「ちなみにその市議会議員の先生の所属政党はどこ?」

 最愛の人を母の保険金の受取人にして喜ばせるという当初の目的があと一歩で叶いそうだったが、応援演説とやらをしなければならない可能性を考えて聞いてみた。

 大学病院は――「披露宴」に首相が来臨してくださって斎藤病院長以下の病院のお偉方が狂喜乱舞してパーティの進行などは二の次、三の次になってしまったという直近の過去が物語っているように――伝統的に自民党押しで、その他の政党には見向きもしなかったと聞いている。なんでも民主党(当時)が政権を取れるかどうかの選挙でも開業医が所属している医師会は民主党を応援すると表明したらしいし、その応援が奏功したのかも知れないが政権与党になった。しかし、その時ですらウチの病院は自民党を熱心に応援していたと聞いている。

 後援会とか事務所開きなどがあると、看護師や検査技師が夜勤手当などのお金を病院から支給されてサクラ的な役割を果たすことも「披露宴」を開く前に聞いた覚えがあったし。

 看護師にしてみればそれなりに忙しい上に神経も使う夜勤の業務をこなすよりは椅子に座って候補者の演説を熱心に聞いて(いるフリでも構わないらしい)時々拍手をしたり、「賛成!!〇〇さん応援しています!!」とか言ったりして会場の雰囲気を盛り上げて、その講演だかが終わると盛大な拍手をするという「仕事」の方がラクに決まっている。何も考えなくても良いらしいし、周りの人間が拍手をしたら自分もするとかで良いらしい。

 あいにく医師は動員が掛からないのは残念無念のような気もするが。

 動員要員に入っていないのはともかくとして、自民党以外の候補者だと応援演説をしたら病院の面子を潰すことにもなりかねないし、何より斎藤病院長の逆鱗に触れるような気もする。

 応援演説は祐樹の地元で行われるだろうから――市議会議員なのだから京都の日本海側のM鶴市だ――10年以上前だったらバレなかっただろう。

 しかし、今の時代はスマホで動画を撮ってツイッタ〇とかYouTubeにアップしている政党が目立つようになった。

 しかもツイッ〇―とかはハッシュタグ付きで投稿されるので、全国区で見つかる可能性が高い。

 だから病院長のご機嫌を損ねないためにも自民党以外は絶対にダメだろう。

 まあ、祐樹も最愛の人も表向きというかタテマエの「600万部突破記念パーティ」ではなくて「披露宴」として二人の真の関係を知っている人にこそ祝って貰いたかったし、普段は言葉を交わすどころか会うこともない――病院の広さとか医局が違うとほぼ没交渉なので仕方がないといえばそうなのだが――先生達と立食パーティエリアで語り合えたのは病院長の心が内閣総理大臣に釘付けになって、進行役というか主催者の役目を遠い空に投げ捨ててくれたせいだった。

 本来の「600万部突破記念パーティ」の式次第通りに粛々と行われていたなら、そんなラッキーなことは起こらなかったと断言出来る。

 だから首相が来てくださったことについては感謝しかない。そして、病院長兼学長選挙に立候補するという決意を固めてくれた最愛の人のために応援演説の一つや二つ体験してみるのも悪くはないと思ってしまった。

 選挙カーの上で話すというのは難易度も高いと思うし、通りすがりの市民の皆様が好意的とは限らない。

 大学病院の近くで選挙演説をする非常識な候補者は今のところいないし、そんな無謀でバカな人間が――ちなみに久米先生が見つけて憤慨しながら見せてくれたYouTubeの映像ではいやしくも国政政党の党首が大学受験の日も迫った予備校の前であろうことか大音量で演説をして予備校の職員だか講師だかに注意されてもやめなかった画像があった――出現したとしたら病院長が烈火のごとく怒って厳重に抗議にいくハズだ。 

 そして、あらゆる手段を使ってその候補者なり政党なりを潰しにかかるだろう。

 それはともかく、予備校の前で演説をした新興の政党と同じくらいの支持率しかない国政政党の歩くシンボルとも言われている元党首の女性が京都の中心部に街頭演説に来ていたところに出くわしたことがある。そのキンキン声とか舌足らずな感じの話し方も、そして何よりも与党を攻撃しているだけで対案のない無責任な野党だったので心の中では軽蔑している政党だったし、元党首の女性だった。

 そんな彼女が「皆様が嫌な思いや苦しい思いをしているのは誰のせいでしょうか?そう、今の総理大臣です!」とかの熱弁をふるっているところに通りすがったことがあった。

 祐樹は心の中で「嫌な思いをさせているのはオマエだよ!オ・マ・エ」と内心で思っただけですぐさま立ち去ったが、ヤジなども飛んでくることもあるとか聞いているし、実際民主党政権時代に幹事長を務めた元国会議員の演説をYouTubeでたまたま見たが、周りから「売国奴」と四面楚歌状態でヤジられていた。それでも演説を止めなかったのはすごい神経だなと感心してしまったが。

「え?自民党よ?何、祐樹……本当に応援演説してくれるの?」

 母の嬉々とした声で我に返った。

「自民党だったら、病院長の許可をもらえば大丈夫だろうと思う。

 さっきまではさ、応援演説なんてとんでもないと思っていたんだけど、そういう場数を踏んでも良いかな?って考え直したんだ……。

 それでさ、次の選挙っていつ?」

 最愛の人が病院長選挙に臨む予定であることは母には内緒にしておこう。下手に知らせるとその結果が気になったりして無駄に気を揉ませることになりかねないし。

 結果が出て晴れて病院長兼医学部長になった暁に報告すれば良いことだし。



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