「その映画、私も観たいな……。ちなみにリビングのテレビでもPCの画面は映るので、そちらで一緒に鑑賞しないか?」
 いつの間にそういうふうにしたのかなと思った。
 まあ、最愛の人のほうがこの部屋にいる時間は圧倒的に長いし、家事をしながらテレビを観ていることも知っていたので映画も加えたかったのかもしれない。
「ええ。それは良いですが。最近のPCというか動画配信システムって物凄く進化していますよね……。
 映画を二人して観るのも大賛成ですが、映画館のようにポップコーンとコーラなんかが有ったらもっと楽しめると思いますが……」
 何気なく口にしただけの祐樹の言葉に最愛の人が白鳥のような優雅な首を傾げていた。
「映画館では、皆がポップコーンとコーラを飲むモノなのか?
 ああいうのはドラマの中だけだと思っていたが……?」
 そういえば、最愛の人と映画館に行くデートをした覚えがなかった。
 そこまでして観たい映画がなかったとか他のデートで忙しかったからというのが主な理由だったので。
 そして最愛の人の場合「高校生がするようなデート」という機会を逸しているという当たり前の事実をすっかり忘れてしまっていた。
「田舎の習慣ではそうでしたね。
 と言っても、ウチの実家もご存知のように僻地ですからそれほど遊ぶところがなかったのも事実です。
 ああ、ここで映画の検索が出来るのですね……」
 久米先生がラインで送ってくれた映画は配信されているのだろうかと思いながらPCを操作した。
「コンビニで、コーラとポップコーンを買って来た方が良いか?」
 淡い笑みを浮かべながら最愛の人は疑問形で聞いてくれたが、内心は願望のような気がした。
「そうですね……。リビングのテレビの大きさはウチの実家の近くの――と言ってもバスで一時間も掛かりますが――映画館のスクリーンほどの大きさですから、映画館気分は充分味わえますし……。
 ああ、配信されていますね。良かったです。なかったらどうしようかと思っていましたから。
 一緒にコンビニに行って買いましょうか?」
 何気なく誘ったら切れ長の澄んだ瞳が大きく見開かれた。
「良いのか?近くのコンビニには病院関係者も良く見かけるので……。挨拶をするほどの仲ではないので、挨拶されたら返事をする程度なのだが……。
 ただ、この格好で二人で行くとまずくはないか?」
 確かに最愛の人の言う通りだった。土日は休みを死守している祐樹だったが、病院は当然ながら稼働しているし、このマンションは病院に近いのでコンビニを利用している関係者も多いだろう。
「では、私が買いに行って来ます」
 最愛の人が祐樹の手首を掴んで止めている。
「いや、私が行って来るので……。今日は祐樹が色々と動き回って大変だっただろうから」
 相変わらず健気で真摯な人だと思うと唇が綻んでしまう。
「コーラですけれど、貴方は多分600mlのペットボトルを買おうと思っていらっしゃるでしょう?
 ポップコーンも普通のポテトチップスのサイズのをとか思っていますよね、多分……」
 細めの眉が微かに潜められて、白皙の整った顔に意外なことを聞いたという感じが雄弁に広がった。
「え?違うのか……?」
 最愛の人が途方に暮れた感じで祐樹を見上げている。
「映画鑑賞に適したのを買って来ますから、何なら先に再生して観ていて下さい。
 ストーリーを追うのではなくて、演説の場面が観たいだけですから……。
 まあ、話が面白ければ最初から観ますが……」
 財布とスマホを持って部屋を出た。
 ああは言ったが最愛の人が先に観ているとは毛頭思わなかったが。
 コンビニに行くと最愛の人が言った通り見知った顔がちらほら目についた。
 それに明らかに下はパジャマだろうな……と思しき人も居て患者さんだろうなと見当をつける。
 確かにここに二人で来るとマズかっただろうが、祐樹はこんな時間にこのコンビニを利用したことがないために事情が分からなかったことも事実だった。
 最愛の人もそれほどコンビニ利用率は高くないハズだったが、何かしらの買い物に来ているのかもしれないな……と微笑ましい気持ちになった。
 それに祐樹がこの辺りに居ても白衣を脱いで病院を少しだけ抜け出したと「誤解」してくれるだろうし。
 コンビニの店内を歩きながら、大きなサイズのポップコーンを探したがあいにくなかった。
 映画館の雰囲気を出すために大きな袋の方が良かったし、その上最愛の人にポテトチップスの普通の大きさと同様のサイズはダメと言い置いて来たので、代替策を考えながら店内を歩き回った。
 コーラの重さは分かっていたので、冷蔵庫の中から取り出すのは最後にしようと思っていると、良いモノを見つけた。
 これで何とか映画館の再現が出来そうだと内心ほくそ笑んだ。
 5つくらい買って置けば大丈夫だろうと棚を空にして最も大きなコーラのペットボトルをカゴに入れた。
 ただ、二人でこの量を消費出来るわけもないのは知っていた。
 ―-残った分は、コーラとポテチをこよなく愛する久米先生に押し付けようと思っていた。
 すると、ポケットに放り込んでいたスマホが着信を告げている。
 こんな時間に誰だろうと画面を見て、意外さの余りに内心驚いた。



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  こうやま みか拝






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