「それは私もついつい救急救命室の凪の時間とかで観ましたよ。確かに人を惹きつける話し方だと思いましたし、ヤジを飛ばした人に対する対応も物凄く良かったと思います。
 しかし、あそこまでするとうっかり選挙の時に私の名前が書かれてしまうような気もしますから要注意ですね……」
 冗談で言った積りだったが最愛の人は真顔で頷いている。
 「いや、それは冗談です」と言っていいのか一瞬迷った。冗談が分からないと人知れず品気で悩んでいる最愛の人だったので。
「――当然ながら立候補者名簿って言うのですか?それには載ってない人間の名前が書かれた場合、選挙管理委員会はどういうふうに処理するのかご存知ですか?
 田中祐樹が100票とか取ったら面白いでしょうが、立候補の届け出は当然していないので得票数としてカウントされないのは分かります」
 冗談じゃなかったことにしよう。
 せっかくの休日に最愛の人を落ち込ませることはしたくない。
 しかも睡眠不足で頭のネジが落ちたと思しき呉先生から「大人のおもちゃ」の数々を聞かされて困惑していたし、その追い打ちになるような気もしたし。
「ああ、開票作業の時に明らかに違う人の名前は跳ねられるとか。結局は人の目で確認するらしいので怪しいモノは数人でダブルチェックをして明らかに候補者ではない固有名詞が書かれたのは無効票になるらしい」
 そういうものなのか……と思ってしまった。
「一回の応援演説で当選ラインまで行ったら面白いでしょうね……。
 市議会議員の仕事は基本議会が開催されている時に役所に行って賛成か反対票を投じる以外では市民の皆様と触れ合って要望を細かく聞き取ったりトラブルなどが有った時にその仲裁役をしたりするだけみたいですよ?
 それで年収1200万円プラス政治活動費とかの名目でお金が貰えるらしいです。
 年収はそれほど魅力的ではないのですが、仕事量の割には高いと思いますし、何より人の命が掛かるような仕事ではない点が良いですよね……」
 研修医時代ならば羨望の余りクラクラしそうな年収だったが、祐樹もAiセンター長とか救急救命室での残業手当――と言っても心臓外科から支払われているが――などを足すともっと貰っている。
 ただ、市議会議員が人の生死に関わるようなことをしないのでストレスの度合いが違うだろう。まあ、一回なったからと言って次の選挙で必ず当選するという保証は全くないので選挙期間中はストレスの塊になるかも知れないが、それだって四年に一度だ。
「祐樹なら市議会でも府議会でも当選しそうだが……。ほら医師の肩書きも割とプラスに働きそうだし……。
 祐樹の応援演説を見に行ったらやっぱりダメか?」
 最愛の人が普段とは異なった煌めきを視線に載せて訴えかけてくる。
「母と一緒なら――あの人はあの人なりに知り合いも多いでしょうし、しかも『テツ子の部屋』を皆で観ていたので貴方との結びつきが容易に推察されますよね――ダメですが、無理のない程度に変装して貴方と分からないようにして聞きに来て下さる分には全く構いませんよ。
 ああ、そういう選挙運動の参加をして良いのかどうか病院長に確認しておかないとマズいですよね。
 今では動画のアップロードも簡単になったのでそんなモノに載せられた日には誰かが知って病院長にまで行ってしまったら大変なので。
 まあ、自民党なので病院長は快く承諾してくれそうな気もしますが。
 あ、久米先生に聞きたいことが有るのでラインして良いですか?」 
 最愛の人がこんなに乗り気になってくれるとは思っていなかったので、エキストラに行ってしかもその貴重(?)な出番までカットされたという久米先生の映画の題名を聞いておくことにした。
「そう言えば、貴方はネットフリックスも閲覧可能でしたよね?」
 久米先生の悲劇(?)が有った映画ももしかしたら含まれているかも知れない。
 祐樹は映画をゆっくりと観るのは最愛の人と「お家デート」をしている時だけだったので、そんなに家の中で娯楽を楽しむような時間的余裕はないものの、彼の場合は仕事の手際の良さと、祐樹のように長時間拘束ではないので家事をこなしながら色々見ていることは知っていた。
 久米先生からの返信がないのは岡田看護師とデートでもしているのだろうか?
 まあ、デート中にスマホを見るな!とアドバイスしたのは他ならぬ祐樹だったし、急ぎの用件ではなかったので気長に待つことにした。
「ああ、一応会員登録はしているが?そしてリビングに置いてあるテレビにも映るようにしたが?」
 そうなのか?と思ったが、PCの小さな画面で観るよりもリビングのテレビの方が迫力も違うので良いだろうな……と思った。
「それはそうと、母からまた要らない知恵を付けられたとかはないでしょうね……?」
 最愛の人が突然の降雪に困惑した薔薇のような笑みを浮かべていた。
「母の言うことは七割がたスルーで良いですよ。
 そんなに気に病まなくても別にどうとも思っていないと思いますし……?そもそも実の息子よりも貴方のことを気に入っているので、良かれと思ってお節介を焼くのも老後の生き甲斐というか……」
 最愛の人は花のように微笑んでいた唇を開いた。
「そんなお年ではないだろう?老後というほどの。
 それに気に病むとかそういう問題ではなくて『祐樹が料理をしているので安心した』という前置きがあって始まったお話しだったので……」
 実家にいた時には絶対に料理などはしなかったし、一人暮らしをしている時もそうだった。
 それが最愛の人と一緒に暮らすようになってからはマメに料理をしている。
 そのことが母もよほど嬉しかったようだった。
「それで何を言って来たのですか?」 
 変なコトを吹き込んでいないだろうな……と思いつつ気になったので深く聞くことにした。





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     こうやま みか拝

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