腐女子の小説部屋

創作BL小説を綴っています。ご理解の有る方【18歳以上】のみ歓迎致します 申し訳ありませんが書く時間を最優先にしたいのでリコメは基本的に致しません。 要望・お礼などは「日記」記事でお応えしますが、タイムラグがあることも多いです。

2017年08月

気分は下剋上 ジャズナイト 13

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 襟ぐりの深いサマーウールの背中はかなり広く開いていてクッキリと浮かび上がった肩甲骨の上の紅色の素肌まで見えるようになっていて、最愛の人が祐樹のスラックスを細心の注意を払って――先程の屋外での際どい行為の際に昂ぶってしまっていたので――乱していくのを象徴しているように大粒の汗の雫が一滴ランプの灯りに煌めいて指の繊細な動きに従って紅く黄色く彩りを変えるのをただ魅入られたように凝視していた。下手に身動ぎすると紅く染まった細くて長い指が震えながらも手際よくスラックスから昂ぶりを取り出すという――手技とは異なるものの難易度は高い――両の手の動きを邪魔してしまって、最悪の場合祐樹の灼熱の愛の象徴がチャックに挟まれるという考えるだに痛い惨状を引き起こしてしまいそうなので。
 昂ぶりが空気に触れて幾分熱を冷ましてくれるが、その程度で鎮まるわけがない。
 瑞々しい果実のような双丘を最愛の人の指が開いていくのを目ではなくて感じやすい先端部分とか紅色の腕の動きで察した。
「聡の極上の花園もそんなに待ち焦がれて下さっていたのですね。嬉しいですよ」
 濃い紅色に染まった耳朶にだけ聞こえるように小さく囁きながら、先端部分で小さな円を描いて花園の門を潤していく。
 同時に胸の両の尖りの側面部を強く挟んで下半身と同じように円を描くように回した。
「あっ……」
 しなやかな肢体が若木のように撓んで肩甲骨の汗の雫が空中に煌めいて墜ちていく。
 しどけなく開いた花園の門が祐樹の先端部分を熱く濡れたベルベットの極上の動きで迎え入れようと強く緩く包み込んでくれている。
「その艶やかな嬌声を誰かに聞かれたら嫌でしょう?
 私はむしろ聞かせたい、ですけれども……ね」
 双丘を自ら開いていた指が慌てたように唇へとあてがわれたのを気配で察した。
 忍び音さえ漏らしてはならない――と最愛の人が思い込んでいるだけだが――愛の交歓は久しぶりで、羞恥と悦楽に薔薇色に染まった素肌が汗に濡れて薔薇花びらよりも綺麗だった。
 危なっかしい感じで繋がっている先端部分をもう少しだけ進めて胸の尖りと同じような弾力を持つ蕾を緩く衝いた。
 胸の両のルビーの尖りが祐樹の指のせいではなくて小刻みに震えている。実際に見ることが出来たらさぞかし紅くて艶やかに煌めいていることだろうと少し残念だったが、花園の浅い部分の蕾と胸の尖りへの愛撫、そして羞恥心が揃わなければこうはならないので、また別の機会を考えようと密かに思いつつ、胸の尖りを五本の指と掌まで総動員して強く丸く円を描いては弾いて硬度と感度を愉しんだ。
 その度ごとに、しなやかな背中が綺麗に弧を描きながら小刻みに動いて花園の蕾に当たっている祐樹の先端部分を更に深く味わうように薔薇色の大輪の花が雨に降られて動いている姿を彷彿とさせる。
 祐樹が丹精込めて淫らに咲き誇らせた花園の中も甘く厚いシルクの薔薇の花びらがバラバラに動くように緩くきつく包み込んで先端部分の濡れた感触を蕾が充分に味いたいような魅惑と蠱惑に満ちた薔薇園の佇まいと天使の羽根の貪婪さで動くのも最高だった。
 魅力に富んだ薔薇色の誘惑に負けて蕾を強く衝きながら胸の二つの尖りの側面部を強く摘まんで先端部分をソフトなタッチで宥めるように円を描いた。
「あっ……んっ」
 朝露に濡れた紅いミニ薔薇のようなごく小さなため息交じりの嬌声が狭い密室に咲き誇る。
「今、音を立てているのは聡の唇だけ、ですよ。甘くて小さい声ですが……、窓の下に人が居たらどうします?」
 ジャズの音が祐樹の目論見通りに聞こえているので、最愛の人の紅い忍び音は聞こえないだろうが、この人との愛の交歓の時に羞恥心は最高のスパイスなのも知悉している。
 それに先端部分だけで充分過ぎるほどの悦楽を感じている祐樹と異なって、両の胸の尖りと花園の中の蕾という弱点を三つも悦楽の真紅の深淵に突き落とされている最愛の人とでは気持ちの余裕も異なっていて、汗の雫が紅色の背筋に幾粒もメレダイアか細かいルビーの煌めきを宿している人にはジャズの音は耳に入ってはいないだろう。
「一度、ココで真珠をばら撒いてみますか?ただし、声や気配は極力殺して下さい、ね」
 薔薇色に染まった細く長い首が大きく横に振られて、汗の雫が薔薇色の細かい雨のように散っていく。
 同時に花園の中も大輪の濡れた花びらが開くように華麗かつ大胆に綻んでいく。
 祐樹の灼熱の楔を包み込んで精緻に動く花びらたちも奥処へと導く動きへと変わった。
「強く衝きますので、しっかり壁に手をついていて下さい、ね。中途半端な力だと肢体が壁に当たって不自然な音を立てますから。
 あ!ドアの外で人の声がしました、よ。
 私は気配を感じられても痛痒はさほど感じませんが、聡は違うでしょうから」
 更に紅く染まった耳朶に口から出任せを熱く吹き込んだ。しなやかな肢体が祐樹の方へと縋るように傾いだ。
「手は強く壁に付けていて下さいね。
 ああ、手が滑りますか……。それは困りましたね」
 薔薇色の唇を固く引き結んでいると思しき最愛の人は後ろ手に祐樹の腕へと合図めいた感じで縋ってきた。
 言うまでもなく掌の発汗は精神的な理由から引き起こされるので、祐樹のウソ八百にコロッと騙されているのだろう。それでなくとも祐樹の言うことは無条件で信じてくれる人なだけに僅かな罪悪感を覚えながらも、羞恥という最大のスパイスを効かせた愛の行為――しかも「密会」とか「禁断の場所」という、最愛の彼の大好きなシュチュエーションなので、薔薇色の悦楽も普段よりも深いのだろうが。
 最愛の人の汗で滑る細く長い指を絡ませたまま胸の二つのルビーの尖りを親指と人差し指の爪の先で硬い輪郭を弾きながら中指で先端部分を押しつぶす勢いで愛の行為を加えていく。
 連動して動く薔薇色の腕が金と銀の粉を撒いたように妖しく震えていて、それも絶品だったが。











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気分は下剋上≪震災編≫183

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「はい。ただその前に……。少し首を私の方へと近付けて下さいませんか?
 ベッドルームへ行く前に『入浴介助』をお教えしたいので……」
 紅色と白色の淡い煌めきとプラチナリングで彩られたチェーンが祐樹の指で着けられた。
 だた「入浴介助」に祐樹が贈ってくれた細い滝のようなチェーンが必要なのか全く分からないままだったが。
 カーディガンも肩から絹擦れの音を立てて床へと落ちていく。同時にチェーンが大きく揺らされて水晶の涼やかな音を立てながら胸の尖りをチェーン部分では弱く琥珀やリング部分では強く刺激されて薔薇色のため息交じりの嬌声を漏らしてしまう。
「聡の胸の慎ましやかに煌めくルビーには柔らかな色がお似合いだと思っていましたが……予想以上に綺麗で……そしてとても艶っぽく聡の肌を飾りますね……胸のルビーが恒星みたいですし、紅や白の翡翠は惑星のようでとても綺麗です」
 この愛の行為――プラチナのチェーンや宝石達で触れられたのは初めてだったが――が苺とか生クリームなどが小道具だったことや、祐樹の贈ってくれた指輪の冷たい感触が火照った胸の尖りを程よく冷ましてくれた後に更に疼きを強めた過去の愛の交歓とどう異なるのか全く分からない。
「少し待っていて下さい。私も服を全て脱ぎますので……」
 「それなら寝室でも大丈夫だろう?」と言いかけて慌てて言葉を飲み込んだ。「入浴介助」のレッスンはどう考えても祐樹が身に着けている物全てを脱がないと不可能なことくらいは常識で考えても分かるので。
「手伝おうか?ポロシャツは脱ぎにくいだろうし……」
 鎮痛剤を打ったとはいえ、左手の負担は極力減らしたい。いや、祐樹には普通のシャツで充分だったのを、自分の我が儘――胸の尖りを隠したいことと、色違いとはいえお揃いの服で街を歩きたかったこと――で選んだ負い目も僅かながら存在したのも事実だった。
「大丈夫ですよ。この程度のことは何でもありません。それよりも砂を掬うような感じでチェーンを弄って下さって戴いたほうが贈った甲斐が有ります。
 いつも以上に紅く煌めく慎ましやかな尖りに涼しげな細いプラチナのチェーンやリングが当たったり、宝石と相乗効果で艶めいたりするのも素敵ですし、それに先程から放置されている育ちきった先端から滴っている水晶の雫とか紅薔薇よりも紅い花園の動きも白い滝のようなチェーンが更にそれぞれの色を増すのかと思うと、綺麗過ぎて眩暈がしそうになります、よ」
 祐樹が――鎮痛剤が効いているとはいえ――怪我人とは思えないほど素早く着衣を脱ぎ捨てていく。
 精妙なバランスの取れた筋肉質の身体は見慣れたものになっていたが、前髪を全て後ろに流した理知的さの勝る端整な眼差しとか、いつも以上に凛々しくて頼もしそうな大人の余裕を併せ持った表情に見かけよりも柔らかい唇が悪戯っ子めいた笑みを浮かべているそのギャップが堪らなく良い。
 祐樹を見ながら胸に掛かったチェーンを掬い取っては胸へと落とすという単純作業なのに身体に力が入らなくなって先程のカウチに腰を下ろした。
 それでもチェーンを掬っては胸へと落としていると、いけない一人遊びに耽っているような気分になってくる。
「あっ……」
 水晶の澄んだ音と共に紅色の翡翠が胸の尖りの先端部に当たってもう片方の尖りには祐樹がバレンタインに贈ってくれたプラチナのリングが側面部を強く擦ってしまって甘い喘ぎ声交じりの吐息を零してしまう、ついでに育ちきった先端部からも水晶の大粒の雫が幹を転がり落ちて花園の門へと滴っていく。
「胸のルビーの尖りも、そして紅色に染まった素肌もさらにしっとりと上気して汗の雫をまとった薔薇のように綺麗ですね。
 普段は――そして今日の貴方は稀有な特別さを強く放っていましたから紫っぽい青い薔薇ではなくて、万人がイメージする大輪の蒼い薔薇のようでした――いつもは怜悧さとか理知的な感じのする真紅の薔薇とかカトレアの風情なのですが。悦楽に我を忘れて乱れていても咲き誇った肢体はやはり真紅の薔薇のイメージです。
 では『入浴介助』のレッスンを致しましょうか。左手は濡らしてはならないことは言うまでもなくお分かりかと。ただ、包帯から出ている場所には注意深くシャワーを当てて下さいね。そこまでは『普通』と同じです。その後、ボディソープを身体の前の部分全てに付けて下さい。
 お顔は別です。ボディソープを付けるとどうなりますか?」
 祐樹が手慰みといった感じで胸のチェーンを前後左右に動かして涼やかな音と共に胸の尖りの疼きが全身に燃え広がるような悦楽で瞼までが紅く染まってしまう。
「ボディソープ?付けると滑らかさが増すのと泡が立つな」
 何だかナゾナゾをしているような気分だった。祐樹が普段のように明確な意図を持って質問をしているのだろうが、その意図が全く不明だったし何故そんな質問をされるのかも尚更分からなかった。
「そうです。ボディソープを付けたという前提で、聡の肢体で私の背中を洗うような動きをしてみてください」
 祐樹が広い肩や背筋が伸びた背中を向けてすくっと立ったので、自分も後ろから抱き付いて身体を動かした。
「あっ……胸の……尖りとか、下半身が……当たって……気持ち……悦っ……」
 祐樹がレッスンだと言っているしボディソープはもちろん付けていないのに祐樹の背中だと思うと焼けるような悦楽の疼きが全身を真紅の炎に包みこんでいくようだった。
「私も、とても気持ちが良いです。胸の尖りとか、ついでに宝石も、ですが。
 それに下半身の水晶の雫を浮かべた場所が背中を弾いて下さっていて。
 背中だけでなく前も同じようにして下さったら、それが『入浴介助』ですよ?」
 え?と目を見開いてしまった。ついでに紅色に染まった唇も半ば開いて祐樹の端整な顔立ちを問うように見つめてしまう。
 祐樹が可笑しそうな感じで唇を弛めて僅かに笑みを浮かべた後に口を開いた。












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「気分は、下剋上」<夏>157

『香川教授の心身が危険ならば、斉藤病院長に掛け合って数日間、いや、ほとぼりが冷めるまでウチの病院に何らかの口実――当然教授のポジションに相応しい公開オペとかそういう催しを用意致します――で東京にお呼び立てすることも可能かと存じますが……。
 ウチの警備員を総動員してお守りするのは大前提ですが』
 岩松氏は隙あらば、祐樹最愛の彼とついでに祐樹自身をヘッドハンティングする好機を狙っていることを、持ち前の豪放磊落さで広言しているが、そういう下心は今の心の底から心配している切迫した感じの声からは微塵も伝わって来なかった。滅多に直接会うことはないものの、祐樹最愛の彼の人柄については長岡先生経由で聞いているだろう――そうでなければ大切な婚約者に性的嗜好が特殊とはいえ――高価なものがとんでもないところに転がっていたりカオスという言葉では表現出来なかったりする自宅マンションの出入りを、前者が主な理由だろうが……許すハズもないので。
 最愛の彼も長岡先生のことはプライベートで「困った妹」に接するようにまめに面倒を見ているのも事実だった。
「まあ、それは考え付かなかったわ」
 長岡先生が一瞬デスクに身を乗り出してスマホの集音部分――多分彼女は気付いていないだろうが――に淡いピンクの口紅を付ける勢いかつ比較的大きな声で言ったので、岩松氏の鼓膜が心配だった。いや、それ以前に世界的に認められた外科医の証しでもあるベルリンの国際公開手術の術者に指名された時にはスケジュール調整が充分可能な時期に招待状が届いたが、今回は唐突過ぎて土日祝日を除く全ての日に最低二件も手術をこなす彼にとっては無理な相談だろう。
 戸田教授のような執刀医としての責任を放り投げてわが身の安全――祐樹も呉先生のアドバイスを受け入れて最愛の彼には名言していないが――を計るような安直な責任感の持ち主ではなかったので。
「お気持ちは大変有り難いのですが、執刀を待ち望んでいる患者さんがいらっしゃる限りウチの教授は責任を全うしますよ」
 長岡先生は細い身体がさらに細くなるほどの盛大なため息をついている。婚約者の話に一瞬は乗り気になったものの、祐樹よりも医師としての付き合いが長いだけあって、彼の公人としての性格と仕事熱心さを知悉していただろうから。
『そうですね……。香川教授の性格だと名誉よりも、目の前の患者さんを優先するでしょう、失言でした。忘れて下されば嬉しいです』
 私立病院の実質的な経営者として――歳はまだまだ若いものの――祐樹が所属する大学病院とは異なった、いわば実業家としての苦労も積んでいるだけあって岩松氏は人を見る目も確かだ。
「はい。ご配慮有難う御座います。角松弁護士なのですが、どんな感じの弁護士でしたか?副院長からご覧になって」
 ふと思いついて聞いてみた。旧知の杉田弁護士も京都に事務所を構えているので烏丸弁護士事務所は知っているかも知れないが、以前「弁護士と言っても個人営業だから有名な人とか司法試験の同期合格者とは皆知り合いだが、それ以外は知らない人も多い。相手方の訴訟代理人になれば当然調べるが」などと言っていたことがあったので。それに杉田弁護士はウチの病院の訴訟代理人――といっても祐樹の医局とは全く関係がない――を受任した経験があるくらいなので旧国立大学病院が嫌ういわゆる「人権派」とか「赤い弁護士」ではない。ただ、井藤の家もブラックに近い灰色ではあるもののケタ違いの資産家――でないと、私立の総合病院を地価の高い東京に建てられるハズもない――なので、京都に何故か多い人権派とかそういう感じの弁護士でもなさそうだったが。
『そうですね……。クライアントのためには多少汚い手段を使う――いや、弁護士は皆そういう部分が有りますが――のも全く厭わないタイプに見えました。
 私は病院の評判に関わりますからそういう弁護士は使いませんが、銀座のバーで良く見かける反社会的勢力御用達の弁護士に似た感じはしました』
 今は社会全体が反社会的勢力――要は暴力団だ――の撲滅が官民共になびいているが、それでもまだ棲息しているらしいし、杉田弁護士から聞いたところによると暴力団の依頼を受けたら――金払いは良いらしいが――善良な市民からの依頼は不思議なことにすっかりなくなってしまうそうだ。
 そして当然ながら弁護士だって商売なので、収入がなければ生活費すら事欠く有様になるそうで、その点こき使われているといっても毎月の給料は保証されている祐樹のような職種では想像し辛いが、そういう依頼人ばかりを引き受けているうちに朱に交われば赤くなるとの故事成語のように物腰や服装まで「その筋の人」のようになってしまう人も多いとか杉田弁護士から以前に聞いた覚えがある。
 そう言えば、狂気の研修医井藤を当然のように叱責した河上医局長への抗議に戸田教授の元に弁護士の一団がやってきたらしいが「たかが」医局クーデターの計画のリークでも執刀予定もキャンセルしてどこぞに雲隠れしてしまう戸田教授の呆れた小心振りではまるで暴力団のような弁護士達の来襲は耐え難い苦痛だったのかもしれない。あくまで推測に過ぎないがかなり説得力はありそうだ。
 それに井藤の父親と思しき井藤幸一氏もダークな商売なだけに「そっち」関係にも知り合いは多そうだし、接点はあるような気がした。
 その点祐樹最愛の彼だったら――医局の中に弁護士を差し向けるような人間は存在しないが――「そっち」関係の弁護士が来たとしても「普通」の弁護士との差が分からずに対応して、独特の隠語なども真顔でどういう意味か聞きそうだし、相手が毒気を抜かれる可能性の方が高い。
 その上数多い患者さんの中にはその道で名の通った大幹部も居た――案社会的勢力とはいえ病人になってしまえば平等の意識がはたらくらしく病院の汚名にはならないのが不思議と言えば不思議だった。ただ医師の間の都市伝説かもしれないし祐樹や祐樹の同僚や大学の元同級生でそんな病院に勤務している人間はいないものの、拳銃の傷とか指を詰めるなどの「そっち」側の風習で怪我をした場合は提携先の病院があるとかは聞いている――がボディガードなどは最愛の人が頑として断った過去が有ったし、大幹部の方も神妙に最愛の彼の指図通りに従ったという逸話まで残していた。
 祐樹が岩松氏と話している間に長岡先生は角松弁護士の名刺部分のファックス用紙を含めて関係した書類を手際よく並べてクリアファイルにまとめてくれている。まあ、長岡先生らしく手際よくといっても転んだり人を避けたりしたわけでもないのに三回も書類を宙に散乱させるというハプニングは有ったが、祐樹の記憶通りの枚数が挟まっている上に、付箋紙は販売しているようだがクリアファイルは長岡先生御用達のフランスの老舗ブランドでは販売していないらしく、祐樹には有り難いごく普通の事務用のクリアファイルだったが。
「あまりお役に立てなくて申し訳ありませんでした。ただ、私達に出来ることが有れば喜んでお手伝い致しますので是非声をお掛け下さいませ」
 岩松氏との電話を切って、時計を見ると呉先生と約束した時間が迫っている。
 慌てて辞去の挨拶をするとモニタールームに急いだ。呉先生も手術アレルギーというか血を見るのが大嫌いなので嘔吐などはしていないだろうな……と心配しつつ。
 それにクリアファイルに収められた厚生年金などの戸田教授の実の妹の井伊玲子さんの情報は森技官に渡ってこそ意味があるので、呉先生に直接手渡す方が確実だったし。











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気分は下剋上 ジャズナイト 12

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「故障中の為このトイレは使用不可能です」との――素っ気ない文面と商売っ気が全く感じられない感じがこの建物には相応しいプレートだったが、今の祐樹には大歓迎の内容だったので弾んだ気持ちと身体の昂ぶりを一時抑えて、音がしないように扉を開けた。
 ジャズの演奏会という催し物が開催されてはいるし、メイン会場とか屋台のスペースにはかなりの人出があったが――国宝級の展示物などが一般公開されているわけでもないので――警備員の数とか、守るべき重要な物がほぼない感じだったので、警備員の気も多分弛んでいるだろうし、事実今までガードマンの姿は見たことがなかったのでよほど職務に燃えた警備員が変に思ってトイレのドアを開ける可能性は低いだろうし、呑み過ぎて切羽詰まった人間が居たとしてもこのプレートを見たら――女性用だったら話は別だが――最悪外で用を足そうとするだろう。何しろ周りは芝生と木立しかない閑散とした場所なので、男性だったら闇に紛れることは充分可能だ。
 古い建物にありがちな、密閉感を重視した作りなだけに祐樹がプレートを下げたトイレのドアは一般家庭の普通のドアと同じく隙間がないので光は漏れないように作られているのも好都合だった。
 煌煌と明かりの点いた空間をワザと足音を殺して歩いていく最中にも期待に胸が弾んだ。本当に「密会」というか「慌ただしい情事」を企んでいる気分になってウーロン茶で潤したハズの咽喉が乾いた感じは久方振りのことだったので却って新鮮だった。
 一番奥の個室のドアを必要最低限の音を立てて二回ノックしてからきっかり十秒後にもう一度ノックした。十秒という時間がやけに長く感じたのは、多分中に居る最愛の人も同じだろうが。
 カチリと鍵の開く音と共に重厚なドアが僅かに開いた。
 素早く個室に忍び込んでドアを後ろ手で閉めて鍵を掛けながら最愛の人の濃い紅色に染まった艶っぽい容貌や肢体を眺めた。
 蛍光灯ではなく、ランプの灯りに照らされたしなやかな肢体は肝心の場所だけが素肌を晒しているのも扇情的で更に色香を放っていた。
「お待たせしました、か?」
 襟ぐりが深い伸縮性のあるサマーニットとはいえ、両のルビーの尖りを肩から下ろして空気に晒すのは不可能だったのだろう、滑らかな紅色の引き締まった下腹部からたくし上げられている様子も絶品だった。
 スラックスも下着ごと中途半端な感じで素肌を晒しては育ちきった先端から水晶の雫が煌めいている。
「待ち焦がれて……いた、祐樹を」
 艶やかな紅色に染まった紅い唇が震えながら健気な言葉を紡いで接吻を強請るように花のように綻ぶのもとても綺麗な蠱惑に満ちている。
「ああ、せっかくですから、窓を開けましょうか?方向的にジャズの音色が拾えるハズです」
 潤んだ瞳が羞恥に揺れているのも綺麗で、正直ジャズの演奏はどうでも良かったものの嬌声を必死で耐える最愛の人の艶姿をこの目で見たくて窓を僅かに開けた。
「ゆ……祐樹っ」
 羞恥に震える紅い唇を唇で塞いで制止する声を防ぐ。揺れる眼差しは必死に訴えているのをワザと気付かないフリをして、薄い唇の輪郭を舌で辿りながら合わせ目が綻ぶのを待った。
 ジャズの旋律が微かに風に乗って運ばれてくる。
 諦めたのか、それとも肢体の熱に煽られたのか最愛の人の唇が花よりも綺麗に綻んで祐樹の舌を空中で絡め取った。
 祐樹の背中に縋るように回された腕も微かに熱く震えているのも「密会」に相応しい秘め事めいた香りがする。
「声や気配を……極力殺して下さいね。不審に思って誰かが入って来たら聡が嫌でしょう?
 この個室までは誰も入って来られないとは思いますが……、聞き耳を立てられる程度のことは覚悟しておいた方が宜しいかと思いますので」
 唇を僅かに離して言い聞かせるように瞳と額を合わせて念を押した。人が入って来る可能性はごく僅かしかないことを祐樹は当然知っていたが最愛の人は知らないので、羞恥の煌めきが期待に艶めく濡れた眼差しに精緻なアクセントを添えてとても綺麗だった。
「ここも慎ましやかな紅さで煌めいていて……とても綺麗ですね。普段ならゆっくりと愛したいルビーの尖りですけれど……人が来たらマズいでしょう?
 それとも声を聞かせて、更に人を呼びましょうか?私はそれでも構いませんが……」
 胸の慎ましげに煌めく二つの尖りを指で小刻みに弾くと、紅く染まった戦慄く唇を甘く閉ざす代わりにしなやかな肢体が弓なりに反った。
 その動きを利用して最愛の人の肢体を反転させる。
 紅く染まった細く長い指に握られた祐樹のハンカチが蝶のように羽ばたくのも印象的だったが。
「私のスラックスをはだけるか、瑞々しい双丘を指で開くか……、どちらかを選んで下さい」
 声を最小限まで絞って紅く染まった耳朶に囁いた後に、甘く噛んだ。
 甘いジャズの旋律よりも甘いため息が微かに聞こえて二人きりの密室の愛の空気の濃密な感じを更に紅く彩っていくようだった。











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昨日はダウンしてしまいまして更新が不可能だったことをお詫び致します。
今日もヘロっていますので、二話更新出来るかどうか微妙です。
大変申し訳ありません。
 



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「気分は、下剋上」<夏>156

「今はこういうファックスも可能なのですね。仔細に確かめれば印鑑もコピーなのは分かりますが、パッと見には分かりません」
 公文書――祐樹が扱うのはAiセンター長として、死亡時画像検索での結果に押印作業とか、救急救命室でDOA(搬送されて来た時に心肺が停止しており、救命医療でも救えなかった患者さん)の死亡診断書を書くなどの医師としての公的業務の時のみだったが――に署名捺印は必須だったが、岩松氏も長岡先生の話を聞いて病院公式の文書が必要と判断したのだろう、朱肉を使った押印までしてあるし、一昔前の感熱紙ではなく普通の事務用の紙に印字されているので「公文書」としても――バレなければ――使用出来そうだ。
 森技官も厚労相の印鑑を――どう考えても時間的に無理のある、夜に大阪に居て次の日に東京に居ると思しき大臣の印鑑を貰っていけしゃあしゃあと京都の病院に現れることが出来るのも、こういう方法を使っているのかもしれないな、と考えながら戸田教授の妹さんの「当院に搬送履歴なし」という岩松氏の書類を感心して眺めた。
「もしもし、私です。田中先生も傍にいらっしゃって是非お話ししたいと」
 長岡先生がスマホを耳に当てて使っているのを――スピーカーにした意味がないが彼女は複雑な医療器具なら難なく使いこなせるのに、万人向けに簡素化された家庭用の機械オンチなのが却って不思議だったが「長岡先生だから仕方ない」という諦念が祐樹にも最愛の彼にも共通認識として既に持ち合わせている。
「机の上に置いても充分聞こえるハズですよ」
 小声でアドバイスすると長岡先生は驚いたように机の上にガチャンと大きな音を立てて乱暴に置いた。耳に当てているだろう岩松氏には大きな雑音として伝わっているだろうなと思いつつも、長岡先生のある意味突飛な行動には婚約者として慣れきっているので――そして祐樹などよりもずっと寛大かつ寛容な性格なのは知っている――そうそう驚かないだろうが。
『田中先生お久しぶりです。執刀医としての見事な手技はウチの心臓外科長から伺っております。是非とも拝見したいと思っておりますがなかなか時間が取れないことや、一席設ける機会がないことをお許しください。
 それはともかく香川教授に心身の危機とは……。心中深くお察し致します。
 私に出来ることは何でもご協力致しますので遠慮なくお申し付け下さい』
 全く動じた感じのない岩松氏の落ち着いた声には自信と懸念が溢れていた。懸念は祐樹最愛の彼に対してだろうが。
「有難う御座います。井藤達也の弁護士が先生にご挨拶にいらしたとか。どこの法律事務所の人間か分かりますか?」
 岩松氏だって面会人には慣れきっているだろうし、名刺などの保管は自分がしないとならない祐樹などと異なって秘書などを雇っているに違いないので完璧だろう。
「京都の『烏丸弁護士事務所』の角松弁護士ですね。名刺と――ここだけの話――京都名物の「生八つ橋」の箱の下部には小判ならぬ商品券がびっしりと詰まっていました。現金では却って失礼だとでも思ったのでしょうが、驚くほどの金額でしたね。名刺のコピーをそちらに送った方が宜しいでしょうか?」
 時代劇の悪代官に袖の下を渡す大商人のような時代がかったやり方だが、岩松氏が「驚くほど」の金額――何せ、婚約者の長岡先生がふとした好奇心から祐樹などには手が出ない高価過ぎるダイアモンドを叩き割ってしまっても、しかも最愛の彼に彼女が復元を頼んだという、突っ込みどころ満載のオチまで付いている――平然として新しいのを買ってくれたとか聞いているので岩松氏が驚くほどの金額というのは祐樹には想像も出来ない程度の金額なのだろう。
「ぜひお願いいたします。『烏丸弁護士事務所の角松弁護士』ですね、分かりました。井藤達也の自宅とかの個人情報は言っていませんでしたか?」
 杉田弁護士にでも「烏丸弁護士事務所」がどういう事務所なのか聞く必要があるなと思いつつ、狂気の研修医井藤の自宅――というか主な生活の場所――がどこかを確かめてみた。
「さあ、そこまでは……。京都の弁護士に依頼するということは京都ではないのですか?
 ああ、これもファックスするように」
 岩松氏が秘書――だろう、多分――に指示をしてくれているのを有り難く思いながらも唇を噛みしめた。
 岩松氏は生粋の東京生まれの東京育ちと聞いているのでピンと来ないかも知れないが、京都からJRの新快速だと20分で大阪に着くし、大阪から更に20分で神戸なので――この三都市はビジネス街としても機能している――井藤本人か両親のどちらかが依頼したのかは分からないが自宅近くの弁護士事務所とは限らないのは歯がゆい限りだった。
「井藤達也が東京に病院を開く予定などは聞いていらっしゃいませんか?そしてその病院は井藤達也が院長先生なのですか?専門は何科なのです?」
 白河准教授の杜撰過ぎる医局内クーデターが戸田教授にリークされて、井藤が病院に来ていないとなると、狂気の井藤研修医が「病院を開院する」という野望にシフトチェンジすれば、当面の危機は回避される。
 ただ、祐樹最愛の人への異常な執着心の方が勝っているような気がしてならないが。
『病院は総合病院だそうですよ。今、東京の土地を探している最中とのことでしたので、開院はまだまだ先でしょう。
 ああ、そちらの病院所属の井藤達也が院長とのことでしたが、理事長は井藤幸一という――角松弁護士の口ぶりから察するに井藤幸一氏との方が懇意そうな感じはしましたね。あくまで私の感触なのですが』
 あの誰でも――精神科にそれほど造詣が深くない祐樹や柏木先生、そして学生の頃から井藤を知っている久米先生でも精神的におかしいのではないか?と判断した――井藤達也に総合病院の院長が務まるわけはない。
 ただ、医局でもあんなに嫌われていても井藤が平然としているのは、実家の人間が建ててくれる私立病院の院長先生という逃げ道があるから、なのかも知れない。
 医師免許を持たない理事長とか事務長などが実権を握っている私立の病院が多数存在することも医療雑誌で読んだことがあるので、井藤幸一という人間が井藤の父親なのではないか?との推論は比較的容易に考え付いたが。戸籍調査などは「MSセキュリティ」の十八番のようなので――何しろ調査を依頼した後に役所が開く時間ぴったりに知らせてくれたのは大変有り難かった――井藤幸一氏のことも頼んでみようかと思った。
「有難う御座います。他に気付いたことは有りませんか?どんなことでも教えて下されば大変助かります」
 一呼吸置いた感じで、岩松氏が口を開いた。意外過ぎる発言にそういう発想も有ったかと思ってしまう。











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昨日はダウンしてしまいまして更新が不可能だったことをお詫び致します。
今日もヘロっていますので、二話更新出来るかどうか微妙です。
大変申し訳ありません。
 



最後まで読んで下さって有難う御座います。
                            こうやま みか拝
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