腐女子の小説部屋

創作BL小説を綴っています。ご理解の有る方【18歳以上】のみ歓迎致します 申し訳ありませんが書く時間を最優先にしたいのでリコメは基本的に致しません。 要望・お礼などは「日記」記事でお応えしますが、タイムラグがあることも多いです。

2019年07月

気分は下剋上 アメリカ学会編 7

 こういう関係になって長い上に、あんなに甘く熱く乱れていた肢体とは裏腹に精神は出会った頃と同じような初々しさを保っているのが、逆に新鮮でよりいっそう愛おしさを増してしまう。

 多分、この精神はダイアモンドのようにずっと変わらないのだろう。

「どうぞ。貴方に――しかも空港という公的な場所ではなおさらのこと――下着もナシに歩かせるのは生涯の恋人としての矜持に関わりますので。

 そういう、誰にも見せない顔は私にだけ見せて下されば充分です」

 至近距離で見つめ合いながらそう告げると、ほの紅く染まった頬が瑞々しい透明さを纏ったような感じだった。

「それは助かる……。と。そろそろ部屋を出ないとマズい時間だ。

 パスポートとESTA、そして飛行機のチケットだけは絶対に忘れないようにして欲しい。

 祐樹ではなくて、他の医局員ならスピーチ用の原稿が書かれたUSBメモリも注意したと思うが……、それは既に頭の中に入っているだろう?」

 下着を受け取った最愛の人は、わざわざバスルームに向かう前に仕事場の怜悧さを取り戻した感じの笑みと口調だった。

 ただ、脱ぐのはともかくとして着る段階で恥ずかしがる最愛の人のことを微笑ましく見送った後に、ESTA――査証に変わったアメリカ入国に必要な物だ――とパスポートなどがキチンを手提げ鞄の中に入っているかどうかを確認した。

 律義で慎重な最愛の人が手伝ってくれた荷造りだっただけに、ダブルチェックは済ませている。しかし、下着などのように売店で買えば良いモノではないので念のために。

 先程は二人の熱く甘い愛の交歓を映していた鏡に向かってネクタイの最後のチェックをした。

 二人が知っている人だけでなくて、テレビなどで一方的に知られている人の目が有るといけないので――その点、最愛の人はラフな格好の方が印象が随分と異なるためにちょうど良いかもしれない――キチンとした身だしなみで空港へと向かわなければならない。

「お待たせした。メガネをかければ完璧だ……な……」

 涼しげな印象を強く与える最愛の人の切れ長の瞳が称賛めいた煌めきを放っている。

「会場に行く際には忘れずにつけるようにします。

 本当に視力の悪い人には悪いようですが、無くても全く不自由しないので忘れそうになりますけれど……」

 目も酷使する仕事だし、視力が0、1以下の人間なんて職場には割と居る。そして、朝起きるとまずはメガネを探すのが習慣になってしまっているという話は良く聞いていた。

「忘れそうになったら、会場内のカメラの向こう側で私が多分叫んでいると思うので……」

 最愛の人が――過去には取り乱す様子とか、もっと酷い「夏の事件直後」の時の痛ましげな風情は垣間見て来たし、それはそれで心配とか心痛は受けたが――PCの画面に向かって叫ぶ姿は想像出来ない。

 ホテルの廊下を歩みながら、つい笑ってしまった。

「ああ、そう言えば登録した外科医しか閲覧出来ないサイトで配信されるのですよね。

 しかもリアルタイムで……。

 貴方が叫ぶ姿は――正直なところ見たいとも思いますが、それはこっそり心に仕舞っておきます――好ましくありませんので、気を付けます。忘れないように手に書いておくのも良いかも知れないです、ね」

 空港の独特の喧噪の中に身を置くと――と言っても時々二人で赴く大阪のリッ○も外国人のゲストは多いし、最近の大阪の街では英語だけでなく北京語と韓国の言葉もアナウンスされるので慣れているといえばそうなのだが――別離の哀しさめいた感情が何故かこみ上げて来た。

 表情には出さないように内心で堪えていたが。

「出国の方ではなくて、初めて帰国した入国エリアの門で祐樹を見た時は息が止まりそうなくらい驚いた……あの頃のことを思えば何だか夢のような気がするな……。

 こうして当たり前のように肩を並べて歩いていられるので」

 最愛の人の仄かな笑みが淡い追憶めいた色に染まっているようだった。

「ああ、あの時ですか。あれは、出迎え予定だった人間が体調を崩してしまって急遽運転手役を仰せつかったのです。

 今だから申し上げられるのですが、正直なところ――いえ、別に職業差別の意図はないのですけれど――運転をする側の人間と、ベンツの後部座席に当たり前のように座る貴方という存在の遠さに自分でも言いようのない怒りがこみ上げていたのです。

 第一印象は視線が吸い込まれるほど好みでしたけれど、その後の貴方の言動が――いえ、今ではキチンと分かっていますよ、どれだけ驚きを隠そうとなさっていたのかとか、言葉が上手く出てこないほどの衝撃だったということも――冷たい感じしかしなくてですね……」

 懐かしさと共に、お互いがお互いを想っていたにせよ、見事にボタンを掛け違ったような最悪の邂逅を――あくまでも祐樹にとっては初対面だった――思い出して笑ってしまう。

 隣を歩く最愛の人の表情も淡い笑みを浮かべていた。

「そうだろうな……。祐樹が病院に在籍していることを確かめて帰国することを選んだのだが、出迎えの予定者リストには入っていなかったので、てっきり京都で会えるとばかり思っていて。 

 あの時ほど頭が真っ白になったことはないような気がする。

 ただ、回り道をした甲斐が有ったと、今になってみればしみじみと思えるので良かった」

 出会った頃とは全く異なる種類の落ち着きというか、祐樹の隣をごくごく自然な感じで笑って歩いている最愛の人は――しかも場所が空港という初対面の場所だったので――あの時とはまるっきり異なる印象を抱いてしまった、良い方に。

 最愛の人も同じだろうと思って視線を向けると意外な表情だったので内心驚いてしまう。



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気分は下剋上 学会準備編 325

「直近の纏まった休みはお正月ですが、取り敢えず先に部屋を取っておいた方が良いですよね?GWやお盆と同じく旅行シーズンなので早めに押さえておかないと部屋が無くなりますからね」

 祐樹のノートPCは久米先生が新しいのを買ったので不要になったのを貰った――医局のウワサでは強奪したという説まであるが、多分大袈裟に話しが伝わったのだろう――物なので起動が遅い。

 ただ、祐樹は利便性をそれほどは求めていないようだし、個人的には楽しいお喋りの時間が長くなってとても嬉しい。

「そうだな……。ただ、お正月休みに祐樹の実家に帰らなくても良いのか?」

 祐樹が可笑しそうに見上げて来る。

「今、母はオーク○に居ますし、異常がなくとも岡田看護師のコーチ役で当分はこちらに居ますよ。

 新人の悲しさで彼女の勤務シフトはきっとてんでバラバラな感じに組まれていると思いますので、母がどの時間に拘束されるかは今の時点で分からないのですがそんなのは直前に電話したら良いだけの話ですよね。

 つまり、普段の年よりも会える時間がふんだんに有るのですから帰省しなくても許してくれるでしょう。

 ああ、やっとインターネットに繋がったようですね。

 検索っと」

 祐樹は意外にも――自分ならそのホテルの公式サイトに行くという習慣が何となくついてしまっている――テレビとインターネットの広告で見た覚えのある固有名詞を打ち込んでいる。

「ここの方が安い料金のサイトを選べるそうです。色々なホテルの価格サイトを纏めているらしくて。

 杉田弁護士に教えて貰いました。ほら、あの先生は東京の裁判所とかに――どこに有るのか具体的には知りませんが――顧客の依頼で出張する時に5万円の別料金を取るらしいです。

 今は規制が撤廃されて自由に決めても良いらしいのですが、未だ多くの弁護士が利用している弁護士の一般的価格だそうです。そして、どんなホテルに泊まろうが5万円なので、出来るだけ安いホテルを予約して料金を浮かす努力をしているらしいです。

 えっと、検索はと……」

 宿泊地を香港に絞り込んだ祐樹の指が止まった。

 確かに5つが最高らしい「星の数」とかゲストの声しか画面上には出て来ない。

 しかし、確か香港の大きさは東京23区と同じくらいだと記憶していたけれどもそんな密集した土地にこれだけ多くのホテルが有ることに驚いてしまった。

「あ、リッツ・カールト○はここに有る……」

 マウスを使わずに器用にスクロールしている裕樹の細かい指の動きにツイあらぬことを連想してしまって慌ててその考えを打ち消した。多分自分も同じことは出来るだろうが、職場でもこのマンションでもマウスを使い慣れているので、祐樹の指の動きはある意味新鮮だった。

「本当だ……。ビルの感じは大阪のと似ているな……。京都の方は建物の高さが条例で定められているからだろうが、全く異なるので……」

 祐樹の指がリッ○の最安値のサイトに跳ぶために動いているのを見ながら他愛のない感想を述べた。

「ああ、京都のリ○ツは更地から建てたわけではなくて、どこかのホテルが撤退だか破綻だかは忘れましたが……とにかく建物をリサイクルしたような感じで営業しているので建物の趣きが異なるのでしょう。

 香港はNYと同じく強固な地盤の上に有るらしくて、建物の高さ制限もないらしいです、耐震性は考慮に入れなくても良い側面も関係しているのではないでしょうか?」

「ああ、このサイトが最安値ですね。部屋の画像っと」

 祐樹の指が細かく動く度に、スライドショーのように様々な部屋とかレストラン、そしてプールなどが現れた。

「如何ですか?ざっとご覧になった部屋の感想は?」

 祐樹が目の輝きを強くして自分を見ている。

「窓から見える風景が異なるのは当たり前と言えばそうなのだが……。部屋の調度とかは大阪とかベルリンと大差がないような気がする……」

 強いて言えば、国際公開手術の時に泊まった――そして途中で祐樹も駆けつけてくれたので一緒だった――ベルリンのリッ○は現代的な感じが濃かったような記憶が有るものの同じ系列のホテルは統一したデザインなのかもしれない。

「確かにそうですね。お邪魔したベルリンのはモダンな感じのスイート・ルームでしたが……」

 邪魔などされた覚えはなくて、むしろ来てくれて物凄く嬉しかった。

 国際公開手術という晴れ舞台は成功すれば外科医として更に名前が上がるが、失敗すれば日本はともかく世界的な外科医学界からは失笑と冷笑を浴びせかけられる。

 しかも、外科医のギャラリーは失敗することの方を望んでいる人ばかりなのでサッカーで言えばアウェー状態だ。

「私は祐樹が直接見守ってくれていたので――と言ってもモニター越しだが――自分がイメージトレーニングしていた以上に会心の出来映えだと思っている。邪魔どころか祐樹のお蔭でああいう結果が残せた……本当に有り難いと、感謝してもしきれないほどだ……」

 祐樹は可笑しそうな感じで唇を弛めている。

「そんなことはないと思いますが、気のせいでも――お役に立てたなら何よりでした。

 で、ペニンシュ○ですよね」

 先程のサイトに戻って、検索窓と思しき所に早いタッチで文字を入力していく祐樹の指を見惚れた。

 その指は――祐樹は自分の指を細くて長いと褒めてくれるが――男性的な造形美に満ちている上に慣れた感じで動く様子は手技を見ているような鮮やかさだった。

「シンガポールのラッフル○ホテルにビルが調和した感じですよね。

 同じように旧植民地だったからでしょうか?」

 祐樹の言葉通り、コロニアム風の建築だった。ただ、ラッ○ルズの重厚さではなくてより英国風が強い感じがする。同じようにイギリスの植民地だった時代が長かったにも関わらず。

「そうだろうな……。ただ、この一階の大きなカフェも素敵だが、部屋から出ないとなると何だか勿体ないような綺麗さだな……」

 祐樹と二人きりで過ごす方が自分にとって遥かに大切なことではある。ただ、やはり飛行機で行くからには、特別な体験もしてみたいような気もするのも事実だった。

 祐樹が心の底から楽しそうな笑みを浮かべている。

 何をその魅惑的な唇が告げてくれるのだろうか。

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気分は下剋上 アメリカ学会編 6 (I5禁)

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 紅に染まった腕が小刻みに震えながら空間を艶やかに濡らした後に祐樹の首筋へと絡んだ。同時に唇と舌が最愛の人にしてはやや粗雑な動きで祐樹のと重なり合う。

 お互い絶頂を極めている最中なので仕方のない仕草だったのだろうが。

 眉根を甘く苦しげに寄せた最愛の人の「その瞬間」の顔は壮絶な色香を放っている。その熱い息吹を感じながら交わすキスの甘さはこの上もないほどの蠱惑に満ちていた。

 真珠の熱い迸りを奥処に放ちながらの口づけは最高の美味だった。

「とても良かったです。時間が来たら遠慮なく仰ってくださいね」

 シーツの白い波に紅色の肢体が汗の雫を纏って墜ちて行くのを腕で支えながら言った。

「私も……とても、悦かった……。

 時間が来たら知らせるので大丈夫だ……」

 整わない熱い息を唇で感じながらキスの合間に色気のない話しをしてしまう。

「このまま、部屋で休んでいかれますか?

 そういう甘やかに薫る貴方を他の人間には見せたくないのですが……」

 一つに繋がった身体を解くと、濃い紅色に染まった双丘の狭間から真珠の雫が零れ落ちて紅色の肌を飾っている。

「……部屋を出れば、隠せると思う、多分。

 それに、折角空港まで来たのだから、出国ゲートまで見送りたいし……。

 ただ、祐樹がそう言うのであればここで見送る……が?」

 紅色に濡れた唇から健気な言葉を告げられると、気持ちが揺らいでしまう。

「貴方には敵いませんね……。

 花園の奥を洗って差し上げる時間がないのはとても残念ですが……、ご自分で出来ますか?」

 愛の交歓の後の恒例になっている祐樹の役目だったが、流石にその時間はなさそうだった。

「祐樹は誤解している。というよりも、忘れているのかも知れないが……。

 初めてこういう関係になった大阪のリッ○での夜、あの時は、その……、自分で……後始末を……した」

 恥ずかしそうな口調が紅色に染まった唇から出ると、何だか背徳感すら抱いてしまう。

「そう言えばそうですね。あの時は貴方が慣れているとばかり思っていましたから」

 今思えば完全な嫉妬というか理不尽な怒りの感情に任せて手酷く身体を開いてしまったなと半ば猛省しつつ何だか懐かしく思い返した。

「空港も……私だけですけれど……貴方に逢えた記念すべき場所です、初めて。

 ですから、その二人の原点というべき場所なので、是非ご一緒したいですね。ネクタイは室内に残しておいて、前髪も下りているので多分貴方だと見破る人は居ないかと……」

 愛の交歓の後の気怠い甘さとか、普段以上に瑞々しい表情は――出来れば祐樹だけで独占したいものの――公的な場所に居る時とはかなり異なるので大丈夫なような気もする。

「祐樹こそ、前髪が乱れている。

 ああ、それに下着がない……な。どうしよう……」

 最愛の人の床に散らばった服の最後の一枚は、先走りの大きな雫で濡れそぼっていた。

「下着なら、私のを使って下さい。空港の中にもそういう日常品を売っている店が有りますよね?そういう店で買いますので」

 海外旅行というほどの大荷物ではなかったものの――それを言うなら最愛の人の方が整髪料その他で鞄は大きい――その程度は当然持参している。

「ざっと身体を洗い流して来ます。3分で済みますから貴方はその後で使って下さい。

 一緒に入ると……飛行機に乗りたくなくなってしまって……。貴方の上に乗りたくなってしまいかねないので」

 手を付け根まで絡めつつ、愛の交歓の終わった合図のピリオド代わりの口づけを交わした。

 祐樹が先にバスルームを使うのも、どう考えても身体の負担が大きい最愛の人の方に少しでも休んで欲しかったからだった。空港に隣接している日○ホテルは当然ながら一泊料金を払っているので、飛行機が飛び立った後に最愛の人が使ってくれるだろう。ファッション・ホテルなどのように――最愛の人とは訪れたことはないものの――「ご休憩」の料金はないのは知っているハズなので。

「前髪は申し訳ないですが、直して下さいますか?私が自分ですると何だか変になりそうなので……」

「分かった……」

 着衣を整えてバスルームから出て、部屋の乱れをざっと整えていると入れ違いに入った最愛の人は何故か、腰にバスタオルを巻いただけの姿だった。

 薄紅にまで弱まった素肌の色は良いとして、ルビーの紅さで煌めく二つの尖りとかは目の毒というか……、見ていてつい動作が止まってしまう吸引力に満ちている。

「ワイシャツは無事だったハズですが?」

 見てしまいそうになる衝動を必死で律しながら聞いてみた。

「……それが……着ると、布地に擦れて熱くて甘い電流が身じろぎする度に流れてしまうので……もう少し、熱を冷まそうかと……。先に祐樹の前髪を整えようかな……と」

 先程の乱れた肢体の熱がまだ余韻を残しているらしい。責任を感じつつ机の前に座った。

「先程とは逆ですね……」

 薄紅色の長く器用な指先が祐樹の髪を整えていくのを鏡で見ながら最愛の人の艶やかで甘やかな肢体を眺める。

「先程と?」 

 この程度の雑談で器用過ぎる指が止まることはないのも知っていた。

「高貴な方を寝台で慰める宦官の話をしましたよね?ベッドの上で。

 薫るような紅色の素肌とか、ルビーよりも紅く煌めく二つの尖りを目の当たりにしながら服を整えた後に髪の毛を触って頂いているという非対称性は、どう考えても貴方にご奉仕されている気分です……、光栄なことに」

 鏡に映った最愛の人の頬が紅色を濃くしたものの、指の動きは微塵も揺るがずに流れるような感じで髪の毛を整えていくのも彼らしい。

「――これで良いか?先程と変わりなく再現した積もりだが?」

 鏡に映った――そして敢えて見ないようにしている肢体の存在はこの際忘れようと努めていた、ついつい視線が行ってしまってはいたが――祐樹の涼しげな表情は先程の名残りを微塵も留めていない。

「有難うございます。これで万全の形で登壇出来ると思います。しかし、貴方の方こそ大丈夫ですか」

 ルビーよりも紅い尖りの煌めきを指でそっと触ってしまう、細心の注意を払いつつ。

「硬さはともかく、熱は引いているようですね……」

 努めて事務的な口調で告げる。そうしないと、時間を本当に忘れそうな魅惑に満ちていたので。

「多分……。部屋を出ると、もっと冷めるだろうから……」

 気持ちの切り替えの早さも優秀な外科医としては必須条件だが、最愛の人もその例に漏れない。

「服を着て来るので……、そのう――下着を貸して欲しい」

 最愛の人の唇が羞恥に甘く掠れた声で花開くようだった。



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気分は下剋上 学会準備編 324

「ネット証券なら取引手数料のところが割と多くなっているので、例えば『証券会社・手数料無料』とかのキーワードで検索して必要事項を入力して、ああ、マイナンバーカードも必要だったな。その後郵送でログイン番号とパスワードが送られて来るのでその会社のサイトに入って入金すれば取引が出来るようになる。

 最初は『現物取引』でコツを掴んで、ある程度キャリアを積んでから『信用取引』に移行すれは良いと思う」

 祐樹には色々と教えて貰うことは多かったのに、その反対の立場が来るとは思いもしなかった。

 そのことが単純に嬉しい。

「そんなに簡単なのですか?何だかもっと複雑な手続きが必要かと思っていました。それなら面倒なことが苦手な私にも出来ますよね」

 祐樹は何だか新しいおもちゃを手にした子供のような感じだった。

「最近はマイナンバーカードとかを写メで撮っただけで登録出来る会社も多いらしいので、手軽さは加速している感じだな……。

 まあ、政府も非課税額を作ったりして、投資を促しているのでその流れも有って証券会社も色々と工夫している」

 腰に回った祐樹の腕が力強さを増して密着度が高まった。それだけで薔薇色に弾む心がよりいっそう鼓動を早める。それに何だか血液がペパーミントの爽やかさで満たされているような――あくまでも比喩的なモノで、実際にそんな事態は起こっているわけではない――気がした。

「株式投資のコツとか有りますか?旅行費用の足しにしたいので」

 旅行……?と思ってしまう。確かに香港かどこかに行こうという話はしていたものの、話の続きとしては少し不自然だ。

「コツというか……原始的な商売の基本だな。安く買って高く売る。ただそれだけだが……」

 原始的とわざわざ断ったのは、例えば億単位が最低価格のMRIなどは性能で値段が付くので安いと精度が落ちるからだった。

「ああ、なるほど。原価がタダに近いものを売ったら儲かりますからね。

 母もあの小さい庭で野菜を育てています。それはご存知だと思いますが」

 宅急便で送って貰っているので当然知っていた。

「お母様の育てたトマトなどは本当に美味しいからな……。完熟直前まで枝に付いていたのは百貨店のよりも味が良いし甘さも、そして栄養価も高そうなので」

 自分もマンションのベランダでプチトマトの栽培をしてみようかと思ったことは有るが、毎日のように水を撒かなければならないので――ハウスキーパーさんに頼むという方法もあったが何だかそこまで要求するのは流石に気が引ける――断念した覚えがある。

「何だか町内会の有志が集まって高速道路のサービスエリアで販売するという試みが有って、そこで売っているみたいですよ。

 あれだって原価はタダみたいなものですよね?

 それと同じ原理ですか……」

 お母様の丹精が入っているので、無料だとは思わないが株だって本気でしようとすれば決算書の読み方とか市場の動向とかもチェックしなければならない。

「大雑把に言うとそうだな……。

 それはそうと、どうして旅行費用なのだ……?」

 祐樹の心の底から可笑しそうな、そして穏やかな笑い声が頭の上に降ってきた。

「『披露宴』の次は『新婚旅行』ですよね、普通。

 まあ、私達の場合はイレギュラーなことも重々承知していますが……。

 それでも『新婚旅行』って普通のカップルでもホテルの部屋は良いところを取りますよね?

 『新婚旅行』は考えていましたし、そのお金も用意していましたけれど……更にグレードアップするために稼ごうかなと思ってしまいました」

 「新婚旅行」と聞いて、血中のペパーミントの濃度が上がったような気がした。そこまでは全く考えていなかったので、祐樹の配慮の細かさに薔薇色の気持ちが更に弾んだ。

「『新婚旅行』か……。それは素晴らしいアイデアだな……」

 祐樹の指が顎の辺りを優しく撫でてから、襟足の頭髪を梳いてくれる。しかも後ろ髪と首との境い目は敏感な部分だ。

「熱烈に愛し合っている新婚の夫婦は『新婚旅行』で何をするかご存知ですか」

 意味有り気な指の繊細な動きに先程とは異なった細い電流が背筋を淡く流れ落ちて行く。

「観光でないのは分かるけれども……」

 祐樹の低い笑い声が更に秘密めいた響きを孕んでいる。単なる観光だったらそういう言い方をしないだろうから。

「部屋に籠りきりで……食事はルームサービスで済ませます。寝る時以外はずっと愛の交歓をするというのが熱烈なカップルの過ごし方ですね。

 ほら、結婚の過程も人それぞれです。例えばお見合いとかで『何となくこの人が良い』みたいな消去法で決める夫婦も有ると聞いています。しかも遠距離とかでそんなに会っていない場合などは、お互いが好きな観光地を一緒に回って色々な話を交わして徐々に心の距離を近くしていくというのが一般的なようですが。

 そういうのではない場合は、ホテルの部屋から出ないという選択肢ですね。

 私としては二人っきりの部屋でひたすら愛し合うのを希望したいのですが、如何でしょう?香港のペ○ンシュラの――先程の方もお勧めして下さったリッツ・カー○トン香港も捨て難いのですが、それだとマンゴープリンが食べられなくなりますよね――まあ『新婚旅行』はスイートルームというお約束が有るので、どちらのホテルの部屋が良いか比較検討してみませんか?」

 魅惑的なお誘いに、マンゴーの芳醇な甘さが心の中を満たしていく。

「私も部屋の中で過ごす方が良いな。

 神様から特別に貰った、例の地震の後の休暇の時みたいに……いや、海外なので更に解放感に浸ることが出来る……。ああいう贈り物は一回だけかと思っていたが、また祐樹とあんな天国よりも心地よい時間を過ごせるのかと思うと夢のような気がする……。

 『披露宴』だけでも充分過ぎるほど幸せだと思っていたが『新婚旅行』まで考えてくれていたのだな……」

 祐樹の腕が緩んだかと思うと、立ち上がるように手の動きで誘導された。

 何をするのかと思って佇んでいると、祐樹が愛用しているノートPCを持ってリビングに戻って来た。

「ホテルの部屋とか調べてみませんか?色々と紹介されているサイトが有りますので、ペニンシュ○とリ○ツのスイートルームの雰囲気とかも分かると思います」

 祐樹もとても楽しそうな感じでキーボードを叩いている。

 ワクワクしながら祐樹の肩越しに画面を覗き込んだ。

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気分は下剋上 アメリカ学会編 5 (I8禁)



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「もう片方を……歯で噛んで欲しっ……。そして、舌で先端部分を転がしてっ……」

 紅の濃さを増した表情が蠱惑的に煌めいているようだった。

 それに、純白のシーツの上にしどけなく跳ねる両の足の指が丸まっている。

 愛欲に乱れている紅い花の風情は今にも散らんばかりの儚さと華麗さが両立しているようで、堪らないほどの熱い情動がこみ上げてくる。

 そして最愛の人を求める気持ちも臨界点を超えそうで、辛うじて自制した。

 ただ、ベッドの上で花開いた肢体を小刻みに揺らしている最愛の人も祐樹の愛情と欲情の象徴がどうなっているのかは涙で揺れる視線で確かめていたのも分かった。

 多分、時間が限られているという点を加味して早く埒をあかそうと頭の隅で考えているに違いない。

「舌と歯でご奉仕ですか……。喜んでして差し上げますが、ご存知ですか、中国の宦官の中には空閨を持て余した高貴な女性の薫るような肢体を口と手で慰めて絶頂に導く役割をした人も多かったと何かで読みました……。

 宦官は当然コレがないので……」

 祐樹の手が熱く滾った自らのモノを意味有り気に手で触れると、紅いベルベットのまなじりが更に紅く染まってとても綺麗だった。

「あっ……祐樹の歯……とてもっ……」

 胸の尖りの先端からと、最愛の人が紅く細い指を埋めた場所から微かな、そして確かな湿った音が部屋の空気を情交の紅に染めていく。

 そして、シーツの上からしなやかに反った上半身が祐樹の顔へと愛撫をせがむように動くのも。

「もうそろそろ……、宦官に出来ないことをしましょうか?

 聡も待ち焦がれていらっしゃいますよ、ね」

 歯で強く噛んだ尖りがルビーよりも紅く濡れて煌めいている。その愛おしい場所に低い息を掛けながら上半身を倒そうとすると、最愛の人は涙で潤んだ切れ長の瞳を逡巡するように泳がせていた。

「この……愛の……交わりの形だとっ……後がっ……大変なので……」

 ベッドの軋む音までもが紅く濡れているような気がしたのは、紅色に染まったしなやかな肢体が鮮やかに反転したからだった。

 後ろからの向きで最愛の人の極上の花園を蹂躙する方が祐樹の着衣などに真珠の放埓が付いてしまう恐れがないのを、頭の隅の理性で考えてくれたのだろう。

 胸のルビーの尖りと、花園の中の凝った場所という最愛の人が弱い場所を、しかも祐樹の目の前で慰めているというだけでも悦楽の紅の深淵に身を沈めているというのに、そういうことまで配慮してくれる健気さによりいっそうの愛おしさが募る。

 そして紅の双丘を開いている指の紅さと、更に紅い花園の中、そしてその所々に宿った真珠の雫の煌めきに見惚れてしまった。

「ゆ……祐樹っ……早くっ……欲しいっ……。

 そうでないとっ……」

 甘い嬌声混じりの切羽詰まった声が部屋をよりいっそうの紅に染めていくようだった。

「そうでないと……?」

 答えは分かりきってはいたものの、その濡れたベルベットの唇で聞きたかった。

 後ろから手を回して、更に硬度を増した二つの尖りを摘まんで強く回した。

「ああっ……、先程よりもっ……悦っ……い。ルビーが、木端微塵に……砕けるようでっ……。

 祐樹のを……迎え入れるっ……前にっ……独りでっ……弾けて……しまいそうでっ……」

 紅の細い指が更に広げられては祐樹の熱い愛情の滾りを迎え入れようとする。

 その太ももの内側に細い真珠の滝が滴っているのも桃色の薔薇の花の上にミルクを垂らしたよりも綺麗で妖艶な眺めだった。

「差し上げますよ。こんなに艶やかで鮮やかな肢体で誘って下さった御礼です」

 腰を進めると、濡れた花びらが待ち焦がれたように早急な動きで包み込んでくれる。先ほどの愛の交歓の余韻で熱さと厚さの増した感触は物凄く悦い。

「ああっ……祐樹そこはっ……」

 先端で凝った場所を衝くと背筋がしなやかに反って祐樹の身体の方へと傾いだ。

「先程よりも……尖った感じが……とても……素敵です。胸の……二つの……尖りも…熱くて……硬いですし」

 湿った音を立てて二人の身体がより深く繋がっていく。

「ゆ……祐樹っ……紅いっ……花火が……爆ぜそうっでっ……」

 軋むベッドの上で、最愛の人が紅く跳ねる肢体を持て余したように傾いだ。

「聡の……花園は……いつもよりも……素晴らしいので……私も……です……」

 いったん扉まで身体を引いてから、汗の雫を宿した腰を両手で固定した。

「そんなに……甘く……乱れた、聡の艶姿を……拝見したので……私も……限界です……。

 花園の……奥まで……、一気に……貫きます、ね」

 そう告げると、先程よりもしどけなく開いた両脚が紅を濃くした。その滑らかな素肌の上に真珠の雫が滴っているのもとても綺麗だった。

 そして腰を思いっきり前へと打ち付けると、湿った結合音を奏でている、繋がった場所が。

 そして、最愛の人の紅色の濡れた声が低く高く部屋に響くのと同時に二人で悦楽の頂上に上り詰めた。



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基本的にこちらのブログを更新した日は何かしら更新しておりますので、読んで頂ければ幸いです。


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