腐女子の小説部屋

創作BL小説を綴っています。ご理解の有る方【18歳以上】のみ歓迎致します

探偵役の後

気分は下剋上 ある何でもない秋の夜 最終話

「祐樹が――もう、今日になってしまったが――業務に差し障りが出ないようなら金木犀(きんもくせい)の、ほの甘くてどこか懐かしい香りを胸いっぱいに吸い込みに行きたい……な。この時間ならば道を歩いている人もそうはいないだろうし、金木犀の香りもより濃厚だと思うし……。
 ただ、無理はして欲しくないので……」
 最愛の人の切れ長な目を見開いていて、願望と理性が(せめ)ぎ合っているような複雑な煌めきを放つ。
 その光に魅入られながら慎重に考えた。
「……貴方が望むなら(おお)せの通りに黎明(れいめい)の散歩デートに参りましょうか。ただ、せっかく解した肩ですので冷えないように気を付けて……。そうですね未だ季節的には早いかも知れませんが、この時間なら新聞配達の人くらいしか居ないので平気かと思いますのでマフラーも巻いてから行くという条件が前提です」
 先ほどのラベンダーの香りのように、精神をリフレッシュさせるのは良いだろう。特に最愛の人には不本意極まりなかった探偵役のことは。
 向かい側に座った人が朝の生まれたての光が射し込んだような感じで煌めいていた。
「良いのか?祐樹は夜勤明けで疲れているのに申し訳ないけれども……でも嬉しい」
 極上の笑みを浮かべた最愛の人の顔を見るだけで疲労感などは吹っ飛んでしまう。
「大丈夫ですよ。今夜の救急救命室は良い感じに時間を空けて患者さんが搬送されて来ましたし、さほど重傷の患者さんも居なかったのでむしろ楽でしたよ。適度に休めましたし。
 いくら貴方の望みでも、野戦病院さながらの状態が一晩続いたとかだったらキッパリとお断り致しますのでどうかご安心ください」
 微笑みながら告げると彼は安心したように頷いてすらりと立ち上がる。
 コーヒーカップを下げてから着替えに行った。何だか弾むような足取りで。祐樹は帰宅して直ぐにキッチンに灯りが漏れているのを不審に思って覗いたせいで着替えていないのは好都合だった。救急救命室のシャワーを使った後に帰宅したし。
 最愛の人を待つ間にスマホで日の出の時間を確かめた。まだ時間はあるので、金木犀(きんもくせい)の甘い香りを二人して楽しめるだろう。あの辺りに座る場所は有ったかなと記憶を辿っても出て来ない。立ったままでも楽しめるだろうが、深夜未明に二人して佇んでいたら最悪パトロール中の警官とかに職務質問されてもおかしくない。
 まあ、いかにも善良な市民といった感じの髪型とか服装なのでスルーされるかも知れないけれども。
「本当だ。空気が澄み切っているな……。仮にも京都の市内だとは思えないほど……」
 祐樹の隣を歩いている人が――祐樹の言った通りにマフラーを巻いている――弾む声を夜の静寂(しじま)に控えめに振り撒いている。といっても、普段から大きな声を出す人でもない。
「釈迦に説法ですけれども……散歩は身体にも良いですし、腕を大きく振り回すと更に良いですよ」
 自転車の灯りが見えたのでさり気なく距離を取った。
 新聞を配達しているらしくてあちこちの家のポストと思しきところで停まって自転車にまたがったまま手際よく新聞と思しき紙の束を入れている。
「この心地いい気温と天気だからまだ良いだろうけれども、雨の日とか寒い日などは大変だろうな……」
 最愛の人が感心したように呟いている。
「そうですね。仕事とはいえ出るのが嫌な日も有るでしょう……。ちなみに最も寒く感じるのは(みぞれ)交じりの雨の日です。そういう日は病院から帰宅するのにちょっとした勇気が要りますね……。
 貴方と同じ空間に居る時間を少しでも長くしたい気持ちの(ほう)が強いので家には帰りますけれども……」
 自転車が近づいて来たのを良く見るとまだ若くて学生っぽい雰囲気を漂わせている。
「祐樹、そんなに無理をしなくても……。私だって朝食を祐樹と一緒に摂りたいのは山々なのだが、(みぞれ)交じりの冷たい雨に打たれて祐樹が風邪を引くくらいなら、むしろ病院に居て貰った方が良い」
 健気な声音に思わず笑みが深くなってしまう。その気持ちのままに最愛の人と手を繋いだ。
 新聞配達の青年の自転車は背後に走り去っていた。あの感じだと後ろは振り向かないだろうから、付け根まで絡めて、街灯の灯りに照らされた最愛の人の端整で怜悧な眼差しと祐樹の視線まで絡ませた。
「大丈夫です。体調管理も仕事のウチですから。少しでも異変を感じたら風邪薬を服用して病院で休みます。幸いそんな状態になったことはないですけれど……。
 風邪はともかくインフルやノロに罹ったら貴方にまで伝染してしまいかねないので、その点は充分に用心しています」
 絡めた指に心地よい圧を感じる。
「そうか……それなら良いのだが。あ!」
 確かこの辺で薫ってきたなと思ったのと同時に最愛の人が「あ!」と言っている。その瞬間に祐樹の嗅覚が甘く濃い香りで満たされて行く。
「この薫りもラベンダーと同じく心を落ち着かせてくれますよね……。それにリフレッシュ効果もあって良いですよね」
 街灯は有るものの静謐な闇の中で人知れず薫る花を二人して呼吸と共に肺まで吸い込む。
「……リフレッシュと言えば……、あんな情念に(まみ)れた事件に関わってしまったことを……貴方の秀逸過ぎる記憶力は存じていますが、せめて記憶の一番奥に封じ込めて、出来れば封印して下さればと思います。
 人間の脳にリセット機能が付いていればもっと良いのですが……」
 細い指を調節してはいるものの強く握った、祐樹の願いが最愛の人に届くようにと。
「有難う……。リセットは無理だが……。強い気持ち……私には祐樹に対する愛情しかないけれども……。ネガティブな強い感情は一生涯持ちたくないなと思ってしまった……それだけを覚えておいて、それ以外は記憶の奥底に封印しようと思う」
 揺るぎない決意を秘めた感じの横顔を見て愛おしさに駆られてしまった。
「私への愛情は大歓迎ですけれども、少なくとも私は貴方にネガティブな感情を抱かせるようなことは一生涯致しません、よ?それはお約束します」
 香りがより一層濃くなった。多分、樹の近くまで歩いて来たのだろう。
「祐樹のことは信じているけれども、そう言ってくれると更に嬉しいな」
 絡めた指に力がこもって、そしてキスを強請るように目を閉じた白皙の顔が上を向いた。甘く懐かしい香りに包まれて唇を重ねた、約束と誓い、そして(くら)い記憶が封印されるようにとの願いを込めて。
 街灯だけがそんな二人を照らしていた。

    <了>







最後まで読んで頂き誠に有難うございました!!この話は「二人がどうして探偵役」の後日談となります。作中に出て来た名前で「誰?」となった読者様や、興味を持って下さった方は、







読んで下されば嬉しいです。


推理小説風を目指したのですが、推理小説って「犯人はお前だ」で終わりますよね。ただ、その後あの人はどうなったのか?とか分からないというのが個人的に嫌だったので、こうして蛇足をしてしまいました。

宿題の多い身ですけれど、気長にお待ち下さればと思います。

いつも遊びにいらして下さってとても嬉しいです。ご期待に沿える作品になっていることを祈るばかりです。

   こうやま みか拝





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気分は下剋上 ある何でもない秋の夜 8

 指で触れていた滑らかな肌――正確にはその下部に有る筋肉だ――が強張った。
 最愛の人が生々しい情念とか殺意が芽生えるほどの激しい気持ちを聞くのが苦手で最後の(ほう)は拒否反応すら出ていた。
 凝った肩を解していたのに台無しにしてしまう話題だったことに気付いて軌道修正を計ろうと話題を考えた。
「もう終わったことなので……。この話はお(しま)いにしましょう。それはそうとマッサージは大体終わったのですが、リクエストは有りますか?」
 肩もすっかり解れていていつも通りの弾力だった。腕もそして指まですっかり硬さは消えているのを触れて確かめた。
「頭痛もすっかり治まったし、頭を含めた身体も何だか軽くなった感じだ。
 それに血行も良くなって身体がポカポカする……。祐樹、有難う……」
 最愛の人の充足した感じの声とラベンダーの香りが一体化したような安らぎと癒しに満ちて祐樹の嗅覚と聴覚を優しく和ませていく。
「いえいえ。これからは頭痛になる前にマッサージ致しますね。夜明けまでまだ()が有りますからもう一度お休みになって下さい」
 パジャマの上衣を着せ掛ける。
「祐樹は眠らないのか?」
 最愛の人の眼差しが真剣な感じで祐樹を見ている。見つめ合うだけで幸せな気分になれるのは愛情の深さ(ゆえ)だろう。
「今からベッドに入って寝てしまえば爆睡しそうです。起きて夜明けを待とうかと思っています」
 最愛の人が心配そうに、そして済まなそうな表情を浮かべている。薄紅色の唇が動く前に祐樹の唇を重ねた。
「大丈夫です。一晩や二晩寝なくても問題ないですよ、私は。丈夫な身体に産んでくれた母に感謝ですね」
 触れるだけのキスを繰り返しながらそう告げた。
「そうか……。私も頭痛で目が覚めるまではぐっすりと眠っていたので、起きておくことにしようかなと思う。せめてものお礼にコーヒーでも淹れようか?」
 無理をして言ってくれているのではと心配したけれども、冴え冴えとした眼差しや雰囲気は自宅で寛いでいる時ではなくて病院に居る時のような感じだった。
「では、濃い目でお願いします」
 最愛の人の淹れてくれるコーヒーを飲めば眠気も吹っ飛ぶだろう。祐樹にとっては世界で一番美味しくて最も効き目があるのだから。
「分かった。少し待っていて欲しい……」
 しなやかな肢体を翻す最愛の人の若干華奢な手首を優しく掴んで指を付け根まで絡めた。
「キッチンまでご一緒しますよ。貴方の淹れて下さるコーヒーは世界一美味しいですけれど……コーヒーを淹れる流れるような所作は最高の目の保養になりますので」
 花のような笑みが唇に咲いている。
「分かった。そんなことで良いのなら喜んで……」
 ラベンダーの香りが漂う静謐な空間で再び交わすキスは格別だった。
「本当に美味しいコーヒーですね。コクと苦さが程よく調和していて……」
 薫り高いコーヒーの香りが漂っているキッチンは寝室とはまた異なった趣きがある、優劣は付けられないけれども。どちらも最愛の人が居てくれるだけで祐樹としては大満足だ。
「そういえば、今年になって初めて金木犀(きんもくせい)の香りが漂っていました。秋だなとしみじみ思いましたよ」
 向かい側に座ってコーヒーを飲んでいた人の眼差しが煌めきを放った。
「そうなのか?もう秋なのだな……。具体的にどの辺りだった?」
 残り少なくなったコーヒーを一口飲んだ。
「マンションから出て、病院に行く道の途中に住宅がまとまって建っている辺りです。金木犀(きんもくせい)の花はその庭に――具体的にどの家かは分からないですけれど――植えられているのだと思います」
 不審そうな表情を浮かべている彼は何だか不満そうな感じで唇を開いた。
「その辺りなら私も今日、いやもう昨日だな……、それはともかく帰宅途中に歩いたのだけれどもそんな香りはしなかった」
 花鳥風月にはさして興味のなかった祐樹だったが彼と付き合うようになって季節の移り変わりとか桜の開花とかそういうモノには敏感になった。
「夜の空気はこんな市街地でも澄んでいますから、香りも拡散しやすいのでしょうね」
 彼が何時頃帰ったのかは聞いていない。ただあの道を通ったならば買い物とかはしていないハズで、そして医局も平穏そのものだったので多分定時で上がったのだろう。
 その時間なら家からは夕食の支度の様々な匂いも漏れるので金木犀(きんもくせい)の香りは紛れてしまったに違いない。
 何かを決意した感じで最愛の人が薄紅色の唇を開いた。




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気分は下剋上 ある何でもない秋の夜 7

 先程は指を押し返すほどの硬さだったのに、程よい弾力に変わっている。
 頭痛という症状が出る前に気付いていればと思ったが後の祭りだ。
 これからは彼の手術(オペ)の難易度とか所要時間を――予定よりも遥かに早く終わってしまうことの(ほう)が多いので実質時間と仮に言っておこう――把握してこんな状態まで放置せずに祐樹から声を掛けようと密かに決意した。
「そうか……。いずれは事務局長とも対峙(たいじ)しなくてはならないので今後の参考にする。有難う。
 それはそうと、長楽寺氏の遺産分割協議書が無事に出来上がったと佳世さんから執務室に連絡が有った。西ケ花さんが相続放棄したので驚いたと、そして祐樹と私の助力が有ったのだろうと厚くお礼を言われた。直接お礼に参上したいと仰っていたのだけれども一存で断ってしまった……。祐樹に相談すべきだったか?(うなじ)の横の部分、強く押して欲しい……。そう、とても気持ちが良い」
 この際、念入りに解しておこうと最愛の人の言う通りに押した。
 ラベンダーの香りと彼の満足そうな声に祐樹の心まで癒される。
「いえ、貴方の宜しいように取り計らって頂ければ充分ですよ……。長楽寺家では佳世さんと直哉さんが円満に分割したのでしょうね?」
 普段は仲が良い親子とか兄弟でも揉める人が居るらしいので気になった。雑誌などでは「争続」という言葉を良く目にする、兄弟が揉めて絶縁したとかそういう話だった。
「それは大丈夫だったみたいだ。むしろ、佳世さんは直哉さんの相続分が少ないのでは?と案じていたら直哉さんはお母さんの取り分が少ないとか言い出して。お互いが譲り合う円満さだったようだ……。
 それと、野上さんにも『寸志』という名目で1千万円を渡したそうだ。どうやら瑠璃子さんが夫の直哉さんにそうすべきだと言ったらしい。瑠璃子さんも酷い目に遭っただろう?女性の勘は鋭いらしいので、何かを察していたのかも知れないな……。
 一千万円は税理士の先生と相談して決めた(がく)らしくて税金的にも問題はなさそうだし、良かったと思った」
 野上さんは所謂(いわゆる)家政婦だけれども故長楽寺氏から性的な関係を強いられていたのでその程度のお金を貰うだけの理由はあると祐樹も考えていたので安堵した。
「では争う相続という意味の『争続』にはならなかったのですね。良かったです」
 ラベンダーの香りと滑らかな肌に触れて、しかもあの家族が野上さんにも報いた上で円満に話し終えたことを聞くと気持ちまでも晴れやかになっていく。
「『争続』に発展するのは百万単位で分ける時が最も多く、その次が千万単位だから長楽寺家についてはそう心配はしていなかった……」
 愛の交歓の時とは異なるものの、どこか艶やかな声だった。そして弾んだ感じなのは野上さんが――心と傷はそう簡単には癒えないだろうが――お金を貰ったことで少しでも故長楽寺氏を恨む気持ちが晴れただろうと思っているからだろう。
「そうなのですか?雑誌では『有名な企業の創業者一族の骨肉の遺産争い』とか書いてあったので……百万単位で争った挙句(あげく)、絶縁してしまうのは悲しいですね……。それはそうと西ケ花さんは結局どうなったのですか?」
 日々の業務に追われる祐樹は不本意ながらも探偵役を引き受けた日々は既に過去の遺物として脳のゴミ箱に入れてしまっていて、こういう機会でもないと情報を更新しようとは考えないだろう。
 勤務時間で計算すれば祐樹の(ほう)が遥かに多いが満足そうな溜め息を零している最愛の人は(しつ)という点で勝っている。それでも定時に帰宅出来る要因は卓越した事務処理能力などの秀逸な頭脳を持っているからだ。
「西ケ花さんは現行法では裁けないので、相続放棄を条件に警察署から解放されたと森技官が言っていた。今後は刑法改正に向けて法務省の纐纈(こうけつ)次官を中心に動いているらしい。まあ、妥当な判断だな……」
 ということは、西ケ花さんは晴れて自由の身になったということだ。もしかしたら今頃は新しい愛人(パトロン)探しの真っ最中かもしれない。
 祐樹が参考文献(?)として読んだ本では愛人を生業(なりわい)にしている主人公の年齢は27歳で、チラシ程度にしか出して貰えないような売れないモデルをしていた時に金持ちの男性に見初められ贅沢な暮らしをしていた。その後、愛人(パトロン)の会社が破綻してしまったのだが、その男性は次の愛人(パトロン)を紹介するという親身さだった。
 ただ、次の男性との関係が終わるのではないかと予感した主人公は新たな愛人(パトロン)探しを続けるというストーリーだった。
 その愛人候補の一人に連れて行かれたレストランで「かつては一世を風靡した」歌手と出会って(あの歌手よりも今の私は綺麗)と思っていた。女性、特に美女というのは美醜をランク付けして優越感に浸るのが一般的かどうかまでは知らないが、少なくともその主人公はそういう考えを持っていた。
 モデル事務所に所属したままになっていて「洗練され、お金を掛けた美しさ」を備えた彼女に仕事のオファーが来ても断っているという一文があって、祐樹などは雑誌のモデルとしての実績を積めばさらに自分の商品価値が上がるのに、何故しないのだろうと読んでいて思ったものだ。
 若さというのも一種の武器だろうし、27歳という設定の彼女よりも西ケ花さんの方が不利だろう。
「そうですね。医療従事者が善意で書いた『コレステロール値を下げる方法』的なものを悪用した点は若干腹立たしいですけれども、彼女も流産させられたという過去があるのである意味被害者ですよね……」





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気分は下剋上 ある何でもない秋の夜 6

「とても気持ちが良いので出来れば続けて欲しい……」
 廊下を歩く時とか――それこそ教授総回診の時は威厳すら感じさせる――立っている時には背筋を伸ばして凛とした佇まいの最愛の人だけれども、手術中は無理な姿勢を長時間続けることもあるので肩だけでなく腰にも負担が掛かっているのだろう。
 ラベンダー畑にいるような芳香の中――実際に行ったことはないのであくまでイメージだ――最愛の人の滑らかな素肌に触れているだけで祐樹の心も癒される。
 愛の交歓の時とは異なったスキンシップも澄み切った海が()いで春の太陽の光を照り返している風景を想起するほどの穏やかさだった。
 たまにはこういう時間を過ごすのも悪くない。
「太田医院な……。あれは森技官に報告した甲斐が有ったな……」
 最愛の人が満足そうな溜め息と共に言葉を紡いでいる。
「そう言えば、あの常に偉そうな態度が鼻に付く事務局長が怖がっていましたけれども、具体的にどうなったのですか?」
 詳しいことは聞いていなかった。それにポジション的に祐樹から森技官に報告というか通報するよりも最愛の人の方が適任なのも確かだったし。
 平日は何かと慌ただしくてどうでも良い話は後回しで、休日は恋人としての時間を最優先したかったので仕事に絡んだ話は極力避けている。
 だからこの時とばかりに聞いてみた。
「問題点を列挙して森技官に報告した。その裏付けのために藤宮技官が派遣の医師として潜入して『改善の見込みなし』と判断したらしい」
 藤宮技官は森技官の腹心の部下で大変有能だけれども、AIというかアンドロイドを彷彿とさせる無機的な雰囲気を持っている。仕事振りも――「例の地震」の時は一切の感情を排して機械的な判断が求められるトリアージ要員として――完璧だった。
 それに何より何故か森技官に心酔していて、彼の命令には絶対に逆らわない点から当時の厚労省ナンバー2に最愛の人が「そういう」意味で狙われた時には藤宮技官が文字通り盾になってくれた。その点には感謝してもし切れない。
 そういう彼女が太田医院の監査に入ったらあの医院の杜撰過ぎる経営とか患者さんの院内での飲酒喫煙容認とかバイタルサインの警告音放置などは余すところなく森技官に報告されるだろうなと思った。
「それであのいい加減過ぎる医院はどうなったのですか?」
 祐樹は決して完璧主義ではない――ただ手技には完璧を目指してはいる。達成したという実感はなくて反省点ばかりが重くのしかかってきているのが実情だった――ただ、同じ医療従事者としていい加減の度が過ぎると呆れていたのも事実だった。
 祐樹がそういう感想を抱くのだから、完璧主義者の最愛の人の堪忍袋の緒が切れたのも納得出来るし、太田院長を庇う気持ちも一切ない。
「わざわざ厚労大臣直々のハンコ入りの出頭命令を出して『太田医院に業務停止命令を出すか、太田院長が院長の座から潔く退いて厚労省が推薦する医師を院長にして内部の立て直しを図るかのどちらかしか道はない』と通告したらしい」
 業務停止処分を受けると病院機能がストップする。当然収入は途絶えるし、厚労省のサイトでも病院名は公表されると聞いている。祐樹は全く関心のない病院経営だから詳しくは知らないけれど、私立病院の経営者含む医師達が入る医師会の会報にも載るとか。つまりは医師として院長としては致命的な汚点を晒すことになる。
 医師免許は剥奪されないが、不名誉な噂は私立病院の界隈で全国的に広がるので雇用先を探すのも一苦労だろう。
 まあ、無医村とか船医とかの深刻な医師不足に青息吐息といった状態の所だと医師は続けられるだろうけれども、あの太田院長の性格だとそういう場所でしか働けないなら医師生命は絶たれたと考えるだろうなと。
 クリニック経営といえば、停年後は最愛の人と海の近くでクリニック経営が出来れば良いという未来予想図は漠然と持ってはいるし、実現したら経営にも当然携わることにはなるだろう。けれど気が向くと二人で現在では不可能な長期の旅行に行く積りでいるので、儲けは度外視という経営理念(?)だしその町にクリニックがないような僻地(へきち)に建てる気は毛頭ない。ある意味ボケ防止のために医師は続けるものの、のんびりとした日常を送りたいという「野望」を持ってはいる。他にクリニックがない町か村だったら、休診は不可能なので旅行などもっての外だ。だから他にも患者さんが行くことが出来るクリニックがある場所に建てるという「野望」だ。
「太田院長は後者を選んだのですね……」
 腰から背中、そして肩まで弱い力で揉みながら聞いてみた。
 最愛の人は満足そうな吐息を零している。このまま眠っても良いし話を続けても良い程度の話題だ。何しろ太田医院は祐樹にとって脳のゴミ箱に既に入っている存在だったからどうなろうと知ったことではない。
「その通りだ。でも祐樹は良く分かったな?」
 不思議そうな色合いを感じる声に苦笑を漏らしてしまう。
「あの事務局長の怯えた様子は『森技官なら病院に業務停止命令が出せる』ということだと納得が行きました。まあ、ウチの病院は太田医院のような(つつ)いたらすぐに(ほこり)がもうもうと立ちこめるような疚しいことなどないのですけれど、その点は分かっていないのかも知れないですね。
 コロンビア大のМBAホルダー様は利口かと思っていたのですが意外にも馬鹿なのかも知れません。いや、馬鹿というか小心者かつ視野が狭いといったところでしょうか?」
 祐樹のマッサージが肩凝りにどの程度効いたか確かめるために指で触れてみた。





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気分は下剋上 ある何でもない秋の夜 5

 最愛の人は祐樹の指の動きにつれて満足そうな溜め息を零してくれている。
「出来れば、三角筋の辺りも祐樹の掌で揉んで欲しいのだけれども……」
 遠慮がちな声がベッドの上に零れている。三角筋とは肩から腕の付け根の辺りだ。
「腕も酷使なさっていますから凝っているでしょうね。気が付かなくて申し訳ないです……。
 うつ伏せになって頂けますか?」
 最愛の人がしなやかな肢体を蝶のように翻した。家に居て寛いでいる時の晴れやかな表情を浮かべているので一安心だ。
 陶磁器のような滑らかな背中の肌が祐樹の眼前に披露されていて、普段は「据え膳食わぬは男の恥」を座右の銘の――と言っても据え膳に(あたい)するのは最愛の人ただ一人だ――祐樹には垂涎モノの眺めなのだけれども、(あと)数時間でこの人は祐樹だけの存在ではなくなって、彼の手技を慕う患者さんのモノだ。
 休日ならばこのまま……という気にもなるだろうが、公私のケジメは弁えている。時々暴走しそうになるものの、今夜の辛うじて理性がストップを掛けてくれた。
 三角筋を手全体でマッサージをした。
 日常の筋肉の動きとは逆の方向に揉むのがコツらしい。
「先ほどの話の続きですが、あちらは省庁ですし、れっきとした国家公務員です。それに比べてウチの病院なんて独立行政法人ですし、私達だって準公務員と見做されるのに。省庁様に破綻はまずないですよね。あれだけの旧悪をやらかした厚労省も今も存続しています。薬害エイズとかはその最たるものだと思っていますけれど……。ただ、事務局長が何故省庁を下に見るのかサッパリ分かりませんけれど……」
 白血病患者に非加熱製剤を投与し続けて――アメリカなどは加熱製剤に切り替わった在庫処分との説もある――エイズ患者を多数出した事件だ。
 最愛の人は枕から顔を僅かに上げている。どうやら祐樹の愚痴に付き合ってくれるらしい。眠ってもらっても構わないのだけれども、一旦火が点いた事務局長への恨み言を告げたいという気持ちも有って自分の我儘(わがまま)さに自己嫌悪してしまう。
「厚労省への不満は現場の医師が誰もが口にするな……。事務局長の言動は下に見ていると言うか、自分がそういうお役所に就職出来なかったとかで、高いプライドを否定された逆恨みではないのか?
 医師の場合は、例えばいきなり薬が使用禁止になったと呉先生も激怒していたし……。
 それはそうと、確かにウチの病院の財務状況は良いとは言えない。救急救命室をセンターに格上げするというプランもあの事務局長がああだこうだと理屈をこねて一向に進展しないのが現状だ。
 病院経営はボランティアではないのは承知しているけれども、赤字でも必要な科やセンターは残しておかなければならない。
 事務局長はそういう公器としての病院の役割よりも財務の健全化の方が重要だと考えているな……。
 赤字が出るのは仕方ないと割り切って……祐樹も執刀医としてご指名が来るようになったし……何だか自分で言うのは恥ずかしいけれども心臓外科のような充分過ぎるほどの黒字の科から回すというのをどうあっても認めさせないといけないと思っている。
 それに脳外科の白河教授と悪性新生物科の桜木先生との新術式が医学界に与える影響は計り知れない。
 私のバイパス術は独自のアレンジは加えているものの、所詮は人から教わった手技がベースになっている。それに比べて白河教授と桜木先生の確立した手技は独創性に溢れているので、全国の病院から患者さんの搬送要請が来るレベルだ。
 そういう黒字化する科をもっと作って赤字を埋める努力をした方が独立行政法人になったとはいえ、大学病院の使命だと考えている」
 最愛の人が珍しく熱弁をふるっている。すっかり頭痛は解消したのは喜ばしいけれども、今は彼にリラックスして欲しい。
「その話題では身体に力が入ってしまいます……。そういう話は浜田教授との呑み会でなさったら彼は泣いて喜びますよ、きっと。
 その時までは文字通り『肩が凝らない』話をしましょうね」
 少子高齢化の影響で小児科も赤字部門だ。祐樹は自分で言ったリラックスという言葉で連想ゲーム的に良い物が有ったと思い至った。
「少し中断しても良いですか?」
 ベッドから下りて心当たりの場所を探した。もっと早く気付けばよかったと後悔しながら。
「このお香なのですが、以前長岡先生に頂きました。火を点けますね」
 祐樹の個室から持って来た灰皿の上にお香を置きピラミッド型の頂点にポケットに入っていたライターの火を近付けた。馥郁たるラベンダーの香りが寝室中に広がっていく。
 確か長岡先生は「リラックス効果が最もあるのはラベンダーですわ」とか言っていたし、何故か箱ごと祐樹に呉れた。その箱は紙箱ではなくて漆器で作られていたのでさぞかし高価なのだろう。
 値段の分だけ香りの拡散も早いのだろう、そして、お香を「聞く」だけで祐樹の疲労も雲散霧消していくような感じだった。
「とても良い香りだな……」
 最愛の人も感心したような声を出している。
「マッサージを始める前に焚くべきでしたね。気が回らなくてすみません」
 肩は解れたけれども、腰はどうだろう?長時間同じ姿勢でいるので腰痛に悩まされる医師も多い。背骨から腰へと指を滑らして恥骨から座骨の辺りを指で押した。
「そこもとても気持ちが良い……」
 最愛の人の満足そうな声をBGМに出来るなんて何と幸せな手作業だろうと思ってしまう。
「先ほどの話の続きですが、厚労省の森技官からのご指名だと言ったら、腰を抜かしそうになっていました。
 『あの』森技官の『悪名』を利用させて頂きましたが、ここまで効果が有るとは思ってもみなかったです。『太田医院を乗っ取っ、いや管轄下に置いたあの森技官の指示でしたか!それならそうと早く言って下さい』とか言って全額を即座に頂けました。一矢(いっし)報いたという感じで爽快でしたよ」
 ラベンダーの香りの中で最愛の人が楽しそうな笑い声を立てている。
「腰はもっとマッサージした方が良いですか?」






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