共に最愛の人の婀娜な声が短く響いた。きっと、悦楽の深さを祐樹に実況中継するともっと言葉を紡がなくてはならないのを自粛したのだろう。花園の奥処は熱く厚いシルクが妖しい動きで奥へと引き込もうとしているのも最高だ。ただ、良すぎて直ぐに放ってしまいそうになる。だから身体を引いて花園の門まで退いた。そういう気持ちは贅沢な悩みだとは自覚していた。
「あ……っ、ん……っ、祐樹もっと……欲しっ……」
焦れたような声と共に後ろ手で祐樹の腰を掴んでくれるのも最高にそそる。
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