確かそういうゴージャスなモノを今日の長岡先生が付けていた。彼女は指輪とネックレスが対になったものでいかにも昼間行われる――何でも昼は肌をそれほど露出してはいけないというドレスコードがあるらしく、絢爛豪華なネックレスではなかったが、それでもサファイアとダイアの煌めきとか透明感はついつい目が引き寄せられていた。
まあ、隣に座っていた――つまり顔を横に向けなければじっくりと顔が見られない――最愛の人と本当の披露宴のように心置きなく視線を絡めたり小声で会話をしたりするのはやはり憚られるのも事実だったので前を向いている時間が多かったから目を惹いたのかと思った。その代わりと言っては何だが、純白のテーブルクロスに隠れてしっかりと手を繋いでいたのも得難い幸せだったけれど。
彼女の場合は、サファイアとダイアだった。大輪の花のような雰囲気の最愛の人にも良く似合いそうだった。長岡先生のことだから由緒正しい宝飾品の有名ブランドのモノだろう、きっと。
まあ、付けて行くところがないという致命的な欠点があるが、それを言ってしまえば、祐樹の贈ったダイアの指輪も同じだろう。明らかに女性用といった感じだったので。
大学病院には最愛の人の手技を頼っていわゆる富裕層の患者さんも多数入院していたが、海外の人の場合、ダイアやサファイアの男性用の指輪を持ち込んで来るケースが多かった。
そういう貴重品を肌身離さずに持っているという文化が有るのだろう、良く知らないが。
鯛の目玉よりも大きなダイアモンドを何だかエジプトの王家の墓の副葬品に有りそうな黄金の中にはめ込んでいる指輪などを見た覚えがある。まあ、そういう値段が物凄く張りそうなモノは鍵の付いたロッカーに入れて貰うように頼んでいたのだが。
病院内で無くなった場合には責任が持てないのだから当然の処置だと思っている。そういう男性用の高価な指輪を割と見て来た祐樹にも――まあ、ダイアはもともと母のモノだったが――百貨店の宝石売り場では女性用のしか見た覚えはないし、ある意味厳つい感じの宝石は最愛の人には似合わないと思っていた。まあ、どこで買うかも知らなかったが。
「――それが、呉先生の指輪を預かった時に爪の部分がぐらついていて……、今にも宝石が取れそうでひやひやした。
呉先生の好意は物凄く有り難かったものの、預かっているうちに取れてしまったらどうしようかとむしろそちらの方に気を取られていたな……」
そのような理由で宝石が一粒モノの指輪の方が良いと言ったのだろうな……と納得した。
「しかし……この指輪どこも取れそうにないですよ?」
改めて呉先生が森技官から初めて貰ったという指輪をしげしげと見た。
しかも爪の部分は割と頑丈そうで取れる要素が全く見当たらない。
「それは、預かった時に気付いて先に百貨店でお直しを頼んだからだ……。預かっているウチに一個宝石が取れてしまったら物凄く申し訳ないので……」
律儀で几帳面な最愛の人らしさに思わず唇を弛めてしまった。
「どんな使い方をしたら爪が宝石から外れそうになるのか見当が付きませんが……。
外れるリスクがあるこういう指輪よりも、絶対に外れない上にルビーよりも蠱惑的な煌めきに真珠の雫をあしらったこの尖りの方が綺麗ですね。
預かり物の指輪はサイドテーブルに戻して――宝石一個でも取れてしまうことを危惧していた最愛の人に、祐樹がどこかへ転がして無くしてしまっては全てが台無しになりそうなので――ルビーの尖りの側面部を歯で甘く噛んで、先端を舌でチロリと舐めた。
「あっ……ゆ……祐樹っ……。もっと……強く歯を……立てて……上下に揺らして……欲しっ……。
あとっ……舌全体で……先端部分を……転がして……っ」
強い愛撫を唆すように、最愛の人の細く長い指が片方は祐樹の後ろ髪を搔き乱している。
そしてもう片方は、祐樹の欲情を煽るように括れを精緻な動きで愛しつつ先端部分を人差し指で円を描いている。
祐樹の舌を動かす音が猫のミルクを舐める音よりも淫らで甘い音を立てている。
それにしとどに濡れている祐樹の先端部分を精妙な力加減で淫らに唆している指も粘度の高い熱い音を奏でてはベッドの上に白い愛の花びらが舞い散っているような錯覚を覚えてしまう。
顔をごく小さな動きで上下させると、艶めいた嬌声が秘めやかに寝室の中に紅い愛の花を咲かせている感じで響いている。
「うつ伏せになって……腰を高く掲げて下さいませんか?
そして足を大きく開いて……。
今度は後ろから愛させて下さい……」
最愛の人の指ですっかり大きく育ててくれたモノは既に臨戦態勢になっている。
「それは……構わないがっ……。胸の尖りは……弄って欲しい、な……」
硬くて紅い慎ましやかな尖りはジンジンと熱を帯びていて、愛撫を切実に強請っているような感じだった。
「分かりました。両の手で尖りを愛して差し上げますね」
紅に染まった耳朶を甘く噛んでそう告げると、紅色の肢体が優雅かつ淫らに翻された。
腰を高く掲げているだけでも愛の仕草を待つ健気な淫らさに満ちているというのに、足を開く角度が徐々に広くなっていくのは蠱惑的過ぎる眺めだった。
そして、瑞々しい双丘の奥に隠された場所までが祐樹の目に晒されていくのも。
紅く染まった花園の門や引き締まった紅色の太ももの辺りにも祐樹の放った真珠の雫が宿っているのも壮絶に色っぽい。
祐樹の射るような眼差しに反応して、濃い紅色の門が淑やかでいながら大胆に開いていく。
無垢な淫らさと言うものがあるならば、最愛の人の今の姿だろう。
祐樹の昂ったモノを待ちながら薔薇色の内壁がヒクリヒクリと動いては真珠の雫を零している。
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