腐女子の小説部屋

創作BL小説を綴っています。ご理解の有る方【18歳以上】のみ歓迎致します

気分は~ とある金曜日の日常

気分は下剋上 とある金曜日の出来事 48

 オレンジ色に煌めくマンゴーをナイフとフォークを優雅に動かして薄紅色の花のような唇に運んでいる最愛の人の煌めく微笑を浮かべている。
「投資信託も売り出している会社によって異なるけれども一週間後くらいには現金で出金出来るシステムだ。株式も売却申し込みをして約定(やくじょう)、つまりその値段で売れた場合は三営業日以降に現金化出来る。このシステムはNISAでも普通に税金が掛かる特定口座でも同じだな」
 祐樹も新しく運ばれて来た「山崎」を呑んだ。
「要するに何が何でも60歳まで貯めると決めた人以外はiDeCoよりもNISAの方がお勧めということですね?先ほど貴方は1万円儲けた場合、NISA口座だと無税で特定口座でしたっけ?とにかく税金が掛かる口座だと20%の税金が引かれるということは8千円しか手残りがないということになるのですよね。だったら前者の(ほう)が絶対にお得ですよね。私も口座にいくばくかのお金は有りますし、証券会社に口座を開けば良いのですか?」
 最愛の人は大好物の苺を薄紅色の唇に運んでいる。
「証券会社はたくさん有るが、NISA口座を開設出来るのは一社だけだと決まっている。株式を売買する時に手数料が必要な昔ながらの会社もあれば、ネット証券会社のように基本手数料が無料という場合もある。今ではネット証券会社の(ほう)が主流みたいだな」
 手数料無料!これも祐樹には魅惑的な響きだ。このバーは注文したら当然ながらした分だけお金が取られる。店内の落ち着いた雰囲気や居心地は最高だし、最愛の人が主に食べているフルーツなどは全てが熟してからもいで来たのかと思うほどに美味だ。しかし、クラブラウンジは食べ放題・吞み放題という点が祐樹には堪らないほどの美点だと思っている。
「ネット証券にしようと思います。しかし、株式投資など全く分かりませんが。上がったり下がったりしますよね?」
 マンゴーがよほど気に入ったらしく最愛の人は黄金色に煌めく果実を唇へと運んでいる。
「まず投資は余剰資産ですべきものだ。つまり無くなっても良いと思えるお金を幾らまでと自分で決めることが大切だな……」
 マンゴーの果汁に濡れた唇が煽情的な煌めきを放っている。最愛の人はアメリカで稼いだ莫大な資産をPB(プライベートバンク)で運用していると聞いている。病院からも当然お給料を貰っているので、順調だと聞いている資産運用も「無くなっても良いお金」つまりは生活費に困らないという判断なのだろう。祐樹も給料受取口座に給料として入金されていつの間にか貯まっているお金を概算で思い浮かべた。
「無くなっても良いというのはやはりそれだけのリスクが有るからですか?」
 最愛の人は苺のカクテルを花のような笑みを浮かべた唇に近づけている。
「最悪無くなるかも知れない。歴史的に見ても大恐慌やリーマンショックなど株価などが大きく下落している」
 山崎の芳醇な味を楽しみながらなるほどと思った。
「大恐慌って二人でデートがてら観に行った『タイタニック』と『鬼退治アニメ・遊郭編から刀鍛冶』の二本立ての時、『タイタニック』のヒロインの富豪の婚約者が財産を失って自殺したとヒロインは語っていましたよね。『新聞で読んだ』とか。ヒロインが恋人と逃げても逆上してピストルで撃った後に逃げ延びられてしまったと判断したら引くくせに、財産を全て失ったら自殺するのか……と、かなり残念というか人間の心の闇を垣間見た思いでした。私は医師免許剥奪(はくだつ)のリスクのある刑法違反をしないように気を配っていますので多分一生食べることに事欠かないと思います。ですから口座が空になっても平気だろうと思いますが、貴方が居なくなる(ほう)が自殺したくなると思います」
 素直な気持ちを言葉にして紡いだ。最愛の人は艶やかな眼差しに朱を刷いたような笑みを浮かべている。
「贅沢な暮らしに慣れている男性だったから……その高すぎる生活水準を落とすことに耐えきれなかったのではないか?人はなかなか生活水準を落とすことは難しいと読んだことがあるし。年収2千万円の人が定年退職して退職金も水準以上に貰っていて、年金も受給しているのに老後破産したというケースも良く読む。現役時代と同じようにゴルフだの海外旅行だと遊び歩いて……、しかも数千万円の退職金が有るから大丈夫だとか思ってお金を使いまくっていると無くなったとか」
 そういう記事は祐樹も読んだ覚えがある。「タイタニック」の婚約者については大好きだった婚約者は所詮、スペアを見つければ良い程度にしか思っていなかったのだろうなと薄情にも程があると祐樹的には思っていた。
「宝くじで億単位当たった人が不幸になりやすいという統計もあって……難しい問題だな。宝くじの場合は億以上の当たりを引いたらまずは税理士と弁護士に相談に行くのが良いらしい」
 え?と思った。
「税理士の先生は税金のプロなのでまだ分かりますが、弁護士は必要なのですか?法律問題などは絡まないと思うのですが……」




--------------------------------------------------
二個のランキングに参加させて頂いています。
クリック(タップ)して頂けると更新のモチベーションが劇的に上がりますので、どうか宜しくお願い致します!!

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村



小説(BL)ランキング
2ポチ有難うございました<m(__)m>






本記事下にはアフィリエイト広告が含まれております。
























































腐女子の小説部屋 ライブドアブログ - にほんブログ村




PVアクセスランキング にほんブログ村




気分は下剋上 とある金曜日の出来事 47

「あ、グラスが空ですね。次は何を注文しますか?」
 彼が立て板に水といった感じで説明してくれている間もグラスを薄紅色の唇を付けていた。何をオーダーするか一応聞いたが祐樹の推測は合っているハズだ。視線でスタッフを呼んだ。
「私は同じモノで、貴方は?」
 彼は間髪を入れずといった感じで薄紅色の瑞々しい唇を開いた。
「同じ物をお願いします。あと、フルーツの盛り合わせも」
 よほどマンゴーが気に入ったらしい。
「畏まりました」
 最近は滅多に吸うことのなくなったタバコの銘柄はずっと同じで祐樹はあれこれと考えるのが面倒くさいからだと自己分析していた。しかし、心理学に興味のある医師や看護師に「同じ銘柄をずっと買い続けているのは恋人も一人と決めて浮気はしないタイプだ」と複数人から言われた。その時はこの人と付き合っていたのでとても嬉しかったのを覚えている。
 大学や研修医時代にはゲイバー「グレイス」に行ってその夜限りや身体の相性が合った人とは一か月ほど付き合ってドン引きして逃げるということを繰り返していた。今考えれば欲望の解消がメインだったとはっきりと分かる。性的な少数派の差別は止めようというのが昨今の風潮だけれども、祐樹の性的嗜好と同じ人は精神的に不安定な人が多くいたのも事実だった。あくまでもデータを取ったわけでもない単なる体験なので個人的な見解に過ぎないが。家バレを恐れてアパートに毛の生えたようなマンションは絶対に教えなかったのに、ストーカーそのものといった感じで家の近くで待ち伏せされたこともあった。会社員を名乗っていたので職場はバレなかったが。その時は「グレイス」の常連だった杉田弁護士を介してきっぱりと言ってもらった覚えがある。これ以上続けると警察に被害届を出したり訴訟も起こすと言ってもらったりした。専門家を介入させたのだから料金は発生するだろうと祐樹は思っていた。
「被害届も訴訟も実際に行ったらもちろんお金は貰うんだけどね、実際そうならなかったのだからお代は良いよ。いや、モテる人は色々苦労が絶えないね」
 普段の飄々とした口調と可笑しそうな表情で言ってくれた。
 他にも「一緒に来てくれないと手首を切る」とカッターナイフを持ち出して、明らかに刃物の傷痕が何本も有る手首に当てられたこともあった。何とか宥めすかしてカッターは取り上げたが。祐樹が精神的におかしい人にアレルギーを持っているのはそういう過去が有ったからだ。杉田弁護士が介入してくれた人は「グレイス」を出禁になったと聞いている。ただ「グレイス」の近くには同じような店も多数有るのでウワサは入って来る。「グレイス」では「店内で口説き禁止」という珍しいルールがある。祐樹などはコースターに電話番号などを書いて筆談をしていた。もちろんバーデンなどに見つかると出禁になっても仕方のない行為だが、要領の良さも長所だと自任している祐樹は一度たりとも露見していない。常連客も単に会話したい時は「グレイス」に来店してそう(・・)いう(・・)出会い目的は他店へと行くのが一般的だと聞いていた。少数派の性的嗜好を持つ人間は限られているのでかなり正確なウワサが入って来る。自殺すると騒いだ人もストーキングをした人も面食いの祐樹が選んだ男性なのでケロっとして他の男性と付き合っては修羅場を演じては次の男に行くらしい。
 祐樹が「グレイス」に入り浸っている時に「一人の恋人と長く付き合うタイプ」と言われても全くピンと来なかっただろうなと苦笑いしてしまう。そして最愛の人も同じ銘柄を選びがちだ。デートの時は「午後の紅茶」ミルクティを愛飲しているし、カクテルも同じモノを頼むことが圧倒的に多い。彼も「恋人は一人」と思い定める人だ。
「iDeCoは基本的に60歳まで引き出して使うことが出来ない。私達のように給料がある一定以上ある場合は全く問題がないのだけれども、自営業などで急に現金が必要になる人には不向きだな」
 運ばれて来たイチゴのカクテルを美味しそうに吞みながら教えてくれた。
「そうなのですか?年金にプラスアルファのお金を積み立てる仕組みだとのことですから60歳以前で引き出せないのは当然のような気が致します」
 自営業でなくとも友達の結婚式が月に三回も有ったりお葬式が続いたりしてお財布がピンチだと看護師から聞いた覚えもある。そういう時には貯金から捻出するのだろうが、それでも足りない時にiDeCoで積み立てているお金が引き出せないと最悪カードのキャッシング機能とか消費者金融で借りるしかないだろう。自分のお金を積み立てているのに借金で賄うのも何か違う気がする。
「NISAの場合は投資信託とか株式を売ってお金に換えて受け取ることが出来るのでしょうか?先ほど1万円の売却益が非課税になると仰っていたので可能な気が致しますが?」




--------------------------------------------------
二個のランキングに参加させて頂いています。
クリック(タップ)して頂けると更新のモチベーションが劇的に上がりますので、どうか宜しくお願い致します!!

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村



小説(BL)ランキング
2ポチ有難うございました<m(__)m>






本記事下にはアフィリエイト広告が含まれております。






















































腐女子の小説部屋 ライブドアブログ - にほんブログ村




PVアクセスランキング にほんブログ村




気分は下剋上 とある金曜日の出来事 46

「年金制度が問題なのだろう。あれは現役世代の出したお金が年金受給者に回っているという仕組みだから。昔は人口ピラミッドが正真正銘のピラミッド型になっていただろう?今は(つぼ)型になっていて、これは現役世代よりも年金受給者が多い典型的な少子高齢化社会だ」
 少子高齢化社会だということは祐樹も知っている。香川外科に入院して手術(オペ)を受けてQOL(生活の質)の劇的な向上を望む患者さんは高齢者が多いのでさしたる問題ではない。けれども病院内では産科や小児科が打撃をもろに食らっていることは小児科の浜田教授からも聞いていた。
「要するに私達を含む現役世代の人間が高齢者を……言い方は悪いかもですが養っているということですか?間接的ではありますが」
 朝のニュースなどは見ている祐樹だったが、夜に放映される時事問題を解説する番組は勤務中なので見ていない。最愛の人は定時に上がって祐樹のために家事をするのが何よりも楽しいと言ってくれている。嘘は()けない人だし、休日に自宅で寛ぐデートの日は本当に嬉しそうに食事を作ってくれたり一緒にDVDを観る前にいそいそとポップコーンを作ってくれたり飲み物を用意してくれている。
 そして「祐樹がこんな物を気に入ってくれるか全く分からないけれども」と言って店で売っている品物よりも手の込んだ手編みのセーターやマフラーを編んでくれた。そういう作業をする時にはテレビを流しっぱなしにすると言っていた。ドラマも観ているらしいけれども彼は経済動向により興味を持っているのは知っているのでそういう番組も記憶しているのだろう。
「そういえば高齢者をターゲットにした『オレオレ詐欺』の主犯格が『年寄りはタンス預金で貯めこんでいるだけで使わないから経済が回らない。逆に俺たちが使って経済を回す役割を負っている』と盗人猛々しい供述をしていたとか読んだ覚えがあります。詐欺はもちろん犯罪ですけれども、貧困にあえぐ若者は高齢者のせいでとか思っているようです。年金を現役世代が担う役割を果たしているからという側面もあるのでしょうね」
 最愛の人は翡翠のように煌めくメロンをフォークで薄紅色の唇に運んでいる。
「そうだな。だから、老後のお金を年金以外にも作って欲しいという意図もあって税金が免除するのだろう」
 メロンの爽やかな甘さを堪能しながら彼の言葉に違和感を抱いた。
「株取引で税金が免除されても……私なら先ほどの例えで1万円の儲けが出た場合何かに使ってしまいそうですが?」
 彼が珍しく悔いているような表情を浮かべてフォークもお皿に置いている。歩く知識の宮殿のようだと祐樹が感心している人だけれども、彼はそういう頭脳をひけらかすような言動を取ったこともないし「何でこんなことを知らないのか」という表情を浮かべたことは皆無だ。むしろ祐樹に知識を話すのを遠慮しているような感じだった。もちろん専門の心臓外科については別だけれどもそれ以外は質問したら的確な答えを返してくれる。もしかしたら祐樹が他愛ない冗談を言って最愛の人を笑わせる役割を担っている。彼は英語はともかくとして日本語では冗談が苦手なので知識を祐樹に話すことで会話のシーソーが地面と水平になるとでも考えているのかも知れない。
「基本的には長期の積み立てが基本なのだ。毎月の積み立てで老後資金を作ろうというのが真の目的で無税になっていると考えている。例えば月3万円でも20年間積み立てれば……」
 その程度の暗算は出来る。
「720万円になりますね」
 薄紅色の唇が花の綻ぶような笑みを浮かべている。
「NISAの場合、選ぶ金融商品によって利回りが異なる。祐樹は以前話した72の法則を覚えているだろうか?」
 彼は優雅な動作で首を傾けて祐樹を見ている。
「はい。金利によって元手(もとで)が倍になる時間が分かるというものですよね。例えば利率9%だと8年で倍になるという?」
 最愛の人は夜に咲き誇る満開の薔薇のような笑みを浮かべている。
「覚えていてくれて良かった」
 あまり興味のないことや、どうでもいいことは即座に脳の中のゴミ箱に入れる祐樹だけれども彼の言葉は殆ど覚えている。完璧に暗記しているとは言い難いのが悲しいが……。
「9%の利回りを叩き出す金融商品などはなかなかないのだけれども、6%なら12年で倍になるし、3%なら24年だな。先ほどは株で例えたので分かりにくかったと思うのだけれども投資信託なら毎月積み立てをして元本と値が上がった分を無税で受け取ることが出来る」
 最愛の人が愛おしそうにルビーのような苺を唇に運んでいる。
「iDeCoとはどう異なるのでしょうか?」
 祐樹は考えるのが面倒だし、第一そんな時間の余裕はなくて給料の残りが銀行口座に貯まっていくだけだ。
「iDeCoは厚生年金とか国民年金以外に積み立てて年金受給年齢になった時に引き出せるものだな。そしてこちらも無税なのでお得と言えばお得だ」
 最愛の人が立て板に水といった感じで紡ぎ出す唇は本当に水分を含んだ薄紅色の花のように綺麗だ。
「iDeCoとNISAならどちらがお勧めなのでしょうか?どちらも貯めておくことに越したことはないでしょうが……」




--------------------------------------------------
二個のランキングに参加させて頂いています。
クリック(タップ)して頂けると更新のモチベーションが劇的に上がりますので、どうか宜しくお願い致します!!

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村



小説(BL)ランキング
2ポチ有難うございました<m(__)m>






本記事下にはアフィリエイト広告が含まれております。














































腐女子の小説部屋 ライブドアブログ - にほんブログ村




PVアクセスランキング にほんブログ村



気分は下剋上 とある金曜日の出来事 45

「このマンゴーは宮崎県産の『太陽のタマゴ』と呼ばれる物だそうです。その中でも全体の5%しかない最上級の『太陽のタマゴ赤秀品』しか使っていないと申しておりました」
 最愛の人は怜悧な顔に更に興味を惹かれた表情を浮かべている。
「それはこのホテルなどの特殊なルートではなくて一般人でも購入可能ですか?」
 女性スタッフは頬を微かに染めているのは見なかったことにしよう。最愛の人は自分の容姿に無頓着なのも祐樹的に好ましいのは事実だし、彼は異性に全く関心を示さないのだから。
「可能だそうです。インターネットで通信販売もされているようです。宜しければこのメモをお使いください」
 外国人も良く見るホテルなのできっと英語も堪能なのだろう。ネットとか通販という略語を使わないのがその証拠のような気がした。恭しく差し出された紙片を薄紅色の長い指で受け取っている。
「有難うございます。家でも注文したいと思います」
 メモに視線を遣ってから大切そうに名刺入れに仕舞っている最愛の人のいそいそとした優雅な指の動きに見惚れてしまう。名刺入れに入れる前にメモを見た人が即座に暗記しているのは知っている。メモを返さないのは祐樹に指摘されて初めて自覚した記憶力の良さが人並み外れている点をあまり人に知られないようにするためだろう。そして、メモを返してしまっては女性スタッフの厚意をムゲにしたと思われるのを避ける意図に違いない。
「マンゴーは切っただけではこんな綺麗な形にならないですよね?メロンなどは包丁で切ったら直ぐに食べることは出来ますが……」
 スタッフが去った後にマンゴーを眺めていると素朴な疑問が頭に浮かんだ。
「それはそうだな。マンゴーは(たね)も大きいので、それを()けて二等分に切るのだ。そして皮ぎりぎりの所まで綺麗に切れ目を入れて、皮の部分を持って裏から押し出す感じで、くるっと反転させればこういう形になるな」
 屈託のない笑顔と楽しそうな口調に思わず笑みを浮かべてしまう。
「ああ、なるほど、二センチの正方形を作るイメージで切れ目を入れるのですね」
 皿に載ったマンゴーの大きさは目分量でその程度だ。そして反転させてより美味しそうに見せる点も流石だなと思った。最愛の人の博覧強記ぶりも脱帽モノだ。ちなみにマンゴーをマンションで食べた記憶はない。祐樹が食べるから手の込んだ料理を作っていると最愛の人は言ってくれていて、一人暮らしの時にはバーモンド・カレーを一箱買ってきて一度に全部使いきってカレーを作り、無くなるまで三食食べ続けても全く平気だったと聞いている。食事は栄養を摂るための手段だと割り切っていたらしい。彼が日本で一人暮らしをしていたのは大学生までで、その後はアメリカに行って現地で一人暮らししていた。かの地で外科医としての名声を積み上げていたので、元患者さんにでも貰ったのかも知れない。大学病院の悪しき風習として執刀医に金品を渡せば手術(オペ)も全力で執刀してくれるという患者さんやそのご家族の思い込みが蔓延(まんえん)していた関係上、金品は何が何でも謝絶という姿勢を貫いている彼だが、アメリカでは手術(オペ)成功のお礼に食事をご馳走になることは病院の慣習だったらしい。心臓に負担が掛からないように自家用の大きな船で産油国からやって来た患者さんの豪華客船とも見まがう船上で名だたるホテルの(グラン)シェフから引き抜いたお抱えの料理人が作った料理を供されたことも度々あるらしい。手術の前ではなくて患者さんの望むような心臓になった後だと、感謝の意味を込めた褒賞なので意味は全く異なる。そういうアメリカ時代だけにマンゴーも元患者さんに貰ったのかもしれない。
「そうだな。その大きさが最も美味しそうに見えるし食べ易いので……」
 全体の5%しか選ばれないと聞いたら先ほどよりも芳醇な甘さが増したように感じてしまう。
「ところで、新NISAは良く聞くのですが、具体的にどういうモノなのですか?資産運用とかお金にまつわることを病院関係者に貴方の名前で発信する前に私も一家言持ちたいなと思いまして……。貴方ほどの深い知識は望むべくもありませんけれども……」
 最愛の人が切れ長の目に怜悧な煌めきに変わった。
「NISA制度が出来る前は株取引で売却益が出た場合、20%の税金が掛かったのだ。詳しくは震災復興税も加算されるけれども、その端数は計算に邪魔だからこの際無視することにする。例えば1万円の儲けが出た場合は」
 税金……、研修医になった時に医局の先輩から真顔で「確定申告は絶対にしろ」と言われて税務署に行った覚えがある。給与所得の人は確定申告なんて面倒くさいことをしなくて良いと何かで読んだのにと訝しく思いつつ。しかし還付金が一か月の給料とほぼ同額だった時に言いつけを守って良かったとしみじみと思うと共にぼったくられているなと怒りを覚えた。
「20%引きということは手取り8千円ということですね」
 その程度の暗算は即座に出来る。
「そうなのだ。しかしNISA口座で売買する場合は無税になるので、1万円の売却益は丸々手元に入る仕組みになった」
 苺のカクテルを美味しそうに薄紅色の唇に含みながら説明してくれる。
「タバコ税も驚くほど上がっていますし、他の税金も上がっていますよね。それなのに株式投資をしている人は優遇されるのですね?」




--------------------------------------------------
二個のランキングに参加させて頂いています。
クリック(タップ)して頂けると更新のモチベーションが劇的に上がりますので、どうか宜しくお願い致します!!

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村



小説(BL)ランキング
2ポチ有難うございました<m(__)m>






本記事下にはアフィリエイト広告が含まれております。

気分は下剋上 とある金曜日の出来事 44

「ラッフルズホテルでは木で完熟させたパイナップルを使っているので、鮮度が全く異なるらしいな」
 そういえばそんなことを聞いた覚えがある。祐樹は脳の容量が美味しそうに苺のカクテルを呑んでいる人よりも格段に劣るので忘れても良いと判断したことは即座に脳の中のゴミ箱に放り込むようにしている、まるでワード文書を削除するかのように。
 ラッフルズホテルのバーに行く前に何をしていたか最愛の人も覚えているハズで、それを話題にして頬を紅く染めて眼差しも艶やかに熱くした人と客室に雪崩(なだ)れ込む展開も頭の隅で考えたのは事実だ。けれどもNISAについてレクチャーを受けなければならないなと思い直した。
「ああ、そうでしたね。前にもお聞きしましたよね、確か……」
 頬をやや紅に染めた人は曖昧に微笑んでいる。彼の長所は星の数ほど有ると祐樹は思っている。その一つに「その話は以前に言った」と絶対に言わないことだ。病院で激務が続くと脳のパフォーマンスが悪くなり、ついつい同じ話を同じ医師にしてしまうこともある。患者さんの容態などの重要なことは流石に覚えているけれども。「その話は以前聞きました」と言われると祐樹的には少しイラっとする。
 知りうる限り最も記憶力の良い最愛の人には同じ話を何度もしている可能性が高いけれども、一度たりともそういう反応が返ってきたことはない。彼の寛大な性格のせいだろう。
 それはそうと最愛の人は自己肯定感が低過ぎると内心では思っていた。逆だと鼻持ちならない性格になるだろうが。旧国立大学病院最年少の教授がそんな性格だとは夢にも思っていなかった。外科医の腕は本人の努力にも客観的にも数値的にも裏付けられているので受け入れているようだったが、容姿今は亡きお母さま譲りという本人の努力ではないし客観的にも証明するのが難しいので全くの無自覚だった。最愛の人も祐樹も異性に性的感情というか欲情は覚えない人種なので、女性がどう見ているかという点は全く顧慮していない。旧態依然とした大学病院のヒエラルキー制度のせいで一介の医師・ナースや事務局の女性は片思いしていたとしても告白するには高く厚い見えない壁があるのも事実だ。直接アプローチするような空気を読まないチャレンジャーは居ないだろうが、あまりにも壁が厚すぎるのも次期病院長選挙に備えている身として良くないような気がする。「香川教授が資産運用について教えてくれる」という企画は彼女達に親しみやすさを抱いて貰えるだろう。
 ハロウィンのイベントの協力要請で赴いた小児科の浜田教授は何かにつけてライバル視されているし「格上」の東京大学からの()(ざま)の教授だがいかにも子供好きといった気さくな人柄で看護師からも直接親しそうな声を掛けられていたのは祐樹にしてみればカルチャーショックだった。救急救命室の杉田師長のように医師を怒鳴りつける実力を持っていて、医師からも一目(いちもく)も十目も置かれているような看護師は居ることには居るが病院の中では稀な存在だ。研修医をベテラン看護師が怒鳴りつけることも多い大学病院だが、小児科の病棟では看護師と教授が対等な感じで話しているというのは見たことがなかった。対等というか教授に子供のように懐いているというのが正確かも知れない。
 そこまでの親しさは香川外科に必要ない気がするけれども、三好看護師を始めとした医局のナースの疑問に答えるくらいはした(ほう)が良いだろう。遠藤先生もいたく喜んでいたが、尊敬する上司としての好感度は上がっただけで親しくなりたそうには全く思わなかった。
 異性にはそれで良いとして同性にどの程度の魅力を発揮しているのか、森技官の協力まで仰いでゲイバー「グレイス」で客観的かつ数値まで用いて分かってもらう作戦を決行して成功を収めたが、祐樹が伝えたかったことの50%程度しか分かって貰えなかったような気がする。聡明な人なのに、自分のことだけは分かっていない点も大好きだが。
「お待たせいたしまして申し訳ございません。シェフに聞いて参りました」
 先ほどの女性スタッフが小さなメモを片手に屈みこむような姿勢で話しかけてきた。
「こちらこそお手数をお掛けして申し訳ないです。分かりましたか?」
 最愛の人が興味津々といった感じで彼女の(ほう)へと細く長い首を傾げている。
「とんでも御座いません。即座にお返事が出来ず忸怩(じくじ)たる思いです。フルーツ類は『ラ・ペ』のシェフやパティシエが作っておりまして……」
 要するに外注というか分業なのだろう。このホテルは食べ放題のクラブ・ラウンジにも食事を提供しているのもこの5階にあるレストランだし、そう考えればシェフやパティシエも大忙しなのだなと思った。




--------------------------------------------------
二個のランキングに参加させて頂いています。
クリック(タップ)して頂けると更新のモチベーションが劇的に上がりますので、どうか宜しくお願い致します!!

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村



小説(BL)ランキング
2ポチ有難うございました<m(__)m>






本記事下にはアフィリエイト広告が含まれております。
























































腐女子の小説部屋 ライブドアブログ - にほんブログ村




PVアクセスランキング にほんブログ村




このブログには
このブログにはアフィリエイト広告を使用しております。
Twitter プロフィール
創作BL小説を書いています。ご理解の有る方のみ読んで下されば嬉しいです。
最新コメント
アニメイト
ギャラリー
  • 有難うございます!
  • 有難うございます!
  • 遅ればせながら
  • お詫びとかお知らせとか
  • Happy New Year!
  • 気分は下剋上 クリスマス編 3 (2023年)
  • 有難う御座います~!!
  • 気分は下剋上 クリスマス編 2 (2023年)
  • 気分は下剋上 クリスマス 1 2023
人気ブログランキング
にほんブログ村
カテゴリー
資産運用
楽天市場
  • ライブドアブログ