最愛の人は大輪の咲きたての薄紅色の薔薇の花のように微笑んだ。
「ああ、もちろん。祐樹の愛の言葉――品物も嬉しいことは嬉しいが――や誓いの言葉は精神が薔薇色で満たされるので。
 あ、少し待っていて欲しい。手を洗ってくるので」
 イチゴの紅に染まった瑞々しい香りのする長く細い指は洗い流すのが勿体ないと咄嗟に手首を掴んだ・
「そのままでも充分です。むしろこちらの方が貴方らしい瑞々しい魅惑に満ちていますので。
 それに通常の結婚式だと招待客に失礼でしょうが、このイチゴの香りに満ちた豪華かつシックな空間には私達しかいないから大丈夫ですよ。
 左手の薬指をやや反らし気味にこちらに向けて頂けますか?」
 プラチナのリングを箱から取り出して指で捧げ持った。
 濡れた咲き初めた薔薇の初々しさで煌めく眼差しが水色の涙の雫を落としそうな感じだったものの、その下の頬はミルクに浮かべた紅い薔薇のような極上の色に染まっている。
 イチゴの香りと紅色の指が祐樹へと向けられた。
「サイズは大丈夫ですか?普段使いだからこそ、違和感が有っては困りますので……」
 紅色の指に慎ましやかな煌めきを放つリングは予想以上に彼に似合っていて、祐樹をいたく満足させたが。
「サイズ的にはちょうど良い。次は私だな。ただ、この指なので……。小箱からリングを取るまでは祐樹に頼んでも良いか?」
 空中に紅色の細く長い指を更に反らし気味にして大輪の薔薇のような満面の笑みを開花させた最愛の人の喜びに弾む声が部屋に慎ましやかに響いた。苺の果汁に濡れた指なだけに気になるのだろう。
「確かに……指輪は洗ったら充分ですがこのベルベットの小箱は大切に仕舞っておかなければなりませんね。
 お揃いの指輪を付けてのデートもとても楽しみです。左手同士なので、指輪を重ね合せることが出来ないのは何となく残念ですが……」
 鈍く煌めくプラチナのリングを最愛の人に手渡して、左手を反らして差し出した。
「手を繋ぐのなら確かに左手は重ならないが、正面から抱き合うとリングは重なると思うのだが」
 薔薇色の弾んだ声と慎重な手つきと怜悧さの勝った表情のギャップにも束の間見惚れる。
 手術の時には手袋をはめているので肌の色は当然分からないものの、今は精緻極まりない手技を行っている時のような表情と水の流れるような動作は同じだが、指先が紅色なので艶やかさと瑞々しさを空間にふんだんに振り撒いている。そして、内心の心の弾みそのものといった感じの銀色の粉が降っている感じだった。
「ああ、それは良いですね。抱き合う機会もたくさん作りましょうね。『誰も来ない』場所を更に選んでおきます。
 如何ですか?私も似合いますか?」
 何しろ最愛の人――表向きには絶対に出来ないが――「マリッジリング」の積もりで購入しただけに、祐樹に似合うかどうかは二の次三の次だったのも事実だった。
「ああ、とても似合う。お揃いの指輪なので尚更そう思うのだろうが」
 左手がどちらからともなく伸びて絡み合った。
「死が二人を分かつ『とも』貴方は私を愛して下さいますか?その誓いのリングを受け取って下さいますか。拒否権は三分以内なら特別に許可します」
 本来は「分かつ『まで』」が決まり文句なのを最愛の人も秀逸過ぎる記憶力を持ち合わせているので知っているハズで「とも」と言い換えた時にダイアモンドのような涙の雫が薔薇色の頬を伝って小さな銀河のような綺麗な煌めきを放ち続けていた。
 最後はやや悪戯っぽく唇を弛ませて笑いの形を作った。そうでないと涙だけでなく本当に泣きそうな風情だったので。
 ベッドの中で悦楽の涙を流す最愛の人の艶やかな表情とか薔薇色の恍惚に乱れた顔はこの上もなく綺麗だったし、何時までも見惚れたい類いの艶姿だが、本気で泣かれるのは祐樹的にも望んでいなかったので。
「死が二人を分かつ『とも』祐樹を心の底から愛すると誓う。
 拒否権は……十分以内までなら許容することにする。
 この誓いを拒否する場合は、苺を食べないことにするか?」
 最愛の人の器用な指先でハート型に艶めく苺のタワーを崩さないように一粒取り上げて、唇に挟んだ。
 左手は深く絡めたまま、右手で幾分華奢なウエストを抱いて誓いの口づけを交わした。
「イチゴの味のするキスも素敵ですね。誓いはこれで成立しました。ご異存はありませんよね?」
 滑らかな薔薇色の頬にダイアモンドの無垢な煌めきを宿したままの最愛の人は祐樹の腕の中で見上げて薄紅色の唇も花が咲いたようだった。
「何だか……口に出してしまったら、ドキドキしてきた……。
 これから、そのう……『初夜』を迎えるわけだろう?」
 真面目な表情を恥じらいの色で染めているのも苺の瑞々しさと満開の八重桜の蠱惑を併せ持っていてとてもそそられる。
「そうして恥じらう聡もとても素敵です。愛しています、死が二人を分かつ『とも』……ただ、結婚式の決まり文句とはいえ、縁起でもない言葉ですね……キリスト教の文化の相違なのでしょうが……。
 それはともかく一生涯愛し続けることも、そして仏教的に生まれ変わっても聡だけを愛しますので、その点は覚悟して下さいね。私は結構執念深いですから。
 三分経過しましたよ……。拒否権は消滅しましたので、これからは愛の誓いの実践に移りましょう……」
 左手は繋いだままジャケットやネクタイを順番に脱がせてベッドへと近づいた。
 祐樹の指で素肌を次第に露わにしていく最愛の人の薄紅色のしなやかな肢体を眺めていたもののふと顔を上げると紅色に濡れた眼差しはプラチナのリングをこの上もなく満足そうに眺めている。
 お揃いという点が気に入ってくれたようだし「雲の上の人」に玉砕覚悟で告白するような無謀な人間は更に減るだろう。
 教授会という――「雲の上の人」だらけの場所だ――では何か聞かれるかもしれないが、事情は全て承知の斉藤病院長がさり気なくフォローしてくれると信じたい。
「今夜はお揃いのリングをしたままで愛し合いたいのだが、構わないだろうか?とても嬉しくて、そしてとても幸せなのでこのまま」
 祐樹の指で一糸纏わぬ姿になった最愛の人はプラチナのリングをベッドの上でかざしながら純白のシーツの波に紅色の肢体を隠そうとしているのも初々しい魅力に溢れていた。
「初夜」というのは言葉の遊びに近いものの――実際は数えきれないほど愛の夜を過ごしてきたので――ただ、心の傷が完全に癒えた今の二人にとっては「事件後」の「初めて」と言えなくもない。
「ええ、そんなに気に入って戴けると選んだ甲斐があります。
 シーツの白さが紅色の素肌に良く映えてとても魅惑的で、そして初々しさに満ちています。
 大好きです、よ」
 手早く衣服を脱ぎ捨てて、シーツの波を乱した。



___________________________________

ポチっても良いよ~♪という読者様熱烈歓迎中です~♪それに私の下手っぴ小説よりは、素敵過ぎるBL小説がたくさんありますヨ。特に「にほんブログ村」は皆さまレベルの高いBL小説を書かれて、切磋琢磨していらっしゃいますから、一度覗いてみてはいかがでしょうか~♪





★★一日一回有効です★★



2ポチ有難う御座いました~!!
更新の心の支えです~♪♪

★★スマホ・携帯からの読者様は、こちらから宜しくお願い致します。スマートフォンで実験してみたら、ポイントは加算されておりました♪。
 ↓ ↓


★★スマホ・携帯からも「ブログランキング」は投票出来るようですので、クリックお待ちしております~!⇒ もちろん、一日一回です。。


 


バレンタイン編、待っていて下さる方がいらして嬉しいです!!
ただ、私のバカな頭が時系列を滅茶苦茶にしてしまったのを更に多くの皆様に晒してしまうようで大変気が引けるのですが(汗)とにかく、完結だけはします。暇を見つけての不定期更新になりますが宜しくお願いします!!

こちらは、諸般の事情で凍結せざるを得なくなった前ブログからの続きになりますが(私の作品としては)短いので、前が気になる方はこちらへ飛んで下されば嬉しいです!


ややこしくて申し訳ないのですが、書庫は「バレンタイン(クリスマスの後)」です。

こちらは「夏」→クリスマス→バレンタインという時系列です。(ただし辻褄が合っていないという致命的なミスをやらかしてしまったという黒歴史が……)18話まで有る話の続きになります。







最後まで読んで頂いて有難う御座います。
           こうやま みか拝