腐女子の小説部屋

創作BL小説を綴っています。ご理解の有る方【18歳以上】のみ歓迎致します 申し訳ありませんが書く時間を最優先にしたいのでリコメは基本的に致しません。 要望・お礼などは「日記」記事でお応えしますが、タイムラグがあることも多いです。

2017年04月

気分は下剋上《震災編》63

『それはもちろん構わないが、ただ……』
その次に続く言葉は恥ずかしくて口に出せなかった。一生忘れないだろう、道後温泉の慰安旅行の夜のことを話していたのでなおさら羞恥に視線が定まらなくなってしまっていた。
裕樹は短くなったタバコの火をペットボトルの蓋で器用に消して、コーヒーカップを置いてから肩を抱き寄せてくれた、唇には暖かな笑みを浮かべながら。
『これ以上のことは決して致しませんよ。貴方は愛の交歓の後に普段通りに振る舞える人ではないことも知っていますので。そういう不器用な点も含めて愛していますので』
肩を強い力で抱きすくめられて、唇に甘やかなキスの雨を降らしてくれた。束の間の宝石のような強い煌めきを放つ時間を裕樹は事あるごとに設けてくれて、それだけで充分過ぎるほど幸せだ。
『裕樹はどこで眠るのだ?』
責任者二人が同時に居なくなるにはさすがにマズいことくらいは自分ですら分かるのだから、裕樹も既に折り込み済みのことだろう。
白衣に包まれた肩を抱き締められた心の弾みでやっと視線も裕樹に絡めることが出来るようになったので、裕樹の凛とした顔をマジマジと見つめてしまう。苦い笑みを浮かべた裕樹の表情は自分よりも年下には見えないほど大人の魅力に溢れていた。
『自衛隊の炊き出し部隊が到着しましたから、備品の中には毛布もあるでしょう。それを借りてロビーで休みます。容態急変の患者さんが居たら大変ですからね。いくらICポートの高点滴剤を埋め込んだとはいえ、震災関連死には謎の心臓疾患も多く含まれますのでそのためにはやはり心臓外科の人間が居ないと、ね。責任者の一人としてその程度の務めは果たすべきだと思います。
ああ、貴方は明日に備えてゆっくり休んで下さいね。大丈夫ですよ、そんな顔をなさらなくても。伊達に病院一の激務をこなす医師というウワサを取ってはいないので、こういうのには慣れています。それに明日も手術はお休みなのですから、第一助手の仕事よりも私にとっては楽です。貴方の曇ったお顔もとても綺麗なことは否めませんが、私の前では花のように笑って下さった方が嬉しいです。そんなお顔をさせるくらいなら、夜這いに参りますよ。それは嫌でしょう?』
笑いに紛らわせてはいるものの裕樹の眼差しは自分の健康を何よりも案じてくれていることが分かってしまって、薔薇色のときめきが心を満たしていく。
『分かった。裕樹がそう言うなら。そうさせて貰うことにする』
裕樹の怪我のことは気になったが、休める時に休んでおかないと咄嗟の判断力が落ちてしまうし、一瞬でも気を抜けないのが医療の現場だ。
『私も手が空き次第参りますが、くれぐれも待たないようにお願い致します。寝顔を拝見するだけで充分幸せですから。何なら呉先生にお薬貰って下さいね』
白衣の肩に頭をコツンとぶつけて了解の合図を送った。
『全てが片付いたら、たくさんしなければならないことがあるな。一番の楽しみは……裕樹と二人きりで行う行為だが。その時が待ち遠しくてならない』
万が一の喪失の予感に怯えながら信号機すら光を失っていた夜道を歩いたことを思い出して、今度は素直に言葉に出来た。
『優先順位の一番が私と同じで良かったです。母に会いに行くとか仰言るのかと思いましたが、テレビに映ったので充分安心してくれているでしょう。それに忙しいのは分かっている人なので大丈夫ですよ。まあ、お連れしますけど。心の底から愛する貴方のお願いには弱いので。ああ、ついでに天の橋立も寄りますか?あの時は月に攫われそうな不安を抱いたのですが、今は貴方がずっと傍に居て下さる安心感を自覚していますからきっと異なった感覚を抱くでしょうね』
裕樹の提案に一も二もなく頷いた。
『日本海側は医療も充実しているとは言い難いので、定年後はあちらでクリニックでもしながらのんびりと暮らすのも悪くない、な。裕樹と二人で。そして時々お母様の話し相手もして』
そういう暮らしも悪くないような気がする。クリニックだったら診療時間は勝手に決められるし、土日祝日も休める。そういう老後の暮らしも裕樹さえ居てくれれば幸せだろう。メインロビーの戦場から離れただけに他愛のない話をして束の間の安楽を貪りたかった。
『そうですね。貴方は自然が豊かな場所をお好みのようですし、故郷に錦を飾る老後の暮らしも楽しそうです』
山や海を好むーー実際に好きではあったもののーーのではなくて、人工的ないわゆるデートコースでは人目が気になって些細なスキンシップが出来ないし、もちろんそれ以上の行為などは望めないからというのが一番の理由だったが、その件はいずれ話そうと弾んだ心に封印を施した。
『裕樹、もうタバコは良いのか?』
ヘリの音は聞こえるものの、着陸時の独特な音は聞こえないが裕樹の怪我の痛みを止めるために救急救命室に寄らなければならない。
『あと一本だけ吸わせて下さいね。貴方はフィナンシェを召し上がっていて下さい』
自分が贈ったライターで火をつけて紫煙を満足そうに味わっている白衣姿の裕樹を見詰めながら味のしないフィナンシェを機械的に嚥下した。








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以前より読みにくいかと思いますが、どう弄っても改善されないのでお休みを頂いている時にちまちま書いたストックがiPadにまだあるので、当分は二話、ドライブデートはなるべく毎日新しく書こうと目論見中です!!

読んで下されば嬉しいです。

『気分は、下剋上』《夏》27

「他に変なことは見たり聞いたりなさいませんでしたか。そのセンセに関して……」
 硬度に細分化された大学病院では同じ外科でも心臓外科と脳外科では人間の交流すらまばらだ。
 以前、心臓は最愛の彼が執刀し、脳は戸田教授が執刀医を務めたことが有ったがそんなのはごくごく稀なケースだ。
「そうですね……。ナースステーションにとある先生宛てのメロンが届いたことが有ります。師長にそれを医局に届けるようにと言われて……」
 潔癖なまでに金品を謝絶する最愛の彼は、患者さん同士が競り合って「御志」の金額が高騰することを憂慮したと聞いている。つまりAさんは幾ら包んだからBさんはそれ以上の金額にしよう……という悪循環を断ち切ってしまうためには始めから受け取らない方が良いとの判断だ。実に賢明だったと思えるが。
 それでもお弁当などの賞味期限の短いモノは受け取っている。豪華なお弁当のお相伴に与るのも祐樹の昼休みのささやかな幸せな時間になっている。
 戸田教授の医局ではそこまで厳しくはないのだろう。
 余所の医局運営に口を挟むのは内政干渉のようなものなので、眼差しで話しの先を促した。
「メロンって予想以上に、かさばるのはご存知でしょうか」
 化粧っ気をあまり感じさせない清楚で控え目な感じのする眼差しは若さが香るようだった。久米先生を気に入ってくれれば良いと強く願ってしまう。
 そして解剖した犬を見せられた彼女の心の傷を少しでも和らげようと、少し脚色を交えて話すことにした。
 不定愁訴外来の呉先生は血を見るのが苦手という理由で精神科を選んだが、そういうのは余程の例外で、それよりも動物の解剖の方に嫌悪感を抱く医大生の数の方が圧倒的に多い。人間を解剖しなければならないことを覚悟して入学してはいたものの、動物となると二の足を踏む同級生をたくさん見てきた。それにご遺体にしても動物の死体にしても嬉々として解剖に励む人間はいない。しなければならないので仕方がなくするのが祐樹達の「常識」だった。一般の人とはかけ離れているかもしれないが。
「ウチの医局では金品は謝絶が決まりなのをご存知ですか。
 ただ、メロンは微妙ですね受け取るかお返しするか。もちろん思いがけないほど、かさばるのは知っています」
 彼女は肩のこわばりをやっと解いてくれた。先程までとは異なった晴れやかな笑みを微かに浮かべている。
「はい。ウチの教授も金品は謝絶が建前ですが、メロンとかお菓子程度なら黙認です。
 香川教授の方が厳しそうですし……。
 何より日本一の心臓外科の権威でいらっしゃいますから世界中から指名が入るのは当たり前かと思います。そして豪華なお弁当が届くというのも病院内のウワサになっています。私達がボーナスの日にでもないと行けないような高級料亭の仕出し弁当が毎日のようにダース単位で届くとか」
 ウワサに尾ひれがつくとこうなるというお手本のような話だった。毎日届くというわけでもなかったし、届くのは二個か三個で、ダース単位というのは祐樹の知る限り数回しかなかった。ただ、躍起になって打ち消すような話でもないので曖昧に笑って誤魔化した。
「お弁当もやはり限りが有りますよね。ですから患者様は時々気を衒ったものを差し入れに……。例えば生きている伊勢えびとか大きな鯛とか。どうせなら職人さんを付けて欲しいと思いませんか」
 マスカラは多分使っていないだろうが充分に長く黒い睫毛が印象的だった。
 久米先生にはデート必勝法を柏木先生辺りにレクチャーして貰おうと密かに決意した。祐樹は女友達こそ学生時代多かったが、彼女を作る積もりは全くなかったのでデートをしたこともない。
 そして自分の――世間から見ればかなり特殊な――性的嗜好の持ち主の場合は何回かデートをして、その後告白というまどろっこしさは存在しない。
 その手の店で意気投合すれば即ホテルに行くというのもごくごく普通だった。祐樹は行ったことはなかったが同好の士が集まる公園などでは出会った人間が好みだった場合、その場で行為が始まるということすらあり得る。
 普通の男女交際とは全く手順が異なっていることくらいは自覚しているし、生涯でただ一人と思い定めた最愛の彼が居てくれる以上は彼を幸せにすることしか考えが及ばないのは自明の理だろう。
 目の前の彼女は鈴を転がすような声で笑っている。無残な死体のことは一時的にせよ忘れてくれたのは何よりだった。
「それは確かに迷惑ですね……。そちらの教授は独身でいらっしゃいましたよね。あれだけ何でもお持ちの方なのに、どうしてご結婚なさらないのか不思議だとウワサになっています。そしてもちろん田中先生も。田中先生は将来を誓い合った恋人がいらっしゃるので時間の問題でしょうけれど……」
 愛らしく首をかしげる彼女の疑問は病院中の総意だろう。ただ、万が一、いやもっと桁は多いだろうが最愛の彼がどのような素晴らしい女性であれ結婚すると祐樹に告げれば、祐樹自身が井藤とやらと同じくストーカーになりかねない。彼がそのようなコトを言い出すハズもないので杞憂に過ぎないが。
「私の方は……まぁ色々有りまして。しかし生きた伊勢えびや鯛などを貰っても困ると女性でも思われませんか」
 料理評論家といった肩書きを持った料理自慢の人なら動じないだろうが。
「はい。私が香川教授だったとしても困ります。私の場合は母に丸投げ出来ますが……教授は確かお一人暮らしでしたよね」
 そういう個人情報が密かにウワサとして回っているのが病院の恐ろしさでもある。
 ただ、井藤とかいうイカレた人間の情報も違った意味で取沙汰されているだろうから彼女の話しは出来るだけ聞いておいた方が良い。

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諸般の事情で途中で切れてしまっていた『気分は、下剋上』《夏》ですが、旧ブログに跳んで読んでください!と申し上げるにはあまりにも長いのでこちらに引っ越しします。
『前のブログで読んだよ(怒)』な方、誠に申し訳ありませんが何卒ご理解とご寛恕くださいませ。










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『気分は、下剋上』《夏》26

 そういう経験が万が一なかったらどうしようかと思ってしまったが。その程度しか看護師とはいえ病棟勤務の一般人に限りなく近いような彼女の許容範囲のたとえ話を思いつけない。誰だってそうだろうが。
「はい。家族と何度か行きましたが……」
 「家族」という単語を強調して発音されたのは、彼女が久米先生を紹介して欲しいというアピールなのかもしれない。
 女性というかナースの日常生活を全て知り尽くしているわけではないが何となく女性だけで焼肉屋さんには行かなさそうな気がする。
 どうせ久米先生は絶賛彼女募集中だし、二人を会わせることくらいは簡単だ。その後どう転んでも祐樹の知るところではない。最愛の彼を守るためなら久米先生の一人や二人喜んで犠牲になってもらっても構わない。それに久米先生だってこんなに若くて清楚な美しさを持った女性なら紹介しても恨まれることはないだろう。救急救命室の鬼とも法律とも呼ばれている杉田師長のような人を無理やり会わせるわけではないのだから。
「良かった。それなら話が早いです。カルビを召し上がったことは有りますよね?」
 タバコの煙が彼女の方へとたなびかないように心を配った。
「はい。何度か。ただお高いのでなかなかオーダー出来ませんけれど」
 彼女の経済状態などは知る由もない――何と言っても旧知のナースから今日紹介して貰ったばかりの間柄だ――が経済観念のしっかりしている女性らしい。
 これなら久米先生と上手くいくかもしれないなと。
 久米先生は資産家の令息らしいが、先輩に囲まれた医局の中では当たり前のこと、患者さんにも孫のように可愛がられている。資産家で尊大な医師という感じは全くしないし、デートの時はどうだか知らないが洒落たレストランに詳しそうにも見えない。岡本さんだか岡田さんだか知らないが、目出度くデートにこぎ着けた時には柏木先生のレクチャーで充分だろう。どうせテーブルマナーは家庭で習っているだろうし。
「貴女が偶然見てしまった……そのう……モノなのですが……何だか骨付きカルビのような形をしていませんでしたか?」
 あまり生々しい表現は避けなくてはならない。それでなくとも彼女は大型犬の惨たらしい有様を見てしまっているのだから。
 反応によっては不定愁訴外来の呉先生――元はれっきとした精神科の専門医だ――にカウンセリングをお願いしなくてはならない。
 世間を騒がした冷徹な殺人鬼は小動物の首を切って……というのが多い。
 それに比べて医学部や歯学部を含め解剖の時は喩えるならやはり骨付きカルビのように切っていく。身体の中央をまず開けて、その次に各内臓を順番に切り取っていくという。
 井藤とやらが香川外科に未練タラタラだとしたら、ご献体された遺体は医学部生でもなければ入手困難だし、自力で集めることが出来たとしても警察に見つかれば死体損壊罪に問われることとなる。その場合医師免許の有無は関係がない。
 病理解剖や司法解剖の専門医の場合は仕事として行っていることなのでもちろん罪には問われない。 
 心臓外科医としての最愛の彼に執着しているのであれば、大型犬の解剖でメス捌きが錆びないようにするだろう。
 ただ祐樹も内心脅威に思っている久米先生は「生きた患者さんの動いている心臓」を扱っているのに対して井藤センセは「死んだ動物の停まった心臓」を相手にしている分、物凄く分が悪い。ただ、しないよりはマシという程度というか気休め程度だろうが。
 それに井藤センセは脳外科の戸田教授にさえ激昂して弁護士という切り札をちらつかせている。その上医局長への嫌がらせのFAX攻撃など陰湿だったり激怒だったりと性格的に「マトモ」とは言い難い。
 不定愁訴外来の呉先生が極秘で見せてくれた資料でも脳外科から不定愁訴外来に愚痴を言いに来る患者さんの大半があのセンセ絡みだと目の前の彼女は証言してくれたし。
 最愛の彼は口下手に仄かな劣等感を抱いているようだが――そして二人きりの時には確かに語彙は少ないように思うが、その分魅せられずにいられない表情の多彩な変化や、的確な一言で彼が言いたいことは分かる――患者さんには温和な笑みと怜悧な口調で過不足なくムンテラは終了するし、それに何より世界中から彼の執刀を求めて集まってくる患者さんなので最初の段階で信頼関係が出来上がっている。だから別に饒舌になる必要はない。
 そういう意味のことを散々言ってはいるものの、祐樹のように患者さんと親しく話せる医師が理想だと常々言っている。元々の土台が異なることは人間関係構築力の不得手な彼には分からないらしい。その辺りもとても愛おしいのだが。
「体毛とか体液を……取り払ってみれば……確かに……その料理に似ているという感じはしました」
 彼女がこのトラウマでカルビを食べられなくならなければいいと痛切に思ってしまう。
 とにかく久米先生とのデートが実現すれば焼肉屋には誘うなと言っておこう。
 初めてのデートで焼肉屋に誘う男性が居るとは思えないが、久米先生も最愛の彼とは違った意味で浮世離れした雰囲気がある。
「無残な……シロモノですが……夢に出て来たり、仕事中に思い出したりしますか」
 もしそうなら本当に呉先生に紹介しよう。
「いえ、それは有りません。仕事中は目が回るほど忙しいですし、疲れ切って帰宅して……食事とか……その他諸々の雑用を済ませた後にベッドに倒れこんで、目覚まし時計のアラームすら気付かずに母に起こしに来てもらうまでは夢も見ずに熟睡しています」
 冷めたコーヒーを一口すすった。
 彼女はどうやら実家住まいらしい。一人暮らしがどうのという積もりは全くなかったが資産家の久米先生に彼女をアピールするには実家住まいのお嬢様の方が通りが良いだろう。
 そして、やはり井藤センセは解剖に固執している。久米先生という才能豊かな人間が現に医局に居る以上井藤とやらの出番はなかったし、そもそも患者さんを怒らせたり教授を激怒させたりするようなコミュニュケーション能力に欠けた人間は通称香川外科には必要はなかったが。
 手技の冴えだって、最愛の彼は言うまでもなく自分や久米先生は秀逸だとウワサされているが、黒木准教授や柏木先生だって香川外科ではない心臓外科に所属していれば名医で通っただろう。
 つまりは彼の要求するレベルが途方もなく高いので優秀なはずの柏木先生が平凡というレッテルを貼られてしまっているだけだ。
 井藤は自分の手技がどの程度なのか自己客観視も出来なくなっているに違いない。
 その逆恨みが最愛の彼に振りかからなければ良いのだが。


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『気分は、下剋上』《夏》25

 最愛の彼は今頃、滑らかな白い肌に祐樹の唇で咲かせた紅い情痕がくっきりと見える室内着に着替えて――しかも季節が季節なので薄いウールかコットン地だろう――料理の支度に余念がないはずだ。
 生地の色や薄さによっては祐樹を魅了してやまない胸の尖りも見えるかもしれないな……などと考えてしまう。多分これは精神的逃避に違いない。
 不定愁訴外来の呉先生なら聞いただけで卒倒しそうな救急救命室の修羅場は祐樹にとっては何ともないし、彼の手作りの料理を食べながら今日の手術の具体的にどこが良くてどこが改善点なのかを話すことも全く平気な日常生活を送っているが、今目の前の彼女――岡山さんだか岡田さんだかは忘れてしまっている――の話しを聞いていると、精神的にこちらまでおかしくなりそうだった。
 逆に呉先生は水を得た魚のようになるだろうが。
 人間には向き不向きがあるものだとシミジミと思ってしまう。最愛の彼は祐樹などよりももっと記憶力が良い上に学業も真面目に修めてきたので精神医学についても詳しいだろうが所詮は机上の空論で、実際に精神を病んだ人を診てきたわけではない。
 呉先生も「診てみないと何とも言えませんが」との但し書き付きながらも井藤センセの容態を解説してくれたが何だかそれは当たっているような気がする。
 戸田教授もとんだ貧乏くじを引いたものだと心の片方では同情しつつ、そういう人間は医局にでも閉じ込めて他の科の迷惑にならないようにして欲しいと冷めた気持ちを抱いてしまう。
「そうですね。香川教授は確かに手技が確かな人間を好む傾向が有りますし、手術スタッフは特に厳選されます。久米先生はあの若さで手術スタッフのほぼ常連ですから腕は確かですよ。ウチでは将来を嘱望されている一人です」
 祐樹は一度たりともお見合いの話しを母から持ちかけられたことはなかったが、それは祐樹の性的嗜好を母が知っていたからに過ぎない。実家で暮らしていた高校時代に母が他人の縁談を勧めている場面には何度か出くわしたことはある。
 目の前の岡山さんだか岡田さんだかに久米先生の有能振りをアピールしておくと後々良いことが有るだろう。
 二人きりのデートの時に久米先生が何か失敗したとしても帳消しになるようなエピソードといえば仕事振りと性格の素直さくらいしか思い当たらない。
「それはウワサで何となく伝わって来ます。私が短大時代に吸わなかった……というか禁煙が校則にこそ書かれていませんでしたが、不文律のようになっていた……タバコを吸おうと思う切っ掛けは他の科の先生とか先輩看護師達とお話がしたかったからです。
 ウチの科そのものには不満は有りませんが、井藤センセだけは何だか怖くて……。
 しかし、新米看護師が研修医といえども先生に楯突けるわけもなく、それに戸田教授が黙認というか無視を決め込んだ以上あのセンセに対する愚痴は医局ではタブーになっています。
 今日私が田中先生に申し上げたことも……先生が絶対に信頼のおける先生には仰言って下さって構いませんが……ウワサとしては流さないで頂けませんか。あ、もしかしてこのお願いは二回目でしたか……もしそうだったら申し訳有りません。
 わた……いえ、先輩看護師の憧れの的の田中先生と二人きりでお話ししているという嬉しさと、誰にも言えなかった悩みを聞いて頂いたことですっかり平常心を失ってしまいました」
 大切そうに祐樹の、正しくは最愛の彼の、だったが……ハンカチをバックに仕舞っている彼女の頬は仄かに紅くなっている。祐樹としては異性にも同性にも恋愛感情は一切抱いて欲しくなかった――ただ一人の人を除いてだ――のでその件は笑ってスルーすることにした。
「いえ、誰だって……ここが獣医学部なら別ですが、そんなモノを見たら驚くのは当たり前です。私も学生時代は仕方なく動物に罪深いことをしてしまいましたが、そういうことを好き好んでする人間は居ませんよ。
 それに私の口の堅さは先輩の看護師さんにお聞きになった通りです。だから大丈夫ですよ。その点は御安心下さい。
 ああ、そう言えば特に久米先生はとても心が優しいので動物実験には批判的です。ましてや解剖など思いも寄らないでしょう。彼は枯れている野の花にも涙するとても良い人間です。ただ、育ちが良過ぎて純粋過ぎるというか……少し浮世離れしたところが珠に傷ですが。
 だから二人きりの時に何か突拍子のないことをしたり言ったりしても……それは彼の育ちの良さのせいだと思って頂けると嬉しいです」
 最愛の彼と相思相愛になる前には常用していたウソ八百がすらすらと口から出てくる。彼に巡り合う前はゲイ・バー「グレイス」で身分詐称など日常茶飯事だったのだから。
 最愛の彼を騙す積もりは毛頭ないが、彼以外の人間だと心にもないことをまだ言えることに少し驚いた。
 久米先生は祐樹の基準からすれば充分お坊ちゃん育ちで人の良さも折り紙つきだ。軽井沢に別荘が有るとか、パソコンをほとんど強奪しても怒らなかったり、心も身体も楽しかった慰安旅行の夜を最愛の彼と愉しめたのも久米先生が夜の宿直を替わってくれたりしてくれたからだった。その辺りは本当だが、花に涙するような人間かどうかはあいにく知らないし興味もない。ただここまで予防線を張っておけば久米先生の生涯で初めてのデートで何かやらかしたとしても目の前の彼女は動じないに違いない。
「田中先生の口の堅さは多数の先輩達から伺っていました。
 だからお話ししようと決めたのです。流石に動物の……の件は誰にも言えなくて、夢にまで出てきてしまいました」
 彼女の薄い肩が震えている。夢の内容がどんなものだったのかは知る由もないが、きっかけは大型犬の無残な姿だろう。
 井藤は確かな噂によれば資産家らしいので庭に埋めるなりして死体の処理が可能な身の上だ。祐樹もそして最愛の彼は絶対にそういうことはしないだろうが、小動物を切り刻んだ場合死体の処理には困ってしまうだろう。住んでいるのはマンションだし、祐樹がカモフラージュ用に未だ借りている学生時代からの下宿だって埋める場所は思いつかない。
 それを一度閉めたら開けることがない医療廃棄物に紛れ込ませたのは井藤が死体を完全に隠蔽したいと思ったからに違いない。しかも研修医にとっては手近な場所だし、土を掘って埋めるという手間も省ける。岡本さんだか岡田さんだかが通りかからなければ発覚することもなかっただろう。
 祐樹が――絶対にそんな惨たらしいことはしないが――企んだとしたら、看護師がゴミを捨てに来る可能性が高い時間にそんなことはしないだろうが、井藤とやらは医局はもちろんのこと看護師にまで無視されているようなので、看護師達のシフトを知らなかったのかも知れない。
「夢の……話しを伺っても宜しいですか?貴女がご覧になった無残な死体は首を切られていただけでしょうか。それとも……」
 外科医同士なら焼肉を食べながらでももっとあからさまに言えることでも、うら若き彼女――救急救命室などではなくしかも病棟勤務だ――には言葉を選ばなくてはならないのがもどかしい。
「……焼肉屋さんに行ったことは有りますよね?」

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気分は下剋上 ドライブデート 60(I5禁)

イメージ 1

『聡の花園は行為の余韻に震えていて、紅い薔薇の花びらに真珠の煌めきが微細に動いてオパールのように煌めいています。とても綺麗です、よ。それに蒼くライトアップされた明石海峡大橋の光りを飾りにして、しなやかな肢体が青薔薇の清楚な艶かしさを放っているのも、ね。もう、このままこの部屋に閉じ込めたい気分ですが………』
裕樹だけに見せる無防備で妖艶な姿に魅入られながら、つい思っていたことを唇に乗せた。
『愛する裕樹に閉じ込められるなら、本望だ。私だって裕樹とずっと居たいのだから。特にこういう日には……』
咲き初めた薔薇の花の無垢さと咲き誇る真紅の薔薇の妖艶さを兼ね備えた声が浴室に濡れて小さく愛の旋律を奏でる。
『普段の聡には蒼い光りが似合いますが……愛の交歓の時には、バスタブに散っているような紅い薔薇の方が良く映えますよ、ね。
ああ、もう少し足を開いて下さい。奥処までたっぷりと熱い真珠の迸りを注ぎ込みましたから』
促されるままに足と双丘を開く彼の肢体の愛らしい淫らさに魅入られながら適温にしたシャワーの迸りを花園へと向けた。
真珠の雫が蒼く引き締まった足へと滴っていくのも神秘的な優雅さだったが。
『聡の極上の花園もいつもより紅さを増していますね。とても綺麗ですが……痛みはありませんか』
いくら裕樹が丹精を込めて咲き誇らせた愛の場所だといっても、無理をすれば当然裂傷を負う。そもそもが筋肉なので、傷をつけると厄介な場所ではある。
『大丈夫だ。痛くはない……裕樹の熱い迸りが去っていくのは残念だな……。せっかく私にくれたモノなのに……』
シャワーの音にかき消されるほど小さな声は愛らしい艶やかな苺のようだった。
『これで大丈夫だと思います。ご不快な箇所は有りますか?』
指とシャワーで洗い流した花園は、紅く濡れた薔薇の花の艶やかさのみを纏っている。裕樹は真珠の雫が排水口へと流れ込んで行くのを名残惜しげに見てしまっていたが。
『ああ、もう大丈夫だ。身体まで洗って貰ったお返しに、裕樹の身体を洗おうか?』
裕樹最愛の人の長所はいくらでも挙げられるが『してもらって当然』と全く思っていない点も惹かれて止まない処だった。必ず裕樹が与えたものをーー場合によってはそれ以上の行為をーー返そうとしてくれる。
『いえ、まだお湯は冷めてないようなので……貴方に似合う薔薇の花びら入りのお湯に浸かっていて下さい。そういう貴方を見ているだけで充分私は幸せですから』
色香のみを纏ったしなやかな肢体が優雅に翻して、裕樹の唇に薔薇色の唇が重なった。多分彼の感謝の接吻だろうと解釈することにした。
『そんなに情熱的な甘いキスを仕掛けられたら、また身体を重ねたくなってしまいますよ』
次第に深くなる口付けの合間にさり気なく制止の言葉を紡いでしまう。彼の極上の肢体の吸引力に抗えなくなる自分への戒めの積もりで。
『裕樹が求めてくれるなら……私はそれだけでとても嬉しいので……別に構わないのだが』
薔薇色の唇が天上の響きのように甘くて匂いやかな言葉を紡いだ。
『それはとても嬉しいお誘いですが……少しは休んで下さい。バスタブにゆっくり浸かって』
幾分華奢な肩に手を添えてバスタブへと誘導した。ホテルのバスタブ独特の形なので、薔薇の花びらを浮かべているとはいえ、真紅の薔薇の花びらよりも紅く尖った胸とか、綺麗に洗い流した下腹部などはよく見えて……それだけでも眼福な眺めではある。裕樹が身体を洗っているのを薔薇色に潤んだ瞳が見詰めていたかと思うと窓と表現するには大きすぎるガラスの向こうに煌めく明石海峡大橋に視線を転じていた。サファイアの首飾りのような優美な姿の橋は確かに一見の価値が有ったが、裕樹にとっては薔薇の花びらを飾りにしている肢体の方が眩しく目に映る。
『ライトアップの色が変わるようだ……な?』
彼の言葉に振り向くと、サファイアのような蒼い光りから、ルビー色に色を変えたライトが瞬いている。
その豪奢で艶めかしい光りに照らされて、薔薇の花びらも肢体に纏った彼の肢体は目が眩むほど魅惑的過ぎた。








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創作BL小説を書いています。ご理解の有る方のみ読んで下されば嬉しいです。
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  • 気分は下剋上 お花見 43  2025
  • 気分は下剋上 お花見 27 2025
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