「確かに『あみ飾り』とか提灯……なのですかね。そういう物は、永久保存版にはならないですよね。
 素材が紙ですし、ぶら下げるトコロもないですから……」
 祐樹の部屋には最愛の人が折った折り鶴をガラスケースの中に入れて保存してあるし、最愛の人の書斎にもお揃いのケースが――祐樹が買いに行った店に一緒に赴いて購入した――あって、その中に鎮座している。
 しかし、提灯とかあみ飾りはそもそも空中にぶら下げる物なのでガラスケースの中に入れたら全然映えない。そしていくら祐樹が細心の注意を払って作っているとはいえ素材は色紙なので、あの寝室のインテリアにはならないだろう。
「ああ、そうですね。今後寝室の間接照明を替えようとお思いになったら仰って下さい。
 ほら料亭とかでワザと和紙で作った照明とかありますよね?ああいうのだったら作れそうな気がしますので……」
 二人して手と口を動かしながら他愛のない話をするのも物凄く楽しい。
 それに今作っている七夕飾りは愛の交歓への序曲ともいうべきものなので尚更のコト。
「え?本当か?そんな素晴らしいモノを祐樹が作ってくれるのか!?」
 切れ長の目を瞠っている上に薄紅色の唇が花よりも綺麗な瑞々しい笑みを咲かせている。
「その程度のことならしますよ。
 和紙で作ったカバーって光を柔らかくしますよね。料亭とか和食レストランでも当たり前ですが室内にしか置いていませんが、寝室なら雨に濡れる心配は皆無でしょうから、時間を見て作りますよ。
 『披露宴』のホテルで見かけただけですが、ああいうのも風情が有って良いなと内心思っていたので……」
 最愛の人が怪訝そうな表情を浮かべている。
「和食のレストランなんて通りすがったか……?」
 内心で(え?)と思ってしまった。何しろ最愛の人は通りすがった車のナンバープレートまで無意識に暗記している人なだけに、祐樹と一緒に歩いたホテルの廊下のことを覚えていないとは思ってはいなかった。
「ええ。六階も慌ただしく通ったでしょう?その時に有りましたよ?確か『入舟』とかいう名前のお店だったと思いますが……」
 感じの良さそうなお店だなと祐樹が覚えているのだから最愛の人が見逃すハズはないのだが。
「全く覚えていないな……。というか、あの日は嬉しさの余りに頭が痺れたようになっていて、記憶がところどころで飛んでしまっていて……。
 六階に行ったのは覚えているのだが、そんなお店は覚えていない……」
 呆然とした感じで言葉を紡ぐ最愛の人というのも珍しい上に、脅威の記憶力を誇る最愛の人がそんな状態になっているとは思ってもいなかったので、何だか嬉しかった。
 それだけ「披露宴」や「初夜」に心が飛んでしまっていたのだと思うと。
「いえ、それだけ注意が『初夜』に飛んでしまっていたのかと思うと、逆に嬉しいです。
 貴方の物凄く優秀な記憶力でもそんなコトが起こると伺うと却って親近感というか、親しみを覚えますね。
 貴方でもそういう面があるのかと思うと……。
 それに『初夜』を心待ちにして下さっていたからこそ、そういうことが起こったのでしょうから……」
 通りすがったのは「披露宴」の前だったのでもしかしたらそっちかも知れなかったが、この際そういうコトにしておこう。
「そうか……?
 祐樹がそう言ってくれるのは嬉しいな……。それに祐樹手作りの照明……」
 最愛の人が複雑な折り方をしている。
 ただ手つきは手技並みに水際立っていたし一切の淀みがないので、驚異的な記憶力で降り方は暗記しているのだろうが。
 だからあの日限定で記憶が飛んだのだろう。常にだったら少々困るものの、ああいうハレの日にそういう状態になっただけなら最高の喜びだった。
「ところで和紙の大きいのはどこで売っているのでしょうかね……?」
 「披露宴」の日に6階で見た照明を再現しようと思うと、最愛の人が用意してくれた――しかも祐樹にスーツをプレゼントしてくれる口実としての折り鶴勝負のために――見事な和紙を思い出して聞いた。
 今、二人でチマチマと作っている折り紙などはそこいらの文房具屋さんで買えるだろうが、和紙はそうでもないだろうから。
 最愛の人が困惑した笑みを湛えている。
「どうだろう?折り紙勝負の時には丁度この折り紙の大きさ程度のを買いに行ったが、売り場にはその大きさしか置いてなかった……」
 言葉を交わしながらだったが手は休みなく動いているのは職業柄かもしれない。
「そうですか……。でも和紙も大きいのを作って裁断して売り場に出すのでしょうね?」
 その辺りのことは良く知らないが、折り紙の大きさを作るとは到底思えない。
 マフラーとかセーターなどの手編みのプレゼントに比べれば和紙を張るくらいは何とか祐樹にでも出来そうなので同僚やナースから「どこのブランドですか?」と真顔で聞かれるほどのクオリティの贈り物には劣ってしまうだろうが、それでも最愛の人は喜んでくれるだろうな……と思った。
「ああ、伝統的な和紙の作り方をドキュメンタリー番組で観たが、かなり大きいのを作っていたな。
 大人の両手を広げたくらいの大きさだった。ただ、その和紙工場が裁断して出荷するのかそれとも問屋さんみたいなところで切っているかは分からないが……」
 今の間接照明も申し分ないほど部屋に調和しているが、最愛の人は祐樹の手作りという点に重きを置いている。
「調べてみます。大きい和紙を買わないと絶対に足りませんからね。
 色紙くらいの大きさだと――ああ、そう言えば、幼い頃、と言っても小学生まではしていたような気もしますが。障子の有る部屋で遊んでいてついつい穴を開けてしまったことが覚えている限り12回は有ります。
 障子の和紙代も勿体ない上に『どうせまた祐樹が破るでしょ?』と花や星などで穴を隠すように貼ることを厳命されましたよ。あの当時は今ほど器用では当然なかったですが『年齢よりは上手い』と母に褒められた思い出が有りますね……」
 最愛の人が花よりも綺麗で瑞々しく微笑んでいる。
「今の方が当然器用なのは分かるが、小学生の時に祐樹が作った花や星を見たかったな。
 今でも有るだろうか?」
 今年のお正月休みは「ハネムーン」旅行を計画しているので帰省しないが、お盆やお正月は基本的に帰っているので最愛の人が見たいと思う気持ちも分かる。
「残念ながらウチの家は――私が大学に入ってからは当然知りませんが――年に一度障子の張替えをして貰っているので残っていないと思いますよ」
 そう告げると心の底から落胆したような溜め息が薄紅色の唇から零れた。



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八月になりましたね。
体調不良も相変わらずなのですが……。今年は初盆なので色々と準備が大変です。「下剋上シリーズ」のどれか一個は毎日更新したいとは思っていますが、ダウンしてしまう可能性も高いです。
ご理解とご寛恕賜りますようにお願い申し上げます。

         こうやま みか拝


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