「宝塚のサービスエリアは割と最近出来たようなので、もしかしたら対策が講じられているかもしれませんよ。ただ、貴方なら類推は可能でしょうが」
これ以上のヒントを出すと正解に辿り着かれてしまうかもしれないなと思いつつ、サービスエリアに入るために走行車線から変更した後にスピードを緩めつつ宝塚サービスエリアの近代的な建物を横目で見ながら広大な駐車場へ車を停めた。
「裕樹は直ぐに食事を摂りたいのか?」
全国的に有名なコンビニエンスストアも敷地面積は街中よりもかなり広く取ってあるのを珍しげに見ていた最愛の人が無邪気に弾んだ声で問いかけてくる。
すっかり夏の計画に気もそぞろといった感じで裕樹の方が明石で鯛飯を食べ、彼はおやつ程度の明石焼きのみだったことすら何だか忘れていそうな様子が普段の最愛の人の明敏さや思慮深げな佇まいとは異なっているのも却って好ましく感じてしまったが。
こういう面も持ち合わせていることを知っているのはこの世に裕樹しか居ないので。
「それほど空腹ではないので、先にカブト虫やクワガタが出没しそうなところに参りますか?」
夜のサービスエリアーー昼間なら道後温泉とか昨日とかに立ち寄っていたので最愛の人も体験済みだーーの雰囲気を物珍しそうに切れ長の目を見開いていた彼は助手席のシートベルトの解除ボタンを心急くような弾んだ動作で外しているーー運転席に座っているので見えないものの気配で分かってしまってーー唇がついつい緩んでしまった。
大型トラックとか夜行バスのような普段の生活では余り見る機会のないーー最愛の人の行動範囲は基本的に徒歩圏内で事足りていたし、厚労省に行く時も新幹線利用が一番便利だったのでーーなどの大型車両の駐車スペースがほぼ埋まっている様を一瞥してから、車から降りてドアキーを押した裕樹の方へと静かな足取りながらも心が弾んでいるのが分かってしまう優雅な感じで。
大型車両用のスペースよりも裕樹達のような一般車両の方が建物に近い配置なのはどこのサービスエリアでも同じだろうが、そして道後温泉に行った時に貸し切りのバスを利用したのでその辺りのことは最愛の人も分かったらしいが、夜のサービスエリアは昼間とは異なった感じの静謐な混雑振りが珍しそうな感じで周りを見回している無邪気な表情も花火の残り香と相俟って「健全な」ドライブデート「しか」していない、付き合って間もない初々しい雰囲気を漂わせている肢体や表情も魅惑に富んでいたが。
この際同性同士という点は除いて考えるとしても、昨夜の妖艶かつ淫らに咲き誇った大輪の花のような趣きも捨て難いが、今は後部座席に大切そうに置かれた清楚なピンクの薔薇とかラムネの瓶のような雰囲気を醸し出している。
「穴場はね、建物よりもこちらです、よ」
裕樹が手で指し示すと山の迫っている感じの一角の方に弾んだ感じの視線を当てていたので辺りにこちらに注意を払っている人の目がないことを確認した上でそっと手を繋いで歩みを進めた。
「喫煙スペースとも関係がなさそうだ、な。後は何だろう?」
夏休みの観察絵日記をーー宿題だから無理やりしていた裕樹などと異なってーー心の底から楽しんでいる小学生のような感じの小さな、しかし心の弾みは充分伝わってくる声で裕樹を見上げる最愛の人の無垢な煌めきを湛えた表情を自ずと溢れる慈愛のこもった笑みを浮かべて視線を絡めた、指だけではなく。そして裕樹が意味を込めて上を見上げると最愛の人も倣った感じで頭上の遥か上にあるライトを見た。
「集光性……か、な。図鑑には小さな文字で書いてあった。生物学的には『正の走性』だろうが。
ああ、正解でも答えなくて良いので。仮説が正しいかどうかは夏に検証するので」
裕樹が答えようとしたのを遮るように最後の方はやや早口になっていた。
こういう些細な楽しみを重ねることが出来るのもドライブデートの醍醐味だろう。
食事はまだだったが、一応の締め括りとして、周りに人の気配がないことを確かめた上で触れるだけのキスを交わした。朧な星の光と煌めくライトの光に照らされながら。

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これ以上のヒントを出すと正解に辿り着かれてしまうかもしれないなと思いつつ、サービスエリアに入るために走行車線から変更した後にスピードを緩めつつ宝塚サービスエリアの近代的な建物を横目で見ながら広大な駐車場へ車を停めた。
「裕樹は直ぐに食事を摂りたいのか?」
全国的に有名なコンビニエンスストアも敷地面積は街中よりもかなり広く取ってあるのを珍しげに見ていた最愛の人が無邪気に弾んだ声で問いかけてくる。
すっかり夏の計画に気もそぞろといった感じで裕樹の方が明石で鯛飯を食べ、彼はおやつ程度の明石焼きのみだったことすら何だか忘れていそうな様子が普段の最愛の人の明敏さや思慮深げな佇まいとは異なっているのも却って好ましく感じてしまったが。
こういう面も持ち合わせていることを知っているのはこの世に裕樹しか居ないので。
「それほど空腹ではないので、先にカブト虫やクワガタが出没しそうなところに参りますか?」
夜のサービスエリアーー昼間なら道後温泉とか昨日とかに立ち寄っていたので最愛の人も体験済みだーーの雰囲気を物珍しそうに切れ長の目を見開いていた彼は助手席のシートベルトの解除ボタンを心急くような弾んだ動作で外しているーー運転席に座っているので見えないものの気配で分かってしまってーー唇がついつい緩んでしまった。
大型トラックとか夜行バスのような普段の生活では余り見る機会のないーー最愛の人の行動範囲は基本的に徒歩圏内で事足りていたし、厚労省に行く時も新幹線利用が一番便利だったのでーーなどの大型車両の駐車スペースがほぼ埋まっている様を一瞥してから、車から降りてドアキーを押した裕樹の方へと静かな足取りながらも心が弾んでいるのが分かってしまう優雅な感じで。
大型車両用のスペースよりも裕樹達のような一般車両の方が建物に近い配置なのはどこのサービスエリアでも同じだろうが、そして道後温泉に行った時に貸し切りのバスを利用したのでその辺りのことは最愛の人も分かったらしいが、夜のサービスエリアは昼間とは異なった感じの静謐な混雑振りが珍しそうな感じで周りを見回している無邪気な表情も花火の残り香と相俟って「健全な」ドライブデート「しか」していない、付き合って間もない初々しい雰囲気を漂わせている肢体や表情も魅惑に富んでいたが。
この際同性同士という点は除いて考えるとしても、昨夜の妖艶かつ淫らに咲き誇った大輪の花のような趣きも捨て難いが、今は後部座席に大切そうに置かれた清楚なピンクの薔薇とかラムネの瓶のような雰囲気を醸し出している。
「穴場はね、建物よりもこちらです、よ」
裕樹が手で指し示すと山の迫っている感じの一角の方に弾んだ感じの視線を当てていたので辺りにこちらに注意を払っている人の目がないことを確認した上でそっと手を繋いで歩みを進めた。
「喫煙スペースとも関係がなさそうだ、な。後は何だろう?」
夏休みの観察絵日記をーー宿題だから無理やりしていた裕樹などと異なってーー心の底から楽しんでいる小学生のような感じの小さな、しかし心の弾みは充分伝わってくる声で裕樹を見上げる最愛の人の無垢な煌めきを湛えた表情を自ずと溢れる慈愛のこもった笑みを浮かべて視線を絡めた、指だけではなく。そして裕樹が意味を込めて上を見上げると最愛の人も倣った感じで頭上の遥か上にあるライトを見た。
「集光性……か、な。図鑑には小さな文字で書いてあった。生物学的には『正の走性』だろうが。
ああ、正解でも答えなくて良いので。仮説が正しいかどうかは夏に検証するので」
裕樹が答えようとしたのを遮るように最後の方はやや早口になっていた。
こういう些細な楽しみを重ねることが出来るのもドライブデートの醍醐味だろう。
食事はまだだったが、一応の締め括りとして、周りに人の気配がないことを確かめた上で触れるだけのキスを交わした。朧な星の光と煌めくライトの光に照らされながら。
《了》

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◇◇◇
都合により、一日二話しか更新出来ないーーもしくは全く更新出来ないかもーーことをお詫びすると共に、ご理解とご寛恕をお願いいたします。
都合により、一日二話しか更新出来ないーーもしくは全く更新出来ないかもーーことをお詫びすると共に、ご理解とご寛恕をお願いいたします。
諸般の事情で、クライマックス近くにも関わらず中断してしまっていた「気分は、下剋上」夏 ですが(プロットは流石に覚えていましたが、ちょっとした登場人物の名前などその場で思いついた名前とかは忘れてしまっていたため、復習に時間がかかりましたが、「ドライブ~」か「震災編」が終了次第再開する予定ですのでもう暫くお待ちくだされば嬉しいです。
あと、熱烈リクエストがあった「蛍の光の下のデート」も超短編で書こうかと目論んでいます!ただ、ストーリー性が強いのは「夏」なので、そちらを優先したいのですが、予定は未定(泣)
あと、熱烈リクエストがあった「蛍の光の下のデート」も超短編で書こうかと目論んでいます!ただ、ストーリー性が強いのは「夏」なので、そちらを優先したいのですが、予定は未定(泣)
最近またリアル生活の変化でバタバタしてしまいまして更新時間がまちまちになってしまい申し訳ありません。
ただ、「ドライブデート」が終わったので、明日からは「夏」を更新する予定です。
ただ、「ドライブデート」が終わったので、明日からは「夏」を更新する予定です。