腐女子の小説部屋

創作BL小説を綴っています。ご理解の有る方【18歳以上】のみ歓迎致します

小説

気分は下剋上 学会準備編 292

「久米先生はアクアマリン姫と一緒に受付担当です。森技官と芳名帳を書きに寄られますよね?
 名札は付けているかどうかは分からないのですが、少しぽっちゃりした童顔な感じの男性と、アクアマリンに似た感じの清楚かつ美人が二人並んでいたらビンゴです。
 アクアマリンを彷彿とさせる女性は岡田裕子さんで、脳外科のナースです。もし二人が席を外していた場合には――受付係りに『久米先生を呼んで欲しい』と仰ればどうせそこいらで油を売っているだけですから直ぐに現れると思います」
 そういえば、祐樹の「彼女さん」を探そうとして、久米先生と岡田看護師が受付係りを引き受けたことは自分も知っていたにも関わらず、祐樹のような発想に至らなかったことに内心忸怩たる気持ちがした。
 そして祐樹の応用力のような考えが出来ることを「恋人」としてもとても頼もしく思った。
「明日、受付に……」
 祐樹の言葉を伝えようとすると呉先生がスミレ色の風のような軽やかさで答えてきた。
『聞こえていました。田中先生の声は低いですけれど良く通りますし。
 久米先生という方を探せば良いのですね?受付で。そしてアクアマリンのように清楚な感じの女性が一緒に居ていたらその横の少しぽっちゃりで童顔の先生の顔を覚えておけば大丈夫なのですね?
 大丈夫です。何だったらスマホで写真を撮っておきますので。
 で、田中先生のお母様が体調を崩されたと私達が判断した場合は、私が立食エリアに探しに行けば良いのですよね?
 ま、私は精神科専門ですし、同居人は皮膚科にしか紹介出来ないと数々の大学病院の病院長からため息混じりで言われるのも……、おっと……。いや事実だろ?え?精神科も大丈夫だって?それはさ、オレじゃなくて呼んでくれたのか無理やり押しかけたのかは知らんけど……、その大学病院の病院長に言えよ。オレに言われてもそんなの知らないって……』
 どうやら仲良く――あの二人は喧嘩をしている時以外はとても仲睦まじいことも知っている――休日を過ごしていたらしい。
 森技官の抗議めいた声が断片的に聞こえている。
『ちなみに田中先生のお母様の体調はどう優れないのですか?』
 森技官との舌戦を制したらしく、呉先生が電話越しに心配そうで親身な感じで聞いてきた。
「時々手の痺れがあるらしくて……。ただ、久米先生の――あ、彼も救急救命室勤務も兼ねています――診立てで緊急性はないとのことですが、私にとっても大切な人ですので万が一のことが有ったら困るので……」
 祐樹が電話を替わって欲しいとジェスチャーで伝えてきた。
「呉先生、お休みのところ本当にすみません。
 それに年寄りの世話を押し付けた挙句の果てにこんなワガママなお願いをしてしまって本当に申し訳なく思います」
 呉先生が見ていないにも関わらず頭を下げているところに肉親の情愛が感じられる。
 自分だってお母様のことは心配していたのだが、そんな動作までは考えられなかったのはやはり血の繋がりがないからだろうか・
「ええ、月曜日には念のためにウチの病院で検査をしてから帰らせます。最悪の場合、脳に何らかの疾患が隠れているかも知れませんので。
 まあ、気配りというか、場の雰囲気を壊したくないと思っているらしい上に私の母なので……『披露宴』いや、つい嬉しくて口が滑りました……。せっかくのパーティに水を差すようなことを、他ならぬ『身内』しかもたった一人しか居ないという状態ですから、そういう自分が仕出かすわけには行かないといったところでしょう」
 祐樹の口から――二人きりの時には散々聞いてはいるものの、いくら親しいと言っても第三者に言っているのは少なくとも初めて聞いた――「披露宴」という単語が出たことに、心の中の薔薇の花の上に宿った露が一斉に紺碧の空に光を反射させながら煌びやかに散っていくような気持ちになった。
「どうか母の具合が悪くなったら、他の人にはなるべく気取られずにパーティ会場から出して下さいませんか?
 久米先生は多分ですが、立食パーティのエリアにウチの医局員や脳外科の先生方と居ると思います――何しろアクアマリン姫こと岡田看護師は脳外科所属なので―――そちらと上手く連携が取れるようにして……。
 ああ、森技官、お休みのところ申し訳ありません。お聞きになった通りです。
 なにしろ大袈裟なことになったらパーティに水を差すというのは母としても大変不本意だと申しておりましたので……。え?呉先生と協力して事に当たって下さるのですか?それは大変心強いです。ちなみにウチの医局の久米研修医は母の最新のバイタルとか既往症を知っている――いえ、救急救命医としては当たり前の心得です。意識のない患者さんではない限りそういうことはキチンと聞くように周知徹底していますから。
 はい、その他の指図は全てお任せ致します。救急車には久米先生だけ乗せて後は席に戻って貰って構いません」
 どうやら森技官と通話しているようだった。
 久米先生はお母様の最新のバイタルをきっちりと計っているようではあるものの、正直なところ臨機応変さに欠けているような気がするので――自分を棚に上げて他人の非難をしているようで心苦しいが、事実は事実だった――森技官がその場を仕切ってくれた方が個人的にも有り難い。そしてその点は祐樹も完全同意らしく、瞳の輝きがさらに強さを帯びていた。
 何しろ森技官は裕樹と同じく乱世に強いタイプなので、祐樹のお母様に何かが有った場合――無いに越したことはないのは言うまでもない――水を得た魚のように活き活きと動いてくれるだろうから。
「森技官も協力して下さるそうですよ……。これで一安心ですね。
 それに万が一なことが起こった場合はウチの救急救命室が開いているのでそちらに搬送するように久米先生にも言っておきます。ウチの医局所属の人間は流石にこのホテルに招かれていますが、杉田師長を始めとする優秀なスタッフは揃っているので大丈夫だと思います」
 祐樹が通話終了ボタンを安堵した感じで押しながら自分へと強く輝く瞳を向けた。
「そうだな……。確かに久米先生は今の状態の祐樹のお母様を診ているし適任だろうな。地震の時も一ユニットを率いて上手く回していたし、救急救命医としての腕も確かだと北教授からもお褒めの言葉を貰ったことも有ったので。
 だったら、あっては欲しくないことだが、万が一のことが起こっても救急車に乗ってウチの病院まで行って……引き継ぎは完璧になるな……」
 祐樹が可笑しそうな表情で唇を開いた。



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今は、久米先生が医局に入れてハッピー!な話とかですね。

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       こうやま みか拝

「船上のモリアーティ」 8

「知識、いえ理論としては知っています。しかし実践となると……」
 シャーロックの黒い瞳に目が離せなくなるのは何故だろう。
 そして、いつもは頼られることや、ウィリアムの知識が他人に役立つことに悦びを感じていたのも事実だった。
 それだけで良かったハズなのに、何故か今日のシャーロックの言葉や一挙手一投足に視線どころか心まで奪われてしまうのは何故だろう。
「理論ね。確かにそれも大切だ。しかし、頭を働かせ過ぎて――ああ、リアムの場合は実戦にも加わるんだっけか――まあ、ソッチの実践は初めてのようだが、それは貴族たるものはこう振る舞わねばならないっていう思い込みに縛られてんじゃねーの?
 リアムの場合一度で良いから頭で考えることを放棄して、他の人間の――いや、リアムの場合は自分が信頼できると判断した人間のみっていう厄介な前提条件が付くみてーだが、幸い俺はその難し過ぎるテストに運よく合格しているみたいだし――「企み」に乗ってみるのも良いんじゃね?
 普段は仲間の皆から頼りにされる損な役回りをしてんだろ」
 損だとは全く思ってもいなかったが、シャーロックが言うとそうなのかも知れないという不思議な気持ちになってしまう。
 理屈ではなくて本能的な感じで。
「損だとか得だとかは考えたことも有りませんが……選択の余地はなさそうですね」
 肩を竦めてそう言った後にウィリアムは客船のチケットをしなやかな指で取った。
 自分の命は全てを「理想の為に」捧げても良いとの思いは変わらない。
 しかし、アルバート兄様という、ウィリアムにとってはかけがえの無い同志でもあり家族でもある人がこの世から消えてしまうという事態には耐えられそうにない。
 それ以上にシャーロックの傍にいると何でも彼が決めてくれそうな、ある意味自分が自分でなくなるような覚束なさが逆に好ましく思えてくるのは我ながら不思議だった。
「じゃ、俺達の想い出の港で待っている。乗船の日時はチケットに書いてある通りだ。
 リアムを口説くのには時間がかかると思っていたが、もうロンドンじゃん。
 予想以上に時間が掛かったな……。じゃあ、船に乗ってしまえばこっちのモンだからさ、それまでは兄弟とか仲間に上手く誤魔化しておいてくれ。リアムならそれらしい口実くらい思いつけるだろ?
 それとも何か?そっちまで俺が考えなきゃならないか?」
 列車のスピードが落ちているとは思っていたものの、いくつかある停車駅の一つかと思いきやいつの間にか終着駅だったとは。
「その程度は自分で考えます。兄弟や仲間を欺くことになるのはとても心苦しいのですが」
 シャーロックの押しの強さに絆されたわけでもなくて、ウィリアム自身が――今までは全く自覚してもいなかったが――内心密かに望んでいたことのような気もする。
 兄弟や仲間から隔絶された環境というものを、数日間。
 ずっと一緒だと誓い合った仲ではあるものの、そしてそれに対して不満などあろうハズもなかったが、心の奥底では(ほんの少しで良いから……全てを忘れて誰かに――多分シャーロックに――従ってしまいたい)と、そう思ってしまっていた。
 それにアルバートお兄様を救えるという大義名分があるなら、ウィリアム自身の心すら欺くことも出来たのも紛れもない事実だった。
「じゃ、サウサンプトン港で。待ってるからぜってー来いよ、な」
 口調とは裏腹にシャーロックの饒舌な瞳は来て欲しいと懇願しているようだった。
「分かりました。参ります。誓いますので……」
 すっかり冷めきってしまった紅茶を口に含むとウィリアムは咽喉がひどく乾いていたことに今更ながら気が付いた。
 それだけ動揺していたのだろう。シャーロックの唐突過ぎる――と言ってもシャーロックがそういう人間だということはプロファイリングで知っていたハズだったのに――言葉に心全部が翻弄されたような気がして。
 シャーロックは満足そうにタバコの煙を食堂車の天井の方に向けて盛大にはいていた。
 その粗野極まりない仕草にも――モラン大佐もウィリアムの居ないところではしていると聞いてはいたが――どこか洗練された美しさがあるような気がした。
 他の人間が自分を見る目とは異なって、シャーロックの場合は常に対等だった。いや対等というよりも有る部分ではウィリアムよりも上だったりまた異なった部分では下だったりしていてどこか据わりが悪いような気持ちがする。
 心が揺さぶられるというのはこういうことなのだろうか?
 シェイクスピアの戯曲は幼い頃から親しんで来たが、ロミオとジュリエットなどの恋愛モノに全く興味を抱かなかったし当然共感を込めて読んだこともない。
 ただ、今のウィリアムの気持ちは――シャーロックの全てを見透かすような黒い瞳の魔力は恋の魔力と似ているような気がする――シェイクスピアの恋愛モノに似ているような気がした。
 アルバート兄様を守るためという「大義名分」を盾に私情を優先させてしまっている。
 そのことに気付いて内心舌打ちをしたい気分だった。そんな品のないことを人前はおろか自室で一人の時にもしないと決めていたので。
「じゃあ、船に乗っている間は俺だけのシンデレラになってくれ。
 12時の鐘じゃなくって、船が港に帰って来るまでの間な。
 王子様っていうガラじゃないが、きっちりベッドの上でダンスを踊ろう、二人きりで。全てを忘れて。シンデレラがそうだったように、な?」
 何と答えれば良いのか分からなくて、ウィリアムはただ頷くだけで了承の意を伝えた。
 汽笛と蒸気の香りが駅に着いたことを知らせてくれた。
 ホームでシャーロックと別れて一人プラットフォームを歩くウィリアムは何度も何度も内ポケットに手を入れてシャーロックが渡してくれた船のチケットが本当に有るかどうかを確かめずにはいられなかった。
 さて、アルバート兄様やルイスには何と言って数日間留守にしようかと頭をフル回転させながら。






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気分は下剋上 学会準備編 291

「そろそろお暇しましょうか……。清水氏もこの部屋を他の人とも使うかも知れませんし。
 余りご厚意に甘えない方が良いでしょうから……」
 シャンパンのボトルを空にした上にテーブルの上に綺麗に並べられた料理もほぼ食べてしまった時に――料理はともかく飲みかけのシャンパンのボトルを残していくのは何となく気が咎めるのは祐樹も自分も庶民育ちだからだろうが。元々がお金持ちの清水氏ならウエイター役の人に事もなげに「下げてくれ」みたいなことを言うのだろう、フルート・グラス一杯分しか呑んでいないシャンパンであっても――裕樹が言った。
「そうだな。あまり長居するのも気が引けるので」
 そう話し合ってスイートルームを辞去する旨を支配人に伝えて貰えるようにスタッフに言った。
 清水氏がこの部屋を使うことが有れば先程と同じように支配人に聞くハズなので。
 接待というか密談かもしれないが、清水氏が招くようなVIPがもし居ればこの部屋を使う可能性は高かったので。
「呉先生に電話を掛けても良いか?」
 祐樹のお母様の現状を伝えて明日は気を配って貰わなければならない。
「ええ、もちろんです。ただ、久米先生は脳の異常は認められないと言って来ました。
 あくまでも問診と救急救命医としてのキャリアの賜物ですが……。後はMRIとかで精密検査をしないと詳しいことは分かりませんが……」
 ふかふかの絨毯の上を歩きながら祐樹が自分と眼差しを交わして安堵の輝きを宿している。
「月曜日に病院にいらっしゃるのだろう?医局で祐樹の仕事振りを遠目にでも見て貰ってから執務室に来て頂けるようにお願いする積もりだ……」
 自分には永久に無理な親孝行の代償行為として思いついたことを――と言っても祐樹のお母様は自分のことを実の息子よりも案じて下さっているのは知っているので正しくは代償行為ではないのかもしれないが――祐樹へと告げた。
 祐樹は黒い瞳の輝きを更に深めて自分だけを見ている。優しい輝きが自分に降り注いでいるのを見るとシャンパンの酔いよりも深く甘い陶酔が身体中に浸透していくようだった。
 幸せ過ぎて薔薇色の眩暈がするような気がする。
「医局はあくまでも遠目でお願いします。少なくとも久米先生は私の母だと知っているので、何故貴方が一緒に居るか不審に思うかも知れませんから。
 と言っても、久米先生は職務以外のことは深く考えない人なのでそんなに警戒しなくとも大丈夫なような気がしますが……。それよりもアクアマリン姫の方が絶対に勘が良いでしょう。ただ、幸いなことに彼女は脳外科所属なので医局には居ないですので……。
 執務室はドラマと同じようなモノなので母は物凄く喜ぶと思います。有難うございます。そんな配慮までして頂いて。
 ただ、明日の精密検査で異常が見つからなければ……という前提は必須ですが」
 フワフワとした気持ちが先走ってしまっている自分と異なって祐樹の慎重さも好ましい。
「それはそうだな……。万が一異常が見つかれば脳外科の白河教授に即座に相談しなければならないし……。
 そう言えば白河教授には清水研修医のことを正式にお願いしなければならないな……」
 昼間のシャンパンでも酔わないことの方が多いのに、明日の「披露宴」のせいかも知れないが今日は何だか思考が散漫になっているようで、言葉も思いつくままに紡いでしまう。
「大丈夫ですか?何なら喫茶室に寄るとか、自販機を探しに――と言ってもこのホテルはビジネスホテルみたいにそういった「庶民的なモノ」はなさそうですが――外に出ましょうか?水をお飲みになった方が良いような気がします」
 祐樹の輝く眼差しに懸念の彩りが加わっている。
 その「守られている感」がアルコールのせいではない陶然とした気分になってしまう。
「そんなに酔っているか……?」
 酔っていないとは思っていないが、水で薄めるほどではないような気がする。ただ自己判断よりは裕樹の診立ての方が正しいと思っているので聞いてみることにした。
 すると祐樹は唇と眼差しを暖かい笑みの形にしている。
「そう仰るなら大丈夫ですね。酩酊している人間は必ず『酔っていない』と言い張りますので……。救急救命室には泥酔した上に怪我をして搬送された人が多数居ます。
 急性アルコール中毒患者というだけでも杉田師長は受け入れますしね。
 泥酔した患者さんはアルコールのせいで痛みを感じないので――ま、釈迦に説法でしょうがアルコールも麻酔薬と同じ作用が有りますので――骨折していても「酔っていない!」と強弁するのが普通です。
 水はさして必要とも思えませんが、念のために飲んでおきますか?」
 祐樹は慎重さを崩さずにそう言ってくれたが、この薔薇色の酩酊感が――多分アルコールのせいだけではない――ひどく気持ちが良いので首を横に振った。
「呉先生に電話することにする」
 このホテルが、一生の記念になるだろう「披露宴」の場所なので、施設内をじっくり見てみたい気持ちの方が多い。それにまだスイートルーム階なので人の出入りもないので電話するのに適しているのも事実だった。
 病院長御用達のホテルだと言っても、京都観光に来た外国人も多数利用しているとどこかで――普段の自分ならば何という雑誌なのか即座に思い出すことが出来るが記憶が曖昧なのは薔薇色の酩酊感のせいだろう。
 この酩酊感がアルコールのせいだった場合は祐樹の言う通り水を飲んだ方が良さそうだが、そうではない自覚が有った。
「そうですね。私が呉先生に頼んでも良いのですが、明日の『披露宴』で呉先生から今日の話も当然出るでしょうから貴方からお願いした方が母も喜びます。
 だからお願いして良いですか?」
 祐樹の許可を貰ったので、心からの微笑みの花束を祐樹に送ってから携帯を取り出した。
「もしもし、香川です。今お電話宜しいですか?」
 3回コールで呉先生が出てくれたので大丈夫だろうと思いながら携帯を握り締めた。
『はい大丈夫ですよ?
 いよいよ明日ですよね。私も、そして同居人もとても楽しみにしています。
 それに……例のモノを使って下さるのですよね?そちらもとても光栄に思っています』
 呉先生の声も陽だまりに咲くスミレの花のような声で応えてくれた。
 「例のモノ」とは呉先生が森技官から初めて貰った指輪だ。呉先生の雰囲気に似たスミレの花を象った紫の綺麗な指輪だったが、爪部分がグラついていたので修理した後に自宅マンションに大切に置いてある。
「はい、勿論です。幸せな友人から貸し出して貰ったモノは必ず身に着けます。他にも色々……。私も無神論者ですがジンクスは藁にも縋る気分で付けたいですから……」
 呉先生は快活そうな笑い声を電話越しに伝えてきた。
「田中先生は教授がお思いになっているよりも遥かに愛していらっしゃるのでジンクスに頼らなくても大丈夫でしょうが……」
 それは充分過ぎるまで分かっている積もりだが、やはり「披露宴」ともなると不幸なモノを一切排除したいと思うのは自分だけだろうか?
「それはともかく……、祐樹のお母様が時々手の痺れが有るらしくて……。
 パーティの途中で異常に気付いたら立食のエリアに居る久米先生に伝えて下さい。
 と言っても呉先生は面識がないですよね?」
 隣で聞いていた祐樹が乾いた音で指を鳴らした。






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気分は下剋上 学会準備編 290

「そうですね……。紅茶ではなくてシャンパンの方がもっと合うかと思います。
 あ、良いです。私が注ぎます」
 後半はウエイターの人に向けた言葉だった。
 このホテルは斉藤病院長を始めとする病院関係者ご用達のようだったので――いくらホテルマンの口の堅さを信じているものの――軽率な言動は慎むべきだろう。
 第二の愛の巣とも呼ぶべき大阪のホテルではかなり大っぴらに振る舞ってはいたものの、それはホテル側が「二人の関係」を心得ているという安心感が根底にある。
「有難う」
 酸っぱさと塩味が精緻なバランスで同居するこのピクルスにもシャンパンは良く似合う。
「しかし、病院長選挙に出るのは至極ご尤もなので――内田教授にでも唆されたとかで。あの先生も革命家としてのカリスマは持ち合わせていると判断していますが、教授職のキャリアとか、病院内外の知名度から言えば貴方の方がより上を行くのは明白なので、敢えて譲るという選択肢を選んだと勝手に考えていました――何の疑問も抱いていなかったのですが、そして貴方が教授職にあまりにも自然に就いていらっしゃるのでそれ以上のことはあいにく考えが及ばなかったです。
 生粋の病院育ちなのに、見抜けなかったことが何となく悔しいです」
 「悔しい」と言いながらも祐樹の輝く瞳とか太陽よりも眩しい笑みを見ていると、このタイミングで知って貰った方が良かったと思う。
 そして、祐樹がフルートグラスを空中にかざした。
「未来の医学部長に」
「未来の田中教授に」
 視線と共にクラスも熱く涼しい音が絡まり合った。
 その後に飲みほしたシャンパンが殊更に咽喉を冷やすような、そして焼くような不思議な感触だった。
「お母様の具合はどうだった?」
 先程は清水氏が居たので詳しく聞けなかった一番の懸念を聞いてしまう。昼間のシャンパンはキスよりも甘く熱く理性を解くようだったし。
 それにこの程度は聞いても良い質問だと朧に霞んだ理性が告げている。
「ああ、母ですか……。元気そうでしたよ。何でも久米先生に実の母は『絶対に』切れない絆が有るけれども、奥さんは逃げられたら終わりの赤の他人だと思って接しなさいとか言っているらしいです。
 何だか久米先生も感銘を受けたようで……そんな話しを私にしてきました。
 別にそんなことを一々言わなくてもこちらは一向に構わないのですが、ね」
 口ではそんなことを言っているが久米先生のことを実の弟のように可愛がっているのは知っているのでむしろ微笑ましい。
「確かに奥さんは離婚したら、赤の他人になるのも事実だが?」
 祐樹のお母様を褒めた積もりだった。
「私は生涯の伴侶と思い定めた人を逃がすような馬鹿げた真似は絶対しませんが……。
 だから……」
 「覚悟して下さい」と唇が告げている。
 その輝く瞳や言葉に射られたように頬が上気してしまう。ただ、シャンパンを呑んでいるので不審には思われないだろうが。
 了解という意味を込めた眼差しの煌めきを送った。
「…………明日のパーティの時に、お母様の体調不良に気を配って貰うのは森技官が良いだろうか?それとも呉先生に頼むか?」
 二人とも割と話しやすいという理由から同じテーブルに配置したが、呉先生は精神科医としては卓越した能力を持っているものの、高度に細分化した大学病院では外科と精神科は異世界と言っても過言ではない。
 それに森技官は病院に査察のため派遣されると聞いていたが、どこぞの大学病院の病院長だかに「皮膚科ではないと紹介状は書けない」と言われたと本人が言っていた。
 皮膚科でもガンなど放置すればマズい病気もあるものの、数日程度の猶予は有るので専門医に相談してからでも充分間に合う。救急救命医としての資格も持ち合わせている裕樹などは一分の遅れが文字通り致命的になるような場所に居合わせることもないのだろう。
「究極の二択というか……、消去法に消去法を重ねた場合には、ですけれども……呉先生の方が無難ですよ。
 医師としての力量ではなくて、病院内部の人なので、ウチの医局の……それこそ久米先生にでも事前に会わせておけばより完璧だと思いますが……。斉藤病院長が呼んだ然るべき人々に悟られずに立食パーティのスペースに行けるでしょう?」
 確かに医局員はテーブル席ではなくて控えの間っぽい立食の場所に居るようになっている。
 ただ立食の方が目立たないので、そっと退席したとしてもそう目立たないだろう。
「久米先生が窓口になってくれれば母の最新のバイタルなどを把握しているのでより一層心強いです。
 あんな――まあ、背負っているものが異なるからかもしれませんが清水先生とは精神年齢が大人と子供ほど違う――人ですが、医師としての腕は確かです」
 大人と子供……、確かに病院長レベルの人事まで見通している視野の広さは持ち合わせていないが……祐樹の親しみのこもった憎まれ口を薔薇色に泡立つ心で受け止めると、心の中がよりいっそう煌めく紅さに染まっていく。
「大人と子供……それは言い過ぎだろう。七年程度ではないか?」
 シャンパンが全身を紅く染めていくような気がした。祐樹の眼差しの優しげな輝きも相俟って。
「七歳異なるというと男女の性差のようですね。
 ただ、13歳と20歳だったら、七年の違いは有る上に大人と子供と言えますよね?
 それはともかく、久米先生だったら他の救急救命の医師も即座に呼べますし、適役かと思います。
 どうせそこいらに医師が居るので彼も心強いでしょう」
 口ではまだまだ祐樹には敵わないと――と言っても勝つ気はそもそも無かったが――唇が笑みを深くしてしまう。
 アルコールのせいではない薔薇色の陶酔が身体中に浸透していくような気がして、この時間が続けば良いという思いと、早く明日が来てほしいというワガママかつ贅沢な心を持て余してしまっていた。







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気分は下剋上 学会準備編 289

「シャンパンのお代わりは如何ですか?」
 イチゴと共に呑むシャンパンは普段以上に美味だった。ただ、明日の「披露宴」を控えていつになく感傷的になっているのも自覚していた。
 アルコールには耐性が有る体質ではあるものの、その時の体調によってどんな作用が出るか分からない。
 それにアルコールの麻酔作用は、手術の時に使う麻酔薬と同様の効果だ。それでもアルコールが手術に用いられないのは効く時間が人によってマチマチだという点だ。
 こんな感情の揺れ幅が大きい今日この日にはあまり過ごさない方が良いだろう。
「いえ、アフタヌーンティがとても美味しそうなので、紅茶に致します」
 ウエイターを務めているスタッフに目配せをした時に、清水氏のスマホが鳴った。
「おや、斉藤からです。噂をすれば……というやつですかな。
 少々失礼します」
 清水氏は酔った感じの歩き方で別室に消えた。ただ、夢にも思っていなかったご子息の「教授職」の野望に酔っているのかも知れなかったが。
「驚きました」
 テーブルに残った二人から異口同音の声がした。
 滅多なことでは動じない祐樹もさすがに寝耳に水の教授職というのは驚異だったのだろう。
「病院長選挙に出馬なさると伺っていて……それは現場の医師やナースそして、技師達も含めた――いわば内田教授が普段から取り組んでいらっしゃる――病院内改革を医療従事者目線で進めるのが目的だとばかり思っていました。
 それなのに、私を後継者に……?
 医局に居る以上は――どこぞの公立大学とか私立大学に招かれるのなら別の話になってしまいますが――停年時に准教授のポジションだろうなと。
 それが……」
 祐樹が黒く輝く瞳が戸惑ったような光を放っていて、そういう類いの輝きは見たことがないので新鮮だった。
「いえ、香川教授が病院長に就任された暁には当然教授職は空くことになりますし、医局の内でも異論は出ないのでは?
 何しろ執刀重視の科だというのは全国中、いや世界レベルかも知れませんが……響き渡っていますよね。
 それに田中先生の香川教授にどこか似てはいるものの、ダイナミックさと華麗さが天才的な執刀医振りも一部では有名です。
 あれは教授の手技をベースにして田中先生のアレンジを加えたモノですよね?
 そして医局の他の先生方も田中先生が執刀することについて特に異存はないとのことですよ。久米先生に聞いたのですが。
 彼は医局の愛されキャラですよね。あの愛すべき天然さを見ていれば分かりますが。
 それに医局内で田中先生の人望は厚いですし、妥当だと思います。柏木先生は生涯教授のサポート役に回るという選択をなさったようですが、田中先生の手技や――そして教授には大変失礼なのですが……」
 医局に所属していない――籍はまだ精神科だが、どうやら外科に目覚めた清水研修医は暇を見つけては手術のモニタールームまで見に来ている感じだった。
 普通の研修医には――「夏の事件」の狂気の元研修医も割と好き勝手をしていたようだったが、それは当時の教授に莫大な金銭を人知れず送っていたからだ――そんな暇はないのが普通だが、清水研修医のお父様が斉藤病院長の「親友」であることから精神科の真殿 
教授も大目に見ているのだろう。
 それに、清水研修医は地震の時も精神科から「快く」貸し出したということは、真殿教授の側近には良く思われていないような気がする。
 真殿教授と大喧嘩をして医局を出てブランチを立ち上げた呉先生の方にシンパシーを感じているのも知っていた。
 そして、清水研修医は京都一の私立病院の後継者に相応しい感じで、全体を良く俯瞰して見ているなと感心してしまう。
 まあ、救急救命室で裕樹や柏木先生、そして久米先生とも夜を過ごすので、暇な時は色々と会話を交わせるのでそういう結論に至ったのかもしれないが。
 ただ、清水研修医は――地震の時が初対面だった――最初から歯に衣着せぬ、かつ説得力のある意見を恐れ気もなく言って来た人なので肝も据わっているのだろう。
「失礼……ですか?いえ、岡目八目という言葉が有るように……当事者には中々気付けない点が有りますし。
 しかも、清水先生の意見は的確ですし、毎回ためになっています」
 祐樹は黒く輝く瞳に牽制めいた光を宿して清水研修医を見ていたが。
「では、申し上げます。教授は絶対のカリスマ性で医局を運用していらっしゃいますよね?それはそれで凄いことなのですが。
 そして手に余ることを適材適所で割り振っていらして、拝見していてとても清々しいです」
 清々しいという評価は初めてのような気がする。
 目を見開いて祐樹を見ると、祐樹も同感という感じの目配せを送ってくれた。
「清々しいですか……。私は自分の手に余ることと自分の出来ることに分けて考えています。
 前者はより適任者が居るのですから、そちらに回しているだけだったのですが。
 そもそも私は手技の実績で招聘されているので、病院への貢献はまずそこでしょう」
 学生への指導などは、コミュニュケーション能力が必要で、そして黒木准教授の方が持ち合わせている。だから職務の一環を振っただけだ。誰もが向き不向きがあるので。
「医師は理系なので合理性を追求しがちですが、教授のは――間違ったプライドとか体面だけを考えてつじつま合わせをしている――他の教授達と一線を画しますね」
 祐樹がムッとした感じで何かを言おうとした時に清水氏がこちらの部屋に戻って来た。
「『あの』吉田さんが――ダメ元で斉藤が招待状を送っていたらしいですね――応援演説のついでとはいえ、今日・明日は京都にいらっしゃっていると。いずれ首相にとの呼び声も高い人です、ご存知でしょうが……」
 全国レベルの知名度を誇る政治家だけに清水氏が更に酔ったようになるのも別に不思議ではない。
「その方のお嬢様がウチの病院に入院なさっていますよ。ちなみに主治医は田中です」
 百合香ちゃんは順調に体力を付けて来ている。お父様もご多忙中ながらも、パーティに顔を出して下さるのは、御礼代わりに違いない。
 ただ、御礼は別のモノで充分貰っている気がするが。
「えっ!そうなのですか?早速ご挨拶に伺わないとなりません。
 この部屋でゆっくりとお寛ぎ下さい。御帰りの際はスタッフまで仰って下されば大丈夫なようにしておきますから」
 慌ただしい感じで親子二人が退室して行くのを座ったまま見送った。そうするようにジェスチャーで伝えられたので。
 このくらいのバイタリティというか精力的に動かないと「京都一の私立病院」として君臨し続けられないのだろう。
「このピクルスはとても美味しい……」
 酸っぱさ加減が絶妙だった。それにキュウリも畑から直接取って来たのかと思えるほどだったし。
「そうですか?ああ、本当に美味しいですね……。これは紅茶ではなくて、シャンパンの方が合いますね……。
 それはそうと」
 祐樹が可笑しそうな光を宿して自分を見ていた。新しいフルート・グラスにシャンパンが注がれる。
 その泡のようなため息を零してしまう、薔薇色の。




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今後もこのブログは不定期更新しか無理かと思います……

ただ、アイパッドで隙間時間OKのこちらのサイトでは何かしら更新します。
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勝手を申しましてすみません!!




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あと、BL小説以外も(ごく稀にですが……)書きたくなってしまうようになりました。
本業(本趣味)はもちろんBLなのですが。

こちらでそういった作品を公開していきたいと思っています。




「下剋上」シリーズは一人称視点で書いていますので、他の人がどう考えているのかは想像するしかないのですが、こちらはそういう脇役がこんなことを考えているとか書いています。
今は、久米先生が医局に入れてハッピー!な話とかですね。

スマホで読んで頂ければと思います。その方が読み勝手が良いかと。

落ち着くまでは私ですら「いつ時間が空くか分からない」という過酷な(?)現実でして、ブログを更新していなくてもノベルバさんには投稿しているということもあります。
なので、お手数ですが「お気に入り登録」していただくか、ツイッターを見て頂ければと思います。




更新出来る時は頑張りますが、不定期更新となります。すみません!!

すみません、ただ今職場とクリニックのハシゴ&(しょぼい)相続会議紛糾中でして、心身共に疲れ果てています。

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