「ああ、画一的な動きとか、軍服風というのが確かにナチスに通じるところが有りますね?
そういう意味ではナチスドイツを彷彿とさせる部分が有りますね。
まあ、国際的にタブーなモノを病院主催でしてしまったらマズいとお考えなのでしょうか?」
最愛の人の懸念はその辺りにあるような感じだった。
すぐ横に腰を下ろして祐樹を見上げる白皙の顔が薄紅色に艶めいている。
川のせせらぎの音をBGMにして密やかな会話を交わす時間が――話題は何であれ――宝石のように貴重だった。
「そうだな……。彼女たちの制服なのか衣装なのか分からないが、あれはそういう面でも充分配慮されているのだろうなと思わせるモノだったので大丈夫だろうし、しかもアイドルグループなので世界中にも発信されるものだろうから、色々な人にチェックされるだろうが、看護師有志の場合でも最近はスマホで動画を撮ってネットに上げれば世界中に見られるだろう?
どこから非難の矢が飛んでくるか分からないので、ナチス風というのは絶対にやめた方が良い」
最愛の人の言う通りだった。
以前なら病院の親睦会とかそういうのは身内だけで楽しむだけだったし、その画像がインターネットに上がることはなかっただろう。
しかし、YouTubeのような画像アップのプラットフォームだけでなくてツイッターやインスタグラムでも60秒程度の動画は簡単にアップ出来る世の中だ。
看護師は割と収入もあるし、好きな物も充分買えたり食べたり飲んだりも出来る。
ちなみに柏木先生の奥さんはシャネ〇の新作バックの購入を諦めて最愛の人と祐樹の共著を多数買ってくれたという――有り難いことだが――過去も有った。
インスタで映えるお店での食事とか、誰もが羨むハイブランドの服やカバンなどを自慢するついでに「自分の歌とダンス」を「悪気なく」アップする人は居そうな気がした。
ツイッターなどでバカなことを仕出かす人のことをバカッターと言うそうだが、ああいうのは多分確信犯のような気がしたが――まあ、その結果その後の人生が生き辛くなることまで想像していないのだろうが――ナースの場合は多くが専門学校とか短大卒なので、世界史はおろか日本史もまともに勉強していないという人の方が多い。
まあ、その分専門分野の勉強はきっちりとしていなければ看護師の国家試験に合格することは出来ないが。
だから「悪気なく」インスタやFBに投稿してしまってそれが炎上してしまっても「何故??」というのが大半だろうな……とは思う。
そういう世界的なタブーを含めて指導する立場に居る最愛の人なのでそこが気になったに違いない。
「すみません。そこまで気が回りませんでした。衣装については『欅坂』のメンバー達の衣装を完全にコピーすれば大丈夫ですよね?」
横に腰を下ろして薄紅色の花のような風情の最愛の人に頭を下げた。
その後公式動画を頭の中で再生してみたが、彼女達の衣装はどこにもナチス風の感じはなかった。
「そうだな……あれだと別にナチスを彷彿とさせるものはなかった。
やはり、誰かが細心の注意を払っているに違いない。世界史のタブー、しかも日本はかつての同盟国だったので、シンパシーを感じていると世界発信されたら困る立場なのを分かっているからに違いないだろうが……。
ま、ナチスの罪は罪として、アウシュビッツなどの強制収容所での『人体実験』で医学的な知識が格段に上がったのも昏い過去ではあるが……」
そういう話は医学部生にとっては半ば本気で半ば都市伝説のように伝わっていた。
「ああ、それは本当だったのですか……。まあ、マウスとか明らかに人間とは違った生き物で臨床実験をするよりも、人体の方が効き目も凄いとは思いますが……。ただ、そこまですると色々とマズイですよね。
勉強になりました。久米先生辺りが何も考えずに『ナチス風』の衣装にしそうな気もするので、それは断固として阻止します。
教えて下さって有難うございます。仕出かして世界的に炎上してしまってからでは遅いので……」
細い顎をくいっと持ち上げてお礼の意味を込めて唇を重ねた。
ひんやりとした唇の感触が心地よい。それに衝動のまま接吻を深めていくと、長い睫毛が川面のうすぼんやりと映える光の影を宿して華麗な扇のようにごくごく小さな艶めきを滑らかな素肌に落としている。
唇を舌でノックすると、待ちかねたような感じで綻んで舌の先端を歯で弱く噛まれた。
当然のことながら舌の先端も「感じる」場所の一つだ。
最愛の人の幾分華奢な肩を抱きよせながら舌の先端部分をゆっくりと辿っていく。
そして、肩がヒクリと跳ねたのを良いことに、舌の裏側を通って付け根まで丹念に愛すると、最愛の人の柑橘系のコロンの香りがやや強めに祐樹の鼻孔をくすぐる。
接吻のせいで体温が上がって来たのだろう。
深い口づけを角度も変えて交わしていると、川のせせらぎも二人の秘められた愛の仕草を応援してくれているように高まっていくような錯覚に襲われた。
名残惜しげに唇を離すと、二人の口づけの余韻のように銀色の糸が一瞬だけ虹のように二人の唇に掛かって泡のように消えていった。
「ああ、そう言えば初カラオケの感想は如何でしたか?」
最愛の人の予想以上に上手かった歌を思い返してしまう。
まあ、祐樹にとって最愛の人の歌というだけで嬉しかったし、何でもソツなくこなす人なのだな……と愛情が増してしまったのは言うまでもない。
「物凄く楽しかった。
大きな声とか普段よりも高い声を出すのがあんなに気持ちいいとは思っても居なかったし……。
まあ、家事をして流しっぱなしのテレビの音楽番組を観ながら口ずさんでいたのは事実だが、本気で真似ようとしていたわけではなかったので、あのカラオケボックスで歌手、いやアーティストかもだが、とにかくそういう人が歌っているのを再現して物凄く気持ちが良かったのは確かだな……」
紅色に弾んだ声が薄紅に濡れた唇から紡がれる。
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すみません!体調不良でブログお休みしてしまっておりました。熱はないのでコロナではないと信じたいですが。
1月に母が亡くなってバタバタしていた(今も継続していますが)の疲れが出たのかな?と思っています。
今後も不定期更新になると思いますが、読んで頂けたら嬉しいです。
こうやま みか



そういう意味ではナチスドイツを彷彿とさせる部分が有りますね。
まあ、国際的にタブーなモノを病院主催でしてしまったらマズいとお考えなのでしょうか?」
最愛の人の懸念はその辺りにあるような感じだった。
すぐ横に腰を下ろして祐樹を見上げる白皙の顔が薄紅色に艶めいている。
川のせせらぎの音をBGMにして密やかな会話を交わす時間が――話題は何であれ――宝石のように貴重だった。
「そうだな……。彼女たちの制服なのか衣装なのか分からないが、あれはそういう面でも充分配慮されているのだろうなと思わせるモノだったので大丈夫だろうし、しかもアイドルグループなので世界中にも発信されるものだろうから、色々な人にチェックされるだろうが、看護師有志の場合でも最近はスマホで動画を撮ってネットに上げれば世界中に見られるだろう?
どこから非難の矢が飛んでくるか分からないので、ナチス風というのは絶対にやめた方が良い」
最愛の人の言う通りだった。
以前なら病院の親睦会とかそういうのは身内だけで楽しむだけだったし、その画像がインターネットに上がることはなかっただろう。
しかし、YouTubeのような画像アップのプラットフォームだけでなくてツイッターやインスタグラムでも60秒程度の動画は簡単にアップ出来る世の中だ。
看護師は割と収入もあるし、好きな物も充分買えたり食べたり飲んだりも出来る。
ちなみに柏木先生の奥さんはシャネ〇の新作バックの購入を諦めて最愛の人と祐樹の共著を多数買ってくれたという――有り難いことだが――過去も有った。
インスタで映えるお店での食事とか、誰もが羨むハイブランドの服やカバンなどを自慢するついでに「自分の歌とダンス」を「悪気なく」アップする人は居そうな気がした。
ツイッターなどでバカなことを仕出かす人のことをバカッターと言うそうだが、ああいうのは多分確信犯のような気がしたが――まあ、その結果その後の人生が生き辛くなることまで想像していないのだろうが――ナースの場合は多くが専門学校とか短大卒なので、世界史はおろか日本史もまともに勉強していないという人の方が多い。
まあ、その分専門分野の勉強はきっちりとしていなければ看護師の国家試験に合格することは出来ないが。
だから「悪気なく」インスタやFBに投稿してしまってそれが炎上してしまっても「何故??」というのが大半だろうな……とは思う。
そういう世界的なタブーを含めて指導する立場に居る最愛の人なのでそこが気になったに違いない。
「すみません。そこまで気が回りませんでした。衣装については『欅坂』のメンバー達の衣装を完全にコピーすれば大丈夫ですよね?」
横に腰を下ろして薄紅色の花のような風情の最愛の人に頭を下げた。
その後公式動画を頭の中で再生してみたが、彼女達の衣装はどこにもナチス風の感じはなかった。
「そうだな……あれだと別にナチスを彷彿とさせるものはなかった。
やはり、誰かが細心の注意を払っているに違いない。世界史のタブー、しかも日本はかつての同盟国だったので、シンパシーを感じていると世界発信されたら困る立場なのを分かっているからに違いないだろうが……。
ま、ナチスの罪は罪として、アウシュビッツなどの強制収容所での『人体実験』で医学的な知識が格段に上がったのも昏い過去ではあるが……」
そういう話は医学部生にとっては半ば本気で半ば都市伝説のように伝わっていた。
「ああ、それは本当だったのですか……。まあ、マウスとか明らかに人間とは違った生き物で臨床実験をするよりも、人体の方が効き目も凄いとは思いますが……。ただ、そこまですると色々とマズイですよね。
勉強になりました。久米先生辺りが何も考えずに『ナチス風』の衣装にしそうな気もするので、それは断固として阻止します。
教えて下さって有難うございます。仕出かして世界的に炎上してしまってからでは遅いので……」
細い顎をくいっと持ち上げてお礼の意味を込めて唇を重ねた。
ひんやりとした唇の感触が心地よい。それに衝動のまま接吻を深めていくと、長い睫毛が川面のうすぼんやりと映える光の影を宿して華麗な扇のようにごくごく小さな艶めきを滑らかな素肌に落としている。
唇を舌でノックすると、待ちかねたような感じで綻んで舌の先端を歯で弱く噛まれた。
当然のことながら舌の先端も「感じる」場所の一つだ。
最愛の人の幾分華奢な肩を抱きよせながら舌の先端部分をゆっくりと辿っていく。
そして、肩がヒクリと跳ねたのを良いことに、舌の裏側を通って付け根まで丹念に愛すると、最愛の人の柑橘系のコロンの香りがやや強めに祐樹の鼻孔をくすぐる。
接吻のせいで体温が上がって来たのだろう。
深い口づけを角度も変えて交わしていると、川のせせらぎも二人の秘められた愛の仕草を応援してくれているように高まっていくような錯覚に襲われた。
名残惜しげに唇を離すと、二人の口づけの余韻のように銀色の糸が一瞬だけ虹のように二人の唇に掛かって泡のように消えていった。
「ああ、そう言えば初カラオケの感想は如何でしたか?」
最愛の人の予想以上に上手かった歌を思い返してしまう。
まあ、祐樹にとって最愛の人の歌というだけで嬉しかったし、何でもソツなくこなす人なのだな……と愛情が増してしまったのは言うまでもない。
「物凄く楽しかった。
大きな声とか普段よりも高い声を出すのがあんなに気持ちいいとは思っても居なかったし……。
まあ、家事をして流しっぱなしのテレビの音楽番組を観ながら口ずさんでいたのは事実だが、本気で真似ようとしていたわけではなかったので、あのカラオケボックスで歌手、いやアーティストかもだが、とにかくそういう人が歌っているのを再現して物凄く気持ちが良かったのは確かだな……」
紅色に弾んだ声が薄紅に濡れた唇から紡がれる。
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