腐女子の小説部屋

創作BL小説を綴っています。ご理解の有る方【18歳以上】のみ歓迎致します

気分は 七夕企画

気分は下剋上 七夕編 51

「書きますから『もう良いよ!』と言うまで瞳を閉じていて下さいませんか?」
 最愛の人がパパラチアサファイヤのような煌めく笑みを浮かべていた。
 祐樹は買ったことはないが、最愛の人に贈るために百貨店の宝石売り場で見た覚えがあった。そのピンクとオレンジの光が最愛の人の今の笑みとそっくりのような気がした。
――お値段もかなりしたので彼がこよなく愛してくれている「祐樹のオーラの色」と言っていたその煌めきに似ていたので買おうかと思ったがお財布事情で諦めた一品だったというのは内緒にしておこう――。
「何だか鬼ごっこみたいで楽しいな。
 といっても、鬼ごっこは幼稚園の時以来した覚えがないが。
 同じ幼稚園で、大きな家に住んでいた中村君のお家で遊んだ覚えが有る。今思うとそれほど大きい家ではないが、当時の私にはお屋敷に思えた。
 中村君は小学校から私立に行ったので、それ以降の付き合いはないが……」
 最愛の人の笑みが懐かしさの煌めきに満ちている。
「鬼ごっこですか?してみたいですか……」
 最愛の人が子供らしい遊びをしていたのも何だか微笑ましいけれども、それ以降はしていないのだったら、そして彼が望むなら一緒に興じるのも悪くないなと思った。
 なにせ、子供の頃にはそれほど遊びとか行事をしていないといことは彼の口から聞いていたので。
 神戸の六甲山にドライブデートに行った時にアポ〇チョコを「ずっと羨ましく思っていた」とか言っていた人なので。祐樹は鬼ごっこを――何せ田舎なので隠れる場所には事欠かない――飽きるほどしていた過去が有るし、大人になってからはする気も皆無だったけれど、最愛の人が望むならば、しても良いと。
「いや、今日は七夕の日だろう?熱烈に愛し合っている恋人らしいことだけで充分だし、大人になってから鬼ごっこをする気も無くなっている。
 祐樹がそう提案してくれたことは純粋に嬉しいが……」
 律儀に目を瞑っている最愛の人の笑みはパパラチアサファイヤよりも綺麗な光を放っているようだった。
「そうですか?
 童心に帰りたい気分になったら仰って下さいね」
 筆ペンはサイン会に赴いた書店の中の一部で用意されていたので――ほとんどが油性のマジックだったが――書き慣れてしまっているのは幸いだった。
 最初に彼に書いたモノを渡したのは、出会って直ぐだった。後で聞いたら清水の舞台から飛び降りるほどの勇気を振り絞って携帯電話の番号を聞いてくれたらしいけれども、その時は反感も持っていたこともあって、たまたまポケットに入っていた製薬会社の紙に殴り書きした。今更最愛の人が祐樹の携帯番号を書いて欲しがるとも思えないが、あの時もっと丁寧に書いておけば良かったなとは思う。
 最愛の人は――どうやら使い勝手が良いらしい――エルメスのスケジュール帳について来た品質も最高(なのだろう、多分)のモノを使ってくれたと聞いてからは尚更にそう思ってしまう。後悔先に立たずではあるものの。
「いや、祐樹と隠れんぼをして遊ぶよりも…………寝室で二人の素肌を感じる方が宝石のように貴重な時間なので……」
 最愛の人の頬が紅さを増している。
 先ほど祐樹が服の上から触れて貰ったモノをまざまざと思い出したのかも知れない。
「もう良いよ……」
 わざと歌うように言った。ちょっとした鬼ごっこ気分を味わって欲しくて。
「『夫婦は二世というコトワザが有りますが、七回生まれ変わってもずっとこういう関係になれますように』か……。祐樹の気持ちが物凄く嬉しい、な……。
 変わらない愛情を一生ではなくて、輪廻転生した後も七回も恋人同士で居られると思うと」
 深紅の薔薇に水滴を宿したような笑顔だった。しかもその雫に朝の光が差し初めたようなあ。
「色々考えたのですが『親子は一世、夫婦は二世主従は三世』というコトワザが有りますよね?まあ、江戸時代だかに出来たモノで、大名とその家臣の忠誠を強めるためだろうとは思いますが、貴方となら七世以上生まれ変わって巡り合いたいです。生まれ変わって何度でも貴方だけ恋に落ちたいです。
 聞きかじりですが、前世の記憶も無くなっているらしいのですね。しかし、何度生まれ変わっても貴方を探し出して最初から――出来れば誤解とか遠回りはナシの方向で――恋のプロセスを楽しみたいです。
 七にしたのは、七夕だからという理由です」
 一応種明かしをすると最愛の人の表情が繊細に、そして華やかな笑みを浮かべていた。
「私も同じ気持ちだ……。
 ただ、祐樹に一目惚れをしたのは私なので、私の方が早く見つけ出せるような気がする……」
 器用に笹飾りに短冊を飾ってくれている。
 薄紅色に染まった指先が魔法のように動くのを見るのは――手術用の手袋で包まれたのは手術室のスタッフも見ることも出来るが――祐樹だけの特権だったし、その上祐樹の願い事のせいなのか、薄紅色というよりも紅色に煌めいていて、その優雅かつ繊細な指の動きからは金と銀の粉を撒いているような綺麗さだった。
「願いごとは一個ずつですか?」
 色々楽しく考えていたので、もっとたくさんストックがあって、もっと書けそうだった。
「あまり欲張りすぎるのも良くないとネットに書いてあった。
 確かに――まあ、内容は祐樹と末永く仲良く暮らせますように的な言葉だからそうでもないかもだが――たくさんの願い事をしたら織姫と彦星が混乱してしまうかも知れないな……。もっと書きたかったら短冊はまだ有るので大丈夫なのだが?」
 先に作っておいた笹飾りは二人の手先の器用さも相俟って物凄く綺麗だった。
「いえ、良いです。ベランダに飾るのでしょう?
 あ、雨が降っていますね……」
 リビングからベランダの方に視線を転じると割とまとまった雨が降っていることに気付いた。
 このマンションは値段に相応しく防音も完璧だったので雨音は聞こえなかったが。




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最後まで読んで下さいまして誠に有難うございます。

零細企業と呼ぶのも恥ずかしいレベルの代表取締役(兼お茶くみ・清掃係)な私ですが、経費節減のために事務所移転が決定しました。
そのため、多忙に拍車がかかりそうでして、当分は一話更新がやっとだと思います。
申し訳ありませんが(アフォリエイトはしていますが、ブログは趣味でして、ヒカキンみたいSNSで生計を立てるレベルの広告収入なんてないです 泣)仕事の方が優先順位が高いので、ご理解賜れば幸いです。
              こうやま みか拝






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気分は下剋上 七夕編 50

「『この夜のような幸せな日が一生続きますように』ですか。確かにその通りですね。
 この夜というのは寝室での熱い逢瀬も含まれるのでしょうか?」
 そろそろ、最愛の人の注意を寝室の方へと向けたい。今はまだ笹飾りの出来映えとそして素晴らしく美味しかった食事の余韻を引きずっているだろうから。笹飾りはともかくとして料理とお酒の美味しさに関しては祐樹も同様だったが。
「甘い逢瀬も含まれる……な。祐樹と愛の交歓をしている時が私にとって宝石よりも貴重な時間だから……。いや、祐樹とこうして二人きりで過ごすだけで至福の時だけれども」
 言葉の戯れも愛情表現の一つだと最愛の人と恋人同士になってから覚えたことの一つだった。
 それまでは意気投合した相手と肌を合わせた後は内心「早く一人になりたい」とか思っていたので。
「至福の時は一生涯続くと思いますが、甘く熱い愛の交歓は自ずとタイムリミットが有りますから。
 ココもね」
 紅色に染まった指を充血した場所へと導いた。
 指の感触で、祐樹のモノがどういった状況になっているのか当然分かったのだろう。
 スッと撫でた後に、僅かに紅くて潤んだ瞳とは裏腹に唇が「後で」と何だか自分に言い聞かせるような厳しい感じの言葉を紡いでいる。
 やはり、七夕の儀式を――合っているかどうかは全く定かではないが――重視したいのだろう。まあ、焦らされた方が後々の快楽が深まることも最愛の人との行為で知ったが。
 それ以前の祐樹の「恋人」にはそんなに時間をかけたこともない。
 いや、一度だけあったような気がする。あれは大学一回生の時だったが、自分の性的嗜好が普通とは違うことは自覚していたものの、やはり認められない部分もあって……合コンで知り合ったたまたま好みに辛うじて引っ掛かる女の子が告白してきた。
 その後色々「男女交際」のマニュアル本とか雑誌で仕入れたデートの手順を踏んで初めてのHも本の通りにしてみた。
 だから、後の戯れまで最初のうちはしていたのだが「田中君の気持ちが分からない」という――ある意味性癖を隠していたから当然だろうが――別れの言葉で「不健全な」男女のお付き合いは3週間で終わった。彼女のコトが決定打になって「やはり」という気持ちが強まった。
 そのマニュアルに従っていたのでじっくりと時間をかけた「そういう行為」をしたし、ゴムもキチンと付けていたのだが。
 それ以来は切羽詰まった欲望を満たせば良かったので、終わったらさっさと身体を離していたので相も変わらず「田中君の気持ちが分からない」とか言われ続けていたが、そんなことは祐樹にとって痛くも痒くもなかった。田中祐樹という固有名詞すら教えていない男性の方が多いのも事実だったし。
「―-そうだな……人は年齢には勝てないからな……ソコだっていずれは衰える。
 けれども食生活なども大きく左右されるだろう。あとストレスとか。
 ストレスの掛かる仕事なのは仕方ないので、なるべく食事で元気になって欲しいと思って料理を作っているのだが……」
 それは初耳のような気がする。そして全てのことにおいて真面目で几帳面な最愛の人なので絶対に料理にもそういう心遣いがさり気なく入っていたハズで。
「え?でもスッポンとかそういった物とか……怪しげな精力剤なんて入れていないですよね?山芋とかウナギとかもそういう作用が有ると男性誌で読んだ覚えが有りますが……。
 山芋は短冊に切っても摺り下ろしたモノも大好きですし、大歓迎です。そしてウナギも貴方が作って下さったらより一層美味しいので大好物ですが。
 漢方薬の効能は認めてはいますが、怪しげな精力剤の原料になるようなモノは食事に混入されていませんよね……」
 以前よりもマシ(?)になったとはいえウソのつけない人だったが、良かれと思って何かを混入している可能性は否定出来ない。
 まあ、EDの治療薬として医師の処方で出せるお薬にも関わらず海外からの密輸入までもが問題になった薬などは絶対に飲ませないだろうが。
 あれは物凄く心臓に負担を掛けることが分かっているし、心臓外科が専門の最愛の人がそのリスクを知らないわけもない。
 そんな少し焦った祐樹を見て最愛の人が満開の薄紅色の薔薇の花の風情で微笑んでいた。
「そんな怪しげなモノを祐樹に食べさせたりしない。
 山芋とかウナギは確かに精の付く食べ物だし、体力が弱った時などには最適だと思うが、牡蠣は海のミネラルともミルクとも呼ばれるくらいに良いらしいし、そして血圧を下げて『こういう状態』にしやすいモノはニンニクとトマト、そしてアボカドやセロリが良いらしい。
 サラダに入れて食べたりしているだろう?祐樹も好きな食材なのでなるべく取り入れるようにはしている……」
 誤解されがちだが、医師は栄養士でもない上にそれほど健康に良い食べ物を専門的に学ぶこともない。
 事実糖尿病とかの食事が命に関わるような病気の場合は病院専属の栄養士とかが具体的なカウンセリングとか食事の計画まで練ってくれるので糖尿病専門医もそちらに丸投げしているのが現状だ。
「あ!そうなのですか?牡蠣も大好きですし、セロリもニンニクもトマトも……あっ、そういえば、トマトに含まれるリコピンは前立腺に効くそうですよね。
 貴方の中の凝った場所……もっとトマトを召し上がればもっと華麗に花開きますか、ね?熟したトマトのように真っ赤になって……」
 怪しげなモノどころか好物ばかりを並べられたことに心の底から安堵した。
 今まではただ美味しいと思って食べていたサラダには最愛の人の愛の工夫が盛り込まれていたとは知らなかった。
「ゆ……祐樹。そういう話は寝室で……じっくり……」
 紅色に染まった耳朶がとても綺麗だった。
「了解です。
 ああ、私も短冊に願いを書かなければなりませんね。私が考えに考えたのを披露しますが、私はありきたりなモノしか考え付かなかったです。
 貴方がお気に召すと良いのですが……」
 そう言って手まめな最愛の人がリビングのテーブルの祐樹サイドに用意してくれた短冊に文字を書き入れようとしてふと思いついた。





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最後まで読んで下さいまして誠にありがとうございます。

「公認カップル編」の方が早く終わるかもとアナウンスをしていたと思いますがどうやらその通りになりそうです……。七夕編は寝室までまだ遠いという……。
「公認カップル編」は大体あんな感じの終わり方をしようと思っていたので、あと一話で終わると思います。

「披露宴」も止まっていますし、落ち着いたら「ショーから始まる」も……。相変わらず宿題の多い身の上ですが(←自業自得)付き合って下されば嬉しいです。

明日も仕事なので「心は~」は更新出来ません。すみません。


    こうやま みか拝






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気分は下剋上 七夕編 49

「ちなみに、柚子のピューレには砂糖を一切入れていないし、柚子特有の爽やかな酸味もキチンと残っていると思う。
 柚子好きの祐樹のために――といっても、胡椒は入れていないが――」
 その言い方に思わず可笑しくて笑ってしまう。
「セブイレの柚子胡椒が大好きだからといってシャーベットにまでそれを求めませんよ。
 あの味は『おでん』には素晴らしく合いますが、シャーベットには無理でしょう……。逆に胡椒が入っていたら何らかの嫌がらせにしか思いません。
 まあ、貴方に嫌がらせをされる理由は全く思いつきませんが」
 冗談が言えるようになった最愛の人が愛おしくて、思わずキスを落とした。
「コーヒーとシャーベットは笹飾りの完成版を作るためのお供としてリビングで頂きませんか?短冊に祈りを書くという儀式が残っていますよね?」
 祐樹の提案に嬉しげに頷いた最愛の人は「笹飾りを持ってくる」と言い残してキッチンから姿を消した。
 その隙にとこっそりと寝室を覗いた。
 ハウスキーパーさんにわざわざ図入りで指示していたのが良かったのか、祐樹の目論見通りの場所に鏡が備え付けられていた。このアングルを求めていた!とか思うとフツフツと「そういう」欲望が滾ってしまった。
 短冊作りが終わって、ベランダに飾ったらいよいよ熱い逢瀬の夜の始まりだ。
 そして、その時にはこの鏡が大活躍をしてくれるだろうな……と思うと下半身が熱くさらに充血してくる。
 今はマズい!!と必死に鎮めようとした。
「祐樹……笹飾りとか短冊が用意出来たが?」
 涼やかな声に下半身の血も冷やされるような気がした。
「あ、済みません。今参ります。シャーベットが溶けるのも勿体ないですし、コーヒーが冷めるのも……」
 速足でリビングに向かうと、短冊とか筆ペンなどが過不足なく用意されていた。
「柚子の暖かい感じの黄色が良いですね。頂いても良いですか?」
 最愛の人が大輪の花が綻ぶような笑みを返してくれていて、それだけで充分過ぎるほど幸せだ。
 ピューレとやらが掛かっている祐樹の分のお皿の前に座って、さっそく味見をした。
「あ!このピューレ……柚子の美味しさをギュッと濃縮したような感じでとても美味しいですね。
 それにシャーベットの中に入っている柚子の皮……。わずかに塩が入っていてシャーベットの甘さを引き立ててくれていて本当に美味しいです。これはレシピサイトとかに書いてあったのですか?」
 柚子の酸味が口の中だけでなくて、何だか下半身の充血すらも清めてくれるようなサッパリ感だった。
「いや、そこまでは書いてなかったな。
 ただ、スイカに塩をかけると甘さが増すだろう?そういう効果を見越して少しだけ入れてみたのだが、気に入って貰えてとても嬉しい」
 ピューレも美味しかったが、柚子の皮入りのシャーベットのシャキシャキ感とか極上の味付けなどが口の中で美味しさの重奏曲を奏でているようだった。
「柚子のシャーベットもコンビニで売っているのしか食べたことないのですが、そしてそんな高い価格帯でもないので比較するまでもなく物凄く美味しいです。
 ほら、私の柚子大好きなのを知っている久米先生が珍しく気を利かせて買って来てくれるのですけれども。
 その中のシャーベットでも皮が入っているやつも有ったと思いますが、こんなに柚子の香りなどはしていませんでしたね。味は薄まった柚子といった感じでしたが。
 もうこの柚子の皮の濃厚な味とか酸っぱさと甘さを知ってしまえば、コンビニアイスの柚子は食べられなくなりますね……」
 最愛の人はシャーベットを掬っているスプーンを握っている紅色の細く長い指が一際艶っぽさと誇らしさを増したような感じだった。
「祐樹にそう言って貰えると作った甲斐が有ったな……。
 柚子のシャーベットの改善点などはあるか?」
 薄紅色の薔薇のような笑みを浮かべながらそれでも生真面目な感じで聞いてくるのも最高に愛おしい。短冊を書く作業を省略して寝室に連れ込みたい欲求に我ながら良く耐えた。
「いえ、100点満点だと思います。
 また作って下さいね。ピューレもこんなに美味しいので、これってサラダに混ぜても美味しいかと思います。
 柚子風味が効いた生ハムサラダとかも美味しそうですし……。柚子ドレッシングも売っていますが、それよりも美味しそうです。スモークサーモンでも良いですよね?もともとあれにはレモンを絞って掛けるので、その代用としての柚子も相性が良いと思いますが。
 ああ、サーモンにこの柚子の酸味が掛かったサラダ……。そう思うと梅干し効果以上に唾液が分泌されています。お時間が有れば絶対に作って下さいね……。
 それはそうと短冊の願い事は考えましたか?」
 早くその行事(?)を終わらせてベッドでの熱い逢瀬の時間を楽しみたい一心で聞いてみた。
「ありきたりなのしか思い浮かばなかったのだが、書いても良いか?
 サラダは明日にでも作っておくので。確かにサーモンと合いそうな感じだな……ピューレは味見しかしていないが、レモンとはまた違った感じでサーモンを引き立ててくれそうだ。後はクルミとかそういう歯ごたえの良いモノを入れて、思いっきり洋風という感じにして……チーズは何が良いかな?モッツァレラチーズでトマトを合わせてみようかな……」
 物凄く楽しそうに献立を考えては薄紅色の唇が紡いだ料理はとても美味しそうな感じだった。
 そして祐樹の示唆通りに薄紅色の指が筆ペンを持っている。
「二人の幸せを願うというような内容ですよね?
 ありきたりで良いと思いますよ。
 貴方が『世界征服』とかそういうある意味ぶっ飛んだ願いを書く方がびっくりですので」
 筆ペンで書かれた綺麗な文字を見て、思わず微笑んでしまった。



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気分は下剋上 七夕編 48

「貴方が凱旋帰国をされた頃ですね……。
 たまたま行く機会がありまして。といってもお義理で連れて行かれたのですが。
 それ以降は私が貴方派に付いたので、それっきりです」
 最愛の人は誰に連れて行かれたのかピンと来たのだろう。
 形の良い眉を僅かに顰めていたものの懐かしそうな笑みを浮かべている。恋人に隠し事はダメだろうと個人的に思う。しかも最愛の人は祐樹のことを全面的に信頼してくれているので、そういう人を騙したりウソを――サプライズのために敢えて黙っている分には免責されるだろうと個人的に思っている――ついたりしたら騙される人が悪いのではなくて祐樹の欠落した部分が全面的に悪い悪いと思ってしまう。
「分かった、そういう料理人の世界は狭いと聞いたことも有るので調べることは出来るだろうな。運よくその料理人さんの現在の勤務先が分かればそこに食べに行ってみよう。
 そして味を覚えて返ってあわよくば自宅で作れるようになりたいな……。中華は苦手だが、祐樹が好きならば……せめてエビチリソースだけでも上手く作りたいなと。
 それにこの料理の献立に検索してヒットした料理レシピのサイトでは――まあ、見ているのはきっと主婦とか料理が趣味な独身女性が大半だろうが。
 『自宅で簡単に出来る』とかいうキャプションが付いているのもたくさんあったので、私でも作れそうな気がする、な。
 ほら、祐樹のお母様に頂いたレシピをメインに出していただろう?
 そして祐樹が美味しそうに食べてくれる味は再現出来ると思っているのだが、どうだろう?」
 自信を半分くらいは持っている感じだったが、不安げに揺れている眼差しがとても綺麗だった。
「はい!それはもう貴方の料理はいつも美味しく頂いています。
 母の味を超えていますね。
 お袋の味というのは確かに子供の時から食べているので馴染みは有りますが、しかしそれを凌駕する味になっていますよね。
 何かで読んだのですが『夫が姑の料理の方が美味しいと食事の度に言って来て困っている。夫はマザコンなのでしょうか?』と。
 マザーコンプレックスでなくとも、小さい時からずっと食べて来た味というのはそれだけ馴染みが有るのは当たり前ですよね。 
 しかし、貴方の素晴らしく美味しい料理一択ですね。私の場合」
 思わず力説してしまった。
「それは嬉しいな、心の底から。
 それはそうと柚子のシャーベットを作ってみた。あとは、これを掛けると出来上がりだ」
 大輪の薄紅色の薔薇のような笑みを表情で咲かせた最愛の人はいそいそとした感じで冷蔵庫から出したモノをシャーベットの上に注いでいる。
 薄い黄色い液体だったが、何だかシロップのような感じだった。
「貴方の分にはかけないのですか?」
 コーヒーの芳香がキッチンの空気を優しく、そして寛いだものに変えていくような気がした。
 七夕という本来は夫婦とかカップルを祝う――裁縫も上手くならしいが、もしかしたら縫合術にも効果が有るのかもしれない――儀式の夜に相応しい感じだった。
「これは祐樹用に作ったものだから、私はいい」
 柚子の爽やかな香りがするシロップだかジャムだか分からないモノから仄かに薫ってきた。
「柚子のジャムですか?しかも酸味の思いっきり効いている?」
 最愛の人は甘い物が好きなので、暖かな感じのする薄い黄色のシャーベットだけで楽しむのだろう。その点甘い物の苦手な祐樹に配慮してくれたのだろう。
 ただ、最愛の人と一緒のモノを味わいたくて――バレンタインデーに祐樹は山のようにチョコレートを貰っている――食べていると意外に抵抗感が薄れてきたのも事実だった。
 昔は無理だったが、今ならショートケーキ一個くらいは楽に完食できるようになっている。
「ジャムではなくてピューレだな。
 ジャムはイチゴなら食べたことが有るだろう?」
 最愛の人の鮮やかな手つきを惚れ惚れと見ていた。
「ああ、学校の給食とかで無理やり食べました。給食は残すな!という先生が多かったので、イチゴよりも甘くて正直気持ち悪かったのですが」
 薄紅色の唇が笑いの花を咲かせている。
「ジャムは砂糖を入れて熱したもので……。当然甘くなるが、ピューレは素材本来の味が生かされる点が異なるな。
 ちなみに……」
 最愛の人の薄紅色の唇がいったん閉ざされた。「ちなみに」何なのだろうか?とか、キッチンで食べるよりもリビングで寛いで食べる方が良いのかもしれないなという贅沢な悩みが頭の中を幸せ色に染めていく。
 それに胃も心も満たされている上に一緒に過ごせた幸福な時間も宝石の煌めきのように貴重な時間だったし。





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気分は下剋上 七夕編 47

「いえ、貴方の過去を笑えるほどの育ちでは全くないのですが……。というよりも、全く独力でプライベートバンクから声が掛かるほどの資産を作られたことに尊敬の念を抱いていますが……」
 祐樹の所には信託銀行のダイレクトメールしか来ないのは――ちなみに信託銀行と銀行ではどちらがお得かといえば圧倒的に後者だと医局内で言われているのでそうなのだろう、多分――社会的地位とか資産額などが(違法かどうかまでは分からないし、個人情報保護法は患者さん関連のモノしか知らない)どこかから漏れているのだろうなとは思う。
 祐樹の給与振込先に作らされたU〇J銀行の信託銀行から来るのが圧倒的なので、もしかしたらグループ内では情報を共有しても良いとかいう文言が細かい字で書いてあったのかも知れないが、当然のように読み飛ばしている可能性も極めて高い。
「私も仕送り以上にお金が掛かった月などは、コンビニのお弁当のペラペラに薄い塩鮭を翌日まで取って置いて『玄関開けたら〇分でご飯』とかのCMでお馴染みのレンジでチンするご飯と食べた覚えがあります。予定外の出費とかそういうのが有った日にはなるべく食費を浮かせるしか手段がないですからね。
 塩鮭とか梅干しなどはそれ一品有っただけで美味しくご飯が進みますから。
 貴方との雲泥の、そして痛恨の差はご飯を自分で炊かなかったことですね。そういう家事を面倒だと思ってしまっていましたし、その炊事(?)の時間があるようなら休んだ方が良いと思っていたのですよね、それが敗因ですよね……。
 それはともかく、ある意味成功を収めた貴方とそれ以前の貴方では原材料は同じでも塩鮭がムニエルに出世したのかと思うと可笑しいです、妙にツボにはまりました……」
 からりと言うと最愛の人も甘酸っぱいような笑みを浮かべている。
「祐樹が笑ってくれると嬉しいし、それに過去は変えようがないからな……。
 で、ムニエルとちらし寿司ならどちらが良いのだ?」
 こうやって笑い合っていられるのは、祐樹も心の余裕が出来たこととか病院内の出世も――彼に比べるとささやかではあったものの――早かったからだろうなと思う。
 それに広々としてそれなりの設備が整っている部屋ということもあるのだろうなとも思ってしまう。
 それに生涯に亘るパートナーとしてこの場で祝っているという立場も――その上、織姫と彦星は神話の上では夫婦だし――有ったのだろう。
「貴方の出世にあやかってムニエルの方が良いですね。今日はご馳走稲荷寿司ですし、お寿司が続くよりも他のジャンルの物を作った方が貴方も気分が変わるでしょうし。
 ただ、明日は救急救命室勤務なので今日のように出来立てほやほやの極上の料理は口に出来ませんから土曜日か日曜日に楽しみとして取って置きますね……」
 最愛の人が瑞々しく咲いた大輪の薄紅色の薔薇のような笑みを浮かべている。
「出世魚は鰤(ぶり)が代表的なモノだと思っていたのだが……。私達二人の場合は鮭なのだな……」
 花のような笑みを浮かべて笑い声を紡ぐ唇がとても愛おしい。
「私達二人限定ではそうでしょうね。ムニエルから次は何に『出世』を遂げるのか楽しみです。
 貴方が唯一苦手というか……火力の関係でお店レベルのモノは出来ないと仰っていた中華料理なのですけれども、貴方の作ったエビチリソースが食べたいです……。
 大阪のホテルの『香桃』も美味しいことは美味しいのですが、少し甘さがあって……、貴方なら私の好みの味にして下さるのではないかなっと思っていたのですが。
 ああ、別にいつでも構わないので……」
 若干たじろいだ感じの最愛の人は思案するように数秒黙っていた。
「祐樹が一番美味しいと思ったエビチリソースのお店はどこなのだ?」
 最愛の人が凱旋帰国を果たしてから医局騒動が有ったが、その関係者は皆病院から去っている。その当時に連れて行って貰った――そして祐樹が最愛の人に与すると決めてからは敵同士(?)になった今は亡き(といっても、前任者の佐々木教授が院長を務める病院で一から修行しているハズで死んではいない、多分)医師に連れて行って貰ったF田ホテルの中華料理屋さんのが一番美味しかったような気がする。
 その医師は大嫌いだったが料理に罪はない。それに、最愛の人にそんな些細なコトまで報告していないので祐樹が言わなければ何とも思わないだろうなと咄嗟に判断した。
「F田ホテル……いや、最近はホテル業界も入れ替わりが激しくて違う名前に変わっているかもしれないですが……あそこのエビチリソースが一番美味しいと思います」
 最愛の人は薫り高いコーヒーをカップに注ぎながら細く長い首を優雅に傾けている。
 首を傾げる――職業上患者さんの前では絶対にしない動作で、プライベートを知る祐樹だけの特権だ――彼を惚れ惚れと見てしまう。
「確か、今の京都にはなかったハズだ。祐樹よりも時間が有るので、名前が変わっているとか廃業したか調べてみる。そしてそのシェフ(?)がどこに移ったのかも含めて調べてみる。
 祐樹が美味しいと思った時期はいつくらいなのだ?」
 正直に言って良いモノか一瞬迷った。






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円が104円です。私も少しだけですが仕入れました♡












すみません!!お彼岸なので、親戚やら母の友達とかが「お墓参りに行こう」と誘ってくださいまして(迷惑な人もたまにいますが……)母の供養になると思って仕事プラス体調不良を押して出掛けています。なので、更新はマチマチになります。最悪の場合は一話も更新出来ないかもですが、ご理解頂けたらと思います。

        こうやま みか拝






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