「綺麗でしたね。それに今回は緑色が多めで……、貴方も良く緑とか青のネクタイを締めていらっしゃいますので数多いイメージカラーの一個なのです。だから貴方のことを――隣を歩いて下さっていたというのに懐かしくさえ思えてよりいっそう楽しめました」
この催し物に来た人は祐樹が教えてくれた通りの屋台方向――実際に駅もそちらの方向だった――に向かうらしく驚くほど人の気配はない。
祐樹も病院のすぐ近くの隠れ家的な場所を――暇を持て余した患者さんの目さえも届かない場所だ――を見つけるのが上手いが森技官も同じなのだろうか。
時間を外して来ているとはいえ、先程までの人混みが全く消えて異世界に紛れ込んだとか二人を残してこの世界が滅亡したと言われても何だか納得してしまいそうなくらい、完全な「二人きり」の道路とビルが並んでいるだけの場所だった。
「本当に綺麗だったな……。実際に雪は降っていないし、降っていなくても充分繊細な煌びやかで厳粛な雰囲気がとても素敵だったが、降っていたらもっと雰囲気が増すと思う」
ごくごく自然な動作で祐樹の指に自分の指を絡めて深くまで繋ぎ合わせた。何となくそうしたい気持ちでいっぱいだったので。
「雪ですか……。確かにそうでしょうね。しかし、クリスマス前に終わるイベントですから実際に降ることは極めて稀でしょうね。気象条件から考えても。
ただし、六甲山系の山が近いので神戸の降雪の確率はかなり高いので運が良ければ降るかも知れません。三宮が雨でも六甲山の頂上付近では雪のことも多いと聞いています。今日はコートで充分な気温でしたが……。
貴方の指もまだまだ温かいですし……」
深く絡めた祐樹の指が指の付け根辺りから確かめるように上へと動く感触にすら甘い声が漏れそうな気がした。
「指はとても大切なので、今度は毛糸で手袋でも作ろうか?」
意識を日常的なことに向けないと、理性の糸が切れそうな気がした。人通りが全くないとはいえ、オフィイスビルと思しき建物の――もちろん全部灯は消えている――並ぶれっきとした公道だ。
「そうですね。それもとても有り難いのですが……。カシミアのコートにマフラーまでは許せても毛糸の手袋よりも革製の方が調和しそうな気がします。
ダウンジャケットならば毛糸でも大丈夫ですけれども……」
言われてみれば確かにそうで、自分の不明を恥じてしまう。病院内の旧態依然の不文律では職階が上がればカジュアルでも着用可能なダウンジャケットを着ていくと周りから白い目で見られるのも確かだった。
「聡が編んで下さるのでしたら、今度は普段着にも合うようなマフラーの方が優先順位も高いです。難易度がどれほど高いか全く分からないので、素人のたわ言と聞き流して下さって結構ですが色違いのお揃いのセーターなどもデートとかウチの実家に帰る時に着ていくというのも素敵ですね。
それはそうと、この建物は明治だか大正だかに建てられた感じがしてとても風情のある重厚さだと思いませんか」
祐樹の低くて熱い声が人目を忍ぶ感じなのも耳朶の後ろの薄い皮膚を直接に舌で愛されているような錯覚を覚えた。名前を呼び捨てにされた――それはそれでとても嬉しいが――こととも相俟って。
祐樹が歩みを止めるだけあって、石造りの階段が何だか舞踏会でも開けそうな感じで設えてあった。多分敷地内の面積が広いのだろうが、その傍には大きな樹木と低木がバランス良く植えられている。
「こちらへいらして下さい」
その低い声に背筋を緑色の稲妻が奔り抜けたような気がした。
樹木と祐樹の身体に隠されるようにしてビルの外壁に凭れかかった。
「祐樹……連れて来てくれて、本当に有難う。
そして、何時でも、これからもずっと愛している」
本当に大丈夫だろうかと辺りを確認してしまうのは、マスコミへの露出が増えたせいでより個人特定のリスクが高まったからだった。本当に大切だと思う人達に祝福される機会も出来たので後悔はしていないが。
「大丈夫ですよ。この仄かな灯りですから私のコートが一種の保護色になってくれます。
それに私は人の気配にも敏感なので」
深く繋いだ指はそのままで祐樹の首に指を絡ませながら唇を重ねた。
唇だけでは物足りなくて舌で祐樹の柔らかな輪郭を辿って微かな水音を熱く響かせていると合わせ目が開かれて祐樹の口へと導かれる。
同時にコートのボタンを外した指がスーツの内側を素肌の熱さを確かめるようにウエストから上へと這わされて、それだけで息が甘く熱くなった。
「ゆ……祐樹……、そこは……」
唇を僅かに離して、ずっと布地を甘く疼いて押し上げていた尖りを強く触れて欲しいような、いや触れられたら後戻りが出来なくなりそうな二律背反した気分のまま言葉を紡いだ。
「聡が私を愛して下さっているからでしょう……。もちろん同じ量を私も聡に抱いていますから。
こんなに可憐に尖らせて、指で愛さずにはいられないです」
ワイシャツの上から尖った部分を優しく摘ままれただけで背筋が反るほどの甘く激しい快感がルミナリエの緑や青の光りのように灯った。
「ゆ…祐樹。とても……悦いのだが……それ以上触れられると……。あっ……」
祐樹の首に縋るように腕全部を回してしまったのだが、逆にそれが更に密着の度合いを深めてしまっていた。
「聡の素肌は私の指に敏感ですよね、相変わらず。その方が私も嬉しいですが。
それに呑んだのはビールでワインではないですよね」
祐樹の指が精緻かつ大胆に動いて側面部を左右から弾いた。
「あ……。祐樹……本当に……止まらなくなる……。キスだけで……。
ワインが……どうかした……のか……」
甘く溶けた声を自覚しつつ必死に理性を保とうと最後のあがきのような声を出した。
「ワインはね、催淫剤の作用が有るらしいですから」
祐樹の熱く低い声に背筋が甘く溶けて行きそうだった。それに祐樹の指で触れられていない尖りも先程より布地を強く押し上げては不満の疼きが灯っている。
「……祐樹の存在が……私にとっては催淫剤で……。これ以上は……。あ……」
尖りへの愛撫だけで反応してしまった下半身を自覚して、薔薇色の気分で途方に暮れた。
この催し物に来た人は祐樹が教えてくれた通りの屋台方向――実際に駅もそちらの方向だった――に向かうらしく驚くほど人の気配はない。
祐樹も病院のすぐ近くの隠れ家的な場所を――暇を持て余した患者さんの目さえも届かない場所だ――を見つけるのが上手いが森技官も同じなのだろうか。
時間を外して来ているとはいえ、先程までの人混みが全く消えて異世界に紛れ込んだとか二人を残してこの世界が滅亡したと言われても何だか納得してしまいそうなくらい、完全な「二人きり」の道路とビルが並んでいるだけの場所だった。
「本当に綺麗だったな……。実際に雪は降っていないし、降っていなくても充分繊細な煌びやかで厳粛な雰囲気がとても素敵だったが、降っていたらもっと雰囲気が増すと思う」
ごくごく自然な動作で祐樹の指に自分の指を絡めて深くまで繋ぎ合わせた。何となくそうしたい気持ちでいっぱいだったので。
「雪ですか……。確かにそうでしょうね。しかし、クリスマス前に終わるイベントですから実際に降ることは極めて稀でしょうね。気象条件から考えても。
ただし、六甲山系の山が近いので神戸の降雪の確率はかなり高いので運が良ければ降るかも知れません。三宮が雨でも六甲山の頂上付近では雪のことも多いと聞いています。今日はコートで充分な気温でしたが……。
貴方の指もまだまだ温かいですし……」
深く絡めた祐樹の指が指の付け根辺りから確かめるように上へと動く感触にすら甘い声が漏れそうな気がした。
「指はとても大切なので、今度は毛糸で手袋でも作ろうか?」
意識を日常的なことに向けないと、理性の糸が切れそうな気がした。人通りが全くないとはいえ、オフィイスビルと思しき建物の――もちろん全部灯は消えている――並ぶれっきとした公道だ。
「そうですね。それもとても有り難いのですが……。カシミアのコートにマフラーまでは許せても毛糸の手袋よりも革製の方が調和しそうな気がします。
ダウンジャケットならば毛糸でも大丈夫ですけれども……」
言われてみれば確かにそうで、自分の不明を恥じてしまう。病院内の旧態依然の不文律では職階が上がればカジュアルでも着用可能なダウンジャケットを着ていくと周りから白い目で見られるのも確かだった。
「聡が編んで下さるのでしたら、今度は普段着にも合うようなマフラーの方が優先順位も高いです。難易度がどれほど高いか全く分からないので、素人のたわ言と聞き流して下さって結構ですが色違いのお揃いのセーターなどもデートとかウチの実家に帰る時に着ていくというのも素敵ですね。
それはそうと、この建物は明治だか大正だかに建てられた感じがしてとても風情のある重厚さだと思いませんか」
祐樹の低くて熱い声が人目を忍ぶ感じなのも耳朶の後ろの薄い皮膚を直接に舌で愛されているような錯覚を覚えた。名前を呼び捨てにされた――それはそれでとても嬉しいが――こととも相俟って。
祐樹が歩みを止めるだけあって、石造りの階段が何だか舞踏会でも開けそうな感じで設えてあった。多分敷地内の面積が広いのだろうが、その傍には大きな樹木と低木がバランス良く植えられている。
「こちらへいらして下さい」
その低い声に背筋を緑色の稲妻が奔り抜けたような気がした。
樹木と祐樹の身体に隠されるようにしてビルの外壁に凭れかかった。
「祐樹……連れて来てくれて、本当に有難う。
そして、何時でも、これからもずっと愛している」
本当に大丈夫だろうかと辺りを確認してしまうのは、マスコミへの露出が増えたせいでより個人特定のリスクが高まったからだった。本当に大切だと思う人達に祝福される機会も出来たので後悔はしていないが。
「大丈夫ですよ。この仄かな灯りですから私のコートが一種の保護色になってくれます。
それに私は人の気配にも敏感なので」
深く繋いだ指はそのままで祐樹の首に指を絡ませながら唇を重ねた。
唇だけでは物足りなくて舌で祐樹の柔らかな輪郭を辿って微かな水音を熱く響かせていると合わせ目が開かれて祐樹の口へと導かれる。
同時にコートのボタンを外した指がスーツの内側を素肌の熱さを確かめるようにウエストから上へと這わされて、それだけで息が甘く熱くなった。
「ゆ……祐樹……、そこは……」
唇を僅かに離して、ずっと布地を甘く疼いて押し上げていた尖りを強く触れて欲しいような、いや触れられたら後戻りが出来なくなりそうな二律背反した気分のまま言葉を紡いだ。
「聡が私を愛して下さっているからでしょう……。もちろん同じ量を私も聡に抱いていますから。
こんなに可憐に尖らせて、指で愛さずにはいられないです」
ワイシャツの上から尖った部分を優しく摘ままれただけで背筋が反るほどの甘く激しい快感がルミナリエの緑や青の光りのように灯った。
「ゆ…祐樹。とても……悦いのだが……それ以上触れられると……。あっ……」
祐樹の首に縋るように腕全部を回してしまったのだが、逆にそれが更に密着の度合いを深めてしまっていた。
「聡の素肌は私の指に敏感ですよね、相変わらず。その方が私も嬉しいですが。
それに呑んだのはビールでワインではないですよね」
祐樹の指が精緻かつ大胆に動いて側面部を左右から弾いた。
「あ……。祐樹……本当に……止まらなくなる……。キスだけで……。
ワインが……どうかした……のか……」
甘く溶けた声を自覚しつつ必死に理性を保とうと最後のあがきのような声を出した。
「ワインはね、催淫剤の作用が有るらしいですから」
祐樹の熱く低い声に背筋が甘く溶けて行きそうだった。それに祐樹の指で触れられていない尖りも先程より布地を強く押し上げては不満の疼きが灯っている。
「……祐樹の存在が……私にとっては催淫剤で……。これ以上は……。あ……」
尖りへの愛撫だけで反応してしまった下半身を自覚して、薔薇色の気分で途方に暮れた。
【お詫び】
リアル生活が多忙を極めておりまして、不定期更新になります。
更新を気長にお待ち下さると幸いです。
本当に申し訳ありません。
お休みしてしまって申し訳ありませんでした。なるべく毎日更新したいのですが、なかなか時間が取れずにいます……。
目指せ!二話更新なのですが、一話も更新出来ずに終わる可能性も……。
なるべく頑張りますので気長にお付き合い下されば嬉しいです。
こうやま みか拝