「そうなのか?私も自宅ではなくて職場の住所で書店に並んでなかった専門書を一冊とか買う時が有るが、どうしてこんな大きな箱が必要なのだろう?資源の無駄ではないかと思ったことは幾度となくあったな。
 最近の風潮として紙などはなるべく使わないとか燃やしてしまうのではなくてリサイクルが推奨されているし……な」
 幸せそうに無垢な笑みを浮かべて小さなマカロンを薄紅色の唇に運びながら最愛の人は優雅に首を傾げていた。
 祐樹は提灯(だろう、多分)を折り紙で作りながら話を続けた。
 こういうモノを作ったのは確か小学生の頃が最後だったが、人間頭で覚えたことは直ぐに忘れるが身体で覚えたことはずっと脳に留まり続けているらしい。祐樹の脳は七夕飾りの作り方を身体で覚えたこととして認識しているような感じだった。
「ほら、最近街の小さな書店がどんどん姿を消していくらしいですね。マンガとかも電子書籍で気軽に読めるようになったせいもあって、書店も生き残りが大変らしいです。
 ただ、やはり紙の書籍で読みたいけれども、近くに書店がないという人の場合、アマゾ〇などで一括して購入しますよね?
 そういう場合を想定して一番大きなサイズの段ボール箱だけしか置いていないらしいですよ。大は小を兼ねるって言いますよね?一々色々な大きさのサイズを選ぶのも非効率だし在庫を抱えるリスクとか場所とかの関係も有って、一番大きな物一個に絞っているらしいですね。
 貴方も仕事に限ってはアメリカ時代の合理的な判断をなさいますが、アマゾ〇も確かアメリカが発祥ですよね?
 そういう無駄を省いたというか効率を求める点は流石アメリカだと思いますよ……。
 貴方の場合、仕事以外では古式ゆかしい日本人として美徳をお持ちですが……」
 ハサミで切ってノリでくっつける作業はむしろ楽しい。しかも最愛の人の薔薇色の笑顔を見ながらだし、仕事の時のように人様の命が懸かっていないのでなおさらのこと。
「なるほど……。確かにそれは合理的だな。細かな指示もしなくて良いし、段ボール箱を一個に絞ることで生産コストも落とせるし……。
 アマゾ〇は日本にも本社はあるが本拠地は確かシアトルだったと思う。
 少なくとも私のポートフォリオの中に有る、ああ、資産をどのように振り分けたかをプライベートバンクの人が纏めてくれた報告書というかレポ―トみたいなものだ……。
 そこの会社情報のところにはそう書いてあった記憶がある。
 一括して任しているのだが、アマゾンの株も底値で買って今は保有中だと書いてあったのを覚えている。
 それはそうと、古式ゆかしいとは?」
 ごくごく真面目に聞いてくるのが妙に可笑しい。本当に分からなかったらしく長く華奢な首を傾げているのも無垢でいながらもフラミンゴの首のような艶やかさも感じさせる風情だった。
「私達のような性的少数派の人間は割と多情なのです。
 少なくとも……新宿二丁目ゲイバーで出会いを求める人などは日替わりで相手が変わるなんてこともありがちだと聞いています。
 その点、貴方の場合は私一人だけとしか『そういうコト』をしないでしょう?
 生涯に亘るパートナーにはそういう人が個人的には相応しいと思いますが、そういう人間はこちらの世界ではそれほど多くないのです。
 それに新宿二丁目のお店とかで『単なる友達』になった人間同士ではもちろん恋愛とか付き合う人の話とかもしますよね?それで皆が日替わりで相手を替えるとか言っていたら、それが常識だと思い込むようになりますよ。
 まあ、多情だとか、出会いの場として知る人ぞ知る公園とかそういう場所では『いいな』と思った程度で身体を開く人も多いですし、その場に居合わせた二人以上と『そういうコト』を致してしまう人も割と居るらしいです」
 敢えて新宿の話をしたのは二人が邂逅を果たしたグレイスを貶めたくないからだった。
 まあ、あの店は「口説き禁止」のルールが有ったが抜け道なんていくらでもある。
「え?初めて会って相手の素性も分からないのに?
 それに同時に二人とそういうコトをする気持ちは全く分からないな……」
 理解不能といった感じで肩を竦めた最愛の人の鎖骨がくっきりと浮き出ているのもとても綺麗だった、咲きたての花の風情で。
「二人居れば、愛撫の手とかも倍になりますよね。そういう快楽が倍以上になるのがイイらしいですよ。――まあ、私も良く知りませんが……。
 そういう刹那的な快楽だけを求めている人よりも貴方とこうしてお話しをしながら手を動かすのも、そして幸せそうな笑みを浮かべながらマカロンを召し上がっているのを見たり、その上七夕の日に織姫と彦星にちなんだ――神話では夫婦間の熱愛が過ぎてお互いの仕事が疎かになったことに怒った天帝が天の川で引き離して、一年に一度の逢瀬しか許さないながらもお互いが一途に想っていますよね――イベントなどをしたりはないです」
 祐樹も過去に「恋愛」だと思い込んだ相手は常に一人だったし、ゲイの人間が「そういう」出会いを求めて集まる公園とかはウワサでしか知らない。まあ、最愛の人とこうして一緒に暮らすようになった今となっては、あれは恋愛ではなくて単なる欲求のはけ口としてしか見てなかったのだなとほろ苦く思ったが。
「あ、祐樹マカロンを食べるか?私ばかりが食べている……」
 気分を変えるような感じで首を振った人がキャラメル色のマカロンを細く長い指でそっと摘まんで祐樹の方に差し出してくれた。
「その色は何の味ですか?キャラメルなら少し甘すぎるような気もします……」
 この洋菓子店と系列店をこよなく愛する最愛の人は当然マカロンの知識も豊富なので一応聞いてみた。
 以前に比べれば甘い物も食べることが出来るようになったとはいえ、やはり甘すぎるのは苦手だったので。
 最愛の人はそのことも知悉しているので、滅多なモノを祐樹に食べさせようとしないがそれでも一応聞いてみることにした。




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最後まで読んで下さいまして有難う御座います!!

私も小説を書いていない隙間時間にFXもしていますが、今ドルを買うと良いなと思って底値を探っています。
元々は現物株から始めて(今でも現物株の売買しかしていないですが、10%程度増えています。銀行に預けているよりはマシですし)FXもちょこっとしています。

いかに安く買って高く売るかですが。

とにかく「心は闇に囚われる」早期再開に向けて準備しています。

     こうやま みか拝



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