合宿に参加する前の谷崎君は少し余分な肉が付いているかな?と思う程度の体形だったのが今では、今日亡くなった有吉さんを彷彿とさせるくらいの病的な痩せ方だった。
彼女には恋愛感情は一切なかったけど、あんな悲痛な遺書を残して亡くなったのだから、努めて彼女のことは考えないようにしていたのだけれども。
ジーンズもベルトが――ちなみに後ろ側には包丁を抜き身のまま差している――なければずり落ちてしまいそうだ。
俺もやせ形ではあるけれども、本質が違うような痩せ方だった。
でも、その人達よりももっと怖い。例えるなら、壮絶な喧嘩をしている不良が発する目の光に近いかも知れない。
でも、その光る目の奥には俺なんかには分からない複雑な感情が錯綜しているようで、その複合した目の光はとても怖かった。
それに、顔色は蒼白に近い。本部のモニターには背中に自分の包丁で傷をつけても平気な顔をしている谷崎君が映っていたけれど、どこかの大きな血管も切ってしまったのかも知れない。
俺は身体が震えてしまうのを必死で我慢した。ここで谷崎君に不審感を抱かれるのは一番マズい。
つまりは、『北の楽園』では、谷崎様は雲の上の人で、オレ達は谷崎様――いや、『金』という名前も与えられるかも知れない。将軍様と同じ名前だ――その部下のそのまた部下ということになるだろうな……」
それに冷静であることは卑屈な口調からでも分かってしまう。今、俺が何か話したら声が上擦ったり震えたりすることは確実だ。
幸樹は多分、「同じコーヒーを飲まないように」との伏線を張っているに違いない。
俺はさり気なく下を向き谷崎君の傷口をアリアリと思い浮かべて青くなった顔を隠した。
幸樹と違って俺は血が怖いし、想像力は無駄に多い。
その内、時代劇の将軍様のような言葉を発してもおかしくない。
俺も幸樹の顔を見て、幸樹がいつも通りの端整で怜悧な顔をしていることに安堵の吐息を小さく漏らす。
西野警視正は、一瞬「うんざり」といった様子の顔を浮かべたが、それも直ぐにかき消して感心した表情を浮かべた。幸樹はその様子を見て口角を上げた。
俺も気が付いたように、薬の適量が分からなかったのかもしれない。
いや、所要時間から薬品名を推測出来たのだから適量は知っている可能性も大きいけれども。
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こうやまみか拝
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