腐女子の小説部屋

創作BL小説を綴っています。ご理解の有る方【18歳以上】のみ歓迎致します 申し訳ありませんが書く時間を最優先にしたいのでリコメは基本的に致しません。 要望・お礼などは「日記」記事でお応えしますが、タイムラグがあることも多いです。

2020年09月

気分は下剋上 七夕編 51

「書きますから『もう良いよ!』と言うまで瞳を閉じていて下さいませんか?」
 最愛の人がパパラチアサファイヤのような煌めく笑みを浮かべていた。
 祐樹は買ったことはないが、最愛の人に贈るために百貨店の宝石売り場で見た覚えがあった。そのピンクとオレンジの光が最愛の人の今の笑みとそっくりのような気がした。
――お値段もかなりしたので彼がこよなく愛してくれている「祐樹のオーラの色」と言っていたその煌めきに似ていたので買おうかと思ったがお財布事情で諦めた一品だったというのは内緒にしておこう――。
「何だか鬼ごっこみたいで楽しいな。
 といっても、鬼ごっこは幼稚園の時以来した覚えがないが。
 同じ幼稚園で、大きな家に住んでいた中村君のお家で遊んだ覚えが有る。今思うとそれほど大きい家ではないが、当時の私にはお屋敷に思えた。
 中村君は小学校から私立に行ったので、それ以降の付き合いはないが……」
 最愛の人の笑みが懐かしさの煌めきに満ちている。
「鬼ごっこですか?してみたいですか……」
 最愛の人が子供らしい遊びをしていたのも何だか微笑ましいけれども、それ以降はしていないのだったら、そして彼が望むなら一緒に興じるのも悪くないなと思った。
 なにせ、子供の頃にはそれほど遊びとか行事をしていないといことは彼の口から聞いていたので。
 神戸の六甲山にドライブデートに行った時にアポ〇チョコを「ずっと羨ましく思っていた」とか言っていた人なので。祐樹は鬼ごっこを――何せ田舎なので隠れる場所には事欠かない――飽きるほどしていた過去が有るし、大人になってからはする気も皆無だったけれど、最愛の人が望むならば、しても良いと。
「いや、今日は七夕の日だろう?熱烈に愛し合っている恋人らしいことだけで充分だし、大人になってから鬼ごっこをする気も無くなっている。
 祐樹がそう提案してくれたことは純粋に嬉しいが……」
 律儀に目を瞑っている最愛の人の笑みはパパラチアサファイヤよりも綺麗な光を放っているようだった。
「そうですか?
 童心に帰りたい気分になったら仰って下さいね」
 筆ペンはサイン会に赴いた書店の中の一部で用意されていたので――ほとんどが油性のマジックだったが――書き慣れてしまっているのは幸いだった。
 最初に彼に書いたモノを渡したのは、出会って直ぐだった。後で聞いたら清水の舞台から飛び降りるほどの勇気を振り絞って携帯電話の番号を聞いてくれたらしいけれども、その時は反感も持っていたこともあって、たまたまポケットに入っていた製薬会社の紙に殴り書きした。今更最愛の人が祐樹の携帯番号を書いて欲しがるとも思えないが、あの時もっと丁寧に書いておけば良かったなとは思う。
 最愛の人は――どうやら使い勝手が良いらしい――エルメスのスケジュール帳について来た品質も最高(なのだろう、多分)のモノを使ってくれたと聞いてからは尚更にそう思ってしまう。後悔先に立たずではあるものの。
「いや、祐樹と隠れんぼをして遊ぶよりも…………寝室で二人の素肌を感じる方が宝石のように貴重な時間なので……」
 最愛の人の頬が紅さを増している。
 先ほど祐樹が服の上から触れて貰ったモノをまざまざと思い出したのかも知れない。
「もう良いよ……」
 わざと歌うように言った。ちょっとした鬼ごっこ気分を味わって欲しくて。
「『夫婦は二世というコトワザが有りますが、七回生まれ変わってもずっとこういう関係になれますように』か……。祐樹の気持ちが物凄く嬉しい、な……。
 変わらない愛情を一生ではなくて、輪廻転生した後も七回も恋人同士で居られると思うと」
 深紅の薔薇に水滴を宿したような笑顔だった。しかもその雫に朝の光が差し初めたようなあ。
「色々考えたのですが『親子は一世、夫婦は二世主従は三世』というコトワザが有りますよね?まあ、江戸時代だかに出来たモノで、大名とその家臣の忠誠を強めるためだろうとは思いますが、貴方となら七世以上生まれ変わって巡り合いたいです。生まれ変わって何度でも貴方だけ恋に落ちたいです。
 聞きかじりですが、前世の記憶も無くなっているらしいのですね。しかし、何度生まれ変わっても貴方を探し出して最初から――出来れば誤解とか遠回りはナシの方向で――恋のプロセスを楽しみたいです。
 七にしたのは、七夕だからという理由です」
 一応種明かしをすると最愛の人の表情が繊細に、そして華やかな笑みを浮かべていた。
「私も同じ気持ちだ……。
 ただ、祐樹に一目惚れをしたのは私なので、私の方が早く見つけ出せるような気がする……」
 器用に笹飾りに短冊を飾ってくれている。
 薄紅色に染まった指先が魔法のように動くのを見るのは――手術用の手袋で包まれたのは手術室のスタッフも見ることも出来るが――祐樹だけの特権だったし、その上祐樹の願い事のせいなのか、薄紅色というよりも紅色に煌めいていて、その優雅かつ繊細な指の動きからは金と銀の粉を撒いているような綺麗さだった。
「願いごとは一個ずつですか?」
 色々楽しく考えていたので、もっとたくさんストックがあって、もっと書けそうだった。
「あまり欲張りすぎるのも良くないとネットに書いてあった。
 確かに――まあ、内容は祐樹と末永く仲良く暮らせますように的な言葉だからそうでもないかもだが――たくさんの願い事をしたら織姫と彦星が混乱してしまうかも知れないな……。もっと書きたかったら短冊はまだ有るので大丈夫なのだが?」
 先に作っておいた笹飾りは二人の手先の器用さも相俟って物凄く綺麗だった。
「いえ、良いです。ベランダに飾るのでしょう?
 あ、雨が降っていますね……」
 リビングからベランダの方に視線を転じると割とまとまった雨が降っていることに気付いた。
 このマンションは値段に相応しく防音も完璧だったので雨音は聞こえなかったが。




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最後まで読んで下さいまして誠に有難うございます。

零細企業と呼ぶのも恥ずかしいレベルの代表取締役(兼お茶くみ・清掃係)な私ですが、経費節減のために事務所移転が決定しました。
そのため、多忙に拍車がかかりそうでして、当分は一話更新がやっとだと思います。
申し訳ありませんが(アフォリエイトはしていますが、ブログは趣味でして、ヒカキンみたいSNSで生計を立てるレベルの広告収入なんてないです 泣)仕事の方が優先順位が高いので、ご理解賜れば幸いです。
              こうやま みか拝






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気分は下剋上 公認カップル騒動 110

 最愛の人は震える紅色の指で祐樹のキスを受けている。
 そして見上げると滑らかな頬に涙の雫を零し続けていた。若干華奢な肢体も泣いているせいなのか震えていた。ただ、彼の全体の雰囲気は月の柔らかな光を纏っているような感じだったが。
「今日は貴方のご両親にご挨拶だけでもと思いまして。
 初対面ですからスーツ姿なのは当然のマナーですよね。
 極楽浄土にいらっしゃる貴方のご両親は、私達のこともずっとご覧になると思います。
 そのためのご挨拶を兼ねたお墓参りですので。
 今は貴方の仰る通り、俄かには受け入れがたいとは思いますが、これからのぴったり重なった二人の人生の軌跡を見て下さればきっとお墓に入ることも許して下さると思います。
 ずっとご覧になってその後の判断で『受け入れる』と言って下さるのではないでしょうか?」
 涙の膜を張った切れ長の綺麗な瞳を見つめてそう言って彼のしなやかな長い指に祐樹の指を付け根近くまで絡ませた。祐樹も無神論者ではあったが、何だか極楽浄土が本当にあるような気がしていたのも事実だった。
 そして彼のご両親が見守って下さっていることも。
 周囲のマンションのベランダなどに人が居ないことはキチンと確認してからだったが。
 最愛の人が立てたお線香と祐樹が少しだけ距離を置いて立てたお線香が風もないのに急に揺れて、8割は灰になってしまっている最愛の人のお線香が祐樹の方へと凭れ掛かるように傾いでいるのが目に入った。
「貴方のお父様とお母様が許して下さるという合図でしょうかね……。器用な貴方が几帳面に立てたのを見ていましたから倒れるようなことはないと思うので」
 もしかして他の要因が有ったのかも知れないけれども、今はそう信じたい。
「そうだな……。母は私に何の要求もしなかった人だったから。
 もちろん、成績が物凄く良かった時とか大学に受かった時には本当に嬉しそうに笑ってくれたのを覚えている。
 だから今も祐樹が正式に挨拶をしてくれたので喜んでくれていると思う。
 区役所だかで公認のパートナーとして認められるよりも、私の両親にこうして公認をされるほうが心の底から嬉しいと思う。
 祐樹のお母様もこのダイアの指輪――」
 そう言って精緻な美しさを持っている薄紅の指を宙にかざしてピンと伸ばして確かめるように見ていた。
 そのダイアの煌めきが月の光と街灯の僅かな光に反射してとても綺麗だった。いやダイアモンドだけではなくて最愛の人の長くてしなやかな指とも相俟って相乗効果――いやそれ以上かもだが――映画のワンシーンのような無垢で艶やかな光を放っているような感じだった。
「このダイアモンドの指輪で私達の仲を公認して下さったし、その時は有り難すぎて涙が出た。
 今日は祐樹が両親の墓前で誓いの言葉を言ってくれて、その上お線香が祐樹の立てた物に傾いだだろう?
 あれは、両親が『この人に一生連れ添って生きなさい』と公認してくれた証しだろう、な」
 そう言葉を紡ぐ最愛の人の唇は咲き誇る大輪の薔薇よりも綺麗な笑みを浮かべていた。
 そして月の雫のような涙の痕もダイアモンドよりも神聖な光を艶やかに放っている。
「そうですね。
 役所とかの公的機関に認められなくても、貴方の両親に認められたほうが私も良いです。
 そして、その願いは叶ったと思っています。
 ――それに役所で認められてもご両親に認められない方が心情的に辛いでしょうし、そもそもごく少数派の性的嗜好の持ち主だと両親に露見した段階で勘当されたとかはグレイスで割と聞いた話です。
 社会に肯定されても肉親に認められない方が正直精神的に参るでしょうし、これで良かったのだと思います」
 真率な声と表情で告げると最愛の人は黙って頷いてくれた。
 その拍子に涙の雫が灯りに照らされて滴っていくのも月の欠片が液体になったような煌めきを放っている。
「あ、祐樹……お線香が完全に祐樹の方へと凭れ掛かってまるで一本のお線香みたいだ……」
 病院から貰って来たものなので――多分より長持ちするためにこういうサイズのモノを購入しているのだろう――祐樹が親戚だか母の友達のお母様だかは覚えていないけれどお葬式の時に見たモノとは長さが異なってはいた。
 しかし、その長いお線香がこうして凭れ掛かって一本のお線香のようになるのは初めて見た。
「『比翼連理』と白居易の詩に有ったと思うが、比翼の鳥、連理の枝という『連理』の木は元々、別の木が枝で繋がって連続した木のように見える様子、なのだろう。
 その連理にお線香は似ているな。
 きっと私の両親も『こうやって生きるように』とメッセージを送ってくれたに違いない。
 両親に公認されたと思うことにする。
 そして、祐樹これからも比翼連理という言葉を考え出した白居易も驚くような仲の良さで一生を暮らしたいと心の底から思っている」
 薄紅色の唇が祐樹の口へと近づいて来た。
 何度も誓いの言葉は述べたが、最愛の人からの自発的なキスは初めてだったような気がして、ご両親の前で口づけを交わした。 
 色々騒然としたが、そんなモノがなかったような静謐で、そして体中に月の光が染み込むような清らかな接吻だった。
                               <了>






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気分は下剋上 七夕編 50

「『この夜のような幸せな日が一生続きますように』ですか。確かにその通りですね。
 この夜というのは寝室での熱い逢瀬も含まれるのでしょうか?」
 そろそろ、最愛の人の注意を寝室の方へと向けたい。今はまだ笹飾りの出来映えとそして素晴らしく美味しかった食事の余韻を引きずっているだろうから。笹飾りはともかくとして料理とお酒の美味しさに関しては祐樹も同様だったが。
「甘い逢瀬も含まれる……な。祐樹と愛の交歓をしている時が私にとって宝石よりも貴重な時間だから……。いや、祐樹とこうして二人きりで過ごすだけで至福の時だけれども」
 言葉の戯れも愛情表現の一つだと最愛の人と恋人同士になってから覚えたことの一つだった。
 それまでは意気投合した相手と肌を合わせた後は内心「早く一人になりたい」とか思っていたので。
「至福の時は一生涯続くと思いますが、甘く熱い愛の交歓は自ずとタイムリミットが有りますから。
 ココもね」
 紅色に染まった指を充血した場所へと導いた。
 指の感触で、祐樹のモノがどういった状況になっているのか当然分かったのだろう。
 スッと撫でた後に、僅かに紅くて潤んだ瞳とは裏腹に唇が「後で」と何だか自分に言い聞かせるような厳しい感じの言葉を紡いでいる。
 やはり、七夕の儀式を――合っているかどうかは全く定かではないが――重視したいのだろう。まあ、焦らされた方が後々の快楽が深まることも最愛の人との行為で知ったが。
 それ以前の祐樹の「恋人」にはそんなに時間をかけたこともない。
 いや、一度だけあったような気がする。あれは大学一回生の時だったが、自分の性的嗜好が普通とは違うことは自覚していたものの、やはり認められない部分もあって……合コンで知り合ったたまたま好みに辛うじて引っ掛かる女の子が告白してきた。
 その後色々「男女交際」のマニュアル本とか雑誌で仕入れたデートの手順を踏んで初めてのHも本の通りにしてみた。
 だから、後の戯れまで最初のうちはしていたのだが「田中君の気持ちが分からない」という――ある意味性癖を隠していたから当然だろうが――別れの言葉で「不健全な」男女のお付き合いは3週間で終わった。彼女のコトが決定打になって「やはり」という気持ちが強まった。
 そのマニュアルに従っていたのでじっくりと時間をかけた「そういう行為」をしたし、ゴムもキチンと付けていたのだが。
 それ以来は切羽詰まった欲望を満たせば良かったので、終わったらさっさと身体を離していたので相も変わらず「田中君の気持ちが分からない」とか言われ続けていたが、そんなことは祐樹にとって痛くも痒くもなかった。田中祐樹という固有名詞すら教えていない男性の方が多いのも事実だったし。
「―-そうだな……人は年齢には勝てないからな……ソコだっていずれは衰える。
 けれども食生活なども大きく左右されるだろう。あとストレスとか。
 ストレスの掛かる仕事なのは仕方ないので、なるべく食事で元気になって欲しいと思って料理を作っているのだが……」
 それは初耳のような気がする。そして全てのことにおいて真面目で几帳面な最愛の人なので絶対に料理にもそういう心遣いがさり気なく入っていたハズで。
「え?でもスッポンとかそういった物とか……怪しげな精力剤なんて入れていないですよね?山芋とかウナギとかもそういう作用が有ると男性誌で読んだ覚えが有りますが……。
 山芋は短冊に切っても摺り下ろしたモノも大好きですし、大歓迎です。そしてウナギも貴方が作って下さったらより一層美味しいので大好物ですが。
 漢方薬の効能は認めてはいますが、怪しげな精力剤の原料になるようなモノは食事に混入されていませんよね……」
 以前よりもマシ(?)になったとはいえウソのつけない人だったが、良かれと思って何かを混入している可能性は否定出来ない。
 まあ、EDの治療薬として医師の処方で出せるお薬にも関わらず海外からの密輸入までもが問題になった薬などは絶対に飲ませないだろうが。
 あれは物凄く心臓に負担を掛けることが分かっているし、心臓外科が専門の最愛の人がそのリスクを知らないわけもない。
 そんな少し焦った祐樹を見て最愛の人が満開の薄紅色の薔薇の花の風情で微笑んでいた。
「そんな怪しげなモノを祐樹に食べさせたりしない。
 山芋とかウナギは確かに精の付く食べ物だし、体力が弱った時などには最適だと思うが、牡蠣は海のミネラルともミルクとも呼ばれるくらいに良いらしいし、そして血圧を下げて『こういう状態』にしやすいモノはニンニクとトマト、そしてアボカドやセロリが良いらしい。
 サラダに入れて食べたりしているだろう?祐樹も好きな食材なのでなるべく取り入れるようにはしている……」
 誤解されがちだが、医師は栄養士でもない上にそれほど健康に良い食べ物を専門的に学ぶこともない。
 事実糖尿病とかの食事が命に関わるような病気の場合は病院専属の栄養士とかが具体的なカウンセリングとか食事の計画まで練ってくれるので糖尿病専門医もそちらに丸投げしているのが現状だ。
「あ!そうなのですか?牡蠣も大好きですし、セロリもニンニクもトマトも……あっ、そういえば、トマトに含まれるリコピンは前立腺に効くそうですよね。
 貴方の中の凝った場所……もっとトマトを召し上がればもっと華麗に花開きますか、ね?熟したトマトのように真っ赤になって……」
 怪しげなモノどころか好物ばかりを並べられたことに心の底から安堵した。
 今まではただ美味しいと思って食べていたサラダには最愛の人の愛の工夫が盛り込まれていたとは知らなかった。
「ゆ……祐樹。そういう話は寝室で……じっくり……」
 紅色に染まった耳朶がとても綺麗だった。
「了解です。
 ああ、私も短冊に願いを書かなければなりませんね。私が考えに考えたのを披露しますが、私はありきたりなモノしか考え付かなかったです。
 貴方がお気に召すと良いのですが……」
 そう言って手まめな最愛の人がリビングのテーブルの祐樹サイドに用意してくれた短冊に文字を書き入れようとしてふと思いついた。





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最後まで読んで下さいまして誠にありがとうございます。

「公認カップル編」の方が早く終わるかもとアナウンスをしていたと思いますがどうやらその通りになりそうです……。七夕編は寝室までまだ遠いという……。
「公認カップル編」は大体あんな感じの終わり方をしようと思っていたので、あと一話で終わると思います。

「披露宴」も止まっていますし、落ち着いたら「ショーから始まる」も……。相変わらず宿題の多い身の上ですが(←自業自得)付き合って下されば嬉しいです。

明日も仕事なので「心は~」は更新出来ません。すみません。


    こうやま みか拝






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気分は下剋上 公認カップル騒動 109

「私も貴方のご両親に語り掛けますから、どうか聞いていて下さいね……。
 これから申し上げるのは全て本心です。
 無神論者とか普段は言っていますが、こういう時には墓前で報告したら極楽にいらっしゃる貴方のご両親にも届くかと心の底から思いますので……」
 傍らに佇む最愛の人はコクンと頷いてくれた。
 彼だって無神論者のハズだが、やはりお墓の中にはご両親のお骨が眠っているとなると話は別なのだろう。唯物論者の祐樹でも何だかお骨には特別な何かが宿っているような気がした。特にそれが最愛の人のご両親のものなので。
 最愛の人がお線香に火を点けようとすると風が邪魔をしてマッチの火が消える。
 次に擦ったマッチを掌で包み込むようにした。マッチ特有の香りがしめやかな空気の中で薫っているのも良い感じだった。
 風を除ける方法は非喫煙者の最愛の人よりも祐樹の方が場慣れしているからか、炎が赤く黄色く煌めいている。
 その小さな火に照らされた最愛の人も厳粛そうな表情だった。
 大切そうに手に持っていた菊の花を墓前に供えた彼は墓石に向かっている。
「お父さんお母さん、ご無沙汰していて本当に申し訳ないと思っている。そのご無沙汰をお詫びにやっと来ることが出来た。
 お母さんに最後にした報告は『第一志望に受かった』だったよね。
 その後、無事に大学を卒業して立派な医師になれた。そして今は大学病院で教授のポストにいる。
 これもお母さんが必死に働いて、そして入院先の院長先生に引き合わせてくれたお蔭だと思っている。
 院長先生は良くしてくれたよ……。お嬢さんと結婚する代わりにウチでは分不相応な予備校代とかも快く出して下さって。
 お母さんはそちらの世界でもう会ったかも知れないけど、令嬢が事故死した後も援助を打ち切らずにいてくれた。それで無事に卒業出来たんだ。
 そちらの世界から見守ってくれていてもう知っているかとも思うんだけど、アメリカに行ってそれなりの実績を築いてから帰国した。
 その段階で、会いに来るべきだったよね。
 ただ――どうしても報告出来ないことがあって……。そちらの世界じゃお見通しなのかも知れないんだけど……。
 僕はどうしても異性を愛することが出来ない性質で……。もうそれは揺るぎのない事実なんだ……。
 そして、令嬢が亡くなった後にキャンパスで見たこの人に一目惚れをした。一度は叶わない恋だと絶望してアメリカに行ったんだけれども、どうしても忘れられなくて一目だけでも会いたくて日本に帰って来たんだ。
 そしたら予想外にも僕の愛を受け入れてくれて……。生涯に亘るパートナーだと言ってくれるようになった。
 お父さんやお母さんみたいに子孫は残せないけれど、それでもこの人と一緒ならそれで良いと思っているんだ。
 こんなワガママな息子だし、今までお墓に参れなかったのは仕事が忙しいという以外にそういう引け目も有ったからなんだ。
 で、生涯に亘るパートナーが『お墓参り』の背中を押してくれて、今こうしています。
 ご無沙汰も、そしてこの人とこういう関係を続けることをどうか許して下さい」
 最愛の人の声と肩が震えているのはおそらく泣きながら語りかけているせいだろう。
 そして先ほどの映画の俳優さんのように言葉に感情が切々とこもっていた。ベクトルは異なるにせよ。
 ただ、最愛の人でなくとも、同性のパートナーというのは両親に報告し辛いことなのも知っていた。
 それに、性癖をカミングアウトした段階で親子の縁を切られたという話はゲイバー・グレイスでちょくちょく聞く話だったし。
 そして言葉遣いも若干異なるのはご両親に向けてそういう言葉で話していたからなのだろう。
 しばらく若干華奢な震える肩とか頭を下げている最愛の人を見ていた。
 言葉を紡いだ後にも心の中で何かを言っているかも知れなかったので。
 こういう時にはむやみに話しかけない方が良いような気がした。
 彼が立てた線香が半分くらいになったのを確かめた後に、肩を優しく抱きしめて祐樹の方へと顔を向けるように手で誘導した。
 涙の雫を優しく拭きとってから「代わります」と小声で告げた。
「初めまして。田中祐樹と申します。まずはお父様、お母様この人を産んで下さって有難うございます。
 極楽浄土の蓮の上で見守って下さっていたとは思いますが、この人の全てを愛しています。
 聡さんと大学病院で会わなかったら私はロクでもない医師になっていたと思います。
 今は一介の外科医にしか過ぎませんが、この人と一緒に人生を歩みそして生涯愛しぬくことを誓います。
 聡さんが仰っていたようにご両親にとっては不本意なパートナーかも知れません。
 しかし、世界中で最も聡さんを愛しているのは私だと自負しています。だからその愛情に免じて許して下さいませんか?
 生涯をかけて愛しぬく自信は有ります。それはお約束致します。
 いずれそちらの世界に行く段階で、パートナーとしての実績を評価していただいて、及第点ならばこの墓にも少しだけでも良いので私の居場所を作って欲しいと存じます。
 勝手なお願いで申し訳ないと思いますが、どうか宜しくお願い致します。
 その代わり……聡さんのことは一生大事にしますし、必ず幸せにします。それはお約束致しますのでどうか許して下さい。
 今日はご挨拶と、そしてご両親の前で誓いの言葉を述べに参りました。
 聡さんが付けてくれている指輪は私の母から『この人ならば良い』と託されたエンゲージリングです。
 私の今の経済状況ならばもっと大きいのも買えますが、聡さんはこのダイアが最も気に入ってくれているので、それは控えています」
 祐樹も切々とした感情を込めてご両親の許しが下りるようにと語り掛けた。
 そして傍らに立って泣き声を出さずにただ涙をとめどなく流している最愛の人の左手を恭しく上げた。
「このダイアとご両親の墓前に誓います。
 永遠にパートナーとして尊重しつつも愛することを。
 結果論で良いですが、私達がそちらの世界に行く時に、お二人に公認して貰えるように致しますので……。どうかお許し願いたいです」
 そう言って左手の薬指に丁重極まりない仕草で口づけを落とした。






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最後まで読んで下さいまして誠に有難うございます。
読者様はこの連休いかがお過ごしでしたでしょうか?

連休が終わったと思ったら仕事と相続手続きのトラブルがダブルで……。体調不良も治っていないので、更新はいつも以上に綱渡り&不定期になります。

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     こうやま みか拝



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「心は闇に囚われる」 131

「あの人着……!コンビニ強盗の!!」
 ニンチャクという単語の意味は分からなかったんだけれど、西野警視正の鋭い目線が一点に集中していた。もしかして緊急配備が掛かっている犯人を見つけちゃったのかな?
 そういえば、何だか人目を憚るような感じで自転車を走らせている。
「マルタイ発見!今は――」
 カーナビに表示してある住所機能を読みあげている。そして携帯に――無線じゃないんだなって余計なコトを考えてしまった――指示している。
「この辺りにも緊配の人間がたくさんいますよね?それにお任せするわけにはいかないのですか?
 正直、あの犯人確保も大切だと思いますが、それって警官なら誰でも出来ますよね?言い方は悪いですが。
 しかし、東野副部長に会いに行くのは西野警視正しか出来ない仕事なので、手柄はこの所轄の誰かに譲れば良いかと思いますけど……」
 幸樹が俺の言いたいことを代弁してくれる。というか、幸樹も心の底からこの「事件」を早く解決したいと思っているんだろうけど。
「ちなみに、人着っていうのは、人相とか容姿、そして犯行の時の着衣で逃げる犯人が多いので、『人着』っていうんだ。マルタイは対象者っていうほどの意味だな。あ、そっちは姫神池の時に遼もたくさん聞いていたから知っている……か?」
 姫神池という固有名詞を聞いて、白いワンピースで浮かんでいた有吉さんの姿が脳裏に甦ってしまった。
「所轄が現着するまで――つまり警察官がココに付くまでという意味だが――取り敢えずこちらを追う。
 まだここは辛うじてH庫県だが、あの川を渡ればO阪府になるだろう?
 橋の手前で確保しなければ、龍崎さんの仕事が増えてしまうので情報を下ろしてくれる時間も遅くなるから仕方ないと思う」
 幸樹が珍しく整った唇を不満そうにゆがめている。
「あの犯人も何でココに来たのか……。『犯行をしたら川を渡れ』と犯罪者の常識みたいなのだが……それにJRとかの交通機関を使わないとかチャリや原チャで動くという常識も知っているみたいだな……。
 仕方ない。遼動けるか?自転車を転倒させてとっとと捕まえよう。
 西野さんは今手錠を持っているんですか?」
 確かに見た感じでは犯人は屈強そうな感じでもなくて、どちらかと言えば運動不足の中年男といった感じだった。
「え?大丈夫かい?
 幸樹君の身体能力が優れているのも知っているが……。
 ああ、手錠は持っているよ。署長室に一日中座ってハンコ押しを延々し続けているよりも現場にいる方が私の性に合っているみたいなので、現場仕事が大好きなキャリア署長と一部では有名なのだ、一部ではね」
 幸樹がカーナビの画面を後部座席から見ている。視力の良い幸樹にはそんなのは楽勝なのだろう。
「動けるよ。自転車を転倒させるってどうするの?」
 ウチの家の近くではそれほど自転車が走っていないんだけれど、一応というか自転車の乗り方はお父さんに教えて貰ったし、実際走らせたこともある。
「この先でちょうど道路がT字型になっているだろう?そしてあの犯人は川を渡るっていう原則は知っているみたいだからO阪府に逃げ込む積りなのはほぼ確定だ。
 だったら絶対に左折する。右折したらH庫県のママだもんな。右折した瞬間に、自転車の車輪目掛けて、んとそうだな。何か細い棒みたいな物が有れば良いんだが。なかったら石でも良いので投げて自転車を転倒させる。
 遼それは出来るか?」
 幸樹がテキパキとその場を仕切ってくれている。そのリーダーシップにも惚れ直すって感じだったのだけれど、それ以上に幸樹がノイズというか……あのコンビニ強盗の犯人と思しき人間の思わぬ出現にも臨機応変に対応していたことの方が嬉しい。
 だって、谷崎君は「北の国の地上の楽園」を布教(?)することには物凄く熱心だったけど、それ以外のことはどうでも良いっていう感じだった。
 だから幸樹にも――考えるのも正直イヤな――「闇に囚われる薬」の症状が出た場合は、あのコンビニ強盗もノイズとしか思わないんじゃないかな?って思う。
 それなのに幸樹も頭を絞って考えている逮捕の仕方とかそういう対処方法を考えることが出来るというのは「まだ」その症状が出ていないんだって思えたから。
「出来るよ。瞬発力と反射神経には自信が有るから。それ以外はともかくさ……」
 幸樹の手がバックミラーの死角になるような位置で俺の手をギュッと握ってくれた。
 トクンと跳ねる心臓の音が耳にこだまする。
「この作戦には遼の一撃で自転車を倒すことが出来たら成功したも同然なんだ。
 だから頑張ってくれ……」
 西野警視正は飄々とした雰囲気を醸し出しながら、速度を上げている。
 そして割と無理な車線変更をしているんだけど、運転技術が上手いせいなのか他の車にクラクションは鳴らされていない。まあ、クラクションを鳴らされて犯人の注意をむやみに引いてしまうことのリスクを考えたのかもしれないけど。
 どこにでもある白いセダンを運転中なので、警察関係の車とも思われていないだろう。
「私はここで待機しているよ。遼君が自転車を転倒させて、幸樹君が犯人を取り押さえるとうい段階で私も応援に入るから。くれぐれも怪我には気を付けて。
 犯人は逃亡時に刃物をコンビニに置いてきたらしいので、危険は少ないと思う。
 こういう犯人は強盗が成功した段階で逃走に不利な余計な荷物は放置する傾向が強いのでそれ以上の刃物は持っていないと思われるが……。ああ、この棒で良いかい?」
 ハザードランプを点灯させながら路肩に停めた車の中で――何せ犯人は自転車なのでまだまだここに着くまでに時間はかかるだろう――西野警視正は普段よりも真剣そうな表情を浮かべていた。
 西野警視正が魔法のように出してくれた棒をホカンとして見つめてしまった。







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