腐女子の小説部屋

創作BL小説を綴っています。ご理解の有る方【18歳以上】のみ歓迎致します 申し訳ありませんが書く時間を最優先にしたいのでリコメは基本的に致しません。 要望・お礼などは「日記」記事でお応えしますが、タイムラグがあることも多いです。

2019年07月

気分は下剋上 学会準備編 328


「『スイートルームの予約はお電話で承ります』になっているな……。

 あれ?しかし先程の比較サイトから跳んだ最安値提供サイトでは、確かスイートも選択肢に含まれていたように記憶しているが?」

 チラッと見ただけだったが、確かにそういう文字が有ったのを鮮明に覚えている。祐樹が褒めてくれるほどの記憶力を持っていることを内心で花束を抱えたような気持ちがした。

 何しろ祐樹の役に立てるのだから、これに勝る喜びはない上に、明日の「披露宴」だけでなくて「新婚旅行」までが加わったのだから。

「そうでしたっけ?そこまでは見ていませんした。

 しかし、貴方の驚嘆すべき記憶力は素晴らしいと思います。私が知っている中で最も優れている人ですよね。

 お正月に香港に行ってペニンシュ○に泊まるのは決定ですが、デラックス・ハーバービュースイートで良いのですよね。

 そこまでは分かるのですが、そして新聞の全面を漏れなく記憶していらっしゃるのも知っていますが、良く香港ドルまでさっと出て来ますよね?

 そして外貨の場合変動が有るし、FXをしている人間も知っていますが……香港ドルも安値の時に買っておいた方が良いのでしょうか?」

 祐樹のPCは久米先生から貰ったモノなので、動きがイマイチだ。

 まあ、祐樹が(良い)と思っている様子なので自分が口出しする問題ではないし、二人で「新婚旅行」にまつわる話しが出来るのも却って好都合だったが。

「FX取引もまずは、証券会社に口座を作って入金してから取引が出来るのだが……。

 レバレッジが効くのが長所でもあり、短所でも有るな……。

 それにロスカット機能は一応付いているが、急激な値動きの時にはサーバーがダウンしても、それはこちらの『損失』になってしまうので。

 しかも、株取引だったら、例えば祐樹がMRIとかCTの新型が出るとか営業マンが上司を連れて商談というかプレゼンテーションに来るだろう?

 その時に革新的な技術が加わったモノだと分かれば、株価は上がる。それに祐樹が良い会社だと思った会社は、多分他の人間も良いと思うのでそれも株価に影響するが、あくまでも日本の経済とかその会社だけの話だ。

 しかし、FXの場合はアメリカの雇用統計とか大統領選などの結果を受けて変動するものだから、専業で行っているとか時間の余裕の取れるような人、例えば子育てを終わった専業主婦とかそういう人が向いていると思う。

 祐樹も知っている通りアメリカと日本の時差が有るので、雇用統計が出る時間は日本の夜中だし、その時にはPCに貼り付いていないと大けがをすることにもなりかねないので。

 救急救命室での勤務の時は、時間が有るかどうかは搬送される患者さん次第だろう?

 久米先生はゲームをして時間潰しをしているようだが、その場合、最悪ゲーム上の『死亡』程度で済むが、レバレッジを掛けていて患者さんが搬送されてしまっては最悪の場合、お金が吹っ飛びかねないのでお勧めは出来ない、な。

 香港ドルは確か外貨とは認められてないので、FX市場には出回っていないかと思う」

 祐樹が珍しく言い難そうな表情を浮かべている。

 自分も専門家ではない上に、説明が上手だとも思っていなかったので多分そのせいだろうが。

「あのう、レバレッジって『テコ』の意味ですよね。外貨を買う時に梃子がどう関係しているのかが分からないのですけれども……」

 物凄く申し訳なさそうな感じで言われてしまって、祐樹がこういう口ぶりと表情なのは非常に珍しかったので、ついその新鮮さに見惚れてしまった。

「確かにその意味でも使われるが。

 えと、つまり例えばドルが100円の時に買い注文を出して買うとする。そして120円の時に売れば20円の儲けになる。しかし、日本の認可を取り付けているFX証券会社の場合は――外国にはもっとすごいレバレッジが有るが――1ドル100円の時に1万円分をドルに変えておいて、120円の時に売ったら――最近は手数料が無料の会社もあるので、手数料は考えずにおこう――儲けは20万円になる。

 しかし、レバレッジというシステムを使えば1万円分で10倍とか25倍まで買えるようになる。

 10倍でも200万円の儲けが出るということになる。だから祐樹の口座には200万円が残る計算になる」

 祐樹が真剣な眼差しで自分の説明を聞いていた。画面は先程のホテル比較サイトのペニンシ○ラ香港の白亜と金の取り合わせが素晴らしい「ザ・ロビー」の画像を表示していたが、説明を続けることにした。

「ああ、なるほど。それでテコみたいにポーンと飛ぶイメージなのですね。

 しかし、1万円でレバレッジを10倍にして買った場合に――いえ、私にとっては「捨てて良い金額」ではないですが、まぁ、それはあくまでも仮定の話ですよね――100円で買ったドルが80円になってしまったらどうなるのですか?まあ、急に80円になることはないでしょうがこれも例えばの話です」

 祐樹の質問は的確だったし充分想定内でもあったので、肩を竦めながら告げた。

「あくまでも1万ではなくて、システム上10倍のレバレッジが効いているということになるので、そこでドルを売る注文をしてしまえば、200万円の損失という計算式になる」

 祐樹が(え?)という表情を浮かべた。まあ、資産を築く前の自分も同じような表情になっただろうから一概に祐樹がどうのということではない。

「しかし、なけなしの一万円しかその口座に入っていない場合、199万円はどうなるのですか、マイナスで計算されますよね」

 少し考えてから質問に答えることにした。分かりやすくに説明出来るかどうか自分でも分からなかったので。

「本来は、急激に値下がりした場合、PCが計算して無理やり決済されることになっていて、それをロスカットと言うのだが、値動きが激しいということはそれだけ激しく売買されるのでサーバーがダウンしてしまうことも有るそうだ。

 そういう場合でもPCはある意味非情なので、マイナス200万円というお金を口座に入金しないと借金ということになるし、そうなると何が何でも期間内に200万円を入金しなければならないのがルールで、実際それを苦にした自殺者まで出ている。

 そういう意味では為替の値動きを体感するためにレバレッジの怖さを知るまでは1万円とかの最低ラインで実際にお金を動かしておいて、自分が向いているとかの判断をする方が良いだろうな」

 祐樹が何かを思い出したような表情になった。


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気分は下剋上 アメリカ学会編 9

 

 他人の気配が近付いて来ないかどうかだけを気にしながら唇を重ねた。

 最愛の人も普段以上のひたむきさで唇だけでなく舌まで祐樹の口の中に差し込んでくる。

 お互いを求める微かな水音が微かに響いている。流暢な英語などのアナウンスが切れ切れに聞こえる空間で。

 空いた手で最愛の人の肩から腰のラインを辿って下ろしていった。普段なら――密閉された場所以外では――どこか遠慮がちな人も祐樹の首に指を縋るように回してくれていた。

「学会の講演が惨憺たる結果に終わらなければ、帰国したその足で先程のホテルの部屋に行きませんか?

 二人きりでささやかな成功祝いをしましょう。

 後ろから……というのもそれはそれで捨て難いですが、貴方の悦楽に上気して快楽に喘ぐ魅惑的なお顔を見ながらの愛の交歓の方がより一層好きなので。

 それに、私は最愛の貴方のお顔を見ながらでないと死なないと決めていますので、絶対に大丈夫です。

 悪運も強い上に、貴方という魂の港も持っていますからそんなに心配しないで下さい。魂の港が貴方なら、入港するドッグはココですね……」

 スラックスの上から双丘を片手でやや強く掴んで開いた。

 最愛の人の悲しみめいた雰囲気が太陽の光りが射したように綺麗な笑みを湛えている。

「すまない……。何故か感傷的になってしまって……。

 そうだな……、あのホテルの部屋で待っているから、帰国の夜には……」

 当然、最愛の人には詳細な日程とか飛行機の便など伝えてある。

「何だか愛人ごっこみたいで楽しいですね。ホテルの部屋でだけこっそり逢うというのは、絶対に誰にも本当の関係を知られたくない人ですよね……。

 私達も公には出来ない立場ではありますが、理解してくれる人や祝福してくれる人があんなに集まって祝って下さいましたよね。

 その狭い世界ではありますが、そういう意味では公認なので……。愛人ごっこをするのも良いと思いますよ。

 ただ、そのためには完璧に講演を成功させる必要が有りますが、もう既に頭の中に入っていますし、大丈夫でしょう。一番の不安はメガネを忘れないかということです……。

 しかし、PCの画面の前で貴方を叫ばせることは避けたいので大丈夫だと思いますが」

 原稿は最愛の人だけでなくて、医局一の英語通の遠藤先生とか、大学全体で契約している学術論文用の翻訳のプロの推敲までが入っていたのを丸暗記していた上に、偶然に撮っていたのもラッキーだった。というかNH○のカメラマンは、習性というかプロ意識の権化みたいな人らしくて生々し過ぎて公共放送には絶対に使えないと分かっていながらもカメラを回し続けていて、それを知った最愛の人が世界の医学界の重鎮にその画像を送ってくれたことから招待に繋がった。

 そしてその画像をそのまま学会で流すので――ちなみに外科医の集まりなのでお茶の間向きでないとかは関係ない――丸暗記したものを多少忘れたとしても、画像を確認しつつ解説を交えれば良いだけの話だった。

 最愛の人がベルリンの国際公開手術の後に言ってくれた宝石のように貴重な言葉の「次は術者としてここに立つでしょう」と聞いた時から手技だけではなくて英語を真面目に勉強しておいて本当に良かったと思う。

「この学会に呼ばれて、世界的なデビューを飾ることが出来たのも貴方のお陰です。

 もっと大規模な――それこそ貴方の同行を病院長が当たり前のように許す程度の――デビューの時には絶対にご一緒しましょうね」

 空港のアナウンスが祐樹の乗る便のアナウンスを告げている。

「では、そろそろ。行きましょうか?」

 最後に唇とそして額に口づけた後に身体を離した。

「帰りの便は、入国ゲート付近まで行ってはいけないのか?」

 先程よりも怜悧かつ端整な横顔は普段通りの最愛の人のような感じだった。ただ、休日に二人して出掛ける時に似た雰囲気なのは前髪を下ろしているからだろう。

「いえ、時間が有ればそれでも構いませんよ。貴方のベルリン国際公開手術の成功の時とは異なって、日本の医学界のお偉いさんとか病院長以下のお出迎えなどはないでしょうから、来て下さると嬉しいです」

 祐樹が国際学会に呼ばれたという点は、確かに医局レベルではお祝いムードだったし、病院内でもウワサは駆け巡るほどだが、例えば救急救命室の北教授のように国内外で注目されている医師は居ないこともない。

 病院内ではないものの、それこそ「研究所」が存在するIps細胞のノーベル賞受賞歴すら有るような超有名人という扱いは受けない。

 北教授などは、祐樹が呼ばれたレベルの学会の講演も日常茶飯事という感じで行っているのだから。

「そうか。ではそうする。その前にホテルの部屋を取っておくので……。

 今夜のような狭い部屋が良いのか?それとも、リッ○程度の大きさのが良いのだろうか?」

 成功を確信してくれている感じの最愛の人の薄紅の唇が薔薇色の言葉を紡いでいる。

「空港に最も近い日○ホテルですから――豪華な感じもするロビーも横切りましたよね、肩を並べて。

 色々な部屋が有ると思いますが、貴方のお好みの部屋で二人きりのお祝いをしましょう。

 それはお任せします」

 ゲートの前で手を振って別れた。

 後ろ髪を引かれる想いで振り向くと、最愛の人の凛とした佇まいの中にも大輪の花のような姿だけが目に入った。

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気分は下剋上 学会準備編 327

「私達の『新婚旅行』に相応しい過ごし方で部屋を使うのだったら、この会議も出来るようなこんな大きな部屋よりも、こじんまりした部屋の方が良いと思う。

 オフィスラブごっこだと、こちらの部屋の方が相応しいと思うが……」

 自分的には大胆な言葉ではあったものの、心に薔薇の紅い花びらと銀の粉が降りしきっているような気持ちはまだ祐樹に告げていない。

 「こじんまり」と表現してはいたが、第二の愛の巣とも言うべき大阪のリッ○の普段使う部屋の二倍の床面積だったが。

 ただ、「新婚旅行」と位置付けるのであればその程度の大きさは奮発するのが普通らしい。

「オフィスラブごっこというよりも、セクハラごっこをするのでしたらマルコポー○スイートの方が良いでしょうね。

 ほら、昼ドラ――滅多に観ませんが、久米先生の多彩かつオタク趣味のゲームとか電子書籍を「凪の時間」に勝手に読んでいるのですが――そういうマンガでは割と有りがちなベタな展開で5巻は見たような気がします」

 え?と思ってしまう。自分が知っている電子書籍とはアマゾ○のキン○ルとかで、マンガも確か有ったような気がするものの、ベストセラー作家の小説本がタブレットで読めるサービスなので、認識の違いが有るようだった。

 ただ、部屋が広すぎることと、ちょうど載っているのが昼間の画像ということもあって、大企業の社長室とか役員会議室といった雰囲気も漂わせている、ホテルの一室という感じではなくて。

 ただ、会議室と言ってもウチの病院の教授会専用会議室的な――と言っても斉藤病院長の許可が有れば使えるが――古めかしい感じは全くなくて詳しくは知らないものの大手IT企業とかの社長室といった感じだったのは確かだ。

「ああ、説明が足りていませんよね。久米先生はマンガしか配信していない配信サービスを使用しているのです。

 そして、お金持ちなのに変にケチなので……。無料コインだったか、ポイントだったかは忘れましたが毎夜ログインすればそういう特典が付与されるサービスがあるのですが、その時の条件に『無料マンガを一話読む』という義務を果たさないといけないのです。

 忙しい時は、画面が回っている、つまりロード中を示すサインが出ていても全く構わずに内容を読まずにタップし続けてノルマ達成が可能なのでそうしているのですが、救急救命室はご存知のように暇な時はとことん暇なのでつい『久米先生お好み』のエ○マンガを読んでしまうというか。

 ある意味健全なアマ○ンのキ○ドルとは全く違います」

 祐樹がタブレットを――しかも画面にロード中を示す真っ白のままの状態で――情け容赦なくタップし続ける様子を想像すると何だか笑い声が零れてしまった。

 集中しなければならない時と、どうでも良い業務をこなす時の祐樹の取り組みの差は知っている積もりだったが、多分その雑さは自分には決して見せない類いのモノなのだろうから。

「良くあるパターンに『この商談を成立させるか反故になるかは貴女の決断次第です』と必要以上にイケメンかつ若い社長が、メガネを掛けた上に髪の毛も後ろで束ねただけの地味な女性に迫るというのが黄金のパターンですね。

 ただ、久米先生のお好みがモロにオタク趣味なので――というか、普通の嗜好を持つ男性は皆そうなのかも知れませんが――服の下は驚くべき豊満な胸と細いウエストですし、髪を下ろして眼鏡を外されたらビックリするほどの美人さんです。

 そういう人を押し倒すには頃合いの大きさのテーブルですよね、確かに」

 女性の心理はイマイチ分からない自分だったが、女の人は自分の魅力を最大限に引き出そうようにしている人が多いように感じる。もちろん、ナースは職務上そういうことを控えているのは知っている。

 しかし、斉藤病院長の秘書以下、若い事務職を見ているとお化粧なども完璧だったし自分が客観的に見て「美人」と評されることを常に考えているような気がする、

 だから素顔がそんなに綺麗な女性だったらメガネをやめてコンタクトにするだろうし、髪の毛だってナースの常識でもある、頭の後ろで束ねただけではなくてふんわり下ろすと全然印象が異なるだろう、多分。

「このテーブルの大きさだったら、どんな愛の営みの形を取っても大丈夫だろうな……。

 久米先生愛読のマンガだったら、この大きさの机が会議室ではなくて社長室に有りそうだ……」

 以前祐樹が「いたいけな男性のドリームというか妄想です」と断言したマンガとか恋愛シュミレーションゲームなので、その程度の見当は付く。理解は出来そうにはないものの。

「セクシャルハラスメントごっこは、置いておいて……。

 デラックス・ハーバービュースイートの場合、海に面しているだろう。まあ、ペニンシュラ、つまり『半島』の名に相応しく対岸は見えているが、ただ、窓に面した夜景を見ながら愛の行為を交わしても隣のビルの視線がないので……心置きなくどんな表情も身体の形も取ることが出来る……。それに何となく日本的な要素が入っている点も寛ぎやすい感じだし……。浴室も濃い翡翠の緑色が――本物の宝石ではなくて大理石だと書いてあるが――異国情緒を感じさせてくれる。

 それに、このジャクジー付きのバスタブに入っても、『そういう』行為が可能だろう?しかも誰も見ていない安心感があるし……」

 祐樹が心の底から楽しそうな笑みを浮かべていた。そして輝く眼差しに熱を帯びているような気がして、その視線を受けた場所が紅に染まっていく。

 脳裏によぎった想いを口に出せてしまったのは、祐樹が振ってくれた久米先生が愛読しているというマンガのお蔭だったのが良いのか悪いのか分からなかったものの。

「言い古されたフレーズですが、100万ドルの夜景を――しかもヨーロッパのように照明の色が制限されていないためにあらゆる色が使われています――見ながら愛を交わすという贅沢さは『新婚旅行』に相応しいでしょうね。

 この部屋にしましょうか?」

 薔薇色に染まった心に真珠の煌めきが加わったような気分のまま頷いた。ただ、祐樹が言及した100万ドルの夜景は確か、ビクトリア・ピークという山の上から見下ろした時の場合に表現される言葉だったと思うが、別に訂正するほどのことではない。

「予約日時の選択っと……。

 あれ……?」

 祐樹の指がキーボードを的確かつ器用に叩くのを見惚れていたが祐樹の声に驚いて画面を見た。

 薔薇色に震えて真珠の粒を宿しているような気持ちのまま。

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気分は下剋上 アメリカ学会編 8

「そんなに悲しそうな表情はなさらないで下さい……。

 何だか離れがたい気分になってしまいますので。どうせすぐに帰国しますし、飛行機の不測の事態よりも、交通事故の方が発生率も断然高いのはご存知ですよね?

 それに、カメラ越しというかPC越しに講演の様子はリアルタイムでご覧になられるのでしょう?

 しかも動画の場合は何度でも再生出来ますよね?」

 最愛の人は何故か祐樹が宇宙にでも行くような表情を浮かべていたので、必死にフォローした。

 別離の悲しさは確かに祐樹も抱いてはいるものの、タイトな日程で直ぐに帰国するのだからと敢えてそういう感傷を振り払ってきていた。

「再生か……。そうだな。日本時間の明日の夜中に講演がリアルタイムで始まって、その後はサーバーにずっと置かれているモノだから……。

 祐樹の不在は寂しいが、PCを起動させると何時でも会えると思うことにする。

 ……たとえ離れていても、魂が繋がったと――出版関連の時にはそう思っていたのに――何故か悲しくなってしまって……」

 淡い微笑と先程の行為の名残りで紅く潤んだ瞳も寒色系の寂しげな煌めきを宿している。

 何だか大輪の花が枯れていく風情が痛ましい。

「ファーストクラスって、エコノミーよりも遅く搭乗口に並んでも大丈夫なのですよね?」

 そういう事情は最愛の人の方が詳しいので、念のために確認した。

「そうだが?それにエコノミークラスに搭乗する人数とファーストクラスは全く異なるので列もサクサク進むし……」

 まだ祐樹の乗る飛行機の搭乗最終アナウンスはなかった。

 ただ、エコノミークラスには列が出来てはいたが。海外旅行に行く場合、早め早めに集まるように旅行会社からも案内されているからだろう。

「では、最終アナウンスまで時間が有りますから、こちらにいらして下さい」

 腕を優しく掴んで、人の気配の少ない通路の方へと導いた。

 そう言えば先程のホテルでも窓の外の飛行機を見ながらの愛の行為に抵抗感を抱いていたな……と思いながら。

 最愛の人が祐樹の誘いに嬉々として応えてくれるのは何時ものことではあったが、本当に嫌なことははっきりと断って来る。

 例えば以前、お堅い弁護士先生とは思えない杉田弁護士から送られて来た――多分、お茶目なイタズラだろう――「大人のおもちゃ」が何の用途で使われるシロモノなのか全く分からずに祐樹に見せて、その説明を聞いた最愛の人が時限爆弾を池の中に投げ入れる勢いで手から離したこともあった。

 愛の交歓に慣れた肢体の持ち主ではあるものの――先程の狭いホテルの一室で交わした濃密な時間でも、貪欲に華やかに悦楽に耽っていた。ただ、空港に付随しているだけのことは有って要人も宿泊可能な豪華で広いロビーにまで下りて行ったら甘やかに香る行為の余韻を綺麗さっぱり洗い流した雰囲気を纏ったのは流石だったが――そういう初心さをずっと持ち続けているのも最愛の人のダイアモンドのように無垢な精神が変わらないからなのだろう。

 そういう点も大変愛おしく想ってしまうが、多分飛行場という場所の独特の雰囲気が最愛の人を感傷的にしているのだろう。

「直ぐに帰国しますし、その時は貴方も、そして医局的にも明るいニュースや話題を持って帰ります。

 それはお約束しますから。

 お土産は何が良いですか?」

 努めて明るい口調で言った。ここで祐樹までしんみりとしてしまえば最愛の人が月の雫のような涙を流しかねない雰囲気だったので。

「品物ではなくて、祐樹が無事に帰って来てくれればそれで良い。

 それだけで充分過ぎるほど幸せなのだから……」

 エアポケットのように他人が通らない死角を見つけるのは得意だったので、取り敢えずそこで言葉を交わすことにした。

「大丈夫ですよ。ほら、私の運の強さはご存知でしょう?

 何でも『嫌な予感』がして飛行機をキャンセルした著名人が居て、結果的にその飛行機が墜落して……生存者は数人という事故が有ったらしいですが、私はそれ以上に強運です。

 それは貴方が一番良くご存知なのではないでしょうか?

 そもそも、研修医の分際で貴方に愛されていたのですから。

 私の方は初対面でしたが、貴方には『驚きの』再会だったわけですよね。意外過ぎて言葉もなくなってしまうほど。

 そんな素敵なエピソードが有る場所で悪いコトが起こるわけはないです。

 病院で挨拶を――と言っても、私は一番遠い場所で拝聴する立場でしたが――交わす前に、飛行場で話せましたよね。

 そういう僥倖が有った場所なのです。二人にとって良いことしか起こらない場所なので大丈夫ですよ」

 論点が逸れているのは承知の上でそう言いながら、唇を近付けた。

 最愛の人も口づけの気配を察して首を斜めに傾げてくれている。ただ、普段なら瞳を閉じることの多いシュチュエーションにも関わらず、祐樹の瞳を真っ直ぐに見つめている。透明な煌めきを放ちながら。

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気分は下剋上 学会準備編 326

「ホテルに行き慣れていて、かつ外国生活歴の長い――と言っても、最初のアメリカ行きの時はそれほどお金に余裕がなかったかと思いますが――」

 祐樹が珍しく言い淀んでいる。

 ただ、祐樹が綺麗な「男性」を口説いていた――と当時は思い込んだものの、それは壮大な勘違いだったと今は知っている――衝撃と傷心の余りに発作的な感じでアメリカ行きを決めたのは事実だし、当時は今のように纏まった資産があるわけもなかった。

 医学部に進学出来て、その後もアルバイトをせずにいられたのは、義父と呼び損ねてしまった人の律義な援助のお蔭だった。本来ならば婚約者のお嬢さんが亡くなった後はそんな義理など一片もないにも関わらず。

「金銭的にギリギリだったのは事実だし、それに恥じる積もりもない。

 行き慣れていて?」

 ノートPCの小さな画面には白と金の見事な調和が取れた豪華さといかにも大英帝国風の重厚さ、そしてテーブルに載せられたとても美味しそうな本格的なアフタヌーンティの銀――だろう、多分――のトレーと良い薫りが画面越しに漂って来そうな紅茶が映っているのと祐樹の端整な顔を交互に見ながらそう答えた。

「若い時にはお金がないことの方が当たり前ですよね、私達の場合は。医局に居ると忘れそうになりますが……」

 以前雑誌で大きく取り上げられた「T大生の保護者の8割が年収一千万円越え」の教育格差問題が対岸の火事ではないことは知っている。

 現に柏木先生も久米先生も医院経営者の御子息だ。祐樹と自分は庶民出身なのが珍しい部類に入るだろう。

 祐樹のお母様も――京都の日本海側という地価の比較的安い場所とはいえ――普通の慎ましい感じの一軒家に住んでいるし、仕送りも大変だっただろうな……とも思う。

 ただ、その苦しい遣り繰りをして下さったので、祐樹と自分は大学で会えたのだから――と言っても当時は祐樹を遠くから見ているだけだったが――いくら感謝してもしきれない。

「『初夜』とは間が開くとはいえ『新婚旅行』ですけれど……。まあ、それは仕方のないことですよね?

 そして、ホテルの部屋に籠りきりで二人の甘い時間を過ごすのは決定ですが、その前にチェックインとか部屋に行くまでの時間は有るでしょう?

 その時にお好きそうなアフタヌーンティを、この白亜の宮殿とも見まがう空間で摂る時間くらいは有りますよ、当然……」

 祐樹の唇が楽しそうな笑みを浮かべているのを、赤面して見返してしまっている。

 「二人きりの密室」に――最近は「そういう意味」での夜の時間がご無沙汰しているとういう諸事情も有って――気持ちがそちらに行ってしまっていた。

 少し考えてみれば、確かに祐樹の言う通りで、先走ってしまった己の不明を恥じるしかない。

「確かにそうだな……。あ、しかし、この『ザ・ロビー』という、自信満々の――しかも老舗でしか通用しないだろう、な。日本でこんな名前を付けたら明らかに手抜きだと思われるいい加減な名前だ――アフタヌーンティはとても美味しそうだが『四時を過ぎても宿泊客以外は長蛇の列』とか書いてあるので、並ばないと入れないのでは?」

 宿泊者のレビューと思しき文面を読んで祐樹を見た。

「こういうホテルはゲストの融通を効かせてくれますよ、予約の段階でリクエストしておけば大丈夫かと」

 確かに大阪のリッ○でもさり気ないホスピタリティが満ち溢れている。このホテルのゲストのレビューも好意的な物ばかりだったので、多分そういう要望にも対応してくれそうだった。

「こちらにしますか?何だか異国情緒も味わえそうですし。それにラッフル○ホテルを気に入っていらっしゃる貴方には向いているかと思います。

 あ、ただこのサイトにはスイートルームの記載がないですね。少し待っていて下さい」

 祐樹の指が大胆かつ繊細に動いて、見慣れた検索画面に戻った。そしてホテルの公式サイトへとアクセスしている。

「えっと、香港ドルって今いくらでしたっけ……?」

 祐樹が真顔で聞いて来たので、小さな画面の文字を追った。それまでは部屋の画像を見ていたので。

 海外のホテルらしく――ただ、表記は日本語だったが――宿泊費は外貨建てで書いてあった。

「確か、13円から14円の間を推移していたと記憶しているが」

 一応分散投資でドル建て資産も持っている。だから為替と株の値動きは一応頭の中に入っている。香港ドルはあいにくFXの対象ではなかったけれど。

「一ドル14円としてデラックス・ハーバービュースイートが一泊18万6千円くらいですね。

 ああ、部屋の代金は日にちでずれ込む可能性も有りますが……」

 大阪のリッ○でも土日とか祝日は同じ部屋でも価格が高いのは知っていた。

「いや、イギリスから返還されて以降、一応中国国内になっただろう。ある程度独立している特別区のようだが。

 中国のお正月は日本とずれて祝うのが当たり前みたいなので、その辺りは大丈夫なのでは?

 いや、一応来年の元旦に日時を指定して検索してみたらどうだろう……?」

 日本の客の比率によっては強気の値段設定をしている場合も有ったので、19万円では済まないかもしれない。

「そうですね……。部屋はこの程度で良いですか?もっと広いのも有りますが……。

 マルコポー○とか有りますよ?」

 祐樹の指の動きで画像が切り替わる。

「いや、そんなに広いと二人で濃密かつ親密に過ごすという感覚ではなくなってしまうので。

 それに……」

 先程の部屋を見て、脳裏をよぎった想いを言葉に出すかどうか躊躇ってしまった、黄金色の幸せに満ちた思考だったが。


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