「ココのホテルの枕――まさか狙っているわけではないかと思いますが、羽毛では無いのが良いですね。これが日本の老舗の誇りなのかも知れませんが……」

 腰を高く上げて欲しかったので、お互いが生まれたままの姿になってから、枕を取りあげた。

 第二の愛の巣ともいうホテルもその例には漏れないが、枕は殆んど羽毛製だが、このホテルは1927年だかに産声を上げたホテルだ。確か大正時代と書いてあったのをチラリと見た。ただそのレリーフの傍を通り過ぎた時には「いわれのない」嫉妬で心が大嵐の中の火事のように揺れ動いていたので一瞥しただけなので定かではない。

 ただ、GHQ総司令官として有名なマッカーサー元帥が若い頃に新婚旅行に訪れてとても気に入って、厚木基地だったかに総司令官として降り立ったその足でニューグランド・ホテルに来たというのは小説で読んだ覚えが有る。

 建物は増築されているし、特に上層階は今時の高級ホテルの佇まいだが、もしかしたら枕などは昔ながらの蕎麦などを使っているのかもしれない。

 そう言えば、予約を入れる時に、赤くて大きなフォントで「蕎麦アレルギー 有  無」とチェック項目が有ったことを思い出した。

「これを使って、腰を高く掲げて下さい。なるべく大きく足を開いて下さいね……。純白のシーツに紅色の肢体がとても綺麗に艶めいていますよね……。しかも人魚姫みたいにお顔には真珠まで飾っていて、とても素敵です」

 祐樹が視線と言葉で煽ると、最愛の人は――プライベートでは物凄く従順で、祐樹に異を唱えたのはお堅い仕事に従事しているとは思えないほどお茶目な杉田弁護士が「大人のおもちゃ」を送りつけて来た時くらいだと記憶している――その従順さは愛の交歓の時に更に拍車がかかることも。

 また、祐樹の知る限り「行為」の時は身体が柔らかくなるのは誰でも同じだと思っていたが、最愛の人が最も綺麗に曲がったりしなやかに反ったりする。

「ゆ……祐樹っ……。早く来て……欲しいっ……」

 甘く切なく紡ぐ切羽詰まった声だけでなくて、真珠の雫を宿した薔薇色の頬にも水晶のような涙が絶え間なく流れては煌めいている。

 そして零れた真珠の珠が胸のルビーの尖りを扇情的に飾っている。

「もう少し、足を開いて下さい。しどけなく開いた花園の門が可憐で艶やかな赤に染まりながら動いているところを見せて下さい。

 こういう行為は私とだけ愉しむと先程仰って下さいましたよね。

 でしたら、もっと華麗に大胆に誘って下されば嬉しいです」

 ルビーに宿った真珠の雫を塗り込むような感じで強く押した。

 すると、しなやかな肢体がシーツから綺麗に反って祐樹の指に尖りを押し付けようとしてくるのも物凄く綺麗だった。

 そして祐樹の要望通り、要を失った扇のように開かれた両脚はシーツの上に足の裏を付けているという大胆で奔放な姿を曝け出してくれた。

 しかも、口と咽喉を使った愛の仕草で立ち上がった最愛の人の花の芯のような欲情の象徴が水晶の雫を垂らしているのも絶品だった。

 花園の門は更にしどけなく開いていて、雨に打たれた紅薔薇の花弁の健気さを思わせるように動いているのも。

「綺麗過ぎて、限界です……。

 ただ、貴方を憧れと愛情の混じった熱い視線で見詰める人間が居ても、それは完全にスルーして下さい。

 そうでないと、私の嫉妬の炎で心が焦げてしまいますから。

 聡が無自覚な魅力を振り撒いているのは重々承知しています。しかし、今日のように『当たって砕けろ』とか『玉砕覚悟』のように貴方目当てで押しかけてくるのを目の当たりにしたのは初めてで……。貴方に落ち度はないのですが、それでも私の心の平安が保てなくなりますので」

 厚労省などに赴く時には――かつてはバカで厚顔無恥なナンバー2だかが居たが、それ以外は「そういう」感情ではなくて、純粋に憧れているとか手技向上のための勉強になるので大変楽しみにしているという「普通」のモノだ。

 まあ、医局でも同じような感じなのでそういう類いの人間まで気にしては居ない。

「分かった。失礼のないようにキチンと断るから……。

 それに祐樹が嫉妬しないように……出来るだけ一人にならないようにする。

 だから……早く……抱いて欲しっ……」

 祐樹の勝手な嫉妬心すら嬉しい感じの最愛の人の薄紅色の唇が紡ぐ言葉は紅いシルクのような光沢を放っているようだった、そして、祐樹も他の人間には「普段」の彼を見せつけるだけ見せつけて、こんなに魅惑的に乱れた姿を独り占めしていると思えば良いかと思えてくる。

 今日の防○大学校での学生のように「その気」で見る人間は居ても、ここまで淫らな蝶のように羽ばたいているとは思いも寄らないだろうから。

 あっ……悦いっ……」

 腰を進めると湿った肌の音がホテルの部屋に妖精の囁きのように響いた。

「聡の極上の花園も……とても……良いです……。直ぐに……放って……しまいそうで……」

 シーツと背中の狭間に手を回して肢体を固定する。若木のような艶やかな肌がしっとりと濡れている。

 最愛の人は祐樹の唇に深く唇を重ねて来た。普段は口での行為をしてくれた後はそういう愛の仕草を拒むのに、今夜の彼は物凄く積極的でとても嬉しい。

 決して美味なモノではないけれど、最愛の人の唇とか舌が触れたモノだと思うと何だか愛おしく思えてくる。

 唇を強く吸いながら腰を水平に動かしていると、甘く蕩けた声が部屋に淫らに響いている。

 衝動のままに深く大きく動くと、最愛の人のすんなりとした足が祐樹の腰に回されてクロスの形になっている。

 それほど深く、そして奥処に届いて欲しいという最愛の人の切なる願いだろう。

 最愛の人と耽る「愛の交歓」は常に嬉しくて魂まで一つに融け合いそうな時間だったが、今夜の彼はよりいっそう健気な愛の仕草を披露してくれる。


--------------------------------------------------
二個のランキングに参加させて頂いています。
クリック(タップ)して頂けると更新のモチベーションが上がりますので、宜しくお願い致します!!


にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村






小説(BL)ランキング





現在ノベルバ様で「下剋上」シリーズのスピンオフ作品を書いております。

もし、読みたいという方は是非!!
こちらでもお待ちしております。

https://novelba.com/publish/works/884955/episodes/9398607
↑ ↑

すみません!試したらノベルバ様のトップページにしか飛べなかったので、「こうやまみか」と検索して頂ければと思います!!


最近、アプリの不具合かノベルバ様から更新通知が来ないのです……。
基本的にこちらのブログを更新した日は何かしら更新しておりますので、読んで頂ければ幸いです。





















PVアクセスランキング にほんブログ村