「黒木准教授は、私の代わりに講義をしてくださっているのは祐樹も知っているだろう?

 だから久米『君』時代から当然知っていて、その時の印象だったら『演説を真面目に聞いている』グループに属するのが相応しいと思うのだが……。あの当時は学生だったこともあって取り敢えず偉そうな人の話は聞くというスタンスだっただろうし……。

 しかし、今の久米先生のイメージだと興味のなさそうにチラシを貰うだけは貰って、内容などは読まずにごみ箱に放り込んで立ち去りそうだ。久米先生は興味のないことに対して一切の注意を払わないような気がする。
  そのセット?小道具?何と言うのかは知らないが、そのチラシに公約などがそれらしく書かれているのだろう?祐樹の先ほどからの話を総合すると……。
 まあ、候補者の顔写真くらいしかスクリーンに映らないかもしれないので、選挙ポスターによくあるように、顔とガッツポーズそして『市民の生活を全力で守ります!』みたいなことだけを書いてあって、詳しい公約までは印刷していないかもしれないな……予算の都合上もあるだろうし、選挙ドキュメンタリーめいた映画ではないのだったらそれほど重要ではないから、そんな細部までは凝らないだろうな……。

 ビラを貰わないという選択肢もあるだろう?映画監督がどこまで指導というか熱の入れ方をしたのか知らないが……。京都駅前のロータリーでも選挙期間中に各党の候補者が選挙運動をしている時に通りすがったりするが、貰っていない人も多いので……」

 そこまで詳しく聞いたわけでもなくて――いや久米先生が熱心に話していたかも知れないが祐樹は馬耳東風といった感じで聞き漏らしていた可能性もある。どうでも良いことを覚えていると肝心な患者さんの情報が頭から零れてしまうので情報の取捨選択を無意識にしている――そして最愛の人も祐樹との他愛のない会話とフィナンシェを楽しんでいるだけで、仕事の時のような「神は細部に宿る」的な完璧さを求めているわけではないのも承知の上だった。

「ああ、確かにどうでも良い選挙ですからね……。どうせ病院長の直々のお達しで投票する人は決まっていますし。まあ、病院長が推している候補者よりも一票を入れたいとか思えるような元同級生とか何かの縁で親しい人とかもいませんし。

 チラシはゴミにしかならないですしね。ほら、居酒屋とかの勧誘でテッシュとか団扇とかが付いているわけでもないので――それが有ったらついつい貰ってしまうかもしれませんが――そういえば私も配っていても貰わないですね。オマケとして団扇とかが付いていたならそれだけを目的に受け取りそうですが……」

 最愛の人はバターと砂糖の甘い香りのする唇から満足そうなため息を零している。

「ああ、選挙の場合は税金が使われているのでチラシしか配ったらダメだとか読んだことがある。換金性のあるものは公職選挙法に抵触するそうだ……。確か投票した人数の10%未満の悲惨な票数しか取れなくて供託金が没収されなければ、選挙費用も税金から賄われるので、無駄なお金は使えないし、税金を原資にして選挙民に金目の物を撒くのはダメらしい」

 最愛の人の博覧強記ぶりは知っていたが、そこまで詳しいとは。

「え?テッシュなんてタダみたいなモノですよね?

 確かにコンビニとかで売っていますけれど、紙の質とかも全く異なります。ほとんど無料みたいな感じのチャチなテッシュでもダメなのですか?

 ああ、ウチワだって、お店の名前とか書いてありますよね?コンビニで売っているのは可愛いイラストとかが描かれているのでそのデザイン料とかを支払うために値段に上乗せしているだろうとは思いますが、タダで配っているのって、居酒屋の名前とロゴが入っているだけの味も素っ気もないモノですが……あれでも換金性があるのですか?」

 最愛の人は襟ぐりの深い室内着に包まれたやや華奢な肩を優雅に竦めている。

「たとえその単価がわずかな金額でもダメなものはダメみたいだな……」

 最愛の人が淹れてくれた最高に美味しいコーヒーを一口飲んで口の中に広がる爽やかな苦みとコクを味わった。

「ああ、そういえば……病院の清掃員が言っていました。トイレットペーパーを持って帰る女性が居て困ると。

 確かに原価はわずかでしょうが、お金がないのかそれとも単にケチなのかは分からないですが価値がないわけではないのでしょうね……。

 それはそうと、久米先生の披露されなかった『名演』ですが、最初から市長候補役の俳優さんの演説を感心しながら聞き入っている聴衆役だったそうです。

 そして、聴衆役にはとある重大なミッションが与えられていて……拍手の合図というか、このセリフを割と知名度のある「市長候補」の俳優さんが言った時に一斉に拍手と賛同の言葉を言うようにと指示されたらしかったです。

 絶対にココでは拍手とか『頑張れ』とか『賛成っ!!』とかそういうアクションを起こさなくてはならないらしいです。

 それ以外の演説では各自が良いなと思ったら、適宜拍手とか掛け声もOKらしかったのですが」

 最愛の人は驚いた感じで目を瞠っている。

「映画とはそんなに手間を掛けるものなのだな……。それでも興行収入がイマイチだったとか大赤字だったとか書かれているのだから、シビアな世界だ……」

 確かにそうだなと思った。映画館に観に行く機会はないが、CMなどで製作費何億とか何十億円とかがテロップで流れる時がある。

 製作費だけではなくて多分映画館を借りるお金とかその他もろもろの費用が掛かっているだろうから、赤字になったら物凄い損害になってしまうだろう。

 その分、大ヒットしたら笑いが止まらないだろうが。

「話は戻しますが、久米先生は斎藤病院長と同じ政党をなんとなく支持している立場なのですが、映画では『環境に優しく』とか『今の政治に不満はないですか?』とか熱く語られ、また、その俳優さんの熱演に『この人なら市長を任しても良いかも』と本当に思ったらしいですよ。環境問題はともかく久米先生は別に今の政治に不満なんて抱いていないらしいですが……。

 そういう『聴衆を動かす』演説の仕方を参考までに見ておきたいと思って、久米先生にラインで題名を聞いたのです。

 貴方のPCで映画も観ることが出来るなら、ぜひ検索をお願いします」

 最愛の人は細く長い首を曖昧な感じで振っていた。一体首を横に振る要素があるのかと内心怪訝に思ったが。


--------------------------------------------------
二個のランキングに参加させて頂いています。
クリック(タップ)して頂けると更新のモチベーションが劇的にそれこそロケットのように上がりますので、どうか宜しくお願い致します!!



にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村




小説(BL)ランキング






















最後まで読んで下さいまして誠にありがとうございます。

何とか更新出来ましたが、あと二話は正直微妙です。すみません!そして、アップされていたら褒めて下さい← 二時間、二時間を目途にして頂ければと思います。

   こうやま みか拝



↑  ↑

主な登場人物紹介なのですが、1stステージ時なので、今とは面子が異なりますことをご了承下さい。



昔のを発掘していたら、色々なモノが出てきました。未完の物とかも(泣)

今は「小説家になろう」様が一番進んでいるので、暇を見て(って有るのか?)順次更新でもしてみようかと目論見中です。


小説家になろう」様「気分は~」1stこちらは隙間時間にガンガン更新しています。ブックマークなどでフォローして下されば嬉しいです。




◇◇◇







このブログでも再掲は終わって新しく書いていますが、諸般の事情で先行配信しています。先が気になる方は是非♡






腐女子の小説部屋 ライブドアブログ - にほんブログ村





PVアクセスランキング にほんブログ村