「ちなみに、柚子のピューレには砂糖を一切入れていないし、柚子特有の爽やかな酸味もキチンと残っていると思う。
 柚子好きの祐樹のために――といっても、胡椒は入れていないが――」
 その言い方に思わず可笑しくて笑ってしまう。
「セブイレの柚子胡椒が大好きだからといってシャーベットにまでそれを求めませんよ。
 あの味は『おでん』には素晴らしく合いますが、シャーベットには無理でしょう……。逆に胡椒が入っていたら何らかの嫌がらせにしか思いません。
 まあ、貴方に嫌がらせをされる理由は全く思いつきませんが」
 冗談が言えるようになった最愛の人が愛おしくて、思わずキスを落とした。
「コーヒーとシャーベットは笹飾りの完成版を作るためのお供としてリビングで頂きませんか?短冊に祈りを書くという儀式が残っていますよね?」
 祐樹の提案に嬉しげに頷いた最愛の人は「笹飾りを持ってくる」と言い残してキッチンから姿を消した。
 その隙にとこっそりと寝室を覗いた。
 ハウスキーパーさんにわざわざ図入りで指示していたのが良かったのか、祐樹の目論見通りの場所に鏡が備え付けられていた。このアングルを求めていた!とか思うとフツフツと「そういう」欲望が滾ってしまった。
 短冊作りが終わって、ベランダに飾ったらいよいよ熱い逢瀬の夜の始まりだ。
 そして、その時にはこの鏡が大活躍をしてくれるだろうな……と思うと下半身が熱くさらに充血してくる。
 今はマズい!!と必死に鎮めようとした。
「祐樹……笹飾りとか短冊が用意出来たが?」
 涼やかな声に下半身の血も冷やされるような気がした。
「あ、済みません。今参ります。シャーベットが溶けるのも勿体ないですし、コーヒーが冷めるのも……」
 速足でリビングに向かうと、短冊とか筆ペンなどが過不足なく用意されていた。
「柚子の暖かい感じの黄色が良いですね。頂いても良いですか?」
 最愛の人が大輪の花が綻ぶような笑みを返してくれていて、それだけで充分過ぎるほど幸せだ。
 ピューレとやらが掛かっている祐樹の分のお皿の前に座って、さっそく味見をした。
「あ!このピューレ……柚子の美味しさをギュッと濃縮したような感じでとても美味しいですね。
 それにシャーベットの中に入っている柚子の皮……。わずかに塩が入っていてシャーベットの甘さを引き立ててくれていて本当に美味しいです。これはレシピサイトとかに書いてあったのですか?」
 柚子の酸味が口の中だけでなくて、何だか下半身の充血すらも清めてくれるようなサッパリ感だった。
「いや、そこまでは書いてなかったな。
 ただ、スイカに塩をかけると甘さが増すだろう?そういう効果を見越して少しだけ入れてみたのだが、気に入って貰えてとても嬉しい」
 ピューレも美味しかったが、柚子の皮入りのシャーベットのシャキシャキ感とか極上の味付けなどが口の中で美味しさの重奏曲を奏でているようだった。
「柚子のシャーベットもコンビニで売っているのしか食べたことないのですが、そしてそんな高い価格帯でもないので比較するまでもなく物凄く美味しいです。
 ほら、私の柚子大好きなのを知っている久米先生が珍しく気を利かせて買って来てくれるのですけれども。
 その中のシャーベットでも皮が入っているやつも有ったと思いますが、こんなに柚子の香りなどはしていませんでしたね。味は薄まった柚子といった感じでしたが。
 もうこの柚子の皮の濃厚な味とか酸っぱさと甘さを知ってしまえば、コンビニアイスの柚子は食べられなくなりますね……」
 最愛の人はシャーベットを掬っているスプーンを握っている紅色の細く長い指が一際艶っぽさと誇らしさを増したような感じだった。
「祐樹にそう言って貰えると作った甲斐が有ったな……。
 柚子のシャーベットの改善点などはあるか?」
 薄紅色の薔薇のような笑みを浮かべながらそれでも生真面目な感じで聞いてくるのも最高に愛おしい。短冊を書く作業を省略して寝室に連れ込みたい欲求に我ながら良く耐えた。
「いえ、100点満点だと思います。
 また作って下さいね。ピューレもこんなに美味しいので、これってサラダに混ぜても美味しいかと思います。
 柚子風味が効いた生ハムサラダとかも美味しそうですし……。柚子ドレッシングも売っていますが、それよりも美味しそうです。スモークサーモンでも良いですよね?もともとあれにはレモンを絞って掛けるので、その代用としての柚子も相性が良いと思いますが。
 ああ、サーモンにこの柚子の酸味が掛かったサラダ……。そう思うと梅干し効果以上に唾液が分泌されています。お時間が有れば絶対に作って下さいね……。
 それはそうと短冊の願い事は考えましたか?」
 早くその行事(?)を終わらせてベッドでの熱い逢瀬の時間を楽しみたい一心で聞いてみた。
「ありきたりなのしか思い浮かばなかったのだが、書いても良いか?
 サラダは明日にでも作っておくので。確かにサーモンと合いそうな感じだな……ピューレは味見しかしていないが、レモンとはまた違った感じでサーモンを引き立ててくれそうだ。後はクルミとかそういう歯ごたえの良いモノを入れて、思いっきり洋風という感じにして……チーズは何が良いかな?モッツァレラチーズでトマトを合わせてみようかな……」
 物凄く楽しそうに献立を考えては薄紅色の唇が紡いだ料理はとても美味しそうな感じだった。
 そして祐樹の示唆通りに薄紅色の指が筆ペンを持っている。
「二人の幸せを願うというような内容ですよね?
 ありきたりで良いと思いますよ。
 貴方が『世界征服』とかそういうある意味ぶっ飛んだ願いを書く方がびっくりですので」
 筆ペンで書かれた綺麗な文字を見て、思わず微笑んでしまった。



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