腐女子の小説部屋

創作BL小説を綴っています。ご理解の有る方【18歳以上】のみ歓迎致します 申し訳ありませんが書く時間を最優先にしたいのでリコメは基本的に致しません。 要望・お礼などは「日記」記事でお応えしますが、タイムラグがあることも多いです。

2018年03月

◆お詫び◆

リアバタでダウン寸前のため、更新はお休みさせて頂きます。

楽しみにして下さっている読者様には誠に申し訳ないのですが、何卒ご寛恕ご容赦下さいますようにお願いいたします。

明日……元気が有れば更新致しますので。


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気分は下剋上 学会準備編 76

 半ば冗談めいた軽い感じで言われたので、本気でない程度は分かって安心した。
 他の場所で祐樹に求められるのはどこであっても、どんな時間であっても大歓迎だったが、執務室は仕事モードの自分が一人きりになることが多い空間なので唯一の例外だった。
 ただ、今日の病院長室での交渉――祐樹も充分な助太刀はしてくれたが――が成功裏というか大勝利に終わったので「そういう行為」でお祝いしたくなる気持ちも大変良く分かって、複雑な表情を浮かべてしまっていた。
「そんなお顔をなさらないで下さい。本日の凱旋将軍に相応しくないです」
 何かの気配を感じたように祐樹が一歩後ろに下がったのと同時に脳外科の白河教授の部屋の扉が開いて帰宅と思しきスーツ姿と――「夏」の事件以降めっきり増えた白髪姿と眉間のしわが目立つ――内田教授が並んで現れた。流石に教授執務階で肩を並べて歩くことは「未だ」出来ないので気配を察した祐樹が「仕事用」の表情を浮かべて後ろに控えてくれたのが分かった。
「香川教授、田中先生お久しぶりです。ご本の件はお伺い致しました。お目出度いことですし――まあ病院長も病院ぐるみで応援なさるでしょうが――私も一般教養の学部生の講義を担当させて頂いておりますので、出版が決まればお教えいただけるとその本からテストの問題を出すということにして全員に買わせます」
 温和な感じを前面に出した内田教授がにこやかな感じで話しかけてくる。その後ろには幾分硬くなった、そして困惑と感謝の念らしきものを浮かべた白河教授が深々と礼をしている。
 外科はそれほどお声が掛からないが、内科は文系学部生も受講可能な一般教養の講座を任せられる――当然そちらの方が受講人数も多くなる――ので、有り難いことにそういう医学部とは全く関係のない学生にまで「教材」として使用してくれるらしい。
 白河教授は「院政」とウワサになるのも当然な感じで一歩後ろに立って畏まった表情を浮かべて一言も発していない。
「有難う御座います。
 今しがた、病院長と相談を済ませたところなのですが、ああ、外科の親睦会の時にそちらに貸し出す清水研修医のお父様の病院も総力を挙げて応援して下さるそうで。
 まとまった部数が確保される見通しが付いたので――正式には病院長からメールが行くと思いますが――何万部だか何百万部突破記念パーティをオー○ラで開いて下さるそうなので、白河教授も立食のスペースではなくてテーブル席を用意させますのでそちらにお座り下されば幸いです」
 「夏」の事件以降――いやその前は教授職でもなかったので同じ時間に手術が入っていても控室そのものが異なったので顔と名前は流石に知っていたが言葉を交わしたことはなかった――医局の抜本的改革を内田教授という穏やかな風貌にも似ず「革命の闘士」としての厳しい一面も持ち合わせている人の指導を仰ぎながら成し遂げただけあって、何だか10歳以上年老いた感じもするし、それに地震の時には完全な縁の下の力持ちを甘受して一切表には出ないような配慮などを総合して考えた末に柏木先生などの外科の医局長クラスが「脳外科の復権」を言い出したのが分かるような気がした。
 それに、そもそもが一人の精神疾患を持った研修医が元凶で――それを許す環境に有ったとはいえそれは戸田前教授の責任だし――外科医に精神疾患が分かるかといえば高度に細分化された大学病院だからこそ見過ごされたという一面もある。
 地震の時に明言した通り自分はもう完全に許しているし、事件当時からずっと心の傷を密かに抱いていた祐樹もすっかり快復しているので自分としては何のわだかまりもない。
 だからこその立食の位置ではなくテーブル席に――もちろん内田教授もそのメンバーだが――誘ってみることにした。
「我々がそんな晴れがましい場所に出ても大丈夫なのでしょうか?お目汚しではないのでしょうか……」
 内田教授の表情を確かめるように見て――普段はよほど厳しい「院政」を敷かれているらしい――恐る恐るといった感じというか、時代劇で観た覚えが有る将軍に直訴する火急侍みたいな感じという方が適切かも知れないが、戸惑いと晴れがましさが入り混じったような表情で自分の肩辺りを見ながら言っている。
「はい。もう過去のことは水に流しましょう。田中先生、それで宜しいでしょうか?」
 白河准教授時代に折衝に当たってくれたのは祐樹なので、職階が上の自分が祐樹に確かめてもこの場合は不自然にならないだろう。
「はい。外科の親睦会でもうこの件は終了ということで宜しいかと思います。余り長引くと――脳外科とはこれからも合同手術などで強固な絆も必要ですから――病院としても由々しき事態ですので。
 それに職員のメンタルチェックまで導入された健康診断も加わってあんな人間も紛れ込まないかと。
 是非、パーティにはテーブル席に座って下さい。脳外の主な皆様と共に」
 祐樹も――内心どうリアクションを取って良いかを自分なりに悩んだ時期も有ったが、すっかり精神の傷は癒えているので――満面の笑顔で自分と白河教授を交互に見ている。
「脳外科だけですか?ウチの科はテーブル席ではないと……」
 内田教授が穏やかな笑顔で場を和ませる冗談めいた感じで話に加わった。
「内田教授は病院長と同じテーブル席に座って貰う積もりです。私が帰国して一番協力的な方でしたから」
 祐樹が実は年齢的にも次の病院長兼医学部長に自分を推してくれるように下準備をおさおさ怠らずに院内政治に励んでいることは知っていた。
 ただ病院改革の闘士としての実績とか、院内政治とかの手腕では内田教授の方が適任かと思っているのだが、斉藤病院長の停年までに決めれば良いことなので今その話をしなくても良いだろう。
「オー○ラの一番大きな宴会場ですよね、もちろん。
 あそこは学会でも良く使うので、良く存じていますが……」
 内田教授の次の言葉で百合と薔薇の噴水が心の中で一気に溢れるような充足感と多幸感に襲われた。











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        こうやま みか拝

気分は下剋上 学会準備編 75

 斉藤病院長には自分の身の上話をした記憶はない――そもそも教授会で会っても時候の挨拶で終わったり手技への労いの言葉だったりするだけだ――ので当然自分の両親のことを言っているのだと思ったらしい。
 ただ隣に座っている祐樹は驚いたように身じろぎをしたが。
「もちろんですよ。やはり家族も共に祝いたいでしょうから。ただ、一般の、そうですね例えばですが、結婚披露宴のように親族席は後ろ側になりますが……」
 「披露宴」……その言葉を聞いて薔薇色の雲の上にふんわりと漂っている気分になった。
 そして色々と自分を気遣ってくれて、実の息子である祐樹とほぼ同じような――ただ確かな血の繋がりが有る分息子のことは悪しざまに仰るけれどもそれが内心では異なることくらい自分でも分かる――愛情を注いで下さっている人にささやかな恩返しがしたいのも事実だったった。
「しかし、驚きました。貴方が高木氏とそんな話しまでなさっていたとは……」
 病院長を辞去して教授執務階よりも更に人の気配のない、しかもさり気ない豪華さの漂う廊下を隣に並んで歩んだ。
「隠す積りは全くなかったのだが、何しろ話す時間が限られていたので必要最低限のことしか伝えきれていなかったのは申し訳なく思う」
 実は祐樹に数々のサプライズを用意していて、その一つがパーティだったがそのことは内緒にしておこう。悪意の有るウソにはまだまだ心理的な抵抗があったが、祐樹が「後になって」喜んでくれるというか、今の時点よりも効果的な演出をして喜びも倍増するようなささやかなウソなら以前はともかく現在では――多分祐樹と共に過ごす時間が多いのでおおよその性格は把握しているので――すらすらと口に出来るようになったのもきっと良い変化なのだろう。
「二人で同じテーブルに並んで座るなどとは……。そんなことは想像さえしていなかったので心の底から驚きましたが、何だか披露宴みたいで素敵ですね。
 それにウチの母も招待して下さるお積りでしょう。それも感激のタネですが、母は先程の斉藤病院長以上に喜ぶでしょうね。私も親孝行の真似事が出来てとても嬉しいです。
 ただ何を着て来れば良いのか本気で悩むでしょうが……。出席自体は心の底から喜んで来ると思いますよ」
 確かに――お母様は自分達の本当の関係をご存知だし、日本では聞いたことはないもののアメリカでは州によって同性でも婚姻関係を認めている。そういう場合「理解の有る」両親という前提が付くものの、家族が列席すると向こうにいる間に雑誌で読んだ覚えが有る。アメリカといえば同性愛も多いし認められているという漠然としたイメージを持っている人もいるようだが、厳格なキリスト教徒のご両親だと激怒されるので出席は望めない。
 ただ「一人息子」の何百だか何万部だかは分からないパーティというのが表向きの理由なだけに――着るモノは悩みそうだ。結婚式などよりも希少な体験だろうから。
「女性のパーティ用の服は私もサッパリ分からないので、長岡先生にでも聞いてみた方が良いだろう。彼女なら色々なシュチュエーションのパーティにも通暁していそうだし、何より恋人同士だと知っているわけだから」
 祐樹が納得したような感じで頷いた後で、しめやかな雰囲気が漂う病院長階室とその他は「病院にとっての重要人物」を通す部屋が並んでいるというウワサでしか知らない廊下に太陽のような輝きを彷彿とさせる笑みを浮かべて、しかも人の気配がないので白衣の肩をコツンと触れ合せてくれた。
「二人並んでの披露の日――斉藤病院長は持ち前の強引さと、ホテル業界が外国人観光客で部屋はそこそこ埋まっているのに、宴会場は閑古鳥状態なのを良いことに『日時未定』の豪華パーティを推し進めるとは思ってもいなかったです」
 白衣に包まれた広い肩が可笑しそうに揺れた。ほぼ密着しているので祐樹の歓喜の波動のようなものがこちらへも伝わってきて――未だ見たことはないが――薔薇と百合とカトレアの噴水が心の中で波打つような気がする。
「あれには驚いた。普通は日時や大まかな人数を伝えてから交渉に入るものなのだろう。それなのに『ワタシの履歴書』が多分、核融合級の推進力になってあんな破天荒なオーダーになったのだろうな」
 祐樹はチラリと腕時計を見た後にエレベーターの中に入って――余りの人口密度の少なさに固執には二人きりという美味しい状態だ――自分にとっては嬉しいが他人が見たら不自然な近さで佇んだ。
「あと15分程度は大丈夫ですので執務室にお邪魔しても構いませんか?」
 パーティというか実質的には「披露宴」と表現した方が相応しい宴は事前にアドバイスを受けていた自分と異なって祐樹には初耳だし、内容も腹黒タヌキの太っ腹が遺憾なく発揮された豪華過ぎる規模にまで膨らませたのは祐樹の戦闘力と自分の情報量のお蔭だったし、二人して歓びを分かち合いたいのは自分だって同じだ。
「知っての通り私の秘書はオフィスタイム終わりの定時帰宅をしているので気兼ねなく話せるし、それに祐樹と二人きりになれる機会は、どんな短い時間でも大歓迎だ」
 深刻な容態急変などがない限り自分も含め教授は定時上がりが基本なので斉藤病院長と話していた小一時間を含めると今執務階室の廊下も同じような人口密度だろう。
「では、お邪魔しますね。もっと時間が有れば、この歓喜の余りに……貴方のしなやかな肢体で『自分の願望の余りの妄想ではない』と確かめたくなりますが、それは深く自制します」
 祐樹の眼差しも全体の雰囲気も太陽のような輝きで自分を包んでくれる嬉しさに満面の笑みを浮かべて眼差しを絡めた。


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このお話は旧ブログで更新していた(そして諸事情で止まっていた)小説の再掲です。
流石に長いのでリンク貼るだけでは読んで頂けないかと、こちらにお引越し致します。



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                  こうやまみか拝

気分は下剋上 学会準備編 74

「高木氏が仰るには出来るだけ世間の耳目を集めるような、しかし芸能人のような感じのこれ見よがしな派手さではなく、アカデミックな雰囲気とか荘厳さを感じるようなパーティこそが相応しいとのことです。
 花の噴水など、こちらの嗜みの有るお嬢さんなどはその価値がお分かりでしょうが、普通の人はそれほど注目しない上に綺羅綺羅しいものでも有りませんよね?
 ですから何万部だかの突破記念パーティにはとても相応しいかと。
 高木氏は某国民的女優さんの結婚のための引退のエッセーも手掛けたことがお有りのようでして『芸能人枠』と『知識人枠』ではパーティの仕方も異なると仰っていました。
 高木氏が『流石だ』と思われるようなパーティにすれば、斉藤病院長の株も上がりますしニッケイの「親友」に『ワタシの履歴書』に推薦する時にも自ずと力が入ると思いますが」
 そんなことを高木氏は言ってなかったがここは祐樹の得意技でもあるハッタリと効かす場面だろう。祐樹と公私共に一緒に生活してきた長さは伊達ではない・
「なるほどねぇ……。キラキラしているモノは確かに綺麗だが、それは我々のような『知識人』には相応しくないと……。ふうむ、言われてみれば尤もだ。
 やはり専門家の意見は聞くべきものが多いな……」
 今、この室内で一番派手かつキラキラしているのは斉藤病院長の瞳のような気がするがそこには触れないでおこう。
「高階君、至急オーク○に連絡して見積もりを大至急作るようにと。薔薇と百合とカトレアの噴水のような――活け花では有り得ない、そして日本のフラワーアレンジメントの人も無理な――NYだかの高名な人を呼んで作らせるためには幾らくらい掛かるのか、また招待客はキャパギリギリでまで呼ぶことにして、そのローソクのような派手さではなくて幽玄めいた光の煌めきを背負って座る香川教授と田中先生から近い場所はテーブルでの食事、いや食事はコースではなくビュッフェが良いだろう。遠い場所は立食パーティということで宜しいでしょうか?」
 流石は元外科医なだけに即断即行しかも最低限度しか話さないという昔のクセが出てしまったのかもしれない。斉藤病院長の口ぶりでは――実は出たがりかつ目立ちたがり屋の病院長と三人でテーブルに座るという自分にとって「何の意味もない」パーティにはなりそうもないことも安心したし、その幽玄めいたローソクの光りも帰宅してからPCで検索してみようと密かに決意した。今までは割と仕事とか義務を優先してきた――といっても祐樹とこういう関係になってプライベートも充実してきたが――生き方をそろそろ「楽しみ」へとシフトチェンジしても良いかも知れない。心が薔薇色に弾む計画が次々と出て来てプラスのプラチナの鈍い光のスパイラルが祐樹と自分を更に高みへと上げてくれる感じだった。
 ただ、花の噴水というNYの社交界――出席したことはもちろんないが、元患者さんから嫌というほど話は聞いていた。出席すれば一晩で日本円にして一千万円は軽く飛ぶのが普通だとか――では良く有るもののようだが日本では高階さんという良家の子女ですらオーク○でしか見たことがないものを実現するのにどの程度のお金が掛かるのか急に心配になってきたのは、所詮庶民出身だからだろう。
「料理はもちろん最高級で、ワインもビールも最高のモノを。会場を半分に区切ってテーブル席と立食に分けた場合、テーブル席が何席出来るかも聞いてくれたまえ」
 高階嬢は要点をメモしてさっそく電話へと向かった。
「そう言えば、香川教授高木氏のお好みのアルコールとか詳しい銘柄などを聞いていらっしゃいませんか?」
 斉藤病院長がわざわざそう突っ込んで聞いてくるのも「ワタシの履歴書」執筆依頼という猫にマタタビ――タヌキの場合何が該当するのかは知らないので――が効いているのだろう。
「あいにくそこまで話が及びませんで。また機会が有ればお聞きしておきます。
 ところで、花の噴水が予想以上の値段だったらどうなさいますか?」
 一生に一度しかないと思われる「ホテルの宴会場で祐樹と二人で主賓席に並んで座れる」チャンスに花を添えられるのなら多少は私財をなげうってでも――結婚式でも派手な挙式ではお祝儀ではまかない切れないと聞いたこともあるし――成し遂げたい。そう覚悟を決めて聞いてみた。
「ああ、実はですね……。ここだけの話なのですが」
 妙齢の秘書さんはオーク○の宴会担当に電話が繋がったのだろう。先程の斉藤病院長のオーダーを電話で告げているのを確認するような感じで見た後に声を潜めた。
「歴代の病院長が貯めたいわゆる『機密費』というモノも存在しまして。
 ご存知の通り独立行政法人になってからは病院も収益重視になりましたが、それ以前は儲けていようがいまいが国からお金が入ってくるという結構な時代でして。
 ウチはそもそも――いや赤字の科は確かに存在しましたが――割と健全な経営でしたのでそういうお金が自然と溜まっていったので、その『機密費』も莫大な額になります。その花の噴水とやらがどれだけのお金なのかは知りませんが簡単に賄える額だと思いますよ。まさか10億円単位まではしないでしょうから」
 ということは10億円以上の「機密費」が存在するらしい。
「……道後の時の苦労は一体……」
 祐樹が脱力した感じで小さな声で遣る瀬無さそうに呟いた。病院長には聞こえないような声だったが、確かに医局の権威を落とさないように必死に尽力してくれた祐樹のボヤキは尤もだった・。
 夜這いを楽しみにしていたのは自分も同じだが、それはあくまでも恋人としての秘め事で、今回のは――会場に来る99%の人は知らないだろうし、知らせる気もさらさらないが――「公共の場でのお披露目」なので「機密費」とやらが使えるのなら、そして病院長が「ワタシの履歴書」という餌に釣られた馬のように疾走してくれるならそれはそれで良いことにしよう。
「あの、招待客の中には私達の家族も含めて構いませんか?」
 ロウソクの光りでも充分過ぎるほど幸せだったが、背後に十字架のイルミネーションが有れば更に嬉しい。ただ、そういう細かい詰めはこれから病院長を交えてして行けば良いと思いつつ最も重要なことを聞いてみた。













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        こうやま みか拝

気分は下剋上 学会準備編 73

「石川病院長はお名前しか存じ上げていませんが、医学部長ですよね?つまりは未だ学長になっていないという」
 斉藤病院長も実は同じだったがその点は涼しい顔でスルーした。そして「ワタシの履歴書」の華麗極まる執筆陣の一人でもないことも新聞を読んでいるので知っている。
 その辺りに活路を見い出せそうだ。
「そうですよ。ま、あちらはいわゆる法学部が看板ですから法学部長が学長になることが多いので、楽観もしていない上に色々と取り込み工作を図っているようですが。ですから就任する気は満々のようですね。それが何か?」
 斉藤病院長は驚きの色を隠せていない感じで自分の顔を凝視している。
 確かに以前の自分であれば、医学部長だの病院長だのといったポジションには一切興味を示さず――いや、今でもその通りなのだが――話題にしたこともなかったのを教授会などで知っているからだろう。
「高木氏は日本経○新聞とも密接なパイプを持っていらっしゃるようで、斉藤病院長に『ワタシの履歴書』執筆依頼が来るように尽力……」
 焼けたトタンの上に落とされたタヌキのような風情で斉藤病院長が文字通り椅子から飛び上がった。
「ワ……『ワタシの履歴書』っ!!それはっ本当ですか。
 いや香川教授が冗談を仰るような人ではないと存じていますし大言壮語をはかない方だとも。しかし、この話はまさに青天の霹靂というか……。
 歴代の学長が執筆陣に名を連ねる中で……学長にも『未だ』なっていない私が『ワタシの履歴書』……私が『ワタシの履歴書』にっ……」
 先程は夢見るタヌキといった感じだったが、何だか目に――チラッとしか見たことはないものの――少女マンガのヒロインのようなハートマークだかお星さまが飛んでいるような感じの目つきだった。
 一切の説明を省略して精神科の真殿教授にでも診せれば何らかの精神疾患の病名が付くような感じでもあった。
「今の段階での契約はあくまで高木氏と私の間だけのものです。ですから私が窓口にならざるを得ないのは分かりますよね?
 その高木氏がニッケイに働きかけても良いと昨夜仰っていました。もちろん、斉藤病院長にその気が有れば……のお話しですが」
 桃源郷で泥酔したタヌキというか、お星さまになってキラキラと瞬いているような表情を見れば「その気が有れば」どころか「その気が満天の星ほど有る」といった感じなのは一目瞭然だったが。
「香川教授の口利きが有れば『ワタシの履歴書』にお声が掛かるようですよ。……歴代の学長でも声が掛からなくて、無念の涙を呑んだ方も複数人いらっしゃるとか。
 それを『未だ』学長ではない段階で書ける名誉とそれがもたらす波及効果は計り知れないですよね。
 こんな機会は滅多にないですし、それに来たるべき学長選挙でも絶対的に有利に働くのも自明の理です」
 祐樹も驚きに目の輝きがいっそう強くなってチラリとこちらに笑みを含んだ目で見た後に斉藤病院長の攻略――「ワタシの履歴書」という強力な援軍を得て更に口調に熱がこもっている。
「こ……光栄過ぎて、ああっ血圧がっ……」
 話しの途中で口を挟まないのが秘書としては基本中の基本だったが、スラリとした身体を秘書用のスペースから優雅な動線を描いて携帯用の血圧計を慣れた感じで取り出して祐樹の方へと指示を求めるような眼差しを浮かべている。確かに病院長室のどこに何が仕舞ってあるか彼女にしか分からないだろうから。
 心臓外科の人間が居るのに自分が差し出た振る舞いをして良いものなのかとか、そして曲がりなりにも教授職の人間に血圧を測るという看護師でも対応可能なことを任せるのは失礼だという常識的判断だろう。
 血圧は怒りとか興奮状態などでも刻々と変化するものだし、斉藤病院長は今の今まで考えてもいなかった「ワタシの履歴書」の執筆陣に名前を連ねることが出来る「かも」知れないという望外の喜びに血圧が上昇しただけだろうが。
「一応計っておきますね。はい、息を吸って、はいて……」
 祐樹が唇に皮肉な笑いを刻んで――祐樹の男らしく整った端整な顔を最高に引き立てる笑みだが、自分には向けられることはない――斉藤病院長の血圧を測りながら素早く脈拍もチェックしている。
 「ワタシの履歴書」一つで天高く舞い上がってしまった斉藤病院長の――まあ、気持ちは分からなくもないが自分に万が一執筆依頼が来てもこうはならないだろう――ことを面白がっているのだろう。
「ああ、だいぶ落ち着いて来ました。普段の血圧は下が……」
 祐樹が告げた血圧よりも遥かに低い数字――勤務先が病院なので健康診断の項目は一般企業よりも多いと聞いているし、部下の諸々の数値は上司まで報告されるけれども病院長の健康診断結果が流れてくることもない――で斉藤病院長がどれだけ興奮しているかが分かる。
「心臓に既往症はないですよね、確か」
 再検査の場合は各医局に回される。心臓外科レベルまではいかなくとも内田教授に報告が下りてくるのは確実で、内田教授なら自分にこっそりと打ち明けてくれるだろうから。
「ないです。一時的な興奮でしょう。『ワタシの履歴書』はいわば各界の名士が執筆するもので、車のCMではないですが『いつかはクラウンに』ではなくて……あんなモノはお金さえ出せば誰でも買えます。しかし『ワタシの履歴書』はお金では買えないこの上ない『成功者の証し』なのです。それが『直近に』手に入ると分かったら誰だって血圧くらい上がりますよ
 で、本当に『ワタシの履歴書』に書かせて頂けるのですかっ!!」
 高木氏の示唆通り切り札の効果は抜群で、桃源郷で夢見るタヌキといった感じの斉藤病院長は目を夢見る乙女のようにキラキラさせている。
 斉藤病院長がどんな顔であろうとも、自分には全く関係もないし興味もなかったがこの表情――祐樹が笑いを我慢しているのも尤もな感じだ――は写メを撮って内田教授とか北教授辺りに見せたいと悪戯心もそんなに持ち合わせていない自分ですらそう思うので祐樹などは更にそう思っているに違いなかったが。祐樹は悪戯っぽい眼差しと白衣に包まれた広い肩を竦めて可笑しそうな感じを――秘書や病院長には悟られないように――「自分にだけ」送ってきた。そしてその輝く瞳には紛れもない賞賛の光も宿っていて、それだけで自分も夢見心地になりそうだ。
「はい。実際に執筆という運びになったら、病院長と新聞社との繋がりが出来ますよね?
 斉藤病院長のご人徳で担当者に石川病院長を紹介するのも良いですし、積年の恨みの意趣返しでワザと妨害するという手段も使えますよね」
 祐樹が交渉するのを横でただ見聞きしていたわけではないので祐樹ならどうするかを考えて斉藤病院長の説得に当たった。祐樹ならもっと上手く誘導出来るだろうが、こういう交渉などは初心者なので。
 そして背を凛と伸ばして座っている祐樹の横顔にも満足そうな笑みが仄かに浮かんでいるのは「弟子の成長を喜ぶ師匠」という感じなのだろう。今までのように祐樹に守られるだけでも充分幸せだったが、祐樹だって自分と付き合うようになってから人間的にも職業的にも大変成長するための努力は払っている。
 だったら祐樹に失望されないようにこちらもそれ相応の努力を払わなければ「並んで」生きることが出来なくなるかもしれない。大切にされているのは大変嬉しいがそれが「お荷物」と思われるのが怖い。だったら自分も――祐樹には劣っているのは重々承知だが――それなりの戦闘能力を身に付けなければならないだろう。
「それはそうです!?つまり『ワタシの履歴書』執筆に関しては石川病院長の生殺与奪の権を握っているのは私ということですか!?」
 斉藤病院長が絶対に断らないだろうと踏んでいたが、この発言は既に「書くことが前提」に変わっている。
 まあ、そういう剛腕さも斉藤病院長の持ち技の一つだし、自分としては祐樹と二人で並んで座る席の近くに薔薇とカトレアと百合の噴水とも評される素晴らしいアレンジメントが有ればそれだけで良かったのだが。











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