腐女子の小説部屋

創作BL小説を綴っています。ご理解の有る方【18歳以上】のみ歓迎致します

気分は クリスマス 2023

気分は下剋上 クリスマス編 最終話 (2023年)

「いや……私が付けて良いか?」
 欲しいなと思っていたが、なかなか買う機会がなかったアップルウオッチだった。
 相変わらず最愛の人のプレゼントは祐樹が欲しいと思っている物をピタリと当ててくる点も愛情を感じる。
「勿論です。有難う御座います」 
 上着を脱いでワイシャツのボタンを外し、そして、彼に手を差し伸べた。 
「病院でこの時計を付けて働いてくれると、別の場所に居ても同じ時を刻んでいるというのが分かって……、ベルリンの時のお土産の時計も大切に使ってくれているだろう?
 アナログとデジタルの両方で祐樹と共に時を刻んで生きていくと実感出来る品物が良いなと思ってこれに決めた」
 話しながら黒いベルトを時計本体に水が流れるような動きで付けていってくれた。
「同じ時間の共有ですか……。それをこれでより一層実感出来ますよね。有難う御座います。
 アップルウオッチ、欲しかったので本当に本当に嬉しいです」
 最愛の人は生気に満ちた薔薇色の笑みを浮かべている。
「実は知っていたというか、察していた。
 私のネクタイを買いに店舗に一緒に行っただろう。その時に祐樹が店員さんと熱心に話し込んでいた。
 欲しいのかなと思って見ていて、祐樹が真剣な眼差しを浮かべてくれていたのでこれに決めたのだけれども……」
 ネクタイのエリアに居た彼が、そこまで見ていてくれたのかと思うととても嬉しい。
 集中力を何分割にも出来るのは優れた外科医としてある意味当然だったが、死角に入っていたと記憶している。
「とても嬉しいです。
 私の立場からすると、こちらの時計のほうが有能な医師に見えそうなので、とても嬉しいです」
 彼は極上の鮮やかな笑みを浮かべている。
「祐樹はそんな物を付けていなくても既に有能な医師として病院内で認知されているだろう?
 ボーナスも病院長が破格の金額を決めたと聞いているし……。
 そのお蔭様でこんな綺麗な指輪を貰ってとても嬉しい」
 薄紅色の指が、まるで芸能人の婚約発表の時のような感じで翳された。
「その指輪も貴方の指を飾るためだけ・・に作られたみたいに似合っています、よ?
 それはそうと、あの薔薇のツリーをバックに撮影するには良い時間ですね……」
 聖なる夜の愛の交歓はその後にしようと下心を押し殺して笑みを浮かべた。
「そうだな……。あの薔薇のツリーをバッグに画像を撮って祐樹のお母様にも送りたいな……。
 ああ、指輪は気を悪くなさるかな?」
 そういう配慮深さも彼の美点だ。
「母は貴方が幸せそうに笑っている画像のほうが喜ぶのでそのお気遣いだけで充分ですよ。
 ……そもそもダイヤモンドをリフォームして下さった時も喜んでいましたし。
 あれも私の国際公開手術の祈り・・のためにリフォームして下さっていたのですよね……。色々考えて下さったのを後から伺って愛の深さを感じました。
 今年は貴方の愛情を再確認した年でした、ね……」
 ジャケットを羽織り直して部屋の外に行く準備をしながらも、真摯な口調で告げた。
「今年は、祐樹の外科医としての飛躍の年だったからな。
 結果が良かったから全て良し、なのだが……」
 懐かしそうな笑みを浮かべている最愛の人もしなやかな動作で立ち上がっている、左手の薬指を艶やかな薔薇のような笑みを浮かべて見詰めながら。
「やはりこの時間だと人が居なくなるな……」
 一階に降りていくと暖炉の火と静謐な薔薇のツリーが存在感を放っていた。何だかクリスマスディナーが終わった貴族の屋敷のような雰囲気だった。
「そうですね。このホテルは正面玄関にはドアマンが居ますよね?ですからフラッと入って来る人が居ないのでしょう……」
 最愛の人が納得した感じで頷いている。
「確かに……」
 薔薇のツリーを背後に佇んだ最愛の人は、生花の薔薇の瑞々しい魅惑を湛えている。
「来年どんなツリーになるか必ず一緒に見に参りましょうね」
 嬉しそうな笑みを浮かべる最愛の人にスマホを向けると、右手を翳してくれた。
 その姿を永遠に残すためにタップしてカシャっという音を静謐な空間に響かせる。
「ツーショットが欲しいな……。あ!あの人たちに頼むというのはどうだろう?」
 円安のせいなのか、明らかに外国人と思しき雰囲気の男性の二人連れに最愛の人が弾んだ視線を向けていた。
 祐樹の勘だけれども、そう・・いう・・カップルだろう。彼はそういう裏事情には疎いので何も気付いていないだろうが。
「良いと思います。頼んでみましょうか?」
 近付いて英語で頼めば、全てを了解した雰囲気で快諾してくれた。
「愛していますよ、永遠に」
 若干華奢な肩を抱いて囁いたら、極上の笑みを浮かべた顔が祐樹のほうへと鮮やかに咲き誇った。

              <了>





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気分は下剋上 クリスマス編 9 (2023年)

「今の貴方のように薄紅色の指には良く映えると思いまして……。
 これはパパラチアサファイヤという石だそうです」
 瞠った目が珍しそうな煌めきを宿している。
「そうなのか……?ルビーとサファイヤはコランダムだろう。紅く発色すればルビー、青くなるとサファイヤと呼ばれるのは知っていたが、赤系なのにサファイヤなのか?
 何だか池に咲いたはすの花のような感じなのだな……」
 指輪を持った薄紅色の長く細い指を宙に翳してリングをじっと見つめている、生気に満ちた薔薇のような眼差しで。
「私もその辺りのことは気になって聞いてみたのですが、仄かにオレンジがかった薄い桃色のこの石だけが、そう呼ばれるのだそうです。これ以上ピンク色に寄っても、同じくさらにオレンジっぽい色をしていてもそうは呼ばれないらしいです。
 つまり、特別中の特別だそうです。選定に選定を重ねたという感じですね。
 貴方にははっきりとした色も似合うのですが、この指が綺麗な薄紅色をしていますよね?
 デートの時などは特に。
 二人きりの時に付けて下さればとても嬉しいです。
 それに、この色は『奇跡の蓮の花の色』とも呼ばれているそうですよ。
 この指も神の手と呼ばれていますよね」
 薄紅色の指を祐樹の指と絡めた。彼が指輪を持っていないほうの手を。
「仕事の時もつい見入ってしまう指ですが、こうして二人きりで過ごしていると、こういう色になりますよね。ですから、この薄紅色に良く映える色を必死に探してこれを買いました。
 日常使いではなくて、デート専用に良いかと思いまして」
 彼の指からリングを恭しく取って眼差しで合図をしたら、花よりも綺麗な笑みを浮かべて指をすっと伸ばしてくれた、祐樹が指輪を指に通しやすくするために。
「ああ、思った通り、いや予想以上ですが……やはり似合いますね。綺麗な指がより一層映えてこの世の物とは思えないほど綺麗です……」
 細く長い指に蓮の花が咲いたような、いやそれも京都の寺で咲いている花ではなくて何だか極楽浄土に咲いているとか言われている天上の蓮とはこういう物に違いないと思ってしまう。
「指よりも祐樹が贈ってくれた宝石の方が綺麗だ。それにこの石は大きいだろう?
 だから内側から煌めく蓮の花の色が映えるのだと思う。
 祐樹、有難う、宝物がまた一つ増えた……」 
 最愛の人の細い指全体を覆うような石の大きさというのもなかなか無くて、祐樹が取り寄せて欲しいと百貨店の宝石売り場に依頼してから二カ月も掛かった代物だった。  
 ダイヤモンドは大きい石もたくさんあるが、コランダムは1カラット以上の物はなかなか出来ないらしい。  
 しかし、この天上の蓮の花を彷彿とさせる宝石はある程度大きくなければこんなに美しくは煌めかないので、それこそ世界規模で探して貰った。
「いえ、貴方に似合う物をと考えたのと、ロンドンまでわざわざ来て下さったお礼を兼ねてです。
 不覚にも金庫に入れていたのを失念してしまって焦りましたが……。まあ、あれはその……忘れて下さい。
 しかし、私は貴方が私の些細な行動の変化をしっかりと覚えて下さっていたことだけ・・は覚えておきますけれども、ね」
 彼の薄紅色の指と第一関節までを「奇跡の蓮の色」が煌めいて相乗効果で活き活きとした眩い光が艶めいて煌めいている。
「誰だってうっかりすることは有るので、そのことは全く気にしていない。
 これは色こそ特別だけれども、コランダムなのだろう。だったら硬度は心配しなくても良いな?」
 薔薇色の笑みを浮かべた彼が祐樹の目を真っ直ぐに見て、眼差しが絡まった。
「はい、そのように聞いています」
 先ほどよりも紅を増した滑らかな彼の首が頷いてソファーから立ち上がった。
 そして彼も鞄を持って戻って来た。
「これは私からの祐樹へのクリスマスプレゼントだ。
 私も国際公開手術成功のお祝いを含めているので、祐樹ほどではないけれども普段よりも奮発した」
 魔法のように見覚えがある暖炉の日を彷彿とさせるオレンジ色の大きめの紙袋が出てきた。
 この鞄にこれほど嵩高い物が入っていたとはと目を見開いてしまう。手先が器用で空間認識力も神業な人だけが出来る芸当だろう。

 祐樹はそこまでご縁はないものの、最愛の人御用達の老舗ブランドの物だった。
「有難う御座います。中身を見ても構いませんか?」
 何が入っているのかとても気になった。そして口調こそ疑問形だが「いい」と言われることが前提の問いだ。
「勿論だ。気に入って貰えればとても嬉しい」
 リボンをほどいてオレンジ色の箱を開けた。彼からは時折ネクタイを貰っているけれども、箱の形から考えてそれではないのだろう。
 しかし、祐樹に必要な物がこのブランドに有るのだろうか?
 箱を開けて白く薄い紙を剥いでいくと黒い牛革のベルトと思しき物が目に入った。ただ、中途半端な長さと形で内心首を傾げた。
 さらに薄紙の中に指を入れると本体部分と思しき物が出て来た。
「有難う御座います。これだと病院内でも使えますね。
 ただ、正式の場所に行く時にはやはり昔からの時計をしている先生の方が多いので、その場その場によって使い分けをしなくてはならないとは思うのですが。
 ベルトを付けてから手首に巻いてみても良いですか?」




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気分は下剋上 クリスマス編 8 (2023年)

「済みません、お騒がせ致しました。クラブラウンジでお手洗いに行った時に、大切かつ高価な物なので金庫に入れておいた(ほう)が良いと咄嗟の思い付きで部屋に入ってしまっていたのをすっかり失念してしまっていて……」
 優雅な気分を吹っ飛ばしてしまったなと自責の念に駆られた。
「いや、有って本当に良かった。それに祐樹がうっかりとしてしまうくらい疲れていることを察していなかった私も悪いので、気にしないで欲しい。
 それに、今年はロンドンの件を筆頭に良いことがたくさん有ったから、年末に神様が厄落としの積りで仕組んだ悪戯いたずらだったのではないか?」
 もう一つのグラスに氷を入れながら「厄落とし」とか「神様の悪戯」などの言葉を薄紅色の唇で紡いでいる最愛の人の大輪の花の佇まいに視線が惹きつけられてしまう、いつものことだけれど。
 しかし、祐樹同様に無神論者の彼がそういうことを口にしたのはきっと祐樹の失態で落ち込んでいるのを慰めようとしてくれているのだろう。
「そうですね。所謂いわゆる厄落としだと考えたほうが良いですね」
 彼からグラスを受け取って包装紙に包まれた小箱を確かめるように見た。
「世間で言われる厄年ではないのですが、今年はツキに恵まれていましたから。
 そして私は直ぐに調子に乗る性格なので、神様からの戒めが下ったのでしょう……」
 甘露のような水を飲み干した後に調子を合わせた。
 最愛の人はキッパリとした感じを与える紺色のジャケットから、すんなりと優雅に伸びた首を傾げている。
「祐樹が調子に乗る性格だとは思っていないのだけれども。
 厄を持ってくる神様の名前は生憎知らないが、祐樹の場合はそんな物を跳ね返す実力を持っているだろう。
 それに気まぐれな医療の神様には気に入られているだろう?どんなに才能が有って、たゆまぬ努力も研鑽も重ねている外科医だって生涯に一度も顕現しない人などが山のように居ると聞いている神様が二度も訪れて下さったのだから……。
 例の地震の時と、国際公開手術の時に、な」
 懐かしそうに、誇らしそうに微笑みを浮かべる彼に笑いかけた。
「それは、貴方が見守って下さるという顕現条件が漏れなく付いているからですよ。
 『例の地震』の時も指揮官として、そして私では無理だと判断なさったら交代を言い渡されたと思います」
 正面のソファーに優雅極まりない仕草で腰を下ろした最愛の人は清浄な艶やかさを帯びた眼差しで祐樹を見ている。
「現場の指揮官としては、そうせざるを得ないな。
 祐樹の手技も信じているが、それ以上に大切なのは患者さんの命なので」
 最愛の人は幾分言い辛そうな風情を醸し出している。
「それはご尤もな考えです。私のちっぽけな外科医のプライドよりも最優先させるのは患者さんの命です。
 踏んだ場数もキャリアも貴方のほうが上なのですから。まあ、私も指名して下さる患者さんが増えましたので、これからは貴方に追い付こうと密かに決意していますが……」
 咲き定まった大輪の百合のような笑みを浮かべている最愛の人は何だか覚悟を決めたような感じだった。
「祐樹に追い付かれるのは仕方ないと思ってはいる。しかし、追い抜かれないようにしたいとも、ずっと思っている。
 ただ、以前のように外科医としての腕が劣ったからという理由で祐樹の恋人という関係性まで破壊されないことも分かっているので、その点は気が楽といえば楽だな」
 そのように考えてくれただけで嬉しい。以前は「祐樹よりも外科医として優れていないと恋人として失格だ」というふうに強迫観念的に考えていたと聞いていたので。
「仕事は仕事、プライベートはプライベートですからね。
 それはそうと、本当に中身が入っているか不安になります。悪戯好きの神様が未だ居るかも知れませんし。
 今年のクリスマスプレゼントですが、受け取って下さいますか?」
 小箱を手に取ってソファーから降りた。最愛の人の方へと回り込んで床に膝をついて両手で神様への捧げ物のように差し出した。
「勿論だ。
 祐樹が厳選に厳選を重ねてくれた物なのだろう。とても嬉しい」 
 薄紅色の冷たい指が祐樹の手を包み込んだかと思うと、しっかりと握ってくれる。
 先ほどの酩酊は醒め果てているように感じていたが、やはりまだ体内に余分なアルコールが残っているのだろう、冷ややかな感触がとても気持ちが良かった。
「開けても良いか?」
 薔薇色の笑みを浮かべた最愛の人が弾んだ声で確認している。
「勿論です。先ほどの失態が有りましたから、余計に中身が入っているか気になってしまっていて。疑心暗鬼だと自覚はしているのですが。
 気に入って下されば良いのですが……」
 包装紙を破ることなしに綺麗に剥がしていく仕草も露に濡れた薔薇の花の開花のような風情だ。
「え?これは、とても綺麗だ……!!
 そして、この桃色というか、少しオレンジ色の煌めきは何という宝石なのだ?」
 プラチナの部分を薄紅色の指で持って空中に翳す宝石は祐樹が予想していた以上に彼の指に良く映えている。




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年末進行のため、ブログの更新時間&頻度がバラバラです。すみません。
そして、今日はどうしても参加しないといけない忘年会がありまして。
夜中の更新はお休みさせて頂くかもです。
余力が残っていればもちろん更新したいのですが、体調も万全とは言い難いので私にも分からないです。
クリスマス編は本年中に「了」の字が打てるように頑張ります!
読者様のご理解とご寛恕をお願いする次第です。
 こうやまみか拝


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気分は下剋上 クリスマス編 7 (2023年)

「そうです……。しかし、自宅を出た後はずっと鞄を持っていたので、消えるわけはないのですが……?」
 客があまり居ないとはいえ、舌打ちしたい気分を必死で堪えた。祐樹にしてはとんでもない大失態だし、箱にも中身にも名前や住所が書いてあるわけではないので、戻って来る可能性はゼロだ。
 金銭的な損害も、実のところ物凄く惜しい。
「確かに消えるわけはないし、財布などはちゃんと入っているのだろう?
 祐樹は財布をポケットに入れているので、鞄は関係ないか……。掏りスリなどは品物よりも財布を狙うと読んだ覚えがある。
 特に女性と異なって男性は大体が財布はジャケットの内ポケットに入れるのでそこしか狙われないとも……」
 この店では財布を使っていないが、チェックインの時にクレカを出したなと思いながらポケットに財布が有るのを確かめた。
「財布は有ります……。それに鞄はずっと手に持っていましたから盗難の懼れもないかと……。そして、小箱だけがなくなっていて、他の物は有りますね……。
 救急救命室はご存知のようにこの時期は忙しいので、注意力が散漫になっていたり、酔いやすい体調になっていたりはしていました……。
 しかし、あんな高価な物をうっかり無くすとはどうしても考えられないのですが……」
 怜悧な表情を浮かべた最愛の人は薄紅色の指をやや青褪めた額に当てている。
「そんなに大切な物だったのか?」
 今更取り繕っても仕方ない。頷きを返した。
「はい。貴方に差し上げる物として相応しい物なのですが、そもそも稀少な物でして……。万が……、いや、もし出て来たらお見せ出来るので今は敢えてぼかして申しますが……。
 そのレアな物を店舗に無理を言って揃えて貰って、貴方にどれが最も似合うかを一生懸命に考えたのです……」
 最愛の人も描いたような綺麗な眉を寄せている。
「そんなに……?要は祐樹の愛情と時間、そしてお金も存分に使われているということなのだな……。
 家を出る時の時点で鞄に入っていたのは間違いないのだろう?」
 確認するような口調だった。
「はい。本日お渡しして喜んで頂こうと考えておりましたので、その点について確実に間違いはないです」 
 最愛の人は白くなった人差し指を重ねて眉間を押さえている。
「少し待って貰えないだろうか?今日の祐樹の表情や身体の動きを全て思い出すので」
 鞄の中の小箱だけを落とすなどという器用なことは祐樹も出来ないし、鞄自体開けていない。
 こうなれば卓越した記憶力を持つ最愛の人に縋るしかない。
「あ!このホテルでチェックインを済ませがてらクラブラウンジでシャンパンを呑んだだろう?その時は、物凄く大切そうに鞄を持っていたし、何だか特別に気を配っている感じだった。
 しかし、このレストランに移動する時にはそうでもなさそうに、むしろ無造作な扱いに思えた。
 その鞄だって無意識に空いている椅子に置いただけという表情を浮かべていた、な。
 その変化点は、ラウンジでお手洗いに行った時だ。
 あの時もカードキーと鞄を持って一度ラウンジを後にしていた……」
 あ!!と思った。
「大切な物だから、ふと思いついて、客室の金庫に入れに行きました!!」
 声が弾んでいるのを自覚した。そして録画並みの最愛の人の記憶力にも乾杯したい気分だった。
「だったら金庫に入っているのではないか?救急救命室での勤務疲れと、アルコールの作用で衝動的・発作的にしたことを忘れている可能性が高いのでは?」
 直ぐに確かめに行きたい衝動に駆られた。
「プレゼントの受け渡しは部屋で良いですか?」
 彼は返事をするのも惜しいという感じで頷いている。そして、燕のように身を翻して席を立った。
「済みません、少し急ぐので部屋に付けて置いて下さい」
 スタッフさんにカードキーを渡したら二人の顔色で何かを察したのか、異例の速さで何かを入力して即座にレシート状の物が出て来た。金額も確かめずにサインをして店を出た。
「まずは金庫だな」
 エレベーターに乗り込んで所定の位置にカードキーを翳すと部屋の階数のみがオレンジ色に染まっている。
 普段はイライラなど感じない充分な速度で上昇していくエレベーターが遅く感じたのは一刻も早く確かめたいという気持ちで逸っていたせいだろう。
「あ!金庫……、確かにここに入れた記憶が有ります」
 足早というよりも駆け足で部屋へと入った。
 最愛の人と良く利用しているホテルだけれども、普段は金目のものを持って来ていないので、金庫は利用したことはない。しかし、鮮明に金庫のことは覚えていた。
 開錠して中を見ると、最愛の人の推測通りにポツンと一つ包装紙に包まれた小さな箱が入っていた。
「祐樹、この包装紙なのか?」
 安堵の想いで身体が溶けそうになっていたので、黙って頷くだけしか出来ない。
「そうか、良かったな……。本当に!」
 安堵の響きを滲ませた彼の声を聞きながら、小箱を丁重な仕草で取り出して、ローテーブルの方へと向かった。
「貴方の素晴らしい記憶力のお蔭です。本当に有難う御座います」
 最愛の人はホテルのロゴ付きのミネラルウオーターをアイスボックスに入っていた氷を入れたグラスに注いで祐樹の元へと運んでくれた。
「いや、私は単に覚えていただけで……有って本当に良かった!!
 祐樹が私のために厳選に厳選を重ねてくれた宝物なのだから。
 それはともかく、水をたくさん飲んでアルコールの分解を速めたほうが良いと思う」
 グラスを受け取って唇へと運んだ。全ての問題が解決したのだと思うと飲んだミネラルウオーターは甘露のように美味しかった。
 まさか、手品のようにこの厳重に包装された箱の中身が消えているということはないだろう、多分。





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師走ももう少しですね。
本編は今年中に終わらせることが出来そうです。
もう少し、お付き合い下されば大変嬉しいです。
寒い日が続きますが、読者様もお体ご自愛下さい。
 こうやま みか拝


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気分は下剋上 クリスマス編 6 (2023年)

 そう言えばジャンクフードも大好きな人だった。
「何でもデミグラスソース味のシチューがプラスティック容器の中に入っていて、その上からパイ生地を被せて焼いた物らしいです。サクサクのパイを崩してシチューに浸しながら食べるそうです。
 シチューとスープ、パイ生地とマンゴーという違いは有りますが、構造としては似ていますよね。
 だから久米先生は食べたいと駄々を捏ねたのだと思います。
 ただ、ケンタッキーのチキンは秘伝のタレを使っているとかで本当に美味しいですよ。時々無性に食べたくなります。一度ご一緒致しませんか?」
 吞み慣れていない老酒ラオチュウが効いたのか、一気に酔ったという感じだった。最愛の人も白い肌がほんのりと紅く染まっていて、そして祐樹の誘いに満面の笑みの花を咲かせている。そして春のそよ風に揺れる早咲きの薔薇のような優雅で瑞々しい動きでそよいでいる。
 酔って機能が低下した頭脳に「ケンタッキーに行く」と強くメモした。いや、行かなくてもウーバーイーツで頼むという方法もあるなとも。ウーバーイーツといえば、森技官に二人が無理やり頼まれた畑違いの捜査の時に気の毒な配達員は今も元気に食べ物などを運んでいるのだろうか……?
 シャンパンの泡のように止め処なく思考が浮かんでは弾けていくのは酔っている証拠だろう。
「いつも思うのですが、ここのココナッツミルクはサッパリしていて美味しいですね。
 きっと、油分の強い料理が多いので、敢えて濃厚な味にしていないのでしょうね」
 銀色のスプーンを優雅に動かしている薄紅色の指に見惚れながらも祐樹的には珍しい酩酊に戸惑ってしまった。
 最愛の人も祐樹もアルコールは強いタイプだ。
 ただ、救急救命室ではこの時期忙しいことが多い。忘年会の急性アルコール中毒とか、年末のお歳暮商戦の激化で危険運転をせざるを得ないドライバー、そして
所謂いわゆるクリぼっちに耐えられずODオーバードーズをしてしまった若者などが次々と搬送されて来て休む時間がなかったなと思い返してしまった。
 三日の徹夜ならば耐えられる程度の体力は持ち合わせてはいたものの、その徹夜の間中血の海の中を走り回りながら指示を出しつつの蘇生術をこなしてきた。
 薬物の過剰O摂取Dで胃洗浄レベルならば大学病院に搬送されなくても対応は充分可能だけれども、救急救命室の法律を自称している名物ナースが来る物拒まずという姿勢を貫いていて、彼女の実績と実力に裏打ちされた発言力の強さに逆らえる人間は居ない。
 祐樹も「夏の事件」で彼女の咄嗟の判断で救急車に乗って京都駅に最短時間で行けた件や、それ以前は救急救命の一から教わったことなどで基本的には頭が上がらない。
 そんなわけで、睡眠不足と過労が自覚している以上に蓄積していて、それがこんな形で出たのだろう。
「済みません、少し酔ってしまったようです……。
 忘れないうちに……、今夜のメインイベントに移らせて頂いても構わないでしょうか?」
 計画通りならば、もっとロマンティックな演出をしようと思っていたのだが、最悪墜落睡眠に陥りかねない。
「祐樹、水を頼もう、な?」
 心配そうな表情を浮かべてスタッフを呼ぶ最愛の人に「大丈夫ですよ」の意味を込めて笑みを浮かべて鞄を手に取った。
 そして酔い覚ましに大ぶりのグラスに新たに注がれた水を飲み干して鞄を開けた。
 想定していた雰囲気までは届かなかったものの、先程居た自営業風の男性とそこそこ綺麗な女性などは早々に席を立っていたので店内の客は一割に減っている。
 そして皆が料理を楽しんだり会話を弾ませたりしているので誰もこちらを注目していない点も幸いだった。
 また、彼が気に入ったと言っていたツリーもクリスマスっぽさを際立たせてくれていたし、大丈夫だろう。
 そんなことを思いながら鞄を開けて、愕然とした。
 ……もしかして自覚している以上に酩酊していて、幻覚を見たのではないかと息を呑んでしまった。
「済みません、お水をもう一杯頂いても?」
 スタッフさんに告げて水を持って来て貰って飲み干した。少しは晴れた頭でもう一度鞄の中を見たが、やはり無かった……。
「祐樹?どうしたのだ……。部屋に行って休んだほうが良いのではないか?」
 先ほどよりも更に心配そうな表情を浮かべた最愛の人に取り敢えず状況説明をしよう。
「実は、この鞄の中に貴方へのクリスマスプレゼントを入れて持って来ました。自宅を出る時には有ったのですが、なくなってしまっていて……」
 しかも彼に贈ろうと思っていたプレゼントは過去一高価で、かつ彼に最高に似合うと思って買った大切な物だった。
「無くなっている?いや、品物よりも大切なのは祐樹の体調だから……。それに今夜の食事だけで充分過ぎるほどのプレゼントだ」
 真摯な口調で言い募ってくれる最愛の人の気持ちはとても嬉しい。嬉しいが……。
「実は、貴方に最高に似合う物を厳選に厳選を重ねたのです。それに金額の多寡は貴方には何の問題もないかも知れませんが、ご存知のように冬のボーナスは国際公開手術のお蔭で過去最高額だったのです。
 貴方がいらして下さったお礼も兼ねて、最も高価な物をと思って選びました……。
 同じ物は二個存在しない、貴重な品物だったのです……」
 酔いも醒め果てたというかどこかに飛んで行ってしまった。
「そんなに大切な物だったのか?金額的にも?」
 最愛の人も何だか愕然とした表情を浮かべている。




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