「確かに揚げ物とか天ぷらとかはキッチンに油が飛び散るな……。しかし、私の場合はそれを綺麗にする作業も好きなので全く問題はない。
 それにニュースなどを聞きながらなので良い気分転換にもなるし……。
 家事は患者さんの命が掛かってないのでリラックスして出来るし……。
 それに手を動かしていないと落ち着かない――と長岡先生に言ったら妙に感心された。『外科医の鑑』だとか……。別にそこまで称賛されるほどのモノではないと思うのだが……。
 ただ、家事の苦手な長岡先生だけにそう思えたのだろうが、外科医なんて皆手先は器用だし普通だと思うのだが……」
 ハンバーグを美味しそうに口に運びながら最愛の人が事も無げに言っている。
「いえ、黒木准教授なども家に帰れば奥さんに任せて横のモノを縦にしないとか仰っていましたよ。柏木先生もそれほど家事分担を出来るだけサボっているとか言っていました。
 奥さんがキレそうになるとなけなしのボーナスで彼女の好きなブランド物のバックを買うことで妥結しているみたいですよ。
 黒木准教授も柏木先生も世間基準では充分器用だと思いますが、実態はそんなモノらしいです。
 仕事は仕事、家に居る時間はひたすらゴロゴロして寛ぎたいとか柏木先生は言っていましたね……。
 実家住まいの久米先生はお母さまが作る栄養バランスの取れた、しかもカロリー計算までされたらしい食事を供されるらしいですが、それだけでは物足りずに私室に籠ってベッドの上で大好物のポテチを齧りながらコーラを飲みながらマンガを読むのが休日の楽しみらしいです。
 ま、アクアマリン姫とのデートコースを企画立案する立場を利用して――と言っても彼女がハイヒールで歩くことも考慮していますが――わらび餅とか葛切り、トコロテンとかの「有名店」とか南禅寺の近くにある湯豆腐のお店などを毎回漏れなく入れて有りますので若干はマシになったのでは……と思います。
「南禅寺の近くの湯豆腐屋さん?そこは美味しいのか?
 生湯葉が美味しい店には連れて行って貰ったことは有るが……?
 あそこの生湯葉はトロっとしていながら歯ごたえも有ってとても美味しかった。
 それに生わさびの量も物凄く計算されていて、出汁に思いっきり合っていたし……」
 生湯葉が名物のお店に行った時のことを思い出したのか、薄紅色の唇がこの上もなく綺麗な笑みを浮かべている。
「いえ、湯豆腐のお店には私も行ったことがないのですよ。観光ガイド本というか『洗練された大人の京都旅』という書名だったと思いますが、それを見てついでに食べ〇グなどの評価もキチンと調べた上でデートコースに組みました。
 何なら久米先生の評価を聞いてみて一緒に参りましょうか?
 まあ、久米先生なら『あまり美味しくなかった』とか『姫の美しさに見惚れて味なんて分かりませんでした』とか言い出しそうですが、前者の場合、ポテチとかコーラに毒された舌ですからね……。久米先生のマイナス評価は世間ではプラスだと思いますよ。
 貴方も繊細な味がお好きでしょう、基本的には。
 だから久米先生の逆張りというか反面教師というかそういうのでしか判断出来ないですね。
 わらび餅もふわっとした黄な粉が――豆をごくごく小さな粉末にしただけのやつ――特徴で、しかもわらび餅はプリプリっとした弾力でありながら噛んだら直ぐに切れる高台寺の「洛匠」がお好みでしょう?
 だから久米先生の味覚とは合わない気がします。
 彼は油でギトギトとかコーラのような分かりやすい味が好みみたいですから。
 いやね、救急救命室の凪の時間とかに清水先生がコンビニ係になった時には『久米先生にはダイエットコーラ』と言っているのですが、それすら清水先生に文句を付けていますからね。
 まあ、清水先生は人間が出来ているというか、あの父親にしてこの子有りと言った感じで『尊敬する田中先生が仰ったので、それを守っただけです。文句があるならば田中先生に直接言えば良いじゃないですか?』と華麗にスルーしていますが。
 その時の久米先生の表情は『ぐぬぬ』という擬態語がまさにお似合いでした」
 最愛の人の唇が大輪の花のような佇まいで笑みの形に綻んでいてとても綺麗だった。
 そういう表情を見たくて話しているのだが。
「そうなのか?久米先生を口で負かすとは、流石は精神科所属のことはあるな……。
 まあ、救急救命室で実績を積めば、精神科の真殿教授ではなくて、救急救命室の北教授から斎藤病院長に報告が行くと思うので、脳外科の研修医にスライドさせるように根回しはしている。
 脳外の白河教授は『ノー』とは言わないだろうし、あんなに優秀な外科医だし、しかも懲り懲りの精神疾患とは無縁の研修医を喜んで迎えるハズだし」
 清水研修医のお父様は京都で一番の私立病院の病院長だし、何しろ斎藤病院長の「親友・盟友」だし、大学病院にも億単位の医療機器を度々寄付してくれている。
 真殿教授は精神科医なのに沸点が低いと聞いているが――呉先生は本気で大ゲンカして医局を飛び出したし、割と温和な、しかし観察してダメだと思うと辛辣な評価を下す清水研修医も同じような評価だったのでその評価は妥当だろう――斎藤病院長のタヌキ、いや鶴の一声には逆らえないだろう。
 「夏」の事件でクビになった狂気の研修医の後任は決まっていないというか空席のままにしている白河教授は多分祐樹最愛の人に遠慮をしているのだろうと勘繰っていたが、手術室の悪魔の異名を誇る桜木先生と共同研究をしている悪性脳腫瘍の画期的、いや医学会を震撼させる外科的アプローチが大々的に披露されれば絶対に人手が足りなくなるので清水研修医は貴重な戦力になるハズだった。
「それはそうですね……。
 救急救命室でも杉田師長に頼んで脳は清水研修医に優先的に回して貰っています。
 場数を踏めば、脳外科でも充分即戦力になるでしょうし。 
 私が任せても大丈夫かどうかチェックしますので、ゴーサインを出したら推薦お願いしますね」
 そんなことを話していると祐樹のスマホが振動していた。



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いつの間にか梅雨が明けましたね。今年の梅雨は大雨がいきなり降ってくるタイプでした。ちなみに私も晴れているし天気予報も雨ではなかったので自転車で出掛けたところ、シャワーよりも大粒の雨に打たれました(泣)
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