「ずっと付き合って結婚に至ったカップルでも『初夜』は厳粛な気持ちで迎えるものだとどこかで読んだ覚えが有りますが、聡もそうですか?」
 しなやかな身体を強く抱いて、キスの雨を降らせながら聞いてみた。
 祐樹も一応はグレイスに常連として通っていたので、ゲイのコミュニティの末端というか端くれくらいには居る。
 ただ、アメリカなどの理解のある外国で――最愛の人の話しによると嫌悪感を抱く人と理解のある人にキッパリと二極分化されるらしい。日本の場合は大学病院のように旧弊な場所では面白おかしくウワサはされるが、生理的嫌悪感を抱くというよりも面白がっているだけのような気がする。そういう国民性なのかもしれない――二人だけの結婚式を挙げたという話は聞いた覚えがある。基本的に双方の両親共に理解が有る家というのも物凄く珍しいらしくて、両親すら呼ばないのが普通らしかったが。そしてそういうコミュニティで知り合った友人・知人を呼べたらそれだけでラッキーだということも。
 だから祐樹の知る限りではこんな大々的な「披露宴」を、少なくとも二人の真の関係を知っている人はこの記念パーティが方便だということは共通認識だった。
 それが分かっているからこそ呉先生や森技官は薔薇の花束を贈ってくれた。
 それに祐樹の母だって単なる「600万部記念パーティ」だったら腕の痺れを押してまで来てくれなかったような気がする。一応息子のことはそれなりに愛してくれていることは知っていたが、母にとってM鶴市民病院が最も大きな病院だと認識しているので大学病院主催という大舞台は遠慮したいとか言い出す可能性の方が高かった。それにも関わらず来てくれたのは最愛の人と祐樹を祝福したかったからだろう。オフィシャルでもプライベートでも。祐樹が選んだ最愛の人のことも自分の息子のように、そして良く出来た嫁の――と表現するのは差別用語かも知れないが――ように大切に思ってくれているのは知っている。
 だからこそ、迷惑をかけるかもしれないと分かっていても参列してくれたのだろうなと思ってしまう。
「もちろんだ……。ああいう厳粛かつ豪華な空間で――まあ、首相がいらして下さったので斎藤病院長以下のお偉方はそちらに注意が行ったのも僥倖だったな――ケーキの入刀ではなくてシャンパンタワーを作るという祐樹との共同作業が出来たのも夢のように幸せだった。
 『披露宴』の次には『初夜』が待っているのかと思うと、何だか物凄くドキドキしたし、早く来て欲しいような……逃げ出したいような不思議な気分だった……。
 こうして祐樹に抱き締められていて天に上る気持ちと、安らぐような気持ちが半分半分だな。
 祐樹とこうして身体を隙間なく密着している時間は何時だって私の天国だが、今夜は特別というか初々しい気持ちでいっぱいで…………。
 大好きな人と夜を迎える花嫁さんもこういう気持ちで初夜を迎えたのだろうか?とか普段は余り働かない想像力が湧き出る泉のように出てくる感じだ、な……」
 咲き誇る青い薔薇に水滴を宿したような透明な笑みがとても綺麗だった。
「そうですか?
 実は私もとても緊張していました。と言っても物凄く良い思いをするのが分かっているので、プラスの意味での緊張ですが。
 首相がいらして下さったので進行がグダグダになったのも却って良かったと思います。
 同じ病院勤務といっても普段は顔を合わせない医師と仲良く話せたことも物凄くプラスになりましたし。
 立食のエリアには立ち入れないだろうなと、式次第を見て内心溜め息をついていましたが、結果オーライだったと思います。
 呼んでもいない女性たちがいらして下さったのも――ある意味迷惑でしたが――それ以上に嬉しいサプライズでしたよね。
 そのお蔭でこうして焼きティラミスを食べることも出来ましたし……。
 あ、召し上がりますか?それともコーヒーにします?氷が溶けて薄まらないのも良いですね……」
 最愛の人は愛の交歓の余韻を残した艶っぽい眼差しで祐樹の顔を見ている。
「祐樹が食べさせてくれるなら、食べる。
 元々大好物だったが、この特別な日に味わったことで私にとって別格というか……心の中で殿堂入りしたお菓子になったので……」
 今度は半分に割って紅の唇に近づけた。
 そして、真っ白い歯で一口噛んだのを確かめてから手を引いて祐樹の口に入れた。
 最愛の人の歯の痕とか、紅色の唇が触れたお菓子だと思うとより一層美味しく感じた。
 苦みも有って祐樹もそれなりに好きなお菓子だったが、最愛の人の言う通り別格の味に格上げされたほろ苦い甘みが口の中に広がった。
「貴方も食べさせて下さい。
 ほら、神式の結婚式に三々九度の儀式が有りますよね?
 正式なやり方はあいにく知らないのですが、その代わりに聡のお好きな――いや今夜からは私も大好物になりましたが――お菓子で誓いませんか?」
 艶っぽさの薫る滑らかな頬が初々しい紅色に染まっている。
「分かった。これで良いのか?」
 しなやかに長い紅の指がお菓子のパッケージを鮮やかな感じで開けて祐樹の口元に近づけてくれた。
 一口噛んだら、苦さと甘さが蕩けるような感じで口の中に広がる。
 その紅色の指が上品かつ妖艶な動きで最愛の人の唇にお菓子を運んでいる。
 ベッドの上で交わす二人だけの儀式にはお酒よりも洋菓子の方が相応しいような気がした。
 甘いお菓子の方が最愛の人と交わす「誓いの儀式」を一糸纏わぬ姿でしているのも、お菓子よりも甘くて濃密な時間だろう。




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今日もバタバタしておりました。暑いので水分補給に気を付けています。
記録的な暑さですが読者様もお身体ご自愛ください。

            こうやま みか拝



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