腐女子の小説部屋

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気分は下剋上 主な登場人物紹介小説

気分は下剋上 登場人物紹介小説 完(15)

 中身はカオスという言葉でしか表現出来ないほどぐちゃぐちゃだったので。
 祐樹は良く知らないが、女性が化粧品を持ち歩く時にはポーチ(?)だかに入れるらしいが、長岡先生は口紅やその他化粧品をバラバラに入れていたし、医学書の真ん中に何故かホッチキスが挟んであったりハンカチも、綺麗に畳むどころか、ぐしゃぐしゃのままで何枚も入っていたりで。
 そして極めつけは京都市指定ゴミ袋を一枚だけ取り出した時にくっついて出て来たのだろう、開封口から数枚のゴミ袋がごちゃっと出ている。
 まあ、祐樹も学生時代から住んでいたアパートでは棚の中でそういう状態にしていたことは有った。ただ、このバッグは四千万円だ。

 そのことを最愛の人に告げたら祐樹よりも遥かに几帳面な性格なので絶対に整理整頓をしようとするだろうし。

 黙って彼女に手渡した。

「まあ、田中先生有難うございます。このタイプのバックはたくさん荷物が入るので重宝しているのです。

 あら、スマホはどこに行ったのかしら」

 ――確かにあの混沌(カオス)の中から探すのは大変だろうなとしみじみ思った。

 バックの中はチラリと見ただけだが、収納力という点は問題がない。何しろ分厚い医学書も入るのだから。

 最愛の人の手技を信頼して国内外から患者さんが入院してくる。その中には財界の大物とかも居るわけで「犬を散歩させるために大きな家と庭が必要でして」と笑いながら言った人も存在した。

 犬など、そこいらの歩道で散歩させたら良いと内心思ったが、長岡先生も同じ思考回路の持ち主なのだろう、多分。

「落ち着いて下さい。着信音が鳴ったからには確実にそのカバンの中に有りますので」

 探しているというよりはかき混ぜているという感じの長岡先生を見ていると、職場での有能振りが別人のようだった。

「あの、お願いしても良いですか?」

 信号が青になる直前に祐樹は電話を掛けるというジェスチャーを後部座席の人に送った。

「ああ、そうだな。分かった。長岡先生、今から私が鳴らしますので、その音で探して下さい」

 最愛の人も即座にスマホを取り出してタップしている。

「有りましたわ。百貨店からですわ。岩松からかと思ったので焦りましたが……。後で掛け直します。

 それにしても、田中先生が『あの』と(おっしゃ)って教授が即座に理解なさったのには驚きました。

 覚えていらっしゃるかどうか分かりませんけれど、お二人がキスなさっている所を偶然に見てしまいましたよね……」

 覚えている。あの時の長岡先生は手にケガをしているにも関わらず、患部を心臓よりも上にするという基本中の基本も忘れ果てていた時だった。

「そんなこともありましたね……」

「そ、それは……」

 二人同時に口を開いていた。

「いえ、アメリカに居た時から教授に想い人がいらっしゃるのは存じていました。

 そして、その恋が叶うと良いなと個人的には思っていましたのよ。そして、両想いになって関係が深まるのも大体は察していましたけれど。

 キスを交わしていた時に『田中先生なら大丈夫。きっと香川教授を幸せにしてくれる』と直感的に思いましたけれども、実現なさって、そしてずっとその想いが継続していて本当に良かったです。

 心から祝福申し上げます。

 お二人とも末永く幸せに暮らして下さいね。

 アメリカ時代の教授は表情も曇りがちで、退院していく患者さんを見送る時以外に笑顔は滅多になかったのです。

 それが田中先生と一緒にいらっしゃると輝くような笑みを浮かべていますよね。それを拝見したら(わたくし)まで幸せになりますもの……。香川教授が田中先生のことを太陽のような人だと仰っていて、本当にその通りだと思います。

 どうか、ずっと香川教授のことを照らしてあげてください」

 真剣な口調で長岡先生が言い募っている。

「はい。生涯に亘るパートナーとして大切にします。

 それに、実家の母も――あ、父は故人です――実の息子以上に大切に思っていまして『彼と別れたら勘当する』と。物凄く気に入っていますよ。今では家族の一員として――まあ、一緒には住んでいないですけれど――扱ってくれています、お互いが。今日も私の母の好きな季節限定のお菓子を買って贈るために百貨店に行こうと言ったのはこの人です。

 母がどうとかではなくて……死が二人を分かつ『とも』ずっと一緒だと誓いましたから、その点はご安心ください。

 今の私があるのは最愛の恋人のお蔭ですし、永遠に、そして公私共々一緒に人生を歩んでいくことをお約束します」

 バックミラーを見ると最愛の人が薄紅の滑らかな頬に涙の小川を作っていた。

 さんざん告げたことだが、他人の前で――しかも長岡先生のことは仕事では優秀な人間、プライベートでは困った妹扱いをしている、血縁は全くないが何となく家族めいた感情を最愛の人が抱いているのは知っていた――断言されるのはやはり異なるのだろう。

「まあ、虹ですわ。あんなにくっきりと七色が出ていますし、半円形の形も綺麗です。

 お二人の未来を象徴しているようですわね」

 長岡先生の言葉通り、土砂降りの雨の後だからか本当に綺麗な虹が青い空に架かっていた。

 振り向いて最愛の人を見ると、涙を纏ったまつ毛とは裏腹に目を輝かせて祐樹と虹を交互に見ている。

 ずっと二人で人生を歩んでいこう、あの虹よりも鮮烈な人生を。
                                   
               <了>



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ポチっと応援有難うございます!
後書きです。
この辺りの人間関係を抑えておけば大丈夫じゃないかな?的な小説でした。これでやっと終わりです。何で毎回こうも長くなるのか自分でも呆れています。
二つとも読んで下さっている方はお気づきかもですが「ブログの文字とかレイアウトが違う」のです。
ワードとライブドアブログをいろいろ弄っても改善出来ず、たまたまネカフェで予約投稿してみたら不思議なことに綺麗になりました。。。

これからの小説全部をネカフェでアップするのは無理そうですが、なるべくネカフェで予約投稿しておきます。

もう九月だというのに「夏休み」はまだまだ続きます。
読んでくだされば嬉しいです。
                  こうやま みか拝


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感想(757件)









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気分は下剋上 登場人物紹介小説 14

 最愛の人が実力至上主義のアメリカで巨額の財産を築いたことは知っている。具体的な数字は敢えて聞いていないけれども、祐樹が質問しないだけで、聞いたら多分教えてくれるだろう。

 その世界ではお手頃なのか……。立っているステージが違い過ぎるような気がした。

 ただ、最愛の人は住む場所――これも帰国時の忙しさのせいで長岡先生に全てを任せて現在のマンションに決まったらしい――以外は庶民的な生活をしている。

 スーツなどが長岡先生も御用達(ごようたし)のブランドなのは「教授職として恥じないように」という彼なりの配慮だし、一種の必要経費だろう。

「お手頃価格なのですか……?」

 思わず心の声が漏れてしまっていて、少し恨めし気な口調になってしまっていた。しかし一度口に出したモノは取り返しがつかない。

「ゆ……祐樹。そういう意味ではなくて……。香港のオークションで4,200万円程度の落札価格だったという記事を読んだだけで……。

 それよりも200万円安いから、お手頃なのではないかと思っただけで……」

 若干混じっていた恨めしそうな口調を気取られてしまったのだろう。最愛の人が必死にフォローしようとしてくれている。

 そういう健気さが大好きだ。

「ああ、そういう意味ですか。なるほど。二百万も安いとなると、確かに……」

 エリートビジネスマンとか富裕層が読む雑誌の「外科医100選」とかの記事には必ず紹介される最愛の人は出版社から送られて来ていることも知っていた。

 だから雑誌で読んだ知識を披露したに過ぎないのだろう、多分。

もう桁が違いすぎてむしろどうでも良くなってきた。祐樹がセンター長を務めるAiセンターにも億単位のMRIが有るが、あれはキチンと扱える医師や技師――もちろん祐樹も含めて――が居て、キチンと有効活用している。

しかし、長岡先生のバッグは無用の長物ではないかとも思えてくる。

「岩松も香港のオークションで落札したとかで……。『君が持つのに相応しいバッグだ』とか申しておりました。しかし、普通のバーキンならともかく、このお値段でしょう。同僚とかナースに見つかれば流石に宜しくないと思いまして」

 仕事の延長線で会う岩松氏は如才ない常識人といった感じなのに、婚約者には殊更甘いのかもしれない。

「『高価な』バッグを持って出かける時にはハイヤーを使えば良いのでは?」

 後部座席から怜悧な声が沈着に響いた。「高価」を強調したのは先ほど祐樹が恨めし気な声を出したフォローだろう、多分。

「ハイヤーですか?まあ、その手が有りましたわね。岩松は運転手を雇ったら良いと申しておりましたけれど、毎日のように車を使うわけではないので遠慮しましたの……」

 タクシーとハイヤーの違いが良く分からない。

「ハイヤーだと百貨店の駐車場で何時間でも待ってくれますし、色々なお店を回る時も便利だと思いますよ。傘をさしかけてくれるなどのサービスも有りますので長岡先生にはお勧めだと思いますが」

 そういうシステムなのかと納得した。タクシーは乗ってから料金が発生して下りる時に清算する。しかし、ハイヤーは多分、拘束時間などで料金が決まるのだろう。そして、長岡先生に運転させたらどうなるのかは明白なので絶対に止めて欲しい。

「スマホの着信音が鳴っていますが?」

 音は長岡先生の四千万円のバックの中から聞こえる。

「あら、田中先生有難うございます。えっと、これってそうやって開けるのでしたっけ……」

 開け方も知らない――この「ヒマラヤ」だかシベリアだかは初めて見たが、彼女は病院にも同じブランドの同じ形のバックはよく持って来ているのは知っていたし、素材が異なるだけで使い方は同じハズだ、多分――4千万円のバックって……と一瞬遠い目をしてしまった。やはり無用の長物だ……。

「教授のお心遣いはとても嬉しいのですが、普段はこんなにきっちりと閉めないので……」

 ……この4千万円のバックこそ街で見かけたことは多分ない。すれ違った女性がもしかしたら持っていたかも知れないけれども記憶に留める価値は少なくとも祐樹にはなかった。

 ただ、女性の憧れの的のバックだということは知っていた。そして文字通り仰天の値段も。

 ひったくりとか盗難のリスクを――こんなとんでもない値段のバックが買える人だと財布の中も潤沢だろうと考える悪人は絶対に存在すると予想は出来る――考えないのだなと唖然(あぜん)としてしまった。

「長岡先生、落ち着いてください。まず中央の丸い取っ手を回して、水平にして下さい。いや、場所は合っていますが、それでは垂直のままです」

 コントみたいな会話だったが、二人ともこの上なく真面目なのが逆に可笑しい。

「水平ですか?……硬いです」

 横目でチラリと(うかが)うと長岡先生の何も塗っていない爪で――患者さんが見ない所持品については何も言わないが、最愛の人もイマドキの若い女性が良くしているキラキラしたネイルだとか長い爪などは注意するだろう。ちなみに医局のナースにそういう注意をするのは祐樹の役目だと思っている。まぁ、今のところは、そういう不心得者は居ないが――悪戦苦闘している。

 信号が赤に変わったので、見かねて声を掛けた。

「スマホはこの際忘れましょう。着信履歴が残っているでしょうから折り返し掛ければ良いコトです。宜しければ貸して下さい。この丸い所を垂直から水平にすれば良いのですね?」

 長岡先生がバッグを事も無げに渡してくれた。足の上に乗せたモノが四千万円か……と正直なところ少しビビる。決して臆病でもないのだが。

 最愛の人と以前観たドラマの一場面が脳裏を(よぎ)った。派遣の銀行員女性が借名(しゃくめい)口座、つまりは税務署に見つからないように偽名で作った口座で、銀行もグルになっているらしく公には出来ない口座から1億円だか2億円だかを横領して百万円の束をたくさんベッドに乗せた真ん中に横たわった美女女優が笑っているというシーンだったが、あちらの方にシンパシーを感じてしまう。もちろん違法だし、絶対にしないが。

「確かに硬いですね。女性にとっては。

 これを回して、ああ成る程……中央に寄せているこのベルト部分をこうやって外せば……。そして金属部分からこう引っ張って……と、これで開くハズで……」

 す」と言って金属部分ではなくて覆い(カバー)的な役割を果たしているシベリアだかヒマラヤの革のパカっと開いた部分を見てしまった瞬間、心を無にした。




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気分は下剋上 登場人物紹介小説 13

「日本円に換算すると4,000万円くらいでしょうか?」

 よ、四千万円!!!

 家が買えるのではないだろうか?的な値段だ。確かにあそこのブランドはこの不況にも関わらず強気な値段設定をしていることは知っている。というか、最愛の人もそのブティックには良く行くので祐樹も詳しくなった。

 しかし、四千万円のバッグというのは驚天動地だ。

 それにそんな高価すぎるバッグを京都市指定ゴミ袋に入れて持っているとは……。

 祐樹の認識ではゴミ袋とは不要なモノを纏めて入れるためのモノだった。多分それが常識なのではないかと思うのだが……。

「ということは……中央に煌めいているのはダイヤモンドですよね……?」

 祐樹がおそらく一生見ることもない――いや、別に見たくもないが――希少なバッグなのだろう。

 な、長岡先生のすることには度々驚かされて来たが、超弩級(ちょうどきゅう)というか……想像の遥かに上というか斜め上を行っている。

 バッグミラーを見ると、最愛の人は真剣そうな眼差しをバッグに注いで精緻な動きでゴミ袋を(ほど)いている。

 解くモノはアレだが、手技の時と同じような感じの指先の動きは綺麗かつ流麗だった。手術の時は手袋(グローブ)をしているので、素手でこういう動きを見るのはより一層の鮮烈さだったが。

 長岡先生を車に乗せる前は(車内が濡れると嫌だな)と思ってはいた。しかし、金銭感覚がバグっているというか、祐樹とは二桁くらい異なるというか……、そういう異次元のバッグなので、車内は後で拭いたら良いだけだし、手に負えないようなら買った店に乗って行けばメンテナンスもしてくれる。国産車はそういう点が便利だし、身の丈に合っていると祐樹などは思うのだが。

「ええ、そう聞いていますけれども……。ただ、雨に弱いらしくって。

 途方に暮れていたところを香川教授や田中先生に見つけて貰えて本当に良かったですわ」

 こちらこそ、四千万円の物を車に乗せる日が来るとは思わなかったですと言いたいのを我慢した。

 そして、祐樹よりもそのブランドのブティックに行っている最愛の人なのだから、情報量も多いに違いない。

 だからこそ「非常に困った事態」と表現したのだろう、多分。

 祐樹などは、ゴミ袋を持って京都の目抜き通りを歩いている女性が医局の一員なだけに恥ずかしいと単純に思っていたが。

「雨に弱いのですか……。それは大変ですね……。ただ、高温多湿の日本に居る限りそれは不便だろうと思いますが……」

 濡れて困るようなバッグを作って、しかもそれを買う方も買うほうだとは思ったが、祐樹の懐が痛むわけでもないので黙っておいた方が無難だろう。

「そうなのです……。この『ヒマラヤ』は雨に弱いから気を付けなさいと岩松に注意されていたのですが……。

 そして目ざといナースにも見せることは出来ないので、持って行く場所が限られてしまうので、今日のお買い物には絶好のチャンスと思ったのですけれども……うっかりです」

 ヒマラヤ?ぱっと見た感じは牛革ではなくて、ワニとか爬虫類の革のようだったが、世界最高峰の山にちなんだワニだかトカゲだかが居るのだろうか?

 岩松氏というのは長岡先生の婚約者で、日本一有名な私立病院の御曹司だ。

 祐樹最愛の彼を自分の病院にスカウトしたいと言っていて、凱旋帰国直後の医局のトラブルの時は「二人の関係を知った上で」病院に招いてくれた。その後は執刀医としての経験を積むために祐樹はこっそりと岩松氏の病院で手術をこなしてきた。

 長岡先生には「家事などは使用人に任せて、内科医として、そして未来の院長夫人としての振る舞いを覚えて欲しい」と言っている鷹揚(おうよう)な人だった。ある意味お似合いともいえるが。

 ただ、最愛の人が居たアメリカの病院で内科医として勤務後、凱旋帰国と共に香川外科に所属となった。

 その頃の岩松氏は有力政治家のご令嬢か何か、そういう断るのが難しい縁談が進んでいたらしくて極秘だった。祐樹は公私混同して最愛の彼が「婚約者」と――こういう性格の人とは知らなかったし、仕事場では才色兼備の生きた見本といった感じだ――同伴して帰って来たのだと誤解していた。

 しがない研修医と教授職しかも婚約者付きという格差に内心嫉妬と怒りを覚えていた。

 今となっては笑い話だが。

「長岡先生、これで如何でしょう?水滴は付いていないと思いますが……」

 しなやかな指と華奢な手首が長岡先生の方へと向けられている。ゴミ袋は器用に裏返しになっていたのはバックミラーで確認した。

「まあ!有難うございます。もともとバックについていた水滴まで拭って下さるなんて……ご親切にありがとうございます!

 やはり香川教授は何でもお出来になって……。とても羨ましいですわ」

 最愛の人は可笑しそうに唇を弛めている。

「全てというわけではないですよ。砕けたダイヤモンドの修復は無理でしたし。

 ただ、ダイヤモンド付きの『ヒマラヤ』のお値段としては手ごろです。以後は濡らさないようになさってください」

 え?と思った。四千万円がお手頃価格?




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気分は下剋上 登場人物紹介小説 12

 長岡先生は百貨店の玄関口から直ぐのところを歩いている。

それは良いとして、なぜ京都市指定の透明なごみ袋に何かを入れて持っている。

 最愛の人と暮らすマンションでは縁のないシロモノだったが、学生時代から住んでいるアパートに毛が生えたような下宿先で早朝にゴミ出しに行った記憶がある。それはあくまでも朝であるべきだし、アパートの敷地内とかゴミステーションといったご近所でしか持ってはいけない物ではないだろうか?

 ゴミ袋を片手に持っている割には上品な薄紫色のワンピースにハイヒールといった「百貨店」に相応しい身なりだった。まあ、雨に濡れて巻いていたと思しき髪の毛はあちこち変な方向に向いていたが。

 ただ「非常に困った」とまではいかないような気がする。にわか雨のせいで、徒歩の人は自分のことで精いっぱいという感じか、雨に濡れる程度は何でもないと言いたげに歩いている人に分かれているようで、前者は他人のことなど顧みる暇はなさそうだし、後者は他人のことはそもそもどうでも良さそうな雰囲気だった。

 確かに京都の百貨店前でゴミ袋を持って歩くというのはそぐわない。

 しかし、長岡先生ならば仕出かしそうなのを一番分かっているのが最愛の人のわけで。

「祐樹、長岡先生を乗せて良いか?座席が濡れてしまうのだが……」

 祐樹はやっと空いている場所に車を停めてから肩を竦めた。

「あの姿をナースにでも見られたら大変ですから。医局の一員として放置出来ないですね」

 長岡先生は病院のファッションリーダーとしてナース達から憧れの的なのも確かだ。

「有難う。では呼んでくる」

 シートベルトを外しかけた助手席の人の若干華奢な肩に手を置いた。

「クラクションを鳴らせば多分気が付くでしょう。気づかなければ私が呼びに行きます」

 愛の交歓の時以外で最愛の人に無理はさせたくない。体調管理も仕事のウチだし、その点は最愛の彼も大変気を配っていることも知っている。ただ、やはり愛する人を優先したいのは当たり前だろう。

 クラクションを鳴らしていると、助手席の人は窓を開けて手を振っている。

 長岡先生がこちらに気が付いたようで、手招きをしている。

「後ろの席に移動した方が良いだろうな。あの様子ではマンションに帰るだろうから、彼女を先に下ろした方が合理的だし……。

 しかし、祐樹は以前『助手席は私だけにしか座らせない』と嬉しいことを言ってくれたので……。祐樹のその気持ちも尊重したいし……」

 珍しく逡巡しているようだった。

「長岡先生の『大変困った事態』なのですよね。それでしたら、ノーカウントにします」

 正直びしょ濡れの彼女を助手席どころか後部座席にも座らせたくないのだが、百貨店には病院のナースも良く来ると聞いている。香川外科の一員としては、あの姿を目撃されたくない。香川教授の懐刀と呼ばれるほどになった祐樹にとって、長岡先生の醜態は医局の恥だ。

「祐樹、有難う。

 長岡先生、宜しければ乗って行きませんか?」

 最愛の人が助手席の窓をよどみない、しなやかな動作で開けている。その鮮烈過ぎる白い指の動きに見惚れてしまう。

「あら、奇遇ですわね。香川教授、そして田中先生ご機嫌よう」

 いかにも育ちの良い言葉遣いだったが、ずぶ濡れになった上に京都市指定ゴミ袋を持った人に言われても……と苦笑してしまう。

「マンションに帰られるのですか?それともどこかに寄られます?」

 最愛の人は慣れた動作で後部座席に移動している。祐樹の母とかを後部座席に乗せたことがあったので見て覚えたらしい。

「マンションに帰ります。本当はもう一軒寄りたいお店が有ったのですけれど、こんな格好になってしまっているので……」

 流石にその程度の自覚はあるらしかった。

 助手席に乗り込むと水滴が滴っているごみ袋が気になって仕方ない。

「長岡先生、宜しければ私がその包みを(ほど)きます。水滴がカバンについたら大変ですよね?」

 後部座席から最愛の人が懸念に満ちた声を掛けている。

 長岡先生のカバンをよくよく見ると、白と灰色のグラデーションが綺麗だったし、しかもメレダイヤモンドと思しきモノがカバンの中心部にキラキラと光っている。

 しかも、長岡先生は「物がたくさん入る」ということで最愛の人御用達の往年の女優の名前の付いたバックを愛用していて、形は同じに見える。

 長岡先生の普段の生活・性格を知っているだけに本物だろうな……と思う。

 ナース情報によればこのバックはよほど運が良くないと買えないらしい。しかも何だかとても高級そうな感じだった。

「そうなのです。雨にはとても弱いカバンらしくって……。

 濡らさないように気を付けていたのですけれど、急な雨に降られてしまって……。

 幸い、ゴミ袋も購入していたのでそれで包みましたの」

 ――百貨店にゴミ袋も売っているかどうかは祐樹も知らない。

「ちなみに、おいくらなのですか?」

 品物の値段を聞くことが非礼なことも知ってはいたが、相手は長岡先生だ。気を悪くしないだろうと恐る恐る聞いてみた。

 最愛の人は「非常に困った事態」とまで言っていた。この女性用のカバンこそ持っていないが、御用達(ごようたし)のブランドなのできっと祐樹よりも情報は持っているハズで。

 その彼が手先の不器用さでは定評のある長岡先生からごみ袋に入れたバックを細心の注意を払ったという感じで解いているので高価なのだろうな……とは思ったのだが。

 次に発せられた長岡先生の言葉に事故りそうになるほど驚いた。


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気分は下剋上 登場人物紹介小説 11

「呼んで下さって有難うございます。今日は和風フレンチですか?とても美味しそうですね」

 透明な笑みを浮かべて祐樹の方へ向かって来る足取りが軽やかだった。

「白河教授と桜木先生に先ほどお会いしましたよ。

 医局運営のことで何かアドバイスなさったとか」

 牛蒡(ごぼう)と思しき冷たいスープが美味だった。

「ああ、医局員同士のトラブルが有ったらしくて。

 どちらの意見もじっくりと聞いて、良い点は褒める。そして感心出来ない点はキチンと釘を刺しておいた上で皆の前で仲直りさせれば良いと言っておいたのだが……」

 サーモンのマリネを口の中に入れた最愛の人がふんわりとした笑みを浮かべている。

「そうなのですか?ウチの医局では起らない類いのトラブルですけれど……」

 最高に美味しいステーキを――目の前に居るのが最愛の人だから更に美味しく感じるのだろう――味わいながら答えた。

「医局では起っていないのは正解なのだが、それはトラブルが顕在化する前に祐樹が抑えてくれていることは知っている。

 そして祐樹ならどうするかな?と考えてアドバイスしただけだが……」

 最愛の人の最高の答えに思わず笑みが浮かんだ。

「それは光栄です」

 笑い合って食べるランチは最高級に美味だった。

「祐樹、今日は定時上りだろう。百貨店に行かないか?

 出来れば買い物に付き合って欲しいのだが……」

 デザートの抹茶ソース掛け白玉をフォークとナイフで器用に掬う指の動作が匂い立つように鮮やかだった。

「ええ、もちろん。ご一緒します」

 

◇◇◇

「子供の頃夕立は夏に降るものだとばかり思っていましたが、この頃は季節構わずといった感じの豪雨ですよね。車で来て良かったと思います」

 ほんの30分前はあんなに晴れていたのにワイパーを「強」に設定してもよく前が見えないほどだったので更なる安全運転を心がける。こんな時に自動車事故を起こして、最愛の人に怪我を負わせたくないし、他人様に迷惑もかけるのも願い下げだった。

「本当だな……。祐樹のお母さまへのプレゼントを百貨店からの配送にしてもらって正解だった。一回自宅に持って帰り、手紙を同封しようかと思ったのだが……」

 薄紅色の笑みを浮かべて祐樹に話しかけてくれる。

 自動車の中では見つめ合えないのが残念だ。それに前方を注意しないとならない激しい雨だったし。

「先月は貴方手作りの『いかなごのくぎ煮』を送ってくださったでしょう?あれって神戸名物ですよね。母はご飯が進むとたいそう喜んでいましたし、それに何より貴方から贈って貰うだけで充分喜ぶと思いますので大丈夫で」

 すよ」と言いかけて、最愛の人の視線が車窓に注がれているのに気が付いた。しかも、驚きと怪訝そうな表情で。

「どうかなさいましたか?」

 彼をそんな表情にさせる何があるのだろうと不思議に思いながら聞いてみた。

「祐樹、車をUターン出来るか?」

 割と切羽詰まった声で言われて道路標識を確認した。

「可能ですけれど、いったい何が?」

 最愛の人は言葉を選んでいる雰囲気だったので、取り敢えず先ほどの場所に向かうべくウインカーを出した。

「長岡先生が非常に困った事態に陥っている……」

 最愛の人がアメリカの病院時代に内科医として来た彼女の優秀さを認めて凱旋帰国の際に連れ帰った逸材だ。ただ内科医としては専門の内田教授が「うちの科に是非」とスカウトするほどに優れているものの、プライベートでは常に突飛なことをしでかすし、部屋は乱雑を極めている。

彼女の婚約者は日本で知らない人が居ないほどの有名私立病院の御曹司で、最愛の人や祐樹をスカウトしてくる。性的な関心が女性に向かない二人のことも知っているので、長岡先生の部屋にも入ることを許されている。

 また最愛の人は両親も既に亡くしているし、兄弟どころか親戚もいない。だから長岡先生のことを「困った妹」扱いしている(ふし)がある。

「困った事態ではなくて、非常に困った?」

 確かダイヤモンドの強度を試すためという研究心、いや出来心かも知れないが婚約者から貰った3カラットだかのダイヤを砕いてしまい、最愛の人に「直してください」と電話を掛けてきた過去がある。

「ほら、あれは長岡先生だろう?車を停めて貰えないだろうか?」

 しなやかな長い指が示している場所を見て、内心(嘘だろっ!マジか?)と思ってしまった。

 そういう言葉遣いは病院に就職したのを機に止めようと決意して実際その通りにしてきたけれども、マジか?というのが正直な感想だった。



___________________


後書きめいたもの
すみません、都合により更新時間遅れています。
二時間後に「夏休み」を更新します。宜しければお待ちください。


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