腐女子の小説部屋

創作BL小説を綴っています。ご理解の有る方【18歳以上】のみ歓迎致します

<夏>後日談

「気分は、下剋上」<夏>後日談 59

「出来れば、これ以上、立ち眩みが起こっても大丈夫なように、田中先生をお借りしたいのですが……」
 祐樹が心の中で「はい?気は確かですか」と呟いてしまう。森技官の長身と、そして武道の心得が充分有る筋肉質の身体――ちなみに贅肉よりも筋肉の方が重い――を支えることを考えれば、見た目的には確かに祐樹しかいないだろう。ただ、祐樹最愛の人も標準よりは華奢な肢体の持ち主では有るものの、見かけよりも遥かに力が有る。呉先生は……、見てくれと同様っぽいけれども。森技官の黒い瞳が祐樹ではなくて最愛の人に懇願する感じで向けられている。
「いえ、ジェットコースターのような『スリル満点』の乗り物は香川教授と乗る方が良いのですが、そして、あのメリーゴーランドとか観覧車などは、本来のグループ分けに従って乗りましょう。
 ただ、歩いている時とかは田中先生の隣でも構いませんか?」
 今度は演説調ではなくて、何だかシェイクスピア俳優のように重々しくそして何だか弱弱しかった。ちなみに祐樹最愛の人も祐樹も演劇には全く興味がないので、テレビでチラ見した程度だったし、祐樹に至ってはその「有名な」劇の名前も知らないというお粗末さだった。まあ、患者さんの中には歌劇やオペラ愛好者も多数居たが、そういう場合はひたすら感心したように相槌を打って拝聴していれば――医師が物知りとか知識人という誤解がまかり通っているようなので――却って患者さんの方が嬉しそうに語ってくれる。「自分でも教えることが有って嬉しい」と。
「それは、もちろん構いませんが、本当に大丈夫ですか?
 先程、体調管理も仕事のウチと仰いましたが、遊びで訪れている場所ですので……。なんなら医務室で休まれては如何でしょう。本来の業務に差し障ってはそれこそ大変ですから」
「医務室もダメです。あそこはこの近くの私立大学病院の先生方がアルバイトで勤務しているのです。我が厚労省を代表して査察中の人間が、そんな場所に行ったとなると、末代まであの私立医大病院の笑いものになってしまいます。
 それに――この辺りの救急指定を受けた病院の卒業大学は、あそこが多いという統計もありますので、救急搬送されるわけにもいかないので」
 ツクツク法師が夏の終わりを告げるように寂しそうに鳴いている木陰の下で、最愛の人の心配そうな眼差しと怜悧かつ端整な涼しげな口調が残暑を和らげていくようだった。それに対して森技官の熱弁は夏の真っ盛りのような感じだった。まあ、官庁の威を――昨今はかなり値崩れしている感のある厚労省だが――借りたか背負った森技官がオフとはいえ、病院沙汰に出来ないのは気の毒だが、搬送されるほどのレベルではないことくらい、最愛の人の水が流れるような手際の良さでのバイタルチェックを受けているので大丈夫だろう。
「……恋人の方へと倒れてしまっては、二人とも怪我をしないとも限らないでしょう、共倒れというか……。
 その点田中先生なら私の体重でも余裕で支えることが出来そうなので……」
 確かに正論だとは思う。祐樹は救急救命室に搬送された患者さんをストレッチャーから処置台に乗せる時に――その時は激戦区の野戦病院さながらに混みあっていた――最高123キロの男性を一人で扱ったことがある。ただ、一般の人が誤解しているみたいだが、コツさえ掴めばその程度のことは出来る。最愛の人が学生時代のボランティアで救急救命室に通っていた時も何キロかまでは聞いていないが、そういう巨体をホールドしたこともあると何かの拍子に言っていた。
「もちろん構いませんが、仕事に差し障りのない程度にしてくださいね」
 額面通り受け取るのが最愛の人の美点でもあり、短所でもある。
 森技官のことなので、何かしら企んでいるだろうとは思うが、夕食の時にアルコールが回った時に最愛の人の「寝室事情」を話すという計画しか聞いていない。
 それ以外にも何か有るのだろうか。森技官のことだけに油断は出来ない。
 ただ、基本は――祐樹最愛の恋人への純粋な好意からだろうが――今の関係性が継続するという前提に立ってだが、祐樹最愛の人や祐樹に対してマイナスのことは仕掛けて来ないだろうが。
 それに聞いたことは何でも答えてくれる祐樹最愛の人とは異なって、言っていることと考えていることが180度異なることもないとは言えない人なので、聞いても無駄だろう。
「良いですよ。体重132キロ以上ということはないでしょうから。それ以上だと保証はし兼ねます」
 祐樹最愛の人も相手が森技官で、しかも恋人も傍に居るという状態で俗に言う「お姫様抱っこ」を――実際はこのホールドの仕方が最も楽だし腰に負担も掛からない――しでかしたとしても何とも思わないだろう。
 それどころか祐樹の負担を減らすべく力を貸してくれそうだ。
「メリーゴーランドの方がまだ身体に優しいかもしれませんね」
 呉先生が軽快な響きで言葉を紡いでいる。二人がどんなデートをしているのか具体的に聞いたことはなかったが、恋人の不調にも関わらずあまり気にしていない様子がいよいよ怪しい。
 少なくとも呉先生は――祐樹がほんの一瞬だけ「そういう関係」になった、名前も顔も忘れてしまったエキセントリックかつ自分を中心に世界が回っていると本当に思い込んでいた男性とは異なって――恋人を深く案じる優しさを持っているのも知っている。
「ああ、乗りますか?あの乗り物は二人掛けとかの偶数で数を合わせなければいけない類いのものではないので、何だったら休んでいて下さいね」
 一応、森技官にそう声を掛けた。
 すると森技官はまたもや意味不明・意図も尚更不明の行動に出たので内心唖然としてしまった。
 (何なんだ?これは一体)……と心の中でリフレインしていた。森技官の言動に驚かされるのはもう慣れたと思っていたが、どうもまだまだ修行が足りないらしい。ただし、そんな修行もしたくないのも事実だったが。




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何も考えていなさそうで、そして主体的に動かなかった彼ですが、何故そういう風に振る舞ったのかを綴っています。
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両方とも、独白部分は終わって物語が進みます。
森技官は「夏」の事件でキーパーソンでしたが、割と簡単に人をこき使ったり、のびのびと振る舞ったりしていましたが、実際は彼もかなりの苦労をしています。その辺りのことを書いて行こうと思っています♪


       こうやま みか拝

「気分は、下剋上」<夏>後日談 58

 森技官は演説めいた口調に――この人は元高級官僚として国政選挙に出馬しても端整で苦み走った容貌とか男らしいバランスの整った高身長だけでも世の中のご婦人方は票を投じるような気がする。何枚目の皮かは知らないが「良い人」というネコの顔も持ち合わせている。しかも弁が立つことは祐樹が折り紙を何枚でもつけたいのだから――疲れた感じで呉先生が買ってきて、最愛の人が万が一に備えて首の下に当てていたのを丁重に受け取っての一気飲みだった。熱中症の可能性を考慮に入れたのか、首の下とか腋下そして、足の付け根を冷やすことを考えて、一番無難な頸部大動脈を選んだのだろう。
 その喉ぼとけの動きとか、唇を呉先生がスミレの花が春の陽射しを爛漫とうけているような笑みで見ていた。
 なんだか好きで好きでたまらないといった眼差しというか。
 今は、ご機嫌斜めなのだろうが――確かに寝室での行為の暴露なんて誰でもされたくはないに決まっている。しかし、狂気の元研修医が「根拠もなく」放った暴言に最愛の人がものすごく傷ついていたので、敢えて泥をかぶる決意で言ってくれた「呉先生の夜の顔」を聞いた最愛の人劇的な精神的な回復を遂げたかを考えると、感謝してもしきれない。
 それに呉先生も――ものすごく恥ずかしかっただろうが――あの爆弾発言が必要な物だったということも頭では理解している。しかし、だからと言ってカラリと割り切れる類いの言葉ではなかったのだろう。
 呉先生はスミレの花の可憐な見てくれとは異なって怒ったら非常に怖い。祐樹や最愛の人は怒らせたことはなかったものの、森技官にものすごい勢いで食って掛かったのを目撃したので、あの言葉の羅列の凶器は――さすがは言葉が商売の精神科出身だと思ってしまったが――出来れば受けたくない。
 ただ、呉先生も森技官に対して一気に怒りをぶつけられなかったのが――森技官が祐樹最愛の人の回復を優先順位の一位としての言動で、そして呉先生も最愛の人の主治医として診ていてくれたので、あの時のあのマンションの中ではああするしかなかったのも理解出来たのだろうが――長引いている原因だろう。
 ケンカは「相手が悪い」と思い込むことによって成立するものではないかと個人的には思っている。先方の気持ちも分かるし、理解も出来る場合だとケンカにならない。
 森技官の「寝室事情の暴露」は森技官が「必要に駆られて」行ったものであることも呉先生は「理解」している。そしてそう踏み切らなければあの時の最大の懸念材料だった手の震えも収まらないかもしれないと森技官が判断した苦渋の「気持ち」も分かっていたのだろう、頭では。
 だからケンカにはならないままに、火種がくすぶっている状態が続いているのだろう。
 今夜、最愛の人が呉先生にさり気なく、そして上手く言ってくれれば良いがと心の底から願ってしまう。
 ただ、口下手な人だけに、どれだけ効果があるか分からないが。しかし、営業マンのように流暢に話すよりは、つっかえつっかえの不器用さで話すほうがこの場合は良いような気もしたが。
「貧血はしていないのですね?」
 ベンチからよろよろとした感じで起き上がった森技官は最愛の人に確かめるような感じの眼差しを送っている。
「はい。その心配はありません。目蓋の裏側は――けっ……正常そのものでしたから。
 それに脈拍などの異常もないです。
 もう一度手首を貸してくださいませんか?」
 最愛の人が「瞼の裏側は血色も良好で」とでも言いたかったのだろう。ただ、森技官は血が苦手なので慌てて言い換えたのは想像に難くない。
 森技官の手首に最愛の人の薄紅色の細い指が回されているが、怜悧で真摯な眼差しとか真剣そうな表情なので嫉妬をする気にもなれない。
「先ほどよりも脈拍が安定してきましたね。多分、ジェットコースターに乗ったことから脈も速くなったのでしょう」
 祐樹最愛の人の涼しげな声がジェットコースターの轟音とか子供達の歓声とか悲鳴に包まれたこの辺りの空気すら冷やしていくような気がした。脈拍とか血圧は緊張したり怒ったりしたら直ぐに数値も上がる。その点は心臓外科所属でもない――というか、外科には大学時代以来縁のない二人でも容易に分かったらしく納得の表情を浮かべていた。
 ベンチから立ち上がった森技官は長身を立ち眩みでも起こった感じでふらついている。
「大丈夫ですか」
 咄嗟に腕を伸ばして腰を支えた。同時に最愛の人は森技官の後頭部を両手で持っている。
 いうまでもなく転倒した場合に一番ダメージを受けるのが頭部なので、それを慮ったに違いないが。
「はい、何とか大丈夫です。
 立ち眩みでしょうね……。時々そうなりますので」
 最愛の人は真摯な眼差しで森技官を見つめている。患者さんに対するのと同じような目の光だった。
「一度、精密検査をお受けになられた方が良いかと思います」
 殺しても死なないような森技官だが、意外と脆いのかもしれない。
「ありがとうございます。そこで相談なのですが……」
 次の言葉の意外さに目を見開いてしまった。





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向こうでは森技官の独白が終わり、そろそろ呉先生と森技官が香川教授を助けるべく頑張ろうとしています。といっても、呉先生はマカロンをやけ食いしている感じですが(笑)

       こうやま みか拝

「気分は、下剋上」<夏>後日談 57

 鮮やかな血色が貧血も起こしていないことを知らせてくれている。まあ、本人も今は元気そうだったので大丈夫だろうが。
「ツレがお手数をお掛けして申し訳ありません」
 呉先生が大学生と思しきスタッフに謝っているのは、恋人の自覚とか責任感からだろうが、面白がっている感は否めない。
「そうですよ。木陰で少し休んだ方が良いかと。熱中症で倒れでもしたら大変です。どうせこの辺りの救急病院も管轄内ですよね。そういう所に搬送されたらお互い気まずくないですか?」
 最愛の人とかの場合も職業がバレたら密かな噂になるだろうが、森技官の場合は「監督省庁代表」として色々指導する立場でもある。逆に言うとそれだけ恨みを買っていたり職員に残業を強いるなりしているに違いないのでこの時とばかりに言われるであろうことは火を見るよりも明らかだ。最愛の人と眼差しを交わして木陰のベンチに取り敢えず座らせること呉先生は「お茶か水買って来ますね」とツバメのように華奢な身体を翻して走って行った。
 森技官の冷たく整った顔が、僅かに引きつっている。
 気分でも悪いのだろうか。
「実は、この近くの私立医大に今査察に入っているのです。まぁ、K大附属病院の救急救命室ではないので、そこには搬送されることはないとは思いますが、油断は出来ません。救急車を呼ぶのだけは止めて下さいませんか?
 それに、田中先生は現役の救急救命でもいらっしゃるわけですし……。それも極めて優秀だと斉藤病院長からも伺っておりますので」
 死ぬほどイヤなのだろう。まあ、気持ちは痛いほど分かる上に森技官の性格を考えれば死んでも嫌――比喩などではなく本当にやらかしそうだ――なのだろう。
 何故か、手首の脈を計りながら心配そうに見下ろしている最愛の人ではなくて――病人とかその疑いの有る人が傍にいる場合に限っては、祐樹よりもその人優先になるのは律義かつ職務熱心な人柄だと知っているので全然気にならない――祐樹の手を握って来たのは内心驚いた。
 普段の関係性とか、心の許し方からして最愛の人の方を選びそうだが。まあ、死ぬとかそういう深刻過ぎる時間ではないからかも知れない。そして救急救命医として斉藤病院長が褒めていたというのはお得意のでっち上げに違いないものの、祐樹が救急救命室でも勤務していることは当然森技官も知っている。そして森技官の認識では最愛の人は心臓外科医限定なのだろう、多分。実は最愛の人も、そこいらの救急救命専門医より知識も経験も持ち合わせているのだが、そのことを知る人間は殆んど居ない。
 ただ、最愛の人も森技官の指が祐樹の手を握っていることに綺麗な澄んだ眼差しに驚きの煌めきを湛えていたが。
「お茶買って来ました。目を開けたままで失神するなんて本当に器用だな……」
 夏の名残りを惜しむかのように蝉時雨がジェットコースターの轟音と混じりあって不思議なシンフォニーを奏でている。子供の笑い声とか悲鳴なども加わって。
 呉先生のご機嫌斜めは割と緩和された感じだった。
「え?失神なんてしていませんよ……。ジェットコースターの効果で幻覚でも見られたのでは?ね、田中先生」
 突然のご指名にも驚いた、しかも未だ祐樹の手をしっかりと握っている。しかも微細に動かしているという謎の仕草だ。
「…………ええ、まあ、そういう見方も出来ますね………その辺りは、見解の相違ということで」
 森技官も――ただ彼の場合、渾身のやせ我慢かも知れないのが厄介だ――生気を取り戻した感じだったし、何よりも今回の最大のテーマは呉先生の怒りを解くというものだったので、これで良いような気がする。
「救急救命医としてもご活躍の田中先生の言葉を信じましょう。
 信じるものは救われるのです、ね、田中先生」
 何だかまだ普段通りに快復していないような気がする。何だかキャラが変わったというか、何枚も被っている猫の一部なのかも知れないが。
「もう大丈夫でしょうが……。せっかくですから呉先生の買って来て下さったお茶で水分を補給なさった方が良いでしょう」
 怜悧で端整な涼しげな声が残暑を緩和してくれるように響いた。と言ってもそんなに大きな声ではないが。
 ただ、祐樹にとってはあらゆる音よりも心を癒してくれるし、何よりも鎮静作用「も」有ると思うのは祐樹だけの贔屓目ではないだろう。
 森技官は何故か未だ祐樹の手を掴みながら反対の手で呉先生の手渡したお茶を彼らしくない一気飲みをしている。
 そして、呉先生と眼差しで会話を交わしているような感触を感じた。ずっと抱いていた違和感の素のような気がする。
 ただ、祐樹が二人を見ていることに気付いた恋人達はさり気なく視線を逸らしている。
「田中先生、次は何に乗りますか。香川教授も何か乗りたいモノがお有りなのではないでしょうか。私はお茶で回復しましたので大丈夫です。体調管理も仕事のウチですから。
 それは、皆さんも同じではないでしょうか?」
 何だかはぐらかされたような気がする。それに仕事面では確かに正論だけれども、今は完全なオフなので論点ずらしをされたような。




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「気分は、下剋上」<夏>後日談 56

「目を開けて失神するとは器用ですねぇ……」
 呉先生がご機嫌麗しさ極まれりと言った感じで笑っていた。
「え?失神……」
 確かに――振動と急降下のスピードのせいで視界が狭くなっていたが――良く見れば森技官の黒い瞳は何も映してはいない感じだった。
 薄紅色の大輪の花のような笑みを浮かべている最愛の人とはその点が大きく異なっているなと思ったのは一瞬で、ついつい職業病が出てしまう。
「念のためにバイタルチェックをお願いします」
 祐樹のただならぬ表情に驚いたように涼やかな目を瞠っていた最愛の人が、隣の森技官の様子を見て冷静かつ端整な感じで脈拍を計っていた。
「大丈夫だ。呼吸も脈拍も……。貧血具合は、降りてからで良いだろう?」
 苦手だとは知っていたものの、そこまで怖がっていたのかと思うと流石に気の毒さを覚えた。
 貧血は爪の色でも判断出来るが、この振動ではチェックしにくいだろう。下の目蓋で見るのが最も早いが、この上下左右に揺れる乗り物という条件下では、いかに祐樹最愛の人の器用さや動体視力が有ったとしてもリスクは免れないことを咄嗟に判断したのだろう。救急救命という点では祐樹の方が場数を踏んでいるとはいえ、最愛の人もかなりの知識と経験の持ち主だ。医学生だった頃からボランティアとして参加していたと聞いている上に、卓抜した記憶力の持ち主なので。
「そうですね。その方が、良いかと、思います」
 話しているだけで舌を噛みそうになる。その点隣の呉先生とか最愛の人はとても楽しそうで、個人の差というのは物凄く大きいのだなと思ってしまう。
 森技官の虚ろな瞳というのは――チラッとしか見ていないが――男らしく整っている分逆に怖かったものの、バイタルが正常ならば大丈夫だろう。
 きっと脳が現実逃避を計った結果だ。もしかして、医学部の学生だった頃の外科の臨床などの苦手なモノはこうやって乗り切っていたのかもしれないなと思いついてしまった。
 隣でバンザイをしている――その方がジェットコースターのスリルは高まる――呉先生は確か手術室で嘔吐をしたと聞いた覚えが有ったが、人の目を非常に気にするタイプの森技官の場合は嘔吐すら自力で律することが出来そうだ。
 普通の人ならそんなことは不可能なのだが、森技官ならその程度は軽くこなせるような気がする。
「そのまま放置して、おいて下さい。本人も、その方が、幸せでしょうから」
 主に子供の歓声とか悲鳴が機体から聞こえる中で、舌を噛まないように気を付けて後ろの最愛の人に告げた。
「分かった。そうする」
 薄紅色の笑みを浮かべた最愛の人は、却って何故こんな楽しい乗り物にこういう風に反応するのか分からないといった感じの眼差しを森技官と祐樹へ交互に向けている。そういう無垢で無邪気な眼差しを見るだけで幸せな気分になったが。
 呉先生はバンザイをした次の瞬間に、何故かまた祐樹の手に手を重ねて来た。こんな不自然なスキンシップをする人ではないので怪訝に思ったが、振り払うようなレベルでもないのでそのままにしておいた。
 握り返すのも――相手が怖がっている人ならともかく――変なのでなすがままに任せておくことにしたが。
 歩くと物凄い距離だったにも関わらず――恐竜の化石イベントで最愛の人が一回で当ててくれたことも物凄く感謝している――ジェットコースターで巡ると直ぐだった。まあ、それだけスピードが出ているということだろうが。
「面白かったですね。また乗りたいです」
 バーを手で上げながら呉先生がスミレ色に煌めく眼差しで祐樹を見ている。
「そうですね。今度は森技官抜きで……」
 最愛の人も、一見華奢な見かけとは異なってかなり握力も体力も持ち合わせてはいたものの、森技官を乗り物から下ろすという作業は手に余りそうな気がしたので、さっさと乗り物から下りて手伝おうと身を翻した。
「お客様大丈夫ですか?」
 大学生らしいバイトが真っ先に飛んできた。この遊園地では建築物の古さを補うかのように若いスタッフが多いような気がする。
「すみません。大丈夫です。私達が責任を持って何とかしますので……。一応は医療従事者です」
 医師だということは明かさない方が良いことは経験則で知っていた。その祐樹の声にホッとした表情を浮かべているからにはこの近くに有ったハズの私立医科大学の学生ではないのだろう。
「ああ、もう終わりましたか……」
 スイッチが入った感じの森技官が普段の冷徹さと不敵な微笑を浮かべている。
 この驚異の回復力というか、順応出来ないものに対してのスルー機能は「官僚様」に相応しいのだろう、多分。
 森技官の実家は産婦人科だそうだが、継がなくて正解だと思う。世間で誤解されがちなのは産婦人科よりも心臓外科の方が出血も多いという点だが、割とお世話になるリネン室の女性の証言では断然産婦人科の方が多いとのことだったので。
 それに、森技官の場合は国民が納めた税金を無駄使いすることにもかなりの抵抗が有る点だけでも評価に値するし。
「一応、安静にしておいた方が良いかと思います。少し失礼しますね。目蓋を拝見するだけですので、動かないで下さい」
 最愛の人の薄紅色の指が森技官の下目蓋を一切の無駄を排した、流れるような動きでめくっている。貧血で倒れられたら非常に困るので、ため息を押し殺しながら視線を紅色の指と目蓋の裏側に向けた。



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「白衣の王子様」番外編は一時間後に更新致します。

       こうやま みか拝

「気分は、下剋上」<夏>後日談 55

 呉先生が何故か祐樹の指をしっかりと掴んでいた。
 これが、ただならぬ表情というか、戦時中に特攻隊としてゼロ戦に乗り込む兵士のような妖気すら感じられる森技官が、祐樹最愛の人の薄紅色の手を掴むのならまだ話は分かる。
 性的なニュアンスではない点は呉先生も同じだったが、隣に座った呉先生は至って楽しそうな笑みを浮かべているのだから、ジェットコースターへの恐怖ではないだろう。
「流石は田中先生ですね。良く分かりましたね。
 そうです。上がる時よりも下りの方が怖いですよね。その時に同居人がどんな表情になるのかとても楽しみなのです。
 その時は後ろを向いて絶対に笑ってやろうと思っています。今だって内心は恐怖に震えていますから。それがピークに達する段階の顔を見て……ああ、デジカメを持って来れば良かったですね……鬱憤晴らしというか」
 それで呉先生のご機嫌が直れば森技官だって願ったり叶ったりだろうが、祐樹の指に――しかも手全体を重ねるという――仕草はどういう意味を持つのだろうか、呉先生の中では。
 まあ、祐樹最愛の人からも見えないし、祐樹の手をいくら触って貰っても減るモノでもないので構わないと言えば構わないのだが、呉先生のスキンシップに――普段はそんなことは全くしない人なだけに――いささかの違和感を抱いた。
 ガタゴトという音と軋む感じが恐怖感を煽るために用意されているのか、この遊園地は古びた感じなので老朽化が進んでいるのかは知らないが、動き出した。
 肩越しに最愛の人を振り返ると、ミニ薔薇が――いや、花屋で売っている大輪の薔薇ではなくて、庭で咲かせた中型(?)の薔薇かも知れない――咲いたような笑みを浮かべている。
 「事件」直後も実感したが、最愛の人を癒すには子供の活気に満ちた生命とか精神と触れ合うことのようだった。
 祐樹的には子供の相手は面倒だし疲れるというのが本音だったが、最愛の人がそれで良いのなら幼稚園でも保育園でも一緒に行く程度は――不審者だと見做されないようにそれなりの理由を考えないとならないが――しても良いような気がした。
 それに、最愛の人が祐樹に光栄にも一目惚れをしてくれた理由が「太陽に似たオーラ」の持ち主だったからだと聞いたことがある。そして「祐樹と居ると周りの人が不幸にならずにすむような気がした」とも。後者は巡り合わせが悪かったからだと単純に思ってしまうが、前者のは、活気に満ちた点――体力的にも、そして今では少し失調気味なものの、精神の躍動感と捉えれば確かにそうかも知れない。
 ただ、勿論祐樹は大人なので子供ほどの活力も精神の躍動感もない。
「ああ、上がって行きますね……」
 呉先生がスミレ色の笑みを満面に浮かべている。ただ、手は祐樹の上に置かれたままだったが。
「一回目の急降下が確かこの辺りだと思いますよ」
 伊達に恐竜の化石当てイベントで園内を歩き回ったわけではない。付け根にまで重なった手を払いのけるような失礼な真似は出来そうにはないが、どういう意図なのかは気になった。
「そうなんですか……。楽しみです」
 肩越しに背後を見て、薄紅色の小ぶりな薔薇のような笑みを浮かべる最愛の人に微笑みを返した。
「今から急降下すると思いますので、舌を噛まないように気をつけて下さいね」
 隣の森技官は血が足りていないドラキュラ伯爵といった風情で、気息奄々たる有様だった。貴族的な冷笑もとても似合う森技官の端整な顔がこんなふうになるのを見ることが出来ただけでもある意味収穫だったが。
 そう言えばドラキュラ伯爵も――映画をちらっと観ただけなので爵位が異なるかも知れないが――黒づくめの服だったし、爵位を持つれっきとした貴族なだけに類似点は有るなと余計なことを考えていると、徐々に乗り物が上がって行って頂点まで達した。
 さあ、ここからが最初のクライマックスだと思うと胸が躍る。そういう意味では遊園地も悪くない。
 呉先生の指がやっと離されたかと思うと、バンザイの恰好になった。まあ、ジェットコースターではこの姿勢の方が楽しめるのも事実だが。
 ガキンというある意味不吉な音がしたかと思ったらいきなりの急降下が始まった。
 その瞬間呉先生と共に後ろをつい見てしまった。
 祐樹最愛の人は大輪の白い薔薇にも似た笑みを浮かべてとても楽しそうにしているので一安心だったが、その隣では「ひぃっ」といううめき声を――何だか十字架とニンニクを突きつけられたドラキュラ伯爵のような趣きだ――上げて後に、端整な顔が何だかデスマスクのように固定された感じになっている。しかも目には何も映していない感じで。
「大丈夫ですかね……」
 一応、気になって精神科医でもある呉先生に聞いてみた。舌を噛まないように注意しながら。
 呉先生は満開のスミレ園を彷彿とさせる笑みに加えて口角をいじわるそうに上げているのが印象的だった。
 精神科医ならどう診るのだろうと、少し気になったが。
 ただ、心疾患などの患者とかではない限り死にはしないだろうが。



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