「子供の時は、今から考えると何であんなことにくよくよ悩んでいたのか……とか思うような些細な出来事が物凄く大事件のようにも思えたものです。
だから、子供の時の方が時間の経過は遅く感じるのかもしれませんね。それに失われた時間は返って来ない分、より貴重で、そして煌めく想い出になるのでしょう。
日常の業務をこなしているだけで一日はあっという間に過ぎてしまうのも事実ですから、今日だけでも子供の頃の精神に返って楽しみましょう」
塩加減が絶妙なお握りを口に運びながら「優等生的」な発言をした。
「そうですね。そうしましょう。
ところで、この梅干しの味、あれは多分高校生の頃だったと思いますが、奈良県の田舎の無人販売コーナーで買った『農家のお婆さんの手作り』梅干しと似ていてとても美味しいのですが」
呉先生も幸せそうな顔で、お握りの中の梅干しの味を褒めている。
「ああ、その梅干しは田中家のレシピ通りに作った物です。干す場所がマンションのベランダしかないので、風に充分当たったかどうか自信がないのですが」
最愛の人が幾分華奢な肩を竦めながらも透明な笑みを唇に浮かべている。
「え?これも手作りですか……。とても美味しいです。
農家出身ではなくてもこのような梅干しを作ることは出来るのですか。知らなかったです」
呉先生がスミレ色の微笑みに称賛の彩りを加えている。
「ちなみにウチの実家は農家ではないです。京都の街に育った方からすれば田舎ですけれど。京都府の日本海側なので」
ジェットコースターの轟音とか楽しそうな子供の悲鳴、そして芝生を渡る風に薔薇の香りが含まれている空間で他愛のない話しを交わしながら最愛の人が丹精込めて作った昼食を摂っていると、夏の「事件」の精神的な傷が癒されていくような気がした。
「こんなにたくさんの、小学校の時の遠足を想起させてくれる――と言っても、この完成度の高さはなかったのも事実ですが――お弁当を食べると、幼い時のことがアリアリと心に浮かんできますよね。
これは心理学の本で読んだのですが、人間は味覚からその当時のことを思い出しやすい存在だそうです」
呉先生が満足そうな笑みを浮かべつつ旺盛な食欲を満たしている。その合間に心理学のことを語り始めた。
ほぼ自作のお弁当でも小学校の頃の――祐樹最愛の人は、お世辞にも恵まれた幼少期を過ごしてはいないものの、取り立ててその件については残念とも思っていない。それよりも「事件」で負った心の傷のほうが被害は甚大だ――想い出が甦るのだろうか。
「ああ、なるほど。プルーストの『失われた時を求めて』はマドレーヌを食べながら延々と幼い頃を思い出すという、退屈極まりない、いやフランスの貴族社会のことを語ってくれていますが、あれもマドレーヌというお菓子が引き金になったということですか?」
いかにも貴族的な印象が強い森技官が意外にも、貴族社会に否定的なことを言い出したので意外に思った。
「『失われた時を求めて』は文学的な格調の高さが原因で長編の途中で脱落してしまいましたが、確かにマドレーヌを食べていましたよね。主人公が食べているマドレーヌの味については気になりました」
呉先生らしい意見だった。ちなみに祐樹は「あらすじ」を読んで面白くなさそうだったのでパスをした記憶があった。
「当時のマドレーヌはバターの製造方法が今のとは異なるので……。呉先生もお気に入りの洋菓子屋さんのバターのコクとか香りも素晴らしいしっとりとした焼き菓子とは違っていたと思います」
あの長編小説を読破した感じの最愛の人が解説をしている。多分、本の解説をして欲しいとのリクエストがあれば、語ってくれそうだ。多分、誰もそんなことはしないだろうが。
「なるほど……。確かにバターの製法は違うような気がします。
それに本場フランスのマドレーヌと日本のモノでは異なるとか聞いたこともありますし」
呉先生が興味深そうに「焼き菓子」のみに反応している、名作の本ではなく。
「違うみたいですよ。外務省の知人に頼んで本場のマドレーヌを買ってきて貰いますので、食べ比べてみては?」
甘い物の苦手な森技官が本場のマドレーヌを食べたことがないというのはある意味納得出来たが、恋人の歓心を買うべく頑張っている感じだった。
「それは楽しみだな。本場のマドレーヌを入手出来たら病院にも持って行きますので一緒に食べ比べしてみませんか?」
最愛の人が少し興味を惹かれた感じで頷いている。
「それはそうと、この梅干しの味は確かに『塩100%の手作り梅干し』といった感じで美味しいですね」
森技官が――ステーキとかキャビアだのが似合いそうなのでそのギャップが可笑しい――感心した感じでお握りを味わっていた。
「そうだろ?オレは高校の時『柳生の里』に耐寒訓練という遠足のようなモノで連れて行かれた時、途中で買った梅干しの味がこんな感じだった。あの時は滅茶苦茶寒くて死ぬかと思ったけど……」
呉先生の高校では「耐寒訓練」なるものがあるらしい。
「ああ、耐寒訓練ですか。ウチの高校は比叡山でしたね。積もった雪が凍り付いていて、とても寒かった思い出があります」
最愛の人が懐かしそうな笑みを浮かべて相槌を打っている。
「耐寒訓練ですか……。ウチの高校はなかったように……」
「思います」と言いかけて、不意に脳裏をよぎった記憶で言葉を止めた。
だから、子供の時の方が時間の経過は遅く感じるのかもしれませんね。それに失われた時間は返って来ない分、より貴重で、そして煌めく想い出になるのでしょう。
日常の業務をこなしているだけで一日はあっという間に過ぎてしまうのも事実ですから、今日だけでも子供の頃の精神に返って楽しみましょう」
塩加減が絶妙なお握りを口に運びながら「優等生的」な発言をした。
「そうですね。そうしましょう。
ところで、この梅干しの味、あれは多分高校生の頃だったと思いますが、奈良県の田舎の無人販売コーナーで買った『農家のお婆さんの手作り』梅干しと似ていてとても美味しいのですが」
呉先生も幸せそうな顔で、お握りの中の梅干しの味を褒めている。
「ああ、その梅干しは田中家のレシピ通りに作った物です。干す場所がマンションのベランダしかないので、風に充分当たったかどうか自信がないのですが」
最愛の人が幾分華奢な肩を竦めながらも透明な笑みを唇に浮かべている。
「え?これも手作りですか……。とても美味しいです。
農家出身ではなくてもこのような梅干しを作ることは出来るのですか。知らなかったです」
呉先生がスミレ色の微笑みに称賛の彩りを加えている。
「ちなみにウチの実家は農家ではないです。京都の街に育った方からすれば田舎ですけれど。京都府の日本海側なので」
ジェットコースターの轟音とか楽しそうな子供の悲鳴、そして芝生を渡る風に薔薇の香りが含まれている空間で他愛のない話しを交わしながら最愛の人が丹精込めて作った昼食を摂っていると、夏の「事件」の精神的な傷が癒されていくような気がした。
「こんなにたくさんの、小学校の時の遠足を想起させてくれる――と言っても、この完成度の高さはなかったのも事実ですが――お弁当を食べると、幼い時のことがアリアリと心に浮かんできますよね。
これは心理学の本で読んだのですが、人間は味覚からその当時のことを思い出しやすい存在だそうです」
呉先生が満足そうな笑みを浮かべつつ旺盛な食欲を満たしている。その合間に心理学のことを語り始めた。
ほぼ自作のお弁当でも小学校の頃の――祐樹最愛の人は、お世辞にも恵まれた幼少期を過ごしてはいないものの、取り立ててその件については残念とも思っていない。それよりも「事件」で負った心の傷のほうが被害は甚大だ――想い出が甦るのだろうか。
「ああ、なるほど。プルーストの『失われた時を求めて』はマドレーヌを食べながら延々と幼い頃を思い出すという、退屈極まりない、いやフランスの貴族社会のことを語ってくれていますが、あれもマドレーヌというお菓子が引き金になったということですか?」
いかにも貴族的な印象が強い森技官が意外にも、貴族社会に否定的なことを言い出したので意外に思った。
「『失われた時を求めて』は文学的な格調の高さが原因で長編の途中で脱落してしまいましたが、確かにマドレーヌを食べていましたよね。主人公が食べているマドレーヌの味については気になりました」
呉先生らしい意見だった。ちなみに祐樹は「あらすじ」を読んで面白くなさそうだったのでパスをした記憶があった。
「当時のマドレーヌはバターの製造方法が今のとは異なるので……。呉先生もお気に入りの洋菓子屋さんのバターのコクとか香りも素晴らしいしっとりとした焼き菓子とは違っていたと思います」
あの長編小説を読破した感じの最愛の人が解説をしている。多分、本の解説をして欲しいとのリクエストがあれば、語ってくれそうだ。多分、誰もそんなことはしないだろうが。
「なるほど……。確かにバターの製法は違うような気がします。
それに本場フランスのマドレーヌと日本のモノでは異なるとか聞いたこともありますし」
呉先生が興味深そうに「焼き菓子」のみに反応している、名作の本ではなく。
「違うみたいですよ。外務省の知人に頼んで本場のマドレーヌを買ってきて貰いますので、食べ比べてみては?」
甘い物の苦手な森技官が本場のマドレーヌを食べたことがないというのはある意味納得出来たが、恋人の歓心を買うべく頑張っている感じだった。
「それは楽しみだな。本場のマドレーヌを入手出来たら病院にも持って行きますので一緒に食べ比べしてみませんか?」
最愛の人が少し興味を惹かれた感じで頷いている。
「それはそうと、この梅干しの味は確かに『塩100%の手作り梅干し』といった感じで美味しいですね」
森技官が――ステーキとかキャビアだのが似合いそうなのでそのギャップが可笑しい――感心した感じでお握りを味わっていた。
「そうだろ?オレは高校の時『柳生の里』に耐寒訓練という遠足のようなモノで連れて行かれた時、途中で買った梅干しの味がこんな感じだった。あの時は滅茶苦茶寒くて死ぬかと思ったけど……」
呉先生の高校では「耐寒訓練」なるものがあるらしい。
「ああ、耐寒訓練ですか。ウチの高校は比叡山でしたね。積もった雪が凍り付いていて、とても寒かった思い出があります」
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時間がない!とか言っていますが、ふとした気紛れにこのサイトさんに投稿しました!
いや、千字だったら楽かなぁ!!とか、ルビがふれる!!とかで……。
こちらのブログの方が優先なのですが、私の小説の書き方が「主人公視点」で固定されてしまっているのをどうにかしたくて……。
三人称視点に挑戦してみました!
宜しければ、そしてお暇があれば是非読んで下されば嬉しいです。
いや、千字だったら楽かなぁ!!とか、ルビがふれる!!とかで……。
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「エブリスタ」さんというサイトで、もちろん無料です!!
リンク先です。
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他、前ブログで連載していた「洋館の堕天使」も移しています。「作品一覧」をクリックかタップで見られますので、良かったら♪
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更新時間が本当にバラバラになってしまうので、ヤフーブログの更新を呟いているだけのアカですが、ぶろぐ村や人気ブログランキングよりも先に反映しますので「いち早く知りたい」という方(いらっしゃるのか……???)はフォローお願い致します。
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◇◇◇お詫び◇◇◇
実は家族が余命宣告を受けてしまいまして。それに伴い更新の目途も自分自身すら分からない状況です。
だいたい、朝の六時頃に更新がなければ「ああ、またリアルが忙しいんだな」と思って頂ければ幸いです。
◇◇◇お知らせ◇◇◇
だいたい、朝の六時頃に更新がなければ「ああ、またリアルが忙しいんだな」と思って頂ければ幸いです。
◇◇◇お知らせ◇◇◇
エブリスタ様に投稿してみて、痛感したのですがヤフーブログは「ルビが打てない!!」という仕様なのは仕方ないのです。しかし、このブログで連載中(現在は休止中です、すみません)の「蓮花の雫」はルビが打てないのは(個人的に)物凄く辛いので、全部エブリスタ様に持って行った上で、再開したいと思います。
楽しみにして下さっている方がいらっしゃるのかどうか分かりませんが、【蓮花の雫】のみ、続きはエブリスタ様単独で書きたいのでご了承とご理解を頂けたらと思います。
【追記】
取り敢えず、このブログで書いていた分を再掲という形でゆっくり移して行きます。
隙間時間に作業しています。エブリスタ様の方がやはり使い勝手も良いので(加筆修正も加えています)全ての記事を向こうに移した後はこちらのブログからは削除したいと考えて居ます。
https://estar.jp/_novel_view?w=25307809
楽しみにして下さっている方がいらっしゃるのかどうか分かりませんが、【蓮花の雫】のみ、続きはエブリスタ様単独で書きたいのでご了承とご理解を頂けたらと思います。
【追記】
取り敢えず、このブログで書いていた分を再掲という形でゆっくり移して行きます。
隙間時間に作業しています。エブリスタ様の方がやはり使い勝手も良いので(加筆修正も加えています)全ての記事を向こうに移した後はこちらのブログからは削除したいと考えて居ます。
https://estar.jp/_novel_view?w=25307809
良かったら覗いて下さいませ。
あと、BL小説以外も(ごく稀にですが……)書きたくなってしまうようになりました。
本業(本趣味)はもちろんBLなのですが。
本業(本趣味)はもちろんBLなのですが。
こちらでそういった作品を公開していきたいと思っています。
興味が有る方は是非!スマホの方が読み易いので、オススメはスマホ経由です。
風邪が長引いていて、家族の入院している病院にも行けない今日この頃なのですが、やふーブログの更新は出来れば二話!最低でも一話を目標に頑張ります。
ただ、お医者様から「急変も覚悟しておいて下さい」と言われているので、綱渡りな更新になりますがご了承ください。
私の都合で更新時間がバラバラになってしまっている上に、「にほんブログ村」はシステムの移行とかで新着記事が反映されたり、されなかったりです(泣)
基本毎日更新しますので「人気ブログランキング」でチェック頂くか、まめにこちらをご覧いただければと思います。
寒い上にインフルや風邪が流行っていますので読者様もお身体ご自愛ください。
基本毎日更新しますので「人気ブログランキング」でチェック頂くか、まめにこちらをご覧いただければと思います。
寒い上にインフルや風邪が流行っていますので読者様もお身体ご自愛ください。
昨日は更新お休みしてしまい、誠に申し訳ありませんでした。
こうやま みか拝
こうやま みか拝











