腐女子の小説部屋

創作BL小説を綴っています。ご理解の有る方【18歳以上】のみ歓迎致します

気分は下剋上<夏休み>

気分は下剋上<夏休み>最終話

「あの子達も育った場所に返してやりたい。この辺りでも生きられるだろうけれど、山が近いとはいえ、一応都会なので……。

生まれた場所はもっと山間部だろう?そちらの方が生きやすいと思う。

祐樹には迷惑を掛けることになってしまうけれども……」

律儀で誠実な性格なのは知っていたし、そういう面も祐樹にはないこともあって好ましい。祐樹は最愛の人に対して誠実であろうと努力はしているものの、それは後天的なモノで生まれついてのものではない。

「良いですよ。今回のデートの目標はセミの羽化を貴方に見せることと、カブトムシやクワガタの捕まえ方をお教えしたかっただけで、それ以上のことは行き当たりばったりというか、ノープランですから」

 セミの羽化よりももっとイイものが見られたことは、清々しい朝の光の下で言うのは流石に憚られた。

「祐樹、ありがとう」

 最愛の人の極上の笑みが祐樹を心の底から幸せにしてくれる。

 二人して木立を歩くと(せみ)時雨(しぐれ)が上から降り注いでくる。

「この辺りだったよな?」

 夕方と朝では木立の雰囲気も異なっているので最愛の人も確信が持てないようだった。

「そうですね。ただ、セミは羽化を完全に果たしたら直ぐに飛んで木に移動しますので、大体の目安で良いと思います」

 祐樹の言葉に頷いた最愛の人はプラスチック容器の蓋を注意深く開けた。

 三匹のセミが一斉に飛び出して、バラバラな方角へと飛んでいく。

「元気で生きて欲しいな……」

 人の気配がないのを良いことに最愛の人の少し華奢な肩を抱いた。

「大丈夫でしょう。この辺りには虫取りの子供も来ませんし……」

 天敵である鳥に襲われる可能性も有ったが、それは言わぬが花だろう。

「祐樹が言うのだからそうだろうな……。もうどの個体か分からなくなった」

 木を良く見ると多数のセミが止まっている。セミの個体差など祐樹にも分からない。

「きっと頑張って生きていくでしょう」

 祐樹の肩に頭を預けた最愛の人が「そうだな」と満足そうに呟いている。

「昨日通った道だな。牡丹(ぼたん)鍋屋さんは秋からの営業らしい。冷凍の肉は出さないみたいだ」

 神戸よりも内陸部のこの辺りは、正直過疎の町といった趣きだった。

「秋になったら、栗などの秋の味覚も次々と出来ると思いますので、また来ますか?ほら、あそこに無人販売所があります。今は野菜しか並んでいないようですが、秋になったら栗とか柿も並ぶと思いますよ。牡丹鍋屋さんの正確な営業日時は調べておきますので、また二人で来られればと思います」

 助手席の最愛の人は嬉しそうに頷いている。

「約束だな……。干し柿の作り方を祐樹のお母様に教わったので、実践してみようと思う……。日に干す場所があれば良いのだが……」

 母親が干し柿を作っていたのは当然知っていたが、全く興味を持っていなかったせいで記憶は曖昧だ。

「多分ですが、マンションのベランダだと日の当たりがイマイチのような気がします。

 ウチの家は一軒家としては狭くてボロいですけれども……確か縁側の向こう側に干していたような記憶があります。あくまでも多分ですが。詳しいことは母に聞いてみてください。貴方からの電話なら大歓迎でしょうし、お盆休みに帰省した時でも具体的に聞くのも良いかも知れないですよね。

 マンションがダメなら呉先生の薔薇屋敷の一角を借りるとか、ご近所さんに聞いてみてもらうというのは如何でしょう?」

 干し柿を作る話をしていたのに、助手席の人はなぜか一瞬黙り込んだ。

「……そうだな。スーパーや市場で売っているのはそのまま食べる事が出来る柿だけで、あとは干し柿の完成形しか売ってない。だから一回作りたかったな……」

 膝の上に置いているカブトムシやクワガタの入った大きめの容器に視線を落として幾分沈んだ感じなのが気になった。

 こういう話には嬉々として乗ってくる人なのに、何が悪かったのだろうか?と気になった。ただ、なんとなく今聞くのはマズいような雰囲気を醸し出している。

 そのうち話してくれるかも知れないと思って何も気づいていない風を装って言葉を続けた。

「貴方の作った西瓜(すいか)のお漬物が食べたいです。一日しか家を離れていないのに、変な話なのですが……」

 最愛の人の眼差しが祐樹の方へと向けられた。

「西瓜の漬物なら、冷たくても食べられるので、後部座席のお弁当の中に入っている」

 先ほどの沈んだ感じが全くなくなっていて、安堵した。

「そうなのですか?カブトムシなどを解したらどこか良い場所を見つけて一緒に食べましょうね。ああ、この辺りの山が捕まえた街灯の近くだと思います」

 細い農道だか林道の中に車を乗り入れてしばらくすると鬱蒼(うっそう)たる森に突き当たった。

「しばらく歩いて、クヌギやコナラの木を見つけたら放しましょう。それらの樹液を好みますし、隠れる場所もちゃんと見つけると思います」

 車を降りて、森の中に入った。山歩きに適した服装はしていないので、早めにクヌギの木を見つけたいなと思ってしまう。

「あれ、クヌギではないか?」

 最愛の人がしなやかな指を差す方向を見ると確かにクヌギの木だった。森の中には(うるし)など触れれば炎症を起こす木なども存在しているし、刺されると痒みや痛みを伴う虫も居るので早めに見つけられてラッキーだった。

「木の根元にそっと置いてください。それで大丈夫なハズです」

 すっかり慣れた感じでカブトムシやクワガタを手に持って次々と放していく。「元気で生きろ」とか声を掛けながら。

「山歩きも嫌いではないですが。半袖は危険ですよ……。早く車に帰った方が良いかと思います。あっ!」

 目の前を綺麗な虫がスイスイといった感じで飛んでいる。

「あれはタマムシです。綺麗ですがなかなか捕まらない……」

 最愛の人も祐樹の視線の先を見て、屈んでいた状態からさっと身を起こすと、軽快かつ確かな足取りでタマムシを追いかけていく。

 多分ダメだろうな……と思ってその華奢な背中とか細く長い脚の動きに見惚れてしまう。ただ、有害な木が最愛の人の体の周りにないかだけは注意していたが。

 しなやかな指が魔法のように動いてタマムシをキャッチした。

「すごいですね。本当に捕まえることが出来るとは!!」

 二本の指の間に色とりどりの光を放つ小さな虫が挟まって、白い指との対比が綺麗だった。

「タマムシは幸せを呼ぶ虫だそうだ……。これで祐樹を幸せにしたい」

 何が言いたいのか一瞬分からなかった。今だって充分幸せだったので。

 最愛の人の額に浮かんだ汗の雫とか健康的な肌の色を見つめてから、瞳を合わせた。

「祐樹が去年の『夏の事件』について罪悪感を心の奥では払拭出来ていないと呉先生が言っていた。

 ただ、私を助けてくれて、助けに来てくれただけで私は満足だし、幸せだった。だから、もうその件については忘れて欲しい。このタマムシと一緒に罪悪感も手放してくれたらと心から願っている」

 細く白い指から濃く薄いグリーン色や金色に煌めく虫が離れていく。

 最愛の人の言葉通りに、心の底にわだかまっていた気持ちもタマムシと一緒に飛んでいってしまったような気がした。

 笑みを浮かべて最愛の人の顔を見ると、安堵の色を滲ませた笑みを返してくれる。

「そういう気持ちはタマムシが綺麗に浄化してくれたようです。

 有難うございます」

 そう告げる祐樹の唇に最愛の人の花のような笑みを浮かべた唇が重なった。

           <了>



--------------------------------------------------
二個のランキングに参加させて頂いています。
クリック(タップ)して頂けると更新のモチベーションが劇的に上がりますので、どうか宜しくお願い致します!!


にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村





小説(BL)ランキング

2ポチ有難うございました!!




























腐女子の小説部屋 ライブドアブログ - にほんブログ村



PVアクセスランキング にほんブログ村





気分は下剋上<夏休み>40

「こちらのルートを通る方が良いと思いますよ?」

 昨夜の愛の行為で体力も消耗しているかとも思ったのだが、先ほどの様子を見る限り大丈夫そうだったしスタッフや他の客に見つかるリスクを考慮した結果「非常口」と書いてある方向へと向かった。

 こういうホテルだと停電に備えて絶対に階段も用意されている。高層ビルはどこでもそうだろうが。

 いくら宿泊客が少ないとはいえ、それなりのホテルであることに変わりはないのだから朝一番で新幹線に乗る宿泊客も一定数はいるだろうし、会社の経費でこのホテルに泊まれるような人はしかるべき役職に就いているハズだ、あまり良く知らないが。

 そういう宿泊客は最愛の人が良く載っている富裕層のための雑誌を読んでいる確率は高そうだし、鳴き声の煩いセミを入れた容器を大切そうに抱えた姿を見せたくはなかった。

 非常口の扉を開けるとコンクリートの壁がむき出しになっているし、階段もごくごくシンプルな造りで殺風景極まりない。

「一階まで階段を使おうと思うのですが、大丈夫ですか?」

 横に立って珍しそうに辺りを見回す最愛の人の端整な顔を注意深く見ながら聞いてみる。

「私は大丈夫だが、祐樹は?」

 強がりとか無理をして言っているわけでもなさそうで安堵する。この可愛い人は祐樹の言うことにほとんど無条件で聞いてくれるので、本心からそう思っているかどうかは表情とか目などで判断するしかない。

「私も大丈夫です。昨夜貴方の腕枕の上で眠ったせいで普段の睡眠の質よりも良かったのか……爽快な気分ですし、疲労も完全に回復しましたよ」

 横に立つ最愛の人は何の屈託もないような表情で薄く微笑んでいる。本当に大丈夫そうだった。

「病院の非常階段よりも粗い造りですね。セミを解放したらエレベーターに乗れますから下りだけ階段を使いましょう」

 隣で軽やかに足を動かす彼は納得したように白い首を縦に振った。

「ああ、なるほど……。確かにこの鳴き声は人目につくな……。この鳴き声は昨日の昼間聞いたのと全然違うのだが……?」

 二人の足音とセミの声だけがコンクリートに響いている。

「この鳴き声は、多分『逃がしてくれ』とか『非常事態』とかそういう声でしょうね。

 貴方が昨日聞いた声は、オスがメスを呼ぶ求愛の声です。メスは鳴けないので、たまたまなのか、地面に出て来る時間帯のせいなのか、この三匹は全てオスですね。

 それに、鳴き声が大きければ大きいほどメスが寄って来やすいので進化の過程で鳴き声の大きいセミだけが適応して徐々に大きな声になっていったという説を読んだ覚えがあります」

 最愛の人が楽しそうにセミを空中に掲げている。しなやかな長い指が空中を鮮やかに彩るような錯覚を抱いてしまうほどの白い指だった。

 整った容貌とバランスの良い肢体の持ち主だが、最愛の人は演技の出来ないタイプなので俳優は無理だろうけれども、手のモデルなら一流になりそうな指を持ち合わせている。

 ただ、外科医も天職だし、指だけとはいえ祐樹だけが独占したいので勧める積りは皆無だが。

「ああ、なるほど……。昨日の昼間、木に止まっているだけで鳴いていないセミが居たので不思議に思っていたのだが、そういう理由だったのか……。この子達も良い人に巡り合えたら良いな。

 私にとっての祐樹のように」

 真面目で怜悧な声がコンクリートの壁に溶けていく。

 この人は相変わらず殺し文句の天才だと思う、しかも無意識の。

「そうですね。こんなに大きな声で鳴けるので大丈夫だと思いますが」

 そんなことを話しながら、殺風景な場所を二人だけで歩くのもとても楽しい。二人で色々な場所に行ったけれども、こんな実用一点張りの所は初めてだ。

「何か、こういう場所に二人でいると駆け落ちしているみたいでドキドキします。

 または、人類が全て滅んで、二人だけになった世界かもしれないですけれど……」

 足を止めた彼の端整な顔がほんのりと紅く染まっている。

「私は祐樹さえ居てくれれば、人類が滅んでも別に良いと思っているが、祐樹もそうなのか?」

 薄紅色に染まっているものの真顔で聞かれて、祐樹は大きく頷いた。

「そうか……それは嬉しいな……」

 花のような笑みを浮かべている唇に唇を重ねた。こういう場所でキスを交わしているとなんだか密会のようで気持ちも高揚してしまう。

「クワガタやカブトムシは持って帰るのですか?飼えますけれど。

 特にクワガタは寿命が長いですし、飼っている人も多いですよ?」

 人の気配の全くしない場所、しかも一応は公共の場所でもある所で交わすキスは普段以上に甘い情動を伴ってしまう。

 そのまま次のステップに進みたくなる気持ちを抑えて話題を変えた。

「飼うのも良いかなと捕まえた時までは思っていたが、飼うとなれば一生外で飛び回ったり、街灯の光に引き寄せられてふらっと飛んだりできないのだろう……。寿命は延びるかも知れないが、人間のエゴで狭い場所に閉じ込められて生きるよりも自然の中で好きなように生きるほうが幸せなのかも知れないと思うようになった。

 だから離してやりたいのだが、良いだろうか?」

 少し心配そうな表情で祐樹を見ている最愛の人に、笑顔を返した。

「私より貴方の方がマンションに居る時間が長いので、必然的に世話は貴方の役割になります。だから貴方の好きなようになさってください。

 あの子達はセミのように鳴かないので、もう一度部屋に戻って今度はエレベーターで降りますか?」

 そう提案してみたが、一瞬迷った感じの最愛の人は切れ長の目に決意の光を滲ませた眼差しを祐樹へと当てた。


--------------------------------------------------
二個のランキングに参加させて頂いています。
クリック(タップ)して頂けると更新のモチベーションが劇的に上がりますので、どうか宜しくお願い致します!!




にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村




小説(BL)ランキング

2ポチ有難うございました!!






























腐女子の小説部屋 ライブドアブログ - にほんブログ村



PVアクセスランキング にほんブログ村






気分は下剋上<夏休み>39

 昨晩の愛の交歓は最愛の人の羽化と言うか、一段階上の開花を密かな目的にしていたのでバスローブは一度も使っていなかった。だから必然的に最愛の人はシーツを下半身に巻き付けただけの姿だった。

瑞々しい肢体には祐樹がつけた指の後とか舌や歯で強く愛した証の名残で普段よりも紅い胸の尖りなどを惜しげもなく晒している。

 昨夜あれだけ愛し合っていたにも関わらず、下半身に白いシーツを纏っただけの姿を見るとついつい押し倒してしまいたくなる。愛の交歓の証が残る艶めいた素肌はまた格別の美しさだったので。

「そうか……。ではなるべく早く身体を洗って……。少し勿体ない気もするけれど……祐樹の愛の証を洗い流すのは……。

しかしこの子達の方がより切実に樹液を求めているだろうから……」

 大急ぎで浴室から出て、まだ乾いていない髪もそのままにして服を着た。

 最愛の人はいそいそとした足取りでカーテンへと向かっている。どうやら二匹とも捕まえたいらしい。

 この人は幼少期に子供らしい遊びをして来なかったと聞いている。だからこそ祐樹がそういう体験に誘って子供の頃の埋め合わせをすることは愛する者の使命だと思っている。

「網で捕まえるのとはまた異なった楽しさがあるな……」

 祐樹も小学校時代は思いっきり山で遊んだ覚えがある。もちろん虫取り以外の遊びもしたけれど「何かを捕まえる」という行為は大袈裟に言えばスリルとサスペンスに満ちていて夢中になったことを思い出す。多分、最愛の人も今そういう気持ちを味わっているのだろう。そう思うと、セミが飛んで逃げた(ほう)がこの人をもっと楽しませるのではないかとすら思った。

 ただ、最愛の人は動体視力や運動神経も人並み以上に持ち合わせているのを祐樹も知っていたので一回のチャレンジで難なく捕まえるだろうなと思って眺めていた。

 ホテルの部屋の中を走り回るという経験は、少なくとも祐樹と過ごした夜は絶対になかった。クマゼミの一匹くらいは部屋中を飛び回って欲しいくらいだった。

 昨夜あんなに淫らかつ妖艶に振舞っていた人とは別人のように無垢で無邪気な笑みを浮かべてセミを捕まえようとしている。

 祐樹の腕の中とか身体の下でも万華鏡(カレイドスコープ)のように様々な美しさを魅せてくれる。

 しかし、こういう風に真摯で無邪気な表情はなかなか見ることが出来ない。というか、祐樹と特別な関係になった当初は、喜怒哀楽をほとんど感じさせない表情を浮かべていることが多かった。体を繋げれば羞恥の色を浮かべることはあっても。

 その人がこんなにも多彩な表情を見せてくれるようになったのは祐樹にとっても大きな喜びだった。

「あっ……」

 音こそは昨夜ベッドの上や浴室で散々零していたのと一緒だったが、今の響きは健康的な喜びに満ちた声だった。艶やかな声も大好きだけれども、心から楽しんでいるのが分かる声も捨てがたい。

 最愛の人の白く長い指が触れて捕まえられると思った瞬間にセミは力強く羽ばたいて鳴きながら部屋の中を横切っていく。

「残念でしたね。捕虫網も持ってくるべきでした……」

 口ではそう言ったものの、子供連れでもない限りいい年をした大人二人が捕虫網を持ってホテルの部屋にチェックインするのはかなり目立つに違いない。しかもあまり人の居なさそうなホテルであるものの、京都と神戸は遠いとは言えないので知り合いとか元患者さんのお見舞いの人という縁の薄い人――向こうが知っていてこちらは知らないとか、例の地震の時にはテレビにも何度も映ったし、NHKの番組やテツ子の部屋といった番組にも出たので猶更、先方だけがこちらを知っているパターンが増えた。

 ただ、最愛の人は前髪を下してラフな格好をしたら驚くほど印象が変わるので「似ているけれど、別人かな?」と思われる可能性の方が高かったが。

 ただ、目立つことをすると注目を集めてしまうのは確かだから捕虫網を持ってホテルにチェックインなどは出来そうになかった。

「あ!そちらに行きましたよ」

 祐樹の方へと飛んで来たセミを――実は手で捕まえようと思ったら多分可能だっただろうが――わざと方向転換させるように手を動かした。

 祐樹ならぎりぎり手が届く高さだったけれど、最愛の人の身長と腕の長さでは難しいだろうと思った瞬間、最愛の人がバスケットボール選手のような華麗なジャンプをして見事にセミを捕まえていた。

「祐樹っ!捕れたっ!」

 誇らしそうに笑う最愛の人の笑顔に見惚れてしまった。

「あ、祐樹!スラックスに止まりそうだっ!祐樹は何か……セミに好かれる香りか何かを振りまいているのか?

 あ、そのままじっとしていてくれ。捕まえたい!」

 最愛の人がセミを驚かせないようにゆっくりとこちらへ歩み寄ってきた。セミは祐樹の腰に止まった。

 好かれる香りといっても二人はホテル備え付けのボディソープとかシャンプーなどしか使っていない。だから二人とも同じ香りを身に纏っているハズだった。

 ただ、祐樹の微睡(まどろみ)の邪魔をしたセミも背中に止まっていたので、最愛の人が薄紅色の唇を可憐に尖らせる気持ちが分からなくもない。

 祐樹のウエスト部分にしなやかな腕が近づいてきて、セミを難なく捕まえた。先ほどジャンプして捕ったセミを右手で持っていたせいもあり、左手を器用に動かしていた。

 腕枕の痺れは大したダメージを与えていないことに安堵のため息をついてしまう。

 大きな容器の蓋を取って最愛の人がセミを入れやすいように、そして一匹目が逃げ出さないように細心の注意を払って三匹とも容器に収まった。

「お疲れ様。では、ホテルの外に離しに行きましょうか?」

 最愛の人の願いはこの三匹のセミを元居た木立で放ってやることだったから。

「分かった」

 容器の中を楽し気に目を(みは)って見ている最愛の人と共に部屋を出て廊下を歩む。ただ、セミ達は不満げな鳴き声を出している。ホテルの従業員に聞きとがめられる可能性もある。

 まあ、トカゲ――実は様々な病原菌の塊でもある――とか、嫌いな人は一定数いる犬や猫などと異なってセミ程度なら見逃してくれるかも知れないが、あまり目立つのも好ましくない。

 そして先ほどの最愛の人の動きを見る限り昨夜の疲労は回復しているようだ。

「祐樹?反対方向に歩いている気がするのだが……?」

 不思議そうな表情を浮かべて首を優雅に傾けた最愛の人に秘密めいた笑みを浮かべた。


--------------------------------------------------
二個のランキングに参加させて頂いています。
クリック(タップ)して頂けると更新のモチベーションが劇的に上がりますので、どうか宜しくお願い致します!!

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村




小説(BL)ランキング

2ポチ有難うございました!!





























腐女子の小説部屋 ライブドアブログ - にほんブログ村



PVアクセスランキング にほんブログ村




気分は下剋上<夏休み>38

 何だか懐かしいような、それでいて耳に慣れた音に祐樹の意識が徐々に眠りからさめようとしていた。
「うわっ!」
 背中に違和感、いや何か小さいとげが何本も身体に刺さるような不快な感触を覚えて飛び起きてしまった。
ん……祐樹おはよう」
 まだ眠そうな表情で祐樹を見上げる最愛の人のどこかぼんやりとしている表情も新鮮だった。普段は寝つきも寝起きも良い人なのだが、昨晩から夜中にかけての愛の交歓の疲れがあったに違いない。
「おはよう」のキスを交わしたかったのだが、背中のチクチクゾワゾワする感触が気になった。
「背中に何か付いていませんか?」
 首を後ろに向けてみたけれど、あいにく視界に入らない場所だった。
 最愛の人が昨夜の余韻を残した薄紅色の上半身を優雅で甘い仕草で起こしている。
「祐樹……。祐樹の背中にセミが止まっている。動かないでいてくれ。捕まえるから……」
 つい先ほどとは異なった楽しげな笑みを唇に浮かべて、祐樹の背中に薄紅色の細く長い指を慎重に動かしている。すぐに祐樹の視界から消える場所へとしなやかな指を移動させている気配がした。
 クマゼミのけたたましい鳴き声がした。完全に成虫となったセミを注意深く掴んだ指があたかも戦利品を掲げているかのように祐樹の目の前に差し出してくれた。
「助かりました……。一体何事かと思って飛び起きてしまいましたよ……。最愛の人もベッドの上で半身を起こしていて、それは祐樹も同じだったけれども羽毛の枕の凹み具合から自分達がそのように眠りの国に居たのか容易に推測出来た。
「もしかして、私が眠っている間、ずっと腕枕をして下さっていたのですか?」
 一番気になっていたことから確認したい。
「私も祐樹が眠りに落ちてから30分後くらいに眠くなってしまったので、それ以降は定かでないのだが……、祐樹がストンと眠った時に危ないかもと腕を頭に添えていた。その祐樹がそのまま枕に頭を落としたので睡眠の邪魔をしては悪いと思ってそのままにしていた。祐樹の幸せそうな寝顔を見ながら眠りにつけたのは、とても幸せな気分だった……」
 薄紅色の唇が極上の笑みを浮かべている。愛の交歓の後の甘い色香を漂わせながら。
「それは、本当に申し訳ないことをしました。強烈な睡魔に襲われたとはいえ、腕枕をさせてしまうなんて……。しびれていないですか?」
 二人だけの時は熱烈に愛し合う恋人同士だけれども、最愛の人の腕や指は多くの患者さんの命を託されている「神の手」で、祐樹よりも切実に――何しろ、命というか心臓を預けている――求めている人は多い。愛の交歓の時でも腕や指に負担が掛からないようになるべく務めてきた、あくまでも努力目標で達成されたとは到底思えないのだが。
「大丈夫だ。左腕だったし、今日一日の時間が有ればしびれなど完全に治まるだろう……」
 必死な感じで鳴いているクマゼミを持っているのは右手で左手が赤く染まっていることからも最愛の人がウソを言っているとは思い難い。それにこの人は嘘をつく性格では全くない。
 最愛の人も祐樹も両方の腕が利き手のように動くのも事実だったが、彼の右手はいわば「公器」で、祐樹が独占して良いモノではない。本来の利き手は右だったので、そちらに頭を落とさなくて良かったと安堵した。
「祐樹が眠りについた後、シーツをそっと掛けて枕に頭を乗せて祐樹の寝顔を見ていた。
 ただ、左手の動きが制限されていたので身体全体を包めなかった……だから立派な成虫になったセミが飛んでシーツの隙間に止まったのだろう。
 部屋には三匹のセミが居て、一匹は最愛の人の指が細心の注意を払って掴んでいるのが分かった。「取り敢えず、セミの抜け殻の入った容器を空にして、そこにカブトムシとクワガタを入れましょう。抜け殻は当然逃げませんから、テーブルの上に置いておくと良いでしょうね」
 最愛の人は薄紅色の長い首を傾げている。
「この小さいほうの容器にカブトムシとクワガタ二匹を入れて餌も置いておくのだろう?小さくて窮屈ではないか?」
 最愛の人の素朴な疑問に、科学雑誌や図鑑には載っていなかったのかな?と思った。
「カブトムシやクワガタは夜行性なので、昼間は眠っているようなものです。ほら、昨夜ほど動いていないでしょう?餌の樹液は摂取するかもですが、それ以外は基本動かないです」
 納得したように頷いた最愛の人は頷いて小さい容器から稀少で繊細な宝物たからものを――彼にとっては文字通りの意味だ――慎重な手つきで取り出して、テーブルの上に置いた。
 祐樹はその容器を受け取ってカブトムシ達をそっと移した。木を模した餌を入れると確かに狭いが、暫くの間だけなので我慢してもらうことにする。
 ちなみにあとの二匹はカーテンに止まって通常の鳴き声を上げている。
 睡眠から醒める直前に聞いたのはクマゼミの鳴き声だったらしい。
「祐樹……、この子達は羽化で体力を使っただろうし、樹液を欲しているに違いない……。
 カブトムシとクワガタは専用のえさが売っていたのでそれを与えておけば大丈夫だろうが、この子達は樹木に口吻を突き刺して樹液を摂取すると科学雑誌に書いてあったので、外に逃がしてあげたほうが良くないか?なるべく早く……」
 昨日、京都から神戸に来る途中にある大学の構内でセミを捕まえたり羽化の様子を愛の交歓の最中さなかに見たりしてすっかり愛着を覚えたらしい。
そうですね。まずはバスルームに行って昨晩の愛の交歓の名残を洗い流した後で、セミの幼虫を捕まえた辺りで放してあげましょう。本来ならばあの木々のどこかで羽化を遂げてそのまま樹液を摂取したに違いないのですから」
 一応の段取りを決めた後、改めておはようのキスを交わした。
「聡……セミのことが気に掛かるのは分かりますが、その恰好は目の毒です……」

 極上の目の保養と思って眺めていたものの、これ以上は耐えられない。堪り兼ねて制止の声を上げた。





--------------------------------------------------
二個のランキングに参加させて頂いています。
クリック(タップ)して頂けると更新のモチベーションが劇的に上がりますので、どうか宜しくお願い致します!!



にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村




小説(BL)ランキング


2ポチ有難うございました!!































PVアクセスランキング にほんブログ村

気分は下剋上<夏休み>37(I8禁)

 ただでさえ、天国のような場所に包み込まれるとそれだけで極めてしまいそうな蠱惑に満ちた場所なのに、精緻さを増した花園の動きはより大胆にそして華麗に祐樹を包み込んでくれていて……。

 そう長くは()たない気がする。最愛の人は全く気にしていないらしいが、あまり早く逝ってしまうのも男としての矜持(きょうじ)が許さないという複雑な思いも密かに抱いている。

「淫らで無垢なダンス……、期待していますよ……。

 好きなように……動いて下さい……」

 誘い水といった感じで腰を上に上げると、最愛の人の育ち切った先端部分から大粒の水晶の雫が祐樹の腹部に煌めきながら落下していくのが見えた。

 繋がった部分も湿った甘美な協奏曲を奏でている。そして反った紅の肢体にはルビーの蠱惑に満ちた二つの尖りとか、上向いた顔からも汗の雫が幾粒も零れている。

「ゆ……祐樹っ……。これはっ……?」

 浅い場所まで一旦引いた最愛の人の上半身が丸い円を描いている。

 最も敏感な場所でもある先端部分が先ほどよりも硬度を増した凝った部分にコリコリと当たって気持ちが良い。

 先ほどよりも大粒の雫が祐樹の腹部に煌めきながら落ちてくる。ベッドと水平に育ち切った最愛の人の愛情と劣情の象徴も腰を回す動きにつられて動くのも扇情的だった。

「凝った場所だけで……真珠の熱い放埓を……ばら撒いても……良いですが……、個人的には……花園の奥処まで……迎え入れて……欲しいです」

 凝った場所だと渇いた絶頂を迎えかねない。出来れば今夜の愛の交歓の最後は一緒に熱い真珠の放埓をお互いの素肌や花園の奥処で弾けさせたいなと思う。出来れば二人で同じように花火が爆発する快楽を極めたい。

 それでなくとも繋がった先端部分だけでも極上の花園の蠱惑の動きで祐樹の楔を強く弱く包み込んでくれていて、油断していたら直ぐに持って行かれそうな危うい状況なので。

「分かった……」

 腰を落としては上げるという動きとその度ごとに繋がった場所から奏でられている音や切れ切れの声が部屋の中を紅く濡らしていくような気がした。

 それに上下に動く紅い肢体の動きだけでも悩殺モノの破壊力を秘めているのに、花園の中の精緻に動く熱さや厚さに包まれたのだから堪らなく良い。

「あっ……祐樹のが、奥の奥までっ……当たって……()っ……。もうっ……」

 至福の断末魔の声を上げた最愛の人が、祐樹の身体に置いて肢体を支えていた手を祐樹の方へと伸ばしてくる。

 その紅く染まった細く長い指を手全体で掴んで付け根まで硬く握った。

 同じ強さで握り返してくれる最愛の人の指まで悦楽の震えと強張(こわば)りが限界を告げているようだった。

「良いですよ……。私も同時に……」

 艶やかなすすり泣きの声が部屋の中に小さく響いている。

 上半身が上がって入り口付近まで引き抜かれたかと思うと即座に腰を強い力で落とされた。

「ゆ……祐樹っ……もっ…うっ……。()っ……。奥の奥までっ……開かれてっ……」 

 最愛の人の肢体の動きに従って揺れる愛情と欲望の象徴も弾ける瞬間を焦れて待っている感じで……とても綺麗だった。

 感想を心の中で綴っていたのもそこまでで、腹部に熱い真珠の迸りを感じた瞬間に祐樹も極上の花園の奥処のその奥へと欲望を放ってしまっていた。

 それでも繋いだ手は放していなかった、というよりも更に強い力で繋がっていた。

「素敵なダンスを有難うございます。

 愛する聡にああいうコトをされるととても嬉しくて……、愛されているのが実感出来て本当に良い想い出をまた一つ重ねたような気がします」

 腕の中に気怠そうに(もた)れ掛かった最愛の人を抱き締めて、動いたせいで額に貼りついた髪を梳いた。

「浴室での体験も……良かったけれども……やはり二人で一緒に天国に逝くような愛の交歓の方が、私は好きだ……な。私も祐樹への愛を表現出来るし……」

 愛の行為の後の甘さが加わった艶やかな眼差しが祐樹だけを見ていて、紅い唇が愛の言葉を紡いでくれるのも最高に幸せな気分だった。

「セミ……どうなっているだろうか?」

 身じろぎした最愛の人がベッドヘッドの方へと視線を向けている。

翡翠(ひすい)の妖精のようだったのが、昼間見た強靭な緑色に変わっている……」

 驚きに満ちた声は、先ほどの愛の交歓で使い過ぎたせいか少し掠れているのが艶やかさを増している。

「羽化はどうやら皆成功したみたいで良かったです。理由は完全に解明されていませんけれど天敵に襲われる以外でも失敗する幼虫も居るので……。捕まえる時には細心の注意は払ったのですけれど、それでも指の力が変に働いて悪い結果にならないかと内心心配していました。

 聡の羽化も華麗に成功しましたけれど……、きっとそれが良い影響を与えたのでしょう、あの子達にも……」

 全く根拠はないものの、何となく最愛の人を安心させたい一心で告げた。

「そうだと良いな……。幼虫も栄養不足などが原因で羽化に失敗する例も有ると科学雑誌で読んだ覚えもあるし……」

 掠れた甘い声が耳に心地よい。

「聡の羽化が予想以上に上手く行ったのは。私の愛情過多のせいかも知れないですよ……」

 唇を近づけながら囁いた。反論を封じるためが10%くらいで、後は単にキスしたかっただけだったが。

「もう一度、バスルームに行って、聡の花園にばら撒いた私の白濁を洗い流したかったのですが……どうやら限界のようです……すみません」

 艶やかで無垢な花のように笑う最愛の人の顔を見た瞬間に眠りに落ちた。祐樹の記憶の中で最高に幸せな墜落睡眠だった。



--------------------------------------------------
二個のランキングに参加させて頂いています。
クリック(タップ)して頂けると更新のモチベーションが劇的に上がりますので、どうか宜しくお願い致します!!



にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村



小説(BL)ランキング


2ポチ有難うございました!!




























腐女子の小説部屋 ライブドアブログ - にほんブログ村



PVアクセスランキング にほんブログ村



Twitter プロフィール
創作BL小説を書いています。ご理解の有る方のみ読んで下されば嬉しいです。
アニメイト
ギャラリー
  • 明けましておめでとうございます。
  • 「憂国のモリアーティ」とプリンスホテルのコラボ、行って来ました!
  • 「憂国のモリアーティ」とプリンスホテルのコラボ、行って来ました!
  • 「憂国のモリアーティ」とプリンスホテルのコラボ、行って来ました!
  • 「憂国のモリアーティ」とプリンスホテルのコラボ、行って来ました!
  • 「憂国のモリアーティ」とプリンスホテルのコラボ、行って来ました!
  • 「憂国のモリアーティ」とプリンスホテルのコラボ、行って来ました!
  • 「憂国のモリアーティ」とプリンスホテルのコラボ、行って来ました!
  • 「憂国のモリアーティ」とプリンスホテルのコラボ、行って来ました!
人気ブログランキング
にほんブログ村
カテゴリー
資産運用
楽天市場
  • ライブドアブログ