まあ、仮に気付かれたとしても、祐樹が知っている事務局の女性陣は割とキャピキャピしている感じで、若い男にしか興味がなさそうな感じだった。
 本来は無神論者だし霊なんてものを全く信じていない祐樹には――菊の花を抱えて隣を歩む最愛の人もそうだろうが――全く平気な場所の霊安室にもオカルト系のウワサは漏れなく付いていることは知っていた。
 だから霊安室勤務の初老の山田さんとは接点がないだろうな……とも思うし、山田さんも若い女性に積極的に近づきそうなタイプでもなかったので大丈夫だろう、指輪の件は。
 まあ、万が一山田さんが素朴な疑問として指輪のことを誰かに話したら、それなりの説得力のあるエピソードをでっち上げないとな……と思っていた。
 ――祐樹が今パッと考え付くエピソードがないのは内心残念だったが、男性の薬指にプラチナのシンプルなリングだけではなくて祐樹の母から託して貰った上で彼に贈ったダイア付きの指輪は言い訳が面倒そうだなとは思ってしまったが。
 森技官に相談してみようか?と思う。昼間に散々迷惑を掛けられたのだから――そして「大人のおもちゃ」の具体的名称を呉先生に畳み込まれた最愛の人の当惑具合とかも加味すると――その程度は許されるような気がした。絶対に口から先に生まれて来た森技官のことだからそういうのも得意のハズだし。
 万が一のことにも備えなければ、最愛の人と祐樹の真実の関係がこれ以上知る人がないようにするという二人の口に出さない願いは叶わないのも分かっていた。
「祐樹、この小路を右に曲がればすぐに墓地がある」
 最愛の人の息も乱していない怜悧な声に我に返った。
 彼が言っていた通り、街灯がかなり明るく点いていて単身者用と思しきアパートがあちらこちらに建っているからだろう。祐樹が学生時代から住んでいたのもこんな感じの部屋だったので何だか懐かしい気がした。ただ、間取りは医学部生の宿命で専門書などを買わなければならないと聞かされていたのでもっと広いような感触だった、ざっと見た限り。
 ただ、昨今の雇用形態の変化で派遣とか非正規とかで働いていて、月収20万円以下という人が多くなったという記事を読んだことが有ったので、そういう人が墓地近くでも良いので住みたいという需要があるのだろうかとかついつい余計なことを考えてしまう。
 祐樹の実家は京都の日本海側でハッキリ言えば田舎なこともあって墓地の周りに普通の民家とかはない。
「ああ、この程度の明るさだったらお墓を探せますよね……」
 安堵の吐息交じりの言葉を何となく雰囲気に飲まれて小声で告げると、菊の花を胸に抱えた最愛の人は怪訝そうな表情を浮かべていた。
「街灯が消えていても、道は以前と同じだから記憶を辿れば多分お墓の前まで行けるかと思っていたのだが……」
 ――この人の驚異的な記憶力をうっかり忘れていた。確かに彼ならばその程度は容易いハズだし、イザとなればスマホのライトを使って道を照らすことも出来るし、お墓も大体の場所が分かったらライトで探せるだろう。
「貴方の記憶力にはいつも助けられてばかりですね……。私の欠けたところを補って下さって嬉しいです」
 実感というか心の声を唇に載せた。
「いや私の欠けたところは祐樹に補って貰っているので、それはお互い様だと思うのだが……。ただ、祐樹の役に立てて嬉しいけれど……」
 二人とも墓地の静謐な空気を搔き乱すようなことをしたくないのだろう、自然と小声になっている。
「こっちだ……」
 迷う様子もなく墓地の中を歩んでいる最愛の人が祐樹の腕を掴んで道案内をしてくれる。
 二階以上の――といっても京都は殆どの場所が低層階しか建てられないように条例で決まっているし、この辺りもそうなのだろう四階以上の建物はない感じだ――ベランダに出ていたり窓の外を見ていたりした人が居れば見つかってしまうだろうが、こんな夜にお墓を観察するようなモノ好きな人間は居ないと信じたい。まあ、部屋の壁などを汚したくないスモーカーならベランダで吸っているという可能性は有ったものの、上から眺められた場合は顔が見えないという利点に気付いた。
 それに何かの拍子に顔を上にしても、最愛の人は前髪も下ろしているし、スーツ姿ではないのでテレビに出た時とは全く雰囲気が違うので人違いだと思ってくれるだろう、多分。
「ああ、このお墓ですか。割と綺麗に掃除されていますよね。お花は枯れてしまっていますが。 
 えっと、お水を汲むヒ……ヒシャクでしたっけ?それも要りますよね?あとバケツ状の物も。水道が有るところにそういうのも置いてあったハズですが……?」
 もっと難航するかと思っていた香川家重代の墓が彼の記憶力のお蔭で最短時間と距離で着けたのでうっかりしていた。
 それに、二階以上の部屋から灯りが漏れていないよな?とかタバコ特有の光を密かに探していたという事情もあったのだけれども。ただ最近は電子タバコが普及しているので分かりにくくなっているのも事実だった。
 祐樹は時々――特に救急救命室勤務の時は格好の息抜きに―タバコを吸う程度にまで少なくなったものの、電子タバコという選択肢はなかったが。何だか昔から馴染んだモノしか吸いたくないという思いが理由だった。
「あ!それはうっかりしていた。
 お墓参りに来たのは先ほども言った通り納骨の時が最後だったので。息子失格だな……」
 少し恥じた感じの小さな声に、被せてしまった。
「いえ、ウチは父が眠っていますがそこに行ったのはいつだったかもう覚えていないので……。同じ程度だと思いますよ、息子失格具合は。
 それよりも……」
 気付いたことを言ってから、バケツ状の物と柄杓とやらを取りに行こうと思った。





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最後まで読んで下さいまして誠に有難うございます!!取り敢えず二話更新出来ました!!
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本当に済みません!!



     こうやま みか拝


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