「美味しいです。英語を――大学入試の時に読まされたお堅い文章ではなくて、今習っている日常英語の方が顕著ですけれど――セックスの時に使う言葉と飲食をする時の言葉って物凄く似ていますよね。
 こうやって口づけを交わしながら甘い物――と言っても私レベルでは充分甘いのですが、この香ばしい香りとかしっとりとした甘さが際立つバター生地をお互いの口の中で分け合って食べているとアメリカ人だか英国人だかが性と食を同一視しているのが実感として分かります。日本語だと全然別物ですからね……」
 最愛の人はバターの香りを纏った吐息とルージュを塗ったような紅色の艶やかな唇に花よりも綺麗な笑みを浮かべていた。
「イギリス英語ではあまりそういう言い回しがないのでアメリカ英語が語源だろうな。
 まあ、イギリス英語の方がお上品な言葉ばかりが残っているので……。もしかしたら口語的な言い回しは有ったのかもしれないな……。
 正妻が愛人に寛容というのも割と珍しいのだろう?
 暇な時にテレビをつけながら家事をしている時だったかな?正妻が愛人のところに物凄く気合の入った服装とお化粧で乗り込んで『この泥棒猫!!』とか言って罵っているのは見た覚えがある。どっちが正解なのだろう……」
 祐樹最愛の人は心の底から不思議そうな表情を浮かべている。
 確かにこの人なら――と言っても正式なパートナー認定を貰うメリットも感じていないようだったが、もし乗り気ならば二人して役所に行っても良いなと思っていた。そんな契約(?)を結んでいたら「正妻」の立場のハズなので強気に出ても全然構わないポジションになると祐樹的には思うのが、強気に出るも何も何だか黙って身を引きそうで怖い――仕事にまつわることにはライバル心を持ってもいるし、自分に矜持を持っている。もちろん、実績に裏打ちされたものなので外科医なら誰しもが認める秀逸過ぎるメス捌きなことも間違いはない。しかしプライベートでは全くといって良いほど自信がないというのが痛しかゆしだと思ってしまう。
 恵まれた容姿は祐樹のストライクゾーンにドンピシャで的中してはいる。しかし、それを鼻にかけるタイプだとここまで好きにはなっていないと思う、我ながら勝手だとは思うが。
 そして、それほど世間のことにも人間にも興味がないのも一緒に過ごしていると分かってきた。まあ、最近は次期病院長候補として出馬の意向を固めてくれたこともあって同僚でもある教授とかその下の准教授、そして影の発言力が有るナース数人を観察していることは知っている。ただ、祐樹最愛の人はそういう「観察」も動物学者が対象動物を観るのと同様な視点のような気がする。だから、動物の内心までは人間には分からないのと同様に最愛の人は人間の気持ちにはある意味鈍感だとも。
「ああ、そのドラマは一応観ましたよ?ほら貴方が録画しておいてくださいましたから。
 最新版も出来ているそうですが、あいにくそっちは未だ観ていない……という点は一緒のハズなのでまたこうした休日のお家デートの時に一緒に観ましょうね。
 あの産婦人科医――今では訴訟リスクの方が多い上に激務かつ休みが取れないし、少子高齢化の時代なので子供が生まれるのも減っていますよね。だからあんなに儲からないと思います。
 ま、原作の頃は団塊の世代の出産ラッシュだったこととか、今よりも医師の権威が強かった時代ですのでああいう札束がバンバン出てくるような経営が出来たのだと思います。
 森技官の実家が笑えることに代々産婦人科だと聞いていますが、彼のお父様よりもお祖父様の方が正直儲かっていたと思います。
 ただ、ああいう金離れの良いお客というのは高確率で女性遊びも派手だったと思いますので、そういう意味で教授夫人になった産婦人科の令嬢もそういう女遊びが派手な父親を見て育ったのではないでしょうか?
 愛人を蛇蝎のように嫌う人も居れば、ガン無視をして過ごす女性も居るのでしょう。
 そういう『さばけた』家庭環境で育ったのでは?ほら『浮気は男の甲斐性だ』とか昔は言ったようですから。
 そういう意味では教授夫人になった産婦人科の院長令嬢はある意味賢いのだと思います。
 夫の真の意思を汲んで最後に会わせたいと判断したのでしょう。
 まあ、公認のパートナーになれば貴方だって『この泥棒猫』とか言う資格は持てますよ。
 あ、念のために言っておきますが、私は浮気なんて絶対にしないです。
 その点は貴方も信頼して頂けていますよね?」
 最愛の人は花よりも綺麗な笑みを咲かせた笑みを浮かべてくれた。涼しげな眼差しも深山に人知れず存在するような清浄な泉のような煌めきを放っている。何だか揺るぎのない瞳の落ち着いた光のような感じだった。
 祐樹最愛の人もかなり信じてくれるようになったな……とは思ったが、基本的に悲観的に物事を考えるタイプなので時々は言葉に出して伝えないといけないことも大切だろう。
「その点は信じている。
 しかし、祐樹が私以外の人と『そういう』関係になったとしたら……」
 室内着にしている薄いニットは襟ぐりが深くて、若干華奢な肩が微かに震えていた。
 その肩に安心させるように手を置いてトントンと叩いた。
「万が一にもないとは思いますが……。
 まあ、そうなった時には貴方の場合自分から身を引いてしまうタイプでしょう?
 そういう意味ではパートナーとして市とかに認定してもらう方が良いような気がしたのですが?」
 最愛の人を安心させるように緩い笑みを浮かべて湖水を彷彿とさせる涼しげな瞳を、だだじっと見つめた。




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すみません!試したらノベルバ様のトップページにしか飛べなかったので、「こうやまみか」と検索して頂ければと思います!!

最近、アプリの不具合かノベルバ様から更新通知が来ないのです……。
基本的にこちらのブログを更新した日は何かしら更新しておりますので、読んで頂ければ幸いです。










最後まで読んで下さって有難うございます。

母が倒れてから早いものでもう一か月になりました。バタバタっと日が経った感じしかしませんが、心も体も疲れているようなので……更新はマチマチになります。申し訳ないですが何卒ご容赦・ご寛恕ください。

今日も多分一話だと思います。
         こうやま みか


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