腐女子の小説部屋

創作BL小説を綴っています。ご理解の有る方【18歳以上】のみ歓迎致します 申し訳ありませんが書く時間を最優先にしたいのでリコメは基本的に致しません。 要望・お礼などは「日記」記事でお応えしますが、タイムラグがあることも多いです。

2017年08月

「気分は、下剋上」<夏>160

 何だかSF映画の宇宙船の操縦席のような感じで各種映像が流れているモニターの中の第一手術室――言うまでもなく最愛の人の秀逸な手技が余すところなく披瀝されている――の前には数人の医学部生らしい感じのラフな格好をした人達が8人居るだけで、狂気の研修医井藤の姿はなかった。
 医局に出勤していないのは、白河准教授の医局クーデターを察知して戸田教授にリークした――しかも弁護士までが付いているそれも実家関係だと反社会勢力に片足どころか全身を突っ込んでいるような、それでも岩松氏の前では猫をかぶっていたに違いないが、戸田教授の前では法律のギリギリの範囲内での恫喝などお手の物だろうし、実際の戸田教授は呆れ果てるほどの小心者のようなのでかなりのダメージを与えたに違いないが――それでも戸田教授サイドであることには変わりがないので、納得出来る。その上祐樹や外で待っている呉先生のように病院に縛られる必要は井藤にはない。何しろ実家の動向からして「私立病院の院長様」という椅子まで約束されたのも同然だったので。
 井藤がここに居ないのは、一体どういうわけだろうと首をひねってしまう。
「よ、久しぶり。ご出世だね、田中先生。今日は助手じゃないんだな……。アンタの執刀が見たくて仕方がないんだが、香川教授があんなに見事過ぎる手技を披露してるんじゃ、出番は少ないだろうが」
 後ろから親しげな感じで肩を叩かれて思わず笑みを零した。
「桜木先生こそ、今日はオペではないのですか?お久しぶりです。お元気そうで何よりです」
 モニタールームは図書館と同じく私語厳禁なのだが、それはあくまで建前で、国内外を問わず病院長自らが案内するような医学界の重鎮だとかそういうVIP扱いをされている人間が主に祐樹最愛の彼の手技を見学する時には遵守されているものの、学生しか居ない今の空間では「医師」というだけでかなり自由に振る舞える。
 桜木先生は悪性新生物――いわゆるガンだ――の手術職人で、病院内の出世とか院内政治などには全く興味を示さずに手技向上だけを頑なまでに目指している手術室の住人だった。祐樹も専門外とはいえ、桜木先生の手技を見たことはあったが目覚ましいまでの冴えたメス捌きで――といってもガンの手術と心臓の手術とでは基礎は一緒でも細かい手法が全く異なるのであくまで素人に毛が生えたような観察眼だろうとは思うが――目を瞠ったものだった。
「あまり元気じゃねーよ。昨日は八時間に及ぶ大手術を成功――多分な――させて、今日は経過観察のための休みだ。第一オペ室の香川教授の手技を見て元気を貰おうと思って来たものの……、何だ?あの体たらくはよ?」
 無精ひげが目立つ――病院内では知る人ぞ知る教授の影武者めいた存在なので、患者様やそのご家族との接触がないのでそういう格好をしていても問題はないのだろうが、大学病院の旧弊さとか悪しき因習の全くない通称香川外科では、執刀医や主治医が病状説明や手術同意書などの重要書類にハンコを貰うという、いわば「外向き」の仕事も当たり前のように行われているし、桜木先生のような「影の存在」は居ない――顔を不満そうな感じでモニターに向けた。
「え?ああ、そちらでしたか……」
 一瞬、最愛の彼の手技に不満――と言っても、桜木先生とか祐樹レベルでないと分からないほどの日本、いや世界レベルの高水準での話だろうが――があるのかと嫌な思いが脳裏を掠めたが、桜木先生の侮蔑の視線は第一手術室のモニターではなくて、第二手術室へと向けられていた。
「確かに酷いですね。執刀医の心身の動揺が手技にありありと出ています。それに助手や道具出しの看護師との呼吸も合っていませんね……」
 ともすれば第一手術室の画像へと視線を向けそうになる――実際チラリと見たが、手技の冴えは相変わらずで、あの静謐かつ荘厳で神聖な場所に祐樹が居ないのは自分で言いだしたこととはいえ何だか不当な扱いを受けているような不満すら感じる――のを無理やり第二手術室のモニターに集中した。手術着のせいでかなり印象が変わっているものの、執刀医は白河准教授で第一助手は河上医局長だったが、隣のモニターに映し出されている流れる水のように清冽な感じさえする手技とは異なって、心身の動揺が手技に反映しているのか――高度に細分化された大学病院の内部では専門外なので物理的に不可能なものの――あれなら祐樹がこなした方がまだマシなレベルのような気がする。
 そして、桜木先生は自分の手術がない空き時間――教授でも可能なオペとか――にモニタールームを完全占拠する傍若無人な勢いで祐樹最愛の彼の手技を見ていることも相変わらずのようで、だったら狂気の研修医井藤のことも心の片隅にでも残っているかも知れない。三度のご飯よりも手術が好きな桜木先生らしく、趣味もサッカーや野球観戦――ちなみに祐樹も最愛の彼も特技は有っても趣味と呼べるようなモノは持ち合わせていないが――ならぬ「手術観戦」という徹頭徹尾仕事に生きている感じがする「手術室の住人」だったし、最愛の彼が凱旋帰国を果たした時の未遂に終わった医局クーデターの時も桜木先生と当時は学生だった久米先生の貴重な証言が決め手になったのも事実だった。
「ウチの教授の手技を、ほぼ連日食い入るように見つめている暗い感じの人間にお心当たりは有りませんか?」
 桜木先生は無精ひげから手を離して、彼には珍しい真面目かつ神妙そうな表情を浮かべている上に目が泳いでいる。教授の権威など――いや、もしかしたら斉藤病院長すらも――手技一つで見限ってしまう実力に裏打ちされた傲岸さは祐樹などにはむしろ好ましく思えたし、桜木先生が祐樹最愛の彼の手技を高く評価してくれているのは素直に嬉しいが、手術の職人というあだ名に相応しい頑固一徹な不遜な表情が削いだようになくなっているのが妙に気がかりだった。











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相変わらずの体調不良で二話更新出来るかどうか微妙です。
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「気分は、下剋上」<夏>159

「要は妹さんである井伊玲子が心筋梗塞だとウソまでついて執刀医まで放り出して雲隠れというわけですよね。医局の長として最低の言動だと思いますが。
 『でっち上げ』とか『捏造』は全面的には否定しませんけれど、それは被害が限定する場合のみだと個人的には思っています」
 森技官に感化されたのかもともとそういう性格なのかは判然としなかったが、呉先生の言いたいことも良く分かった。何しろ呉先生の恋人の森技官の得意技の一つが「捏造」なのだから、それを全面的に否定するわけにはいかないのだろう。
 そして森技官の場合――祐樹が知っている限りでは――被害は最低限に抑えられるようにあれでも自制しているような感じだったし。
「そうですよね、戸田教授は患者さんまで巻き込んでいますから。何しろ医局は大混乱で……。
 井藤研修医はそのせいで飼い殺しから野放しになった感じです、大変忌々しい事態なのですが。
 そして、この病院の副院長とは偶然懇意にして下さっている人なのですが、井藤研修医の代理人と称する弁護士が『私立病院の設立計画のための根回し』の挨拶をしに来たようです」
 呉先生の細い眉がキリリと上がった。
「おかしいですね。この病気――と言っても実際診たわけではありませんが――対象は一点に絞られハズです。つまりは、香川教授ですけれど……。
 だから病院設立という色々大変な業務が重なるモノを井藤が引き受けるかどうか不審の念すら抱いてしまいます」
 野のスミレというよりもアザミというか彼岸花のような風情を漂わせている呉先生が不思議そうな声で言った。
「未だ確認は取れていませんが、この副院長に面会に来た弁護士は井藤研修医の父らしい、井藤幸一氏が中心となって動いているような感じですね。口に出すのも憚られるのですが、井藤本人はあくまで彼に狂気の執着を見せており、病院設立にそう乗り気でない感じを受けました。これも副病院長の受け売りなのですが」
 狂気の井藤が研修医とはいえ医師免許を取得したからこその病院設立だろう。ダークに近いグレーの商売をしている人間が「たまたま」頭の出来だけは良かった息子が医師になったせいで、社会的ステイタスの重みが全く異なる「野望」に駆られたのだろう。
「そうですか……。同居人からも差し障りの有る点を除いて話は聞いていますが、やはり井藤の狙いは……やっぱり……」
 野のスミレが土砂降りの雨に打たれた感じの悄然とした風情を浮かべてため息を零した。
「私自身実際に動いてみて、正直森技官の最初に提案して下さった案が一番良かったのかもしれないと思い始めているところです」
 あの時はあまりの「でっち上げ」の酷さに唖然としたものだった祐樹だったけれども、今の混迷を深める――本来は巻き込んではならない患者さんまで執刀予定を狂わされかねない――脳外科の医局運営の杜撰を極める事態の深さと井藤という人間の狂気に満ちた根強さと強靭さすら浮き彫りになった今となっては、森技官の一撃必勝の案が露見すれば全てを失うというリスクを背負ってはいるものの、妥当だったような気もしてきた。
「田中先生、ウチの同居人のあの発想はいわば核爆弾のようなものですよ。
 破壊力は物凄いかと思いますが、その分後々の処置が面倒ですし、しかも関係者は限られているのでそうそう漏れる心配はないかとも思いますが……それでも『やらかしてしまった罪悪感』に一番苦しむのはおそらく田中先生で、次はオいや、私です。後遺症も残る点もお勧め出来ない理由の一つです。
 同居人の案は、禁じ手を敢えて使うようなモノだと私は思っていますし、何よりも田中先生がそんなある意味危険過ぎるカードを切って欲しくは有りません。それに、オレと違って、香川教授は――天賦の才能とかたゆまぬ努力の賜物の手技の冴えは世界の宝ですけれど――田中先生がそんなある意味悪辣な手段を使って自分を守ってくれたことに、果たして感動するでしょうか?そういう性格ではないでしょう」
 呉先生の熱のこもった意見に我に返って、弱音をついつい零してしまった――呉先生には人の気持ちを易々と開かせる才能が備わっているに違いない――割と自分の本音は最愛の彼だけには言うようになったが、基本的に病院内の人間に本音を漏らすほどのお人よしではなかった積もりだったので、赤面の至りだった、あくまで比喩的に。
 そして最愛の人の性格から考えて、狂気の研修医井藤に何の落ち度もないのに狙われたという点から自己嫌悪に陥りそうだったし、その上祐樹が呉先生の言う「悪辣」さに手を染めてしまったことを何かの拍子で知ってしまえば、祐樹を責めるよりもまず自分で自分を追い込むような性格の持ち主だ。
「そうですね。では先に入って見て来ます」
 狂気の研修医井藤に顔も名前も憶えられている――逆に呉先生は全く知られていないだろう、名ばかりとはいえ脳外科所属の井藤と、不定愁訴外来の小さな城に籠っている呉先生の接点などとこにもないのだから――ので、本当は呉先生一人で入らせて、さり気なく言葉をかけてカウンセリングが好ましかったのだが、呉先生を昨日の森技官のような目に遭わせるわけにもいかない程度の配慮や厚意は持ち合わせていることから、なるべく音を立てずにモニタールームに入った。











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夏バテと相変わらずの体調不良で一話更新しか出来ません。他の話しを楽しみにして下さっている方にはお詫びの言葉しかありません。
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気分は下剋上 ジャズナイト 14(I8禁)

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「手だけではなくて……片方の肩も壁に付ける形では如何ですか?」
 狭い空間で迂闊なことをして最愛の人に怪我をさせる事態だけは防ぎたかった。それに幸いにというか、サマーウールは腹部からたくし上げているので肩は布地に覆われている。
 濃い紅色の艶めいた首筋が細かい汗の雫をまき散らしながら縦に振られた。
 震える紅色の指と肩が重厚な雰囲気を醸し出す漆喰めいた純白の壁に縋るように凭れかかった瞬間に背後から両手を回して胸の尖りを下から上に一際強く弾いてはごく狭い先端部分を宥めるように円を描く。
「あっ……もっとっ……」
 祐樹の渡したハンカチで唇を健気に塞いではいたものの、艶めいた忍び音と共に紅色に上気した瑞々しい双丘の位置が上がって祐樹の目を強く惹き付けた。
「どちらを……?」
 お互いに熱く求めあう二人の睦言はジャズの軽快な音楽の旋律に紛れて夜の闇に溶けていく。
 胸の尖りを下から上に爪で弾く度に長い脚が扇のように開かれていくのもとても綺麗で蠱惑的な眺めだった、中途半端に脱いだ紅色の素肌が汗の雫を纏っているのも、全てを晒しているよりも扇情的な眺めだった。
「挿れても……、良いですか?なるべく……、音は立てないように……致しますので……」
 濃い紅色に染まった耳朶にだけ届くような熱い囁きを注ぎ込みながら、胸の二つの尖りを指先で挟んで強く捻った。同時に花園の門に濡れた先端部分を押しつけて、門がしどけなく開花するのを促すように腰を回す。
「ゆ……祐樹っ……来て……欲し……深くまでっ……」
 紅色に染まった甘く薫る肢体から汗の雫が朝露に濡れた大輪の花のような清楚な淫らさをまき散らしているようで、とても綺麗だった。
「そんなに大きな声をお出しになったら……、他人に気付かれてしまいます、よ。
 お嫌でしょう?そういうのは……」
 普段の愛の行為の時も最愛の人の上げる声はむしろ慎ましやかな部類だろう、祐樹の経験した人――数も数えていないし名前や顔もおぼろげにしか分からない人間の方が圧倒的ではあったものの「その時」の声の小ささでは最愛の人が最上に艶やかながらも微かな声の持ち主だったような気がする――それにこの個室は誰が入って来るとも限らないと思い込んでいるのでいつもよりも更に小さいのだが、そんなことは祐樹の腕の中に居る人が知る由もなくて、ハンカチを銜える艶やかな唇が更に閉じられたのも愛おしさが加速していく。
「あっ……」
 幽かな艶やかな声が宝石の艶やかさで空間を染めていく。祐樹の灼熱の楔を花園の門から奥へと一気に貫いた水音と素肌の立てる湿った響きと共に。
 声を必死で抑えているからか紅色の肢体が優美な弧を描いて祐樹の愛情と欲情の象徴を迎え入れてくれたのも精緻な淫らさと健気なひたむきさに満ちていて一際目を奪うように綺麗だった。
 ただ祐樹の愛の丹精で淫らに開花した花園は「密会」という秘密めいた響きと唇から声が上げられない代わりを務めるように雄弁に祐樹を熱く厚く包み込んで奥へと誘い込む動きも普段よりも精緻な大胆さだったが。
「あっ…んっ」
 花園の中の花びら達の強くゆるく祐樹を誘う動きが淫らな精密さに満ちていて、油断すると直ぐに真珠の迸りをばら撒いてしまいそうだったので、一旦引き抜くと開花を邪魔された花のようなため息交じりの嬌声が室内を薔薇色に染めていく。
「良いのですか?誰かに聞かれても?私は別に構わないのですが……。むしろ見せ、いや聞かせたくて仕方がないのですけれども、ね。
 愛する聡が、こんなに熱く乱れて下さったことを誰かに聞かせて、誇りたいのですけれど、聡はお嫌でしょう?
 ああ、足音が聞こえませんか?」
 唆すように耳元で囁いた。もちろん足音などは聞こえていないのだが、胸の尖りと花園の中を小刻みに動かされている最愛の人に辺りに注意を払う余裕などがないことは承知の上だった。
 一旦引き抜いた愛情の熱い滾りを、力強い律動を加えて花園の中の奥処を目指して一気に貫いた。同時に胸の尖りを紙縒りでも作るように強く捻る。
「あっ……」
 濃い紅色に染まった肢体が、汗の雫を纏ってしなやかに反った、祐樹の方へと。
「そんなに誘って……。これ以上私を夢中にさせるお積もりです、か?
 それとも、人が来ても構わないと?」
 紅色の細く長い首が祐樹の律動に合せたわけではなく、横に振られた。綺麗に切り揃えられた襟足の黒い髪にも汗が滴っていて、その黒い髪を唇で払いながらうなじに強い口づけを落とした。
 深く繋がった場所が熱い律動に合わせてジャズよりも大人の音を奏でているのも眩暈がするほどの深い悦楽を運んでくる。
 濃い紅色に染まった肢体がヒクリと大きく震えた。真珠の放埓を弾ける寸前の仕草なのは経験上良く知っている。
 声で悦楽を表現出来ない分だけ、肢体全部で薔薇色の深い悦楽を祐樹だけに密やかに奏でてくれるかのように。
 遠くで奏でられているジャズよりも大人の秘密めいた愛の協奏曲のような艶やかな甘い響きと深い悦楽の大波が祐樹にも訪れそうだった。











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夏バテと相変わらずの体調不良で二話更新出来るかどうか微妙です。理想は三話更新なのですが……。
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気分は下剋上≪震災編≫184

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「本当は、上半身のみのサービスなのですが、私達の場合はココまでボディソープを垂らした方が気持ち良くなれるでしょうね。
 お互いの熱が擦れ合って……」
 社交ダンスのステップを踏むような感じで祐樹に優雅にリードされて身体の位置が回転した。
 愛おしそうに抱き締められてピタリと密着する身体の下半身が甘く淫らな音を立てて擦れ合うのも精神が焼き切れそうになるほどの悦楽で背筋が反って祐樹の方へと上半身を更に近付けてしまう。
「今はレッスンなので立ったままですが、本来ならば浴室――ああ今日の客室は幸いなことにスイートなので浴室も広いでしょう?たっぷりのボディソープを上半身からココ」
 水晶の大粒の雫が混ざり合う場所に腰を意味有り気に動かされて上半身が妖しく揺らめいてしまった。
 チェーンの涼しげな音が胸の尖りの熱い疼きに当たって艶めいた嬌声混じりのため息を零してしまった。
「浴室に横たわった私の上に、しなやかな肢体をボディソープまみれにして身体全体を使って上下左右に動かして戴けるととても嬉しいです。
 もちろん左手は保護しておくのが今日の私達の場合は大前提でしょうが、胸のルビーの尖りが泡にまみれて更に煌めく様子とか、紅色に染まった素肌に唯一纏ったチェーンの硬い感触もそうですが、全ての素肌が今とは異なってボディソープの滑らかさに助けられて異なった感触を素肌に伝えて来るでしょうね。
 ああ、この尖りに生クリームを塗った時以上の……」
 密着した素肌が僅かに離されて、祐樹の右手が胸の尖りを強く弾いた。
「あっ……」
 祐樹が説明してくれたので、おおよそのことは分かったものの、何故それが「入浴介助」というある意味大袈裟な名前が付けられているのかとか、愛の交歓の延長線上の行為のような行為なのに「青年の頭の中の妄想が一人歩きした結果」と祐樹が表現したのかは依然として謎のままだった。
「大人のおもちゃは論外として……。その程度のことは全く構わないというか、私だって悦楽を得ることが出来る行為なのでむしろ大歓迎だし、祐樹がそれで悦んでくれるなら殊更嬉しい愛の行為なのだが……。
 それが『青年の妄想』と表現されるのかが良く分からないな……」
 祐樹が最初に言い出した時には頭の中が疑問符だらけになって、身体も一部分がフリーズしたような感じに襲われたが、熱い素肌を触れ合せながらも説明を聞いて、祐樹と二人きりになった時に交わしている愛の交歓とどこが本質的にどこが違うのかという疑問がわいてきた。
「それは、私達のような熱烈に愛し合うカップル同士が二人きりの密室で行う分には確かに愛の交歓の一部分でしょうが……久米先生と脳外のアクアマリン姫は、多分……」
 祐樹の唇が触れるだけの口づけを落として直ぐに去っていく。今の甘く疼く箇所をあちこち持て余している状態には却って物足りない程度の淡い接吻だった。
「この程度までしか許し合っていないでしょう」
 祐樹の指が背骨のくぼみを甘くくすぐりながら下へと伸ばされて先程自分の指で開いていた場所へと辿り着いて緩やかに閉じていた花園の門――水晶の雫で濡れそぼっている――を意味有り気に指が遊び、微かな水音と祐樹の指の感触に陶然となってしまう。
「私達の場合はこの花園が二人の愛を確かめる場所ですが……。女性は異なりますよね。
 多分久米先生はそこまで到達していないばかりか、ココも許されてはいないでしょう」
 左手でチェーンを揺らされたかと思うと強く掴まれて小刻みに動かされた。
 甘い声を上げながら、身体の奥の熱い疼きが更に炎に包まれる。要はキスだけの間柄というわけなのだろう。同性にしか「そういう」関心の持てない自分には全く分からない「男女交際」のステップとか手順など――ほぼ一方的に決められた婚約者は過去には居たが、先方のご両親同席の上で話したことがある程度だったし、それ以上のことは当然していない――宇宙の果ての出来事よりもどうでも良い話だったが。同性の場合は意気投合すればその日のうちに最後まで行ってしまうことも良くあると聞いているし、アメリカ時代、もう日本には帰らないと決めた時に一晩だけ「そういう関係」を持ったことがある程度だった。
「そんなこと、良く……分かった……な?」
 「寝室に連れて行って欲しい」という言葉を――この状態で口走ってしまうと祐樹はまず間違いなく抱いて運ぼうとしてくれるハズで、いつもなら嬉しい愛情表現だったが軽いとはいえ怪我人にそんなことはさせたくなかったので、必死で話題を繋いだ。久米先生の恋愛の進展具合は正直どうでも良くなっていた。自分の身体全部が祐樹を求めて甘く熱く疼いている今の状態では。
 医局の中に寛いだ時間が訪れると、久米先生の初恋の話とか進展具合は格好の話題になっていることは柏木先生からも聞いた覚えがあったが、具体的な進展はほとんど耳に入って来ないし、正直さほど興味もなかった。出来れば上手く行って欲しいと思う程度で、仕事に支障が出ない範囲内ならば部下の私生活はさほど気にも留めていなかった。まあ、これからは医局のことを黒木准教授とか祐樹任せにしないで自分が出来ることには積極的に介入しようと密かに決意はしたものの、今はそれどころではなかったのも事実だ。
 身体の奥からこみ上げてくる薔薇色の悦楽への期待に身も心も甘く疼く状態だし、今は完全に二人きりの濃厚な時間を愉しみたかった。
「今日の二人を見てそう判断しました。キャンディを久米先生の口に放り込んでいたので。何の躊躇いもなく、ね。あれは唇を交わした後だから出来たことに違いありませんよ。
 二人の性格とか立場の違いから考えると結論は一つです。
 つまり、どれだけ心と身体を許し合っているかで、同じ行為を求めても全く異なることくらいは分かるでしょう?
 たとえば……」
 祐樹の柔らかい唇が胸の尖りにリップ音を立てた後に唇と舌できつく緩く挟み込まれて先程のストローを吸い込むような愛の動きに身体が撓るほど感じて、祐樹の髪の毛を縋るように掴んだ。
「あっ……悦っ…いっ。解説の続きは……後で良いので――それこそ『入浴介助』の時間にでも……。
 寝室に、行こうっ」
 薔薇色の息も絶え絶えに訴えるのが精一杯だった。










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「気分は、下剋上」<夏>158

 手術スタッフは当然、オペ室に釘づけになっているし――祐樹も久米先生に替わってもらうまでは助手を務める予定だったので――主治医としての回診などは入っていないし、最愛の彼自身にしても祐樹は森技官のお供をしていると思い込んでくれているので自由に動ける分には有り難かったが。
 それにモニタールームは上からは手術の様子が手に取るように分かるが構造的に逆は有り得ないし、手技中にモニタールームを見上げるような余裕は、執刀医を務める最愛の彼も、それ以外の手術スタッフも各々の業務に集中しているので皆無だった。
 モニタールームの入口付近に最愛の彼よりもやや細身の呉先生が佇んでいた。
 相変わらず野のスミレを連想させる可憐な容姿の持ち主だった――そんな風にも耐えなぬ儚げな容貌なのに惚れた弱みはあるにせよ「あの」森技官を怒鳴りつける火のような気性を持ち合わせているのが何だか可笑しい。
「お呼び立てしてしまってすみません。しかもこんな場所まで……」
 祐樹にはまるで理解不能だが、血を見るのが何より嫌いな呉先生には――最初に出会った救急救命室ほどではないにせよ――鬼門の一つが手術室上のモニタールームだった。
「いえ、こういう場合ですから止むを得ないと思いますよ。井藤研修医は中に居るでしょうか?」
 定時に始まる――最愛の彼も執刀医の一人だが、他の二室も事情は同じだろう――手術は始まっていて、見学者は皆モニタールームの中に居るだろうし辺りに人の気配は全くないので情報交換とか雑談にはもってこいだった。
「それが……森技官の多大な協力によって脳外科の戸田教授が井藤から五千万円もの大金を振り込んだという証拠の品を掴みまして、それを白河准教授にリークして医局内クーデターを扇動してみたのですが、どうもその情報が教授に漏れたらしく執刀予定すら放り出して『東京に嫁に行った妹さん――こちらの調べで井伊玲子さんという名前までは分かったのですが――が心筋梗塞で都内の一の私立病院に救急搬送された』というウソまでついて雲隠れしたので、その事実確認をしておりまして。
 脳外科の医局は大混乱だそうですよ。当たり前ですが、執刀医が急に替わるなどは本来あってはならないことですし、患者さんに迷惑を掛けないようにするのに精一杯で、医局クーデターどころの騒ぎではなくなりました」
 心の底から苦い思いがこみ上げた。祐樹の狙いは狂気の研修医井藤一人で、戸田教授はおまけに過ぎないのに、その「おまけ」に振り回されているのだから本末転倒だった。
「医局クーデターですか。ウチの科の場合、教授が独裁者で准教授は年齢的に順送りで次期教授がほぼ確定しており、造反分子も皆無だったことからオ……いや私は諦めざるを得なかったのですが。
 五千万円……そんなお金が有れば……固定資産税がだいぶ……
 いや、そういう話しではなかったですよね、脱線して申し訳ありません。そんな大金を私的に受け取った証拠が有れば、野心に満ちた准教授だったら秘密裏に計画を練って教授に詰め腹を切らせることなど簡単でしょう。それが一番手っ取り早い方法ですよね。
 で、田中先生が扇動なさったということは、ウチの科の准教授のように忠誠心というか追従心の塊の人ではなかったということですよね。だったら何故一気呵成にクーデターに持ち込まなかったのか理解に苦しみます」
 元精神科所属――今でも籍は有るものの呉先生の場合は教授と大喧嘩して不定愁訴外来を立ち上げた経緯の持ち主で、不定愁訴外来は大学病院の中だけに存在が許されるブランチなだけに、そのこじんまりとした一国一城の主に収まっている呉先生だったが、火のように激しい気性を考えれば、彼だって医局内クーデターを起こしても全く不思議ではなかったものの、精神科は通称香川外科とは種類が異なるもののどうやら「一枚岩」のような感じだった。呉先生の可憐な花のような容貌からは不似合いなものの、ケンカするに当たってはクーデターが可能かどうかも一応視野に入れた感じだった。それに呉先生の場合は「あの」森技官と仲睦まじく暮らせているので、多少は「目的のためなら手段を選ばない」というメンタリティの持ち主なのだとシミジミと実感してしまう。
 呉先生の自宅――お屋敷と表現する方が妥当だろうが――にも何回も行ったことはあるが、確かに固定資産税が大変そうだし、井藤のように有り余るお金を用意出来て独立開業の道を選ぶことも難しいのだろう。
 それに呉先生の指摘もいちいち尤もで、白河准教授の杜撰さがこれほどとは思っていなかっただけに、祐樹としても頭の痛い問題だった。
 昨夜、白河准教授も人を集めるようなことはしないで、河上医局長と二人で戸田教授の自宅に乗り込んで――クーデターなので非常識な時間とかそういった「社会的常識」にはもはや縛られなくても良いハズだし――さっさと辞職願と共に後継者を順当に白河准教授にする旨を書いた斉藤病院長宛ての手紙を用意させるべきだったと痛切に悔やんでしまった。もうひと押し、白河准教授にアイデアを授けるべきだったが、後悔してももう遅い。
「井藤も、少し失礼します。ああ、やはり医局には出勤していないようですね」
 呉先生の可憐な野の花のような表情に不審めいた表情が浮かんだ。携帯のメールを確認してみたが、岡田看護師からのメールはなかったので、つまりは医局に現れていないということだろう。
「それでしたら、井藤研修医がこの中に居る可能性はほぼゼロではないのですか?
 私は、患者さんの予約が入っていない時間帯なので別に無駄足でも構わないのですが……。ゼロだったら……」
 二の足を踏む呉先生の心情は痛いほど理解は出来た、実感は伴わなかったが。
「先に入って様子を見て来ます。ああ、これは森技官に渡して戴けますか?ご覧になっても良いですよ、お暇でしょうから」
 長岡先生経由で手に入れた戸田教授の妹さんの個人情報の入ったクリアファイルを呉先生に手渡すと、岩松氏の公文書――といってもファックスで送られて来たものなので、正式な文書ではないものの、一見する限りでは分からないだろう――ざっと目を通した呉先生の表情が俄かに引き締まった。
 普段の温和さがウソのように消えて、怒りモード――ちなみにこういう表情をお屋敷で森技官に向かっているのは良く見かけたが、病院内では一度も見たことはない――に切り替わった。











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