「これ……ワイロというか袖の下です」
 以前は普通に座って同じ皿からそれぞれ好きな物を取って食べるのが「日常」だったが、そういう手作りというか恋人の余韻の残るモノが好な人なのも分かっているので、何とか口を割らそうとした。といっても警察とかがする「自供」みたいなものではなくてあくまで恋人達の睦言というか愛の時間に相応しい条件だと思うが。。
 最愛の人と出会う前の祐樹は手編みのマフラーとかそういう系の手間がかかってそうな物は「怨念とか情念がこもっていそうで嫌」だと思っていたが、生涯に亘って共にするパートナーになってくれる最愛の人の場合は全く別問題だ。
 手編みのマフラーを貰った時には心の底から嬉しかったし。完成度もそこいらのブランド品のお店に陳列されているのと変わらないクオリティだった。最愛の人は何だか恐る恐るといった感じで差し出してくれたが、あんなに完成度が高くなくても喜んで受け取っただろうし病院にも巻いていったと思う。
 ただ、久米先生とかは「そのマフラー素敵ですね。どこのブランドですか?色違いで買おうかなって思います」とか言ってくれたが。
 焼きティラミスの香ばしい香りと割と脆い――まあ、洋菓子でもフィナンシェとかと同じ分類に入るのだからクッキーみたいに硬い方が問題だろうが――生地を唇に挟んで一口だけ食べてから、最愛の人のやや薄い唇へと近づける。怜悧な印象を裏切らない引き締まった唇だが、二人きりでゆったりと過ごす休日なだけにほんのりと薄紅色に染まっているのも「祐樹にしか見せない」表情なのでそれはそれで嬉しい。
「焼きティラミスも美味しいですけれど、貴方の唇から味わうと天上の美味もかくや……といった感じですよね……」
 最愛の人の薄紅色の唇が紅を刷いたように綺麗に色付いている。
 しかも花の咲いたような笑みを浮かべているのも最高に綺麗だった。
 香ばしさとほんのり甘いキスを交わして二人で一つの焼き菓子を食べていると本当に愛されているのだな……と実感出来て嬉しい。
「祐樹の唇や歯で味付けされたのを食せただけで幸せだ」
――唾液ならともかく唇や歯に味などないことはこの際、言及しないことにしよう――
「充分過ぎるほどの賄賂を貰ったので、なんでも答える?いや、充分ではないかも……」
 賄賂は通じなかったかな?と内心で思っていると、最愛の人の頬が薄紅色に染まっている。
「時間が取れなくて――愛の行為の方がご無沙汰だっただろう?
 だから、私が白状する代わりに愛して欲しい、な」
 キスを終えてそう告げる最愛の人は食べてしまいたいほど愛おしい。
 自分でも満面の笑みを浮かべて「ええ、良いですよ?」と紅色に染まった耳朶に囁いた、取って置きの甘くて低い声で。
「パートナー制度は一応調べてみたが、メリットがあるのは病院くらいだろう?
 『披露宴』は既に済ましたし、その前だな、柏木先生の結婚式に行った時に誰も居ないホテルのチャペルで愛を誓ってくれただろう?だからそれで充分だし、金銭的なことは特に問題視していない。
 最も恐れる事態は祐樹に万が一のことが有った時なのだが、救急搬送される病院には――少なくとも京都とか大阪、そして東京一帯の大病院には厚労省繋がりの医師が必ず居るので――こっそり入れてくれると思う。
 それでなくとも森技官情報では婚姻届けを出していない内縁関係―-と法律用語で言うらしいが――だけの彼氏さんがあまりにもモンスターペイシェントらしくてカルテまで開示した例なども多いらしいし。
 私の場合は森技官の招聘が怪我の功名というか、第一線で働いている錚々たる医師と知り合いになったし、こっそり入れてくれると思う。
「大切な部下だから」と言ったら大丈夫だろうと思うのだが甘いか?」
 錚々たると言っても、あくまでも日本という狭い世界だが、確かに医師が許可すれば割となんでも聞いてくれるのも現状だった。
「最愛の人の考えが甘いとは思えないですね。貴方ならこっそり入れて貰える救急救命センターもたくさん有ると思いますので」
 しかも、最愛の人はそういう医師達の憧れの的なので――それはそうだろう、何しろ祐樹が厚労省に「悪い虫」が付かないように牽制も込めて付いて行っているので知っているが――厚労省御用達の日本一の最高学府の人間が多いが、それでも「香川教授の手技を毎日見ることが出来て本当に羨ましいです」と目を輝かせながら言われることは度々あった。
 確かに祐樹最愛の人なら本来は家族とその病院の医師や看護師しか立ち入れないところにも入ることが許されるような気がする。
 祐樹の母が間に合わなくても医師の裁量によって。
 その人望の厚さを忘れていた。
「それに、最新版の『白い巨〇』ではなくて、長いターム(?)で放映していたドラマでは、物分かりの良い正妻さんが、こっそり愛人を病室に入れていた。もう手の施しようもないステージ4のガンだったと分かった時点で『最後のお別れ』みたいに……。
 そういうのは別にパートナー制度を使わなくても出来ると思わないか?
 それに、祐樹は私がずっと以前に言っていた『形のないものは信じない』という言葉を気にしてくれているのだろうが、これだけ愛されているという実感とか魂が繋がっているような気分になれた今は『形のない』とも思わないし……」
 大輪の紅薔薇が咲くように微笑む最愛の人の唇に唇を重ねた。
 微かにコーヒーと焼きティラミスが香る口づけの味はどんなお酒よりも祐樹の心を酩酊させるような気がした。


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やはり、心身ともに疲れているようでしてPCに向かって小説を書こうと思いつつベッドに入ってしまいます。
もう少しで49日なのですが、することが山積みで……。

ブログ毎日更新したいのですが、誠に申し訳ありません!限界なんで寝ます。。。

              こうやま みか



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