「ざっと30分くらいです」
まだ紅さの残る眼差しが驚きの色を浮かべている。
「そんなに眠っていたのか……?体感では10分だと判断していたのに……」
最愛の人は時計よりも正確な体内時計を持っていて、それが狂うことは今までなかった。祐樹との愛の交歓のせいでその精密さが狂ってしまったのなら――他の時は多分大丈夫だろう――喜ばしい限りだ。
「色々とお疲れなのでは?気持ちよさそうに眠っていらっしゃるのを存分に見ることが出来て嬉しいですよ……。お水でも飲まれますか?」
散々喘いだこととか汗の雫を大量に零したせいで喉も乾いているだろうなと思う。
「いや、それほどでもないので大丈夫だ……」
微睡みから醒めたせいか祐樹と繋がっている極上の花園の動きが妖艶さを増している。このままだとなし崩し的にもう一度愛の交歓に耽ってしまいそうなので、慌てて繋がりを解こうとすると名残惜し気に熱くて厚いシルクが祐樹の愛情の象徴をヒタリと包み込んでくる。
「夜の庭園散歩も素敵だと思います。この辺りは紅葉も紅く色づいていましたので一度そちらに行ってみませんか?」
強請るようなキスを落とすと最愛の人は愛の行為の後の甘い吐息を零している。
「祐樹がそう言うなら……。散歩も楽しいだろうな……」
京都市内とか第二の愛の巣とも言うべき大阪の市内などでは迂闊に手も繋ぐことすら出来ないのが現状だ。だからこういう閑散としたホテルに来たのだからそういうスキンシップをも楽しみたい。
「私の放った真珠の放埓は零さないで下さいね……」
最愛の人が残した愛の証しを手早く拭いてから浴衣を着た。最愛の人も薄紅色の指で祐樹が手渡した新しい浴衣を几帳面な感じで身に着けている。愛の交歓の時には紅色に染まった素肌だったが、30分も経過したので色が褪せているのが残念といえば残念だったが、紅く尖った二つのルビーなどは紺色の浴衣で隠すのが勿体ないほど綺麗で、充分に余韻は残っている。
それに愛の交歓を堪能した肢体からは甘い香りが漂っているような感じだったし、指先の動きもどこか艶めかしかった。そういう祐樹にしか見せない姿を堪能出来るのも旅の楽しみの一つだった。
「祐樹に貰ったモノは全て私の宝物なので、零さないように努力はする……」
薄紅色の唇が健気な言葉を紡いでくれた。念のために駐車場を経由して外に出ると、秋の冷気が愛の交歓で火照った身体を優しく冷やしてくれる。
「寒くはないですか?」
日本庭園風の場所まで歩いて他人が居ないのを確かめてから指の付け根まで手を繋いだ。
「祐樹に身も心も愛されたせいで心が温かくなっているからだろうが、全然寒くない。秋の澄み切った空気の涼しさが逆に心地よいくらいだ……」
繋いだ指を強く握り返してくれる最愛の人が愛おしすぎる。
「ああ、鹿の鳴き声ですね……。求愛の声なのでしょうが……やはり秋の物悲しさを感じますね」
遠くで鹿の鳴き声が聞こえて来て、紅葉や黄色く染まった銀杏などの秋の風情に一層の興を添えてくれている。ホテルと言ってもドレスコードのある都会のホテルとは異なって、浴衣でも部屋から出ても良い点は旅館といった感じだった。
「そうだな……。切実に求愛の鳴き声を上げているのだろうが……応えてくれるメスが居ない点では寂しいのだろうな……」
東屋風の場所に並んで腰を下ろすと最愛の人の薄紅色の唇が言葉を紡いだ。
「その点、異性ではないですけれど、応えてくれる聡が居る点で私は幸せなのでしょうね……」
道の途中で拾った紅い紅葉の葉っぱを髪に挿した。
紺色の浴衣から伸びた薄紅色の細い首が何かの花芯みたいに瑞々しい色香を放っている。ただ、アルコールを摂取しても同じ色に染まるので、宴会とかの酔い覚まし程度にしか他人からは見えないだろうが。
「私だって祐樹が居てくれるので、最高に幸せだ……」
秋の風情を楽しんで貰うというホテル側の意図かも知れないが、黄色や赤の落ち葉はそのままになっている。つまり近付いて来る人間が居たなら枯れ葉を踏む音で直ぐに分かる。
「祐樹……。私は愛する祐樹さえ居てくれれば、性別などどうでも良いのだけれども……」
キスを強請るように上を向く最愛の人の動作で紅葉の葉が髪からはらりと落ちた。
「ああ、紅葉も宿るのが聡の髪では不満のようですね……。甘く薫る素肌の方がお気に入りのようです……」
啄ばむようなキスを交わしながら、浴衣の上から尖りを撫でた。糊の効いた木綿でも擦られていたせいなのか、ツンと布地を押し上げているのが可憐だった。
その布地の合わせ目をぐっと広げると薄紅色の素肌が露わになって石灯篭の蝋燭めいた光に艶やかに照らされている。その中でも一際煌めく慎ましやかな尖りに紅葉の葉を当てて、微細に動かした。
「祐樹っ……」焦ったようなもどかしいような響きが夜の静寂に一瞬煌めいては溶けていく。
「紅葉の紅さよりも、こちらのルビーの方が綺麗ですよね……。ただ季節をルビーの尖りにも味わって頂かないと……」
愛の交歓の余韻が残っている肢体はそんな微弱な刺激にも敏感に反応してくれて堪らない。
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