腐女子の小説部屋

創作BL小説を綴っています。ご理解の有る方【18歳以上】のみ歓迎致します

【再掲】「心は闇に囚われる」

「心は闇に囚われる」 237

「ほう、具体的には?」
 西野警視正の興味深そうな声が車内に響いた。
「一点目は、スライド式の本棚にぎっしりと並んだ本の題名から考えて、あ!もちろんスライド式なので、隠れている所までは分かりませんが、生物学・薬学の専門書が7割で法学関係が3割といった感じでした。
 オレ達と同様に現役の法学部生なのに、少なすぎるなと思いました」
 幸樹が本棚にさり気なく注意を払っていたことは知っている。
「なるほど……。本棚を見ればその人物が興味を持っていることが分かるし、趣味嗜好も大体が把握出来るからな……。法律関係の本よりも生物学や薬学にまだまだ未練があるということか……」
 西野警視正は相変わらず飄々とした口調だけれども感心したような響きも混ざっている。
「流石にスライド式の奥に隠されている本までは分かりませんが……」
 横に座った幸樹の広い肩が面目なさそうに竦められている。
「いや、奥に収納する本は一般的にさほど読まない本か、それとも……人に見られたくない本とか雑誌だろうね。
 例えばアダルトな物とか。大野だって未だ28歳だろう?Hなことが自分でもしたい盛りの高校生の頃よりはマシだろうがまだまだ枯れてはいないお年頃だ……。
 幸樹君は下宿だろう?大野と異なって友人が遊びに来る機会も多そうだし、その手の雑誌は巧妙に隠しているのだろうが、大野はそもそも友達が居なさそうな感じだったので『不用心』にスライドの奥に隠していても全くおかしくない、な」
 「その手の雑誌」が妙に意味有り気に聞こえるのは被害妄想ってヤツかもしれない。幸樹は俺と、そのう……「初めてのHをするために」とその手の人が集まる新宿二丁目までわざわざ出向いて怪しげなお店の親切な店員さんからお勧めのハウツー本を買って俺との初めての夜に備えてくれていたらしい。
 ……そんな夜が来ないかも知れないにも関わらず。
 その雑誌は俺も見たことはないんだけれども、女性のヌードとか男女の絡みなどの雑誌やDVDとは異なって絶対に他人に見つかってはダメなやつだと思う。
 大野のようなボロアパートじゃなくて、防音対策もそれなりに施してあるマンションに下宿している男同士でエロいDVD鑑賞会なんてものが開催されているらしいんだけど、そういう誘いに幸樹は嫌な顔をしていて……今思えば嫉妬なのかな……誘われても行ったことはない。
 そういうのを堂々と開催出来るツワモノだったら、大人のための雑誌やDVDを隠すことはしないだろう。
 けど、幸樹と俺のようなある意味特殊な関係とか、大野の「アカデミックでございます!!」と自己主張しているような人間は普通隠すだろうな。
「少し……窓を開けて良いですか?風に当たって気分転換したいので……」
 赤くなってしまった頬を自覚して、せめて高速道路の強い風で頬の赤みを消したい。
 幸樹の指は「気にするな」っていう感じの信号を伝えてくれていたんだけれども……。
「勿論構わないよ。
 で、幸樹君、二点目に気になった点とは?」
 西野警視正は「その手の雑誌」と発音した時とは異なって真剣そうな響きを飄々とした声に混ぜている。
「こちらの方がより重要かと思いますが、スライド式の本棚の厚みが浅いように思いました。奥の方ではなくて、前面のが、です。
 オレも大野と同じ本を持っています。当然ですよね。講義に使う教科書は担当教授が執筆した専門書なのですから……。
 大野と同じ講義も当然有ります。 
 そして本棚も似たような規格品なのに、何故かオレの本棚には余裕で入って棚に隙間が出来る本がぎちぎちの状態で並べられていました。
 それで計算したのですが、本棚の前面部分が2センチほど足りないのではないかとの結論に至りました」
 幸樹ってやっぱり凄いな。俺だって同じ本を持っているんだけど、そんな細かい点には全く気付かなかった……。
「あの!部屋に微かに臭っていたヘンテコなのって……。龍角散というのど飴?お薬みたいなものを燃やしたらあんな臭いになると思うんですけど……。実際に燃やしたことがないので……あくまで推測なのですケド……」
 幸樹のように理論立てて推理することは俺には出来ない。けど、直感は割と当たると幸樹が褒めてくれるんだけど、今回はあまり自信がない。
「なるほど、生薬を燃やした後ということだね?遼君が言いたいのは……。
 大野も『生薬』という言葉に強く反応していたように思う。
 ただ、室内には燃やした跡などなかったな……。
 蛇足だが、今の法律では素人が物を外で燃やす行為自体を禁止している。
 ま、ウチの署の管轄内でも庭で落ち葉など焚火をしているご老人が居るがね……。
 昔はそういう法律もなかったので不法行為と知らずにしている人が大多数だから一回目はなるべく温厚そうな警官を向かわせて注意をして終わらせる。二回目は厳しく注意をするようにしている。
 しかし、あんな昭和臭たっぷりの、しかも砂利だらけの敷地で焚火でもしていたというのは考え辛いのだが……」
 幸樹は何だか運転席に座っている西野警視正を皮肉めいた感じで見ていた。
 何か考えがあるのだろう。





--------------------------------------------------
二個のランキングに参加させて頂いています。
クリック(タップ)して頂けると更新のモチベーションが劇的に上がりますので、どうか宜しくお願い致します!!

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村



小説(BL)ランキング
2ポチ有難うございました<m(__)m>






本記事下にはアフィリエイト広告が含まれております。






















































腐女子の小説部屋 ライブドアブログ - にほんブログ村




PVアクセスランキング にほんブログ村




「心は闇に囚われる」 236

「あれが大野かい……。
 聞いていたのと異なっていて少し驚いのだが……」
 西野警視正が運転席に座って飄々とした感じで話し掛けてきた。
「俺達だって……。といってもゼミの教室くらいでしか会わないですし、必要事項の伝達くらいしか会話をしたことがないので分からなかったです。
 個人的に話したのは今日が初めてですし。ああ……有吉さんとか麻田さんなどは私語を交わしたことが有ったらしいです」
 ……有吉さんはきっと今頃、K戸大学の医学部かどこかで解剖されているんだなと思うと涙が出そうになった。
 そんな俺の気配を察したのか、幸樹が力付けるように俺の手を恋人繋ぎしてくれた、勿論西野警視正の死角になる位置で。
 「大丈夫だよ。有難う」の意味を込めて幸樹を見た。繋いだ手が気持ち良くて温かくて幸樹の生を実感させてくれるのも嬉しい。
「……相手が女性だからついつい饒舌になってしまったのかも知れないですね。
 あんなにプライドが高くて、何て言うか自分の手柄は自分の物、他人の成果も自分の物という感じだったのは意外です」
 ドラえも〇のジャイアンみたいなメンタリティなんだなって思った。西野警視正がドラえ〇んを知っているかどうかまで知らないんで黙っておくことにしたんだけど。
「いや、私は職業柄、官僚育成大学と揶揄される大学卒の人間を山ほど見てた経験から言うとああいう輩は珍しくないがね。
 『文句を言わずに黙って従っていればいい!手柄は当然自分の物で、失態はノンキャリアの部下のせいにしてトカゲのしっぽ切りをすれば良い。あいつらに代わりは幾らでも居るが、キャリアの私は特別だから』と泊まりの研修会の夜に酒の勢いを借りて言っている人が居たからね。
 そういう人と同じ匂いを感じたな。
 ま、大なり小なりそういう考えを持っている、旧帝大の連中は特に。
 逆にフラットな人間の方が警察組織では上に行く傾向にあるね」
 幸樹が男らしく整った顔に露骨に嫌そうな表情を浮かべている。お父様との確執とか弟の順司君のことを思い出したんだろうな……。
「ちなみに、そういう選民思想の塊のような爆弾発言をした人間は某誘拐事件の犯人の逃亡を許してしまったせいで警察組織から弾かれてパチンコ会社に天下っているよ。
 そういうプライドばかり高くて責任から逃げるような卑怯者は少なくとも警察組織には要らないというのが高寄警視監や龍崎県警本部長の考えだ。私も全くもってその通りだと思っている。
 それはともかくとして、大野からは社会に対する強い恨みを感じたな……。
 科研費が削減されているのは事実なのだが、大野の身の上に起こる全てのことが自分のせいではなくて、国や研究チームに責任転嫁しているタイプだろう」
 幸樹がギュッと寄せていた描いたような眉を開いている。
 お父様と仲が悪いというか苦手意識を持っているようだけれども、この不幸な事件を切っ掛けにして少しでも心の距離が縮まると良いな。
 親子関係にも色々あるんだろうけれども、仲が良いに越したことはないと俺は思っていて、幸樹とお父様も少しは歩み寄れたらこのどうしようもない不幸な事件に一筋の光明が見えるような気がする。
「……そういうプライドの高さはオレも否定しません。しかし、矜持が高いならば、どんな逆境も撥ね除ける気概を持つべきだと考えています。
 それはそうと……どこに向かっているのですか?」
 俺は色々なことが有り過ぎて脳がパンクしてしまったようにボーっとしていたんだけれどもそう言えば車は俺の家でも幸樹の下宿先にも向かっていない。
「いやあ、善は急げと言うだろう?
 この際だから京都まで行って大野の研究チームの人間に話を聞こうかと思ってね。
 ああ、体力的に限界ならば家まで送り届けるけれども……」
 幸樹は繋いだ指に力を込めた。家に帰らずに西野警視正に付き合って研究所(?)に行きたいと指が告げているようだった。
 俺だって、幸樹が摂取してしまった大野の薬の解毒薬みたいな物があるとしたら絶対に!そして一刻も早く幸樹に飲ませたい!!
 そうじゃなきゃ幸樹まで「闇に囚われた」精神状態になってしまって……。いや、それだけは絶対に阻止しないと!!!
「いえ大丈夫です。遼は疲れたのなら家まで……。でもこんな時間に行ってもって……。ああそうか!大野も言ってましたよね。理系は夜も人が居るとか……」
 幸樹の引き締まった唇から出る言葉と裏腹に繋いだ手は俺も一緒に行って欲しいと信号を送ってくるようだった。
「俺は……、今日も色々あり過ぎて。
 疲れたという感覚までが飛んで行ってしまったって感じだから大丈夫です。
 気になったのですが、大野は冷蔵庫に何か隠していますよね……。
 具体的に何を隠していたのかなって」
「ああ、気付いたのかい?
 火事や災害に遭った場合、人間の心理として最も大切な物をまず守ろうとする。
 だから大野も咄嗟に判断したに違いないが、家宅捜査令状を裁判官に認めさせるほどの証拠がないので、具体的なことは分からないな」
 大事な物、か……。
「冷蔵庫の中も気になりますが、二点オレなりに気が付いたことが有って……」
 幸樹の涼し気な声が車内に響いた。




--------------------------------------------------
二個のランキングに参加させて頂いています。
クリック(タップ)して頂けると更新のモチベーションが劇的に上がりますので、どうか宜しくお願い致します!!

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村



小説(BL)ランキング
2ポチ有難うございました<m(__)m>






本記事下にはアフィリエイト広告が含まれております。






















































腐女子の小説部屋 ライブドアブログ - にほんブログ村




PVアクセスランキング にほんブログ村









「心は闇に囚われる」 235

「寝食を忘れるほど研究に打ち込んでいたにも関わらず、科研費という税金が縮小の一途を辿り虐げられた私の話で良ければ……」
 うん?研究ってチームでアマゾンとかに行っていたって話していた。だったら私という個人が「被害者」じゃなくって、私達って普通は思うんじゃないかな?
 大野がボロボロの紙袋と鞄に本を詰めている。カバンはともかく、こんな紙袋を俺が持って外出しようものならお母さんが怒りそうなレベルだ。
 まあ、そういうのは個人の自由なんだけど。
 そう言えば、有吉さんの……葬儀の件で上野に頼みに行った時に偶然大学で会った時に紙袋を取り落とすほど驚いていたっけ……。
 何故あんなに驚いたんだろう、な?
 それはそうと出掛ける用事がホントウにあるんだろう。
 西野警視正も大学ノートと高そうなボールペンを仕舞っていて辞去するような感じだった。
 幸樹は相変わらずのポーカーフェイスで何を考えているのか分からないんだけど、唯一男らしく整った眉が寄っている。
 そして俺は大野の自分勝手さというか得体の知れない気味悪さで早くこのボロアパートから出てさっさと別のところに行きたい気持ちしかなかった。
 大野が出掛ける準備が出来たみたいで、俺達に帰って欲しそうな表情を浮かべている。
 幸樹がすらりと立って「麦茶ご馳走様でした。とても美味しかったです」と頭を下げている。俺も慌てて立ち上がって幸樹に倣った。
「貴重なお話しを伺えて本当に有難うございました。また高寄君経由でご連絡をしても宜しいですか?」
 西崎(仮)記者はミツビ〇商事に行った時とかには名刺交換をしていた。社会人としては直接電話連絡が出来るように連絡先が書いてある名刺は必須なんだろうけれども、西崎っていう名刺を持っていないのかも。
 ただ、大学生の俺でも知っているビジネスマナーを大野は知らないっぽい。
 大野だって名刺を持っている様子はなかったし、西崎(仮)記者が名刺を出さなかったことにも何の不審も抱いていなそうだった。
 ぞろぞろと部屋を出て、年代物の洗濯機が置いてある外廊下に立って階段を下りようとした俺を幸樹が目配せで止めた。
 何だろうと思って大野を見ると、ドアに備え付けられている鍵をしっかり閉めた後に数字錠っていうのかな?
 薄いドアにわざわざチェーンを通して細かい数字をくるくると回していた。
つまり、鍵は二重に施しているようだった。
 とはいえ、本当に薄いドアなんで幸樹のように高校時代にサッカーをしていたとかいう経歴が有れば蹴り飛ばして開けるという荒業があるんだけど……?
 でも!大野の部屋に何故そんな厳重な備えをするのか全然分からない。
 どの程度かは知らないけど遺産が入ったとか言っていたんだけど、銀行の口座に預けていれば通帳と印鑑くらいは大きなカバンに入れて持ち歩けば良いだけだ。
 タンス預金でもしているのかなぁ?
 でも、俺の住んでいる街みたいに敷地も広い一戸建てが並んでいるところだと空き巣の被害も有ると母さんから聞いている。
 けれど、こんなボロアパートに入る泥棒なんて居るんだろうか?
 100パー居ないとは断言出来ないけど、確率的に物凄く低そうだ。
 また、若い女性が一人暮らしをしていて、下着とかを干していたならそれを狙う変態がいそうだけど、小太りの28歳の大野の下着なんてきっと誰も欲しがらないだろう。
「では、また貴重なお話しを伺いに参りたいと思います。本日は有難う御座いました」
 西野警視正が再度お礼を言って頭を下げると、大野は満足そうな笑みを浮かべて階段を下りていった。
 西野警視正や幸樹がそれに続かなかったのは、錆びがボコボコと浮きまくった階段の強度を心配したに違いない。
 成人男性四人が一度に体重を掛けてしまったら倒壊してしまうかもって俺も思った。
「何か大野のイメージが全く違って驚いた……。温和そうな感じの人かと思っていたんだけど、な」
 西野警視正が車を停めたというコインパーキングに歩いて向かいながら幸樹が俺の顔を観察するような感じで見ている。
 といっても全然嫌な感じじゃなくて、疲れていないかとかそういうのを案じる眼差しだった。
 西野警視正は先に行って車のエンジンを掛けてクーラーを全開にしてくれるそうだ。
「うん!そうだね。何だか嫌な感じだったよ。研究もチームじゃなくて一人でしているみたいな言い方だったし。
 それに『部外秘』とか勿体ぶった感じもさ、物凄く偉そうだった。
 お前たちとはレベルが違うって内心では思っている感じでさ。
 それに、上野の秘書役をしていたから少しは尊敬しているのかなって思っていたんだけど、何だかバカにしている感じがした」
 幸樹は節張った長い指をシャープなラインを描く顎に当てている。
「オレよりも直観力が高い遼がそう感じたなら、そうなんだろうな。
 確かにオレもそう感じたしさ。
 上野と示し合わせて、あの悪夢の合宿の宴会を実行したのかと考えていたんだが、もしかしたら……」
 沈思黙考といった感じで言葉を切った幸樹の広い背中を惚れ惚れと眺めててくてくと歩いた。




--------------------------------------------------
二個のランキングに参加させて頂いています。
クリック(タップ)して頂けると更新のモチベーションが劇的に上がりますので、どうか宜しくお願い致します!!


にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村



小説(BL)ランキング
2ポチ有難うございました<m(__)m>






本記事下にはアフィリエイト広告が含まれております。






























































腐女子の小説部屋 ライブドアブログ - にほんブログ村




PVアクセスランキング にほんブログ村





「心は闇に囚われる」 234

「そういう生きた化石のような教授陣に向かって『何がマルクス経済だ!ソ連は一体どうなった!
 マルクス経済学が素晴らしければ今頃ソ連はアメリカを抜いて世界一の経済大国になっている』とか言い放ったとかは聞いています。
 現実を直視せずに机上の空論ばかり言っている人間で、プライドばかり高い人には痛烈な言葉でしょうね。喧嘩をしたというよりも一方的に吠えたというのが本当だと聞いていますが」
 大野の目が何だか嫌な感じの光でギラギラと光っている。
 上野が母校の京都を追われてウチの大学に来たっていう話はホントウだったらしい。
 それはともかくとして「現実を直視せずに」とか「プライドばっかり高い人」の中に大野も含まれるんじゃないかな?
 そして、何より秘書役って感じでお手伝いしていた上野のことを大野は心の底から尊敬していたようにはとても見えない。
 何だかバカにしているっていうか、見下しているって雰囲気だった。
 俺の思考力は幸樹に比べてだいぶ劣るんだけれども、直観力にはちょこっとだけ自信があった。
 上野のエピソードを語る時の目の様子とか分厚い唇を歪める感じなんてさっき文部科学省を馬鹿呼ばわりしていた時と同じような感じだったし。
 それにプライド云々の話だって、ウチの大学に来たのも研究が税金の投入がなかったから仕方なくって感じだったし、ロースクールを出て弁護士になった人がどういう暮らしをしているかっていう基本的なことすらリサーチしていなかったっぽいし五十歩百歩って感じなんだけど……。
「巫女の話は大変興味深かったです。
 薬学の専門家として一家言持つ上野さんは巫女が儀式に使った薬物は具体的にどういった物だとお考えなのですか?
 マジックマッシュルームみたいなキノコ類ですか?それとも薬草、いや儀式で使うなら薬扱いではなくて門外不出の扱いを受けていたのかも知れませんが」
 幸樹が興味深そうな眼差しを大野に向けている。
 マジックマッシュルーム……確か幻覚を見るキノコだって西野警視正と幸樹が言っていた、な?
 今では法律で禁止されているらしいけど、最高にハイって気分になれるらしい。「最高にハイ!」な気分って躁状態もそういう気分らしくて、大野が研究してたとかいう躁うつ病や統合失調症の薬の原料になるかも知れない。
「……アマゾンには絶滅の危機に瀕しているものの多種多様な植物があります。
 マジックマッシュルームなんて、インドネシアに行けばいくらでも手に入る代物でしょう?
 そんなありふれた物に興味はありません。
 そして、私が研究していたのはキノコ類ではありません」
 幸樹が月の光に照り映える日本刀のような鋭い眼差しで大野を見ている。
「なるほど、では生薬ですか?」
 ショウヤクって……合宿で振る舞われたカツオの「たたき」にたっぷりとかかっていたニンニクとか、そして幸樹がほぼ強制的に飲まされた正露〇よりもキツい臭いがする下痢止めの薬も生薬だよな……。
 上野が北の独裁者の国から手に入れたモノではなくって、大野も充分過ぎるほど怪しい。
「ま、そんなような物です。そろそろ出る時間ですので」
 何だかマズいことでも言ってしまった感じでそそくさと鞄の中に本とか筆記用具を入れている。
「お忙しいところ恐れ入りますが、K西学院大学に来られてから上野教授と初めて直接お会いになられたということですか?」
 西崎(仮)記者が慌てたように割って入っている。
「そうです。ウワサでは知っていたので何となく親しみが有りましたが、お会いしたのはこんな大学にお互い都落ちといった感じで流れて来た先のことです」
 はあっ!?
 いや、確かにさ、日本で二番目に偏差値の高い大学に在籍してたのは凄いと思う。でもさ、幸樹と俺は「こんな」大学の学生なんですけど!!
 ちなみに西野警視正も「こんな」大学の卒業生んだけど、それは言っていないから良いとして、そして大野だって今は「こんな」大学の学生だ。
 それなのに幸樹や俺を目の前にして「こんな」とか「都落ち」とかそういう見下した言い方が良く出来るなって呆れてしまった。
 大野って本当に自己客観視が出来ない人間なのか、それとも他人の気持ちにお構いなく話しているのか……?
 いや、両方かも知れないけど!!
 何だか物凄くムカつく。
 年齢的なこともあって上野ゼミでは遠巻きにしていたからそれほど話したことはない。
 けれども、あの悪夢の合宿の時は甲斐甲斐しく皆の世話を焼いていたし、温和な人だと思っていたのに、こんなムカつく人だったなんて!!
「そうですか。取材に協力して頂き有難う御座います。
 私としては大変興味の有るテーマだと思って拝聴しておりましたし、掘り下げ甲斐のある興味深い話でした。
 ですからまたお話を伺いに参っても宜しいでしょうか?」
 幸樹は男らしく整った眉を寄せて何かを考えていて、西崎(仮)記者の挨拶は聞き流しているって感じだった。
 俺はちょっと怒っていたんで、こんなボロアパートからは早く帰りたいなって思っていた。
 昭和臭のする畳敷のアパートだけれども、キチンと掃除が行き届いていてチリ一つ落ちていなかったけど!!
 それでもそんな整理整頓が行き届いた空間でも大野の存在が不快過ぎるんだ!!



--------------------------------------------------
二個のランキングに参加させて頂いています。
クリック(タップ)して頂けると更新のモチベーションが劇的に上がりますので、どうか宜しくお願い致します!!

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村



小説(BL)ランキング
2ポチ有難うございました<m(__)m>






本記事下にはアフィリエイト広告が含まれております。






















































腐女子の小説部屋 ライブドアブログ - にほんブログ村




PVアクセスランキング にほんブログ村




「心は闇に囚われる」 233

 いや誇らしそうなと言うよりも何だか大野が上野教授よりも下に見ているような気持ちも少しだけ滲んでいるような気がするんだよな……。
 これは俺の見間違いとか、大野がゼミの時とか……あの忌まわしい合宿で上野にホテルマンとゲストのような感じで恭しさまで感じる様子で接して来ていたのを俺は遠目に見ている。
 もちろん幸樹もそうだろうけれど……、その時とのギャップでそう感じたのかも知れない。このボ……アパートから辞去して幸樹にも勿論意見を聞く積もりだ。
「学部は異なるとはいえ同じ大学にいらっしゃったのですよね?高寄君と池上君はこの大学のゼミでしかお二人のことを当然ながら見ていません。
 古巣の大学でもお知り合いだったのですか?」
 西崎(仮)記者は大学ノートに要点を書きながら聞いている。
「文系学部は基本的に17時や18時で終わります。その点理系学部や院は夕食、といっても安い定食屋やカップラーメンで食事を済ませて夜の研究が始まります。
 つまり大学に居る時間が圧倒的に多いのは理系学部・院です!!
 三日間も泊まり込みでデータを取ることなど全く珍しいことではないです!!!」
 うーん……、大野はドヤ顔で言っているけど何だかウチの大学の名物のアメフト部の練習量よりもサッカー部の方が多いんだ!とか言って自慢しているような体育会系のノリって感じだ。
 でも、実績は断然アメフト部が上なんだけど……。
 そして理系の学部の方が拘束時間も長いのは知っている。
 でもそんなに威張るようなことじゃなくないか?って思ってしまうのは大野に対する何だか嫌な気持ちを持ってしまったからなのかな?
「上野教授が保守派の論客としてテレビに出られて、出演するとバ……ン組が増えているのは知っていました。
 データは数時間おきに取るのが普通なので深夜番組などは割と観る機会が有りましたので」
 「出演すると番組が増えている」何だか日本語がおかしいな……って思った。
 といっても俺は国語の教師ではないので違和感を抱いただけなんだけど……?
「つまりK都大学時代はテレビでしかご存知なかった、と?」
 大野は再び猫がネズミを見るような嫌な笑みを浮かべている。
「正確にはテレビとウワサですね。知名度『だけ』は有りましたから理系の方へも色々と流れて来ましたので」
 幸樹は粗末な机に身を乗り出している。男らしく適度に筋肉が付いたバランスの良い上半身を食い入るような感じで、だ。
 幸樹が同性にしか興味がないって情報だけしか知らなかったなら、絶対に口説こうというパーソナルスペースだ。
 でも幸樹は俺の恋人だし、幸樹の愛情は全く疑っていない。
 それよりも幸樹が精神の活力を失う、いわばウツっぽくなって何も出来なくなる方が俺は怖い。
 それに俺に向けるような優し気な眼差しではなくて名工が研ぎあげた刃のような鋭い光を宿している。
 きっと大野の話を聞いて幸樹なりに聞きたいことがあるんだろう。
「お時間のないのは良く分かっていますので要点だけお聞きしますね。
 大野教授が法学部の教授と大喧嘩したというウワサは本当ですか?
 そして、そういうウワサは大学中に回ったのでしょうか?」
 大野の細い目が油断のなさそうな光を放っているだけで、分厚い唇は数秒の間動かなかった。
「……そういうウワサは有りましたね。
 高寄君は東京からの下宿してまで通っているのですよね?
 学生運動が盛んだった時代、最も盛り上がっていた大学はどこかご存知ですか?」
 はぐらかすための質問なんだろうか?
 一応、幸樹の質問には答えているけれども、逆に質問を返すっていうのは何だかとっても失礼なような気がする。
 これが大学で講師とか教授とかみたいな上の立場の人だったら「当たり前」なんだけど、大野は歳こそ上だけれども、身分(?)は上野ゼミの同級生だ。
 ウチの大学は二浪くらいまでなら普通に居る。入学式の時には気を遣ったしどう接して良いか分からなかったんだけれども、向こうから「同じ学年だからタメ口で良いよ」と言ってくれたので警護なしで話している。
 でも8歳も違う大野とはゼミの皆も遠巻きにしている感じだったし、大野は上野教授の秘書役みたいな感じになっていた。
 でも、実際は同じ学年なんだから遠慮はしないと今の幸樹は決めたのかも。
 研ぎ澄まされた刃のような眼差しで大野の目をじっと見ている。
「T京大学でしょう?安田講堂とか有名ですよね、日本史で学んだだけですけれども」
 それがどうしたって感じの口調だった。
「そうです。では関西では?」
 大野が先生で幸樹が生徒みたいな感じになっている。
「K都大学ですよね?ただ、時代の風潮というか同調圧力で各大学生が一斉に暴れまくったという感じだったみたいですけれども……」
 ノンポリで有名なウチの大学でも建て替え前の昔の校舎には「ゲバ棒・ヘルメット禁止」とかいう警告文が書かれた物が釘で留めてあったらしい。張り紙だと破られてしまうから鉄かなんかにペンキで。
「K都大では今でも共産主義万歳とか言っている化石のような教授が居るらしいですよ。
 しかし、上野教授は……」
 大野も理系と文系の壁はあっても上野のことを何か知っているらしい口振りだった。
 幸樹はこれを聞きたかったのかな?



--------------------------------------------------
二個のランキングに参加させて頂いています。
クリック(タップ)して頂けると更新のモチベーションが劇的に上がりますので、どうか宜しくお願い致します!!

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村



小説(BL)ランキング
2ポチ有難うございました<m(__)m>






本記事下にはアフィリエイト広告が含まれております。
























































腐女子の小説部屋 ライブドアブログ - にほんブログ村




PVアクセスランキング にほんブログ村




このブログには
このブログにはアフィリエイト広告を使用しております。
Twitter プロフィール
創作BL小説を書いています。ご理解の有る方のみ読んで下されば嬉しいです。
最新コメント
アニメイト
ギャラリー
  • 有難うございます!
  • 有難うございます!
  • 遅ればせながら
  • お詫びとかお知らせとか
  • Happy New Year!
  • 気分は下剋上 クリスマス編 3 (2023年)
  • 有難う御座います~!!
  • 気分は下剋上 クリスマス編 2 (2023年)
  • 気分は下剋上 クリスマス 1 2023
人気ブログランキング
にほんブログ村
カテゴリー
資産運用
楽天市場
  • ライブドアブログ