「『スイートルームの予約はお電話で承ります』になっているな……。
あれ?しかし先程の比較サイトから跳んだ最安値提供サイトでは、確かスイートも選択肢に含まれていたように記憶しているが?」
チラッと見ただけだったが、確かにそういう文字が有ったのを鮮明に覚えている。祐樹が褒めてくれるほどの記憶力を持っていることを内心で花束を抱えたような気持ちがした。
何しろ祐樹の役に立てるのだから、これに勝る喜びはない上に、明日の「披露宴」だけでなくて「新婚旅行」までが加わったのだから。
「そうでしたっけ?そこまでは見ていませんした。
しかし、貴方の驚嘆すべき記憶力は素晴らしいと思います。私が知っている中で最も優れている人ですよね。
お正月に香港に行ってペニンシュ○に泊まるのは決定ですが、デラックス・ハーバービュースイートで良いのですよね。
そこまでは分かるのですが、そして新聞の全面を漏れなく記憶していらっしゃるのも知っていますが、良く香港ドルまでさっと出て来ますよね?
そして外貨の場合変動が有るし、FXをしている人間も知っていますが……香港ドルも安値の時に買っておいた方が良いのでしょうか?」
祐樹のPCは久米先生から貰ったモノなので、動きがイマイチだ。
まあ、祐樹が(良い)と思っている様子なので自分が口出しする問題ではないし、二人で「新婚旅行」にまつわる話しが出来るのも却って好都合だったが。
「FX取引もまずは、証券会社に口座を作って入金してから取引が出来るのだが……。
レバレッジが効くのが長所でもあり、短所でも有るな……。
それにロスカット機能は一応付いているが、急激な値動きの時にはサーバーがダウンしても、それはこちらの『損失』になってしまうので。
しかも、株取引だったら、例えば祐樹がMRIとかCTの新型が出るとか営業マンが上司を連れて商談というかプレゼンテーションに来るだろう?
その時に革新的な技術が加わったモノだと分かれば、株価は上がる。それに祐樹が良い会社だと思った会社は、多分他の人間も良いと思うのでそれも株価に影響するが、あくまでも日本の経済とかその会社だけの話だ。
しかし、FXの場合はアメリカの雇用統計とか大統領選などの結果を受けて変動するものだから、専業で行っているとか時間の余裕の取れるような人、例えば子育てを終わった専業主婦とかそういう人が向いていると思う。
祐樹も知っている通りアメリカと日本の時差が有るので、雇用統計が出る時間は日本の夜中だし、その時にはPCに貼り付いていないと大けがをすることにもなりかねないので。
救急救命室での勤務の時は、時間が有るかどうかは搬送される患者さん次第だろう?
久米先生はゲームをして時間潰しをしているようだが、その場合、最悪ゲーム上の『死亡』程度で済むが、レバレッジを掛けていて患者さんが搬送されてしまっては最悪の場合、お金が吹っ飛びかねないのでお勧めは出来ない、な。
香港ドルは確か外貨とは認められてないので、FX市場には出回っていないかと思う」
祐樹が珍しく言い難そうな表情を浮かべている。
自分も専門家ではない上に、説明が上手だとも思っていなかったので多分そのせいだろうが。
「あのう、レバレッジって『テコ』の意味ですよね。外貨を買う時に梃子がどう関係しているのかが分からないのですけれども……」
物凄く申し訳なさそうな感じで言われてしまって、祐樹がこういう口ぶりと表情なのは非常に珍しかったので、ついその新鮮さに見惚れてしまった。
「確かにその意味でも使われるが。
えと、つまり例えばドルが100円の時に買い注文を出して買うとする。そして120円の時に売れば20円の儲けになる。しかし、日本の認可を取り付けているFX証券会社の場合は――外国にはもっとすごいレバレッジが有るが――1ドル100円の時に1万円分をドルに変えておいて、120円の時に売ったら――最近は手数料が無料の会社もあるので、手数料は考えずにおこう――儲けは20万円になる。
しかし、レバレッジというシステムを使えば1万円分で10倍とか25倍まで買えるようになる。
10倍でも200万円の儲けが出るということになる。だから祐樹の口座には200万円が残る計算になる」
祐樹が真剣な眼差しで自分の説明を聞いていた。画面は先程のホテル比較サイトのペニンシ○ラ香港の白亜と金の取り合わせが素晴らしい「ザ・ロビー」の画像を表示していたが、説明を続けることにした。
「ああ、なるほど。それでテコみたいにポーンと飛ぶイメージなのですね。
しかし、1万円でレバレッジを10倍にして買った場合に――いえ、私にとっては「捨てて良い金額」ではないですが、まぁ、それはあくまでも仮定の話ですよね――100円で買ったドルが80円になってしまったらどうなるのですか?まあ、急に80円になることはないでしょうがこれも例えばの話です」
祐樹の質問は的確だったし充分想定内でもあったので、肩を竦めながら告げた。
「あくまでも1万ではなくて、システム上10倍のレバレッジが効いているということになるので、そこでドルを売る注文をしてしまえば、200万円の損失という計算式になる」
祐樹が(え?)という表情を浮かべた。まあ、資産を築く前の自分も同じような表情になっただろうから一概に祐樹がどうのということではない。
「しかし、なけなしの一万円しかその口座に入っていない場合、199万円はどうなるのですか、マイナスで計算されますよね」
少し考えてから質問に答えることにした。分かりやすくに説明出来るかどうか自分でも分からなかったので。
「本来は、急激に値下がりした場合、PCが計算して無理やり決済されることになっていて、それをロスカットと言うのだが、値動きが激しいということはそれだけ激しく売買されるのでサーバーがダウンしてしまうことも有るそうだ。
そういう場合でもPCはある意味非情なので、マイナス200万円というお金を口座に入金しないと借金ということになるし、そうなると何が何でも期間内に200万円を入金しなければならないのがルールで、実際それを苦にした自殺者まで出ている。
そういう意味では為替の値動きを体感するためにレバレッジの怖さを知るまでは1万円とかの最低ラインで実際にお金を動かしておいて、自分が向いているとかの判断をする方が良いだろうな」
祐樹が何かを思い出したような表情になった。
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