「あの!西野警視正……。龍崎県警本部長殿からお電話が……!!!
 それも、私のスマホに着信が有って『龍崎だがね』といきなり仰って……。谷崎をK戸大悪付属病院に搬送出来るようにウチの署長と掛け合った直後だったので、いささか気が立っていまして、お恥ずかしながら。
 だからつい『どこの龍崎だ!?』と……。
 いえ、お名前は存じ上げていたのですが、まさかそんな方からお電話が掛かってくるとは思ってもいなかったので……とっさに思い当たらずに思いっきり高圧的に出てしまいまして……。
 こんなことを頼めた義理ではないのも分かっているのですが……」
 顔中が汗でびっしょりなのは、きっとH庫県の警察のトップに対して思いっきり無礼な言葉を――知らなかったとはいえ――浴びせかけてしまったからだろう。
「ああ、龍崎さんか……。あの人は一見気難しそうに見えるが実際のところそうでもないし、その上事件の最中の現場が――と言っても容疑者確保という一報は入っていただろうがね――ピリピリしているのもよくご存知なので気になさってはいないよ」
 西野警視正が飄々とした感じで言っていた。
 鈴木警部は多分ノンキャリア組の警察官なんだろうな……。だっていかにも現場で鍛え上げられましたという感じの40代くらいだ。年齢的には西野警視正と同じくらいか少し年上に見える。といっても俺の場合、年齢当ては外れる方が多いんだけど。
 だからH庫県で一番偉い人からの電話にビビってしまったんだろうなぁと。
 龍崎さんという名前に幸樹が驚いたのか俺の膝から飛び起きている。
 そのいつものような機敏さに物凄く安心してしまった。
 そういえば、幸樹は龍崎さんを「苦手」とか言ってたような気がした。なんでもお父様とよく似ているからとか。
 でも西野警視正はそうは思っていなかったのか、なんだか別の見方をしているみたいだったけど。
「このスマホで話せるのかな?
 今の会話を聞かせて良かったのかな?」
 スマホに慣れていない西野警視正はミュート機能とかを――多分鈴木警部は西野警視正にとりなしを頼んでいたんだから当然龍崎県警本部長サマには聞こえないようにしているだろうし――知らないんだろうなって思った。
「いえ、この会話は聞こえないようにしています。なにとぞ良しなにお伝えください!!」
 鈴木警部は必死の形相で言い募りながらスマホをタップしている。
「これで会話が可能です」
 西野警視正は頷くとスマホを耳に当てた。
「オレにも聞かせてくださって構いませんか?」
 幸樹は――物凄く嬉しいことに普段通りの凛とした口調に戻っていた――横から口を挟んでいる。
「ちょっと待ってくれ。
 龍崎県警本部長殿に許可を取る必要が有るので」
 受話器を手で覆って聞こえないようにした積りだろうけど……スマホの収音口はあいにくそこではないのを知らないんだろうな……。まあ、先方に聞かれても多分問題はないような内容だろうけど。
「もしもし、西野です。はい、例の連続不審自殺の件です。
 え?誰が話したがっているかですか?」
 スマホ音痴の西野警視正は「何故龍崎さんがそれを知っている??」といった怪訝そうな表情を浮かべていた。
「高寄幸樹君、はい。その通りです。今回、容疑者との交渉役に当たってくれました。
 お聞き及びだと思いますが、容疑者――と言っても事情が事情ですので逮捕状は取らずにK戸大学附属病院に精神科の隔離病棟があることを確かめた上で……」
 鈴木警部が手帳に――と言ってもドラマで見るような警察手帳ではなかった――「閉鎖病棟は有るとのことでそちらに向かってサイレンは鳴らさずに連行中」と書きなぐっていて見せている。
「ああ、すみません。閉鎖病棟はあるらしいのでそちらに連行しています。
 高寄幸樹君はゼミの友達としての交渉役でしたが、目覚ましい働きを見せてくれました。
 今も一緒に居るのですが、スマホのスピーカー機能というのですか?それに切り替えても良いかと言っています」
 数秒の沈黙が流れているのは西野警視正が龍崎さんの話を一方的に聞いているのか、それとも電話の向こうで沈黙が続いているのかのどちらかだろう。
「了解です。交渉役にはもう一人、幸樹君の親友も大活躍してくれましたので、その彼だけは同席させても宜しいですか?一般人ですが、事情に通じていますし、口は堅いと保証しますし、万が一彼から情報が漏れたら私が全責任を取る所存です」
 西野警視正が言っているのは紛れもない俺のことだろう。
 そして俺のことをそんなに庇ってくれるとか巻き込んでくれるとか思ってもいなかったので目をぱちくりとさせてしまった。
 その様子を幸樹が端正な唇を弛めて笑みの形に刻んでいるのも「いつも通り」の感じで、ものすごく嬉しかった。
 「まだ」幸樹は摂取してしまったかも知れない「闇に囚われる」薬の影響は出ていないのだろ思うと、心の底から安堵のため息が零れてしまった。
「これ、どうやったら保留というか……」
 幸樹がスマホを西野警視正から素早く受け取ってタップしている。
「龍崎さんは協力的なのですか?
 西野警視正のように柔軟性に富んでいる――いえ、もちろん褒めています――あんな頭の固い頑固オヤジなのに……頭皮まで硬いからハゲるんですよ……きっと」
 幸樹は確か龍崎さんのことをお父様に似ているとか言っていたので、相当苦手意識をもっているのかもしれない。
 ただ、こうして電話を掛けてくるからには気になることがあったのだろう。
 まあ、もしかしたら口止めというか官僚に有りがちな事なかれ主義からの「口止め」かもしれなかったけど。
 でも、鈴木警部のスマホに電話してきたってことは前者の可能性の方が高いだろうなってことくらいは俺でも分かった。
 これはチャンスかも……。





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