ポケットを探ると直ぐに手に当たったスマホを取り出してライトをオンにした。パッと明るくなって最愛の人のやや紅色の頬や楽しそうな煌めきを宿す澄んだ眼差しがとても綺麗だ。
「こちらが『ずんだ生クリーム味』ですね。ああ、先にペットボトルのお茶の(ふた)を外しておいた方が良いかと思いますよ?」
 スマホのライトの黄色い光に照らされた白く細い指がペットボトルの蓋を開けているのにも見惚れてしまう。スマホのライトを普段は使わないのでその光は何だか新鮮だ。
「祐樹のも開けた方が良いだろうな?ほうじ茶は多少苦みがあるだろうけれども具体的にはどの程度か分からないだろうし……」
 最愛の人の声が京都の市街地とは比べ物にならないほど澄んだ空気の中に溶けていく。
「有難うございます。私がスマホを持っていますので包み紙も破いて下さったら嬉しいです」
 実際のところ、漆黒の闇の中でも最愛の人は器用に包み紙程度の物は開けることが出来る。ただ、祐樹が大好きな長くしなやかな指の動きを見ていたいだけだった。
「そうか。先にほうじ茶の方を開ける。その後『ずんだ生クリーム』を……」
 最愛の人の鮮やかな指捌きに見惚れてしまう。
「こちらが祐樹の『ほうじ茶』だ。甘過ぎなければ良いのだが……。そしてペットボトルは此処(ここ)に置くから」
 二人して座った場所は平坦なので転倒の危険性はないだろう。最愛の人の指は嬉々とした感じで「ずんだ生クリーム」の包み紙を開けている。
「祐樹、先に食べても良いのだが?」
 最愛の人が瑞々しい笑みを含んだ声だ。
「いえ、ご一緒に食べたいです」
 思いっきり甘かったらどうしようかと実は戦々恐々している。何しろ「呪いが廻る戦い」の現代最強の呪術師は甘いものが大好きだ。祐樹はハロウィンの催し物でその登場人物に扮したけれども「大丈夫、僕最強だから」とか「領域展開 無量空処」の指の真似をしただけだ。
 後で浜田教授から聞いたのだけれども、真言密教の帝釈天(たいしゃくてん)(いん)らしい。祐樹も大学受験で真言宗と天台宗は僧侶が徳を積んで困っている人を助ける程度は知っている。その徳の高い僧侶に貴族達は縋っていたとも。そういう僧侶の有り方が密教と呼ばれて、念仏を困っている人が唱えて自力救済する(けん)(きょう)と言われていることは知識として有ったけれども具体的なことは何一つ知らない。まあ、大学受験には絶対に出ないので祐樹もスルーしていた。それに、食餌制限の有る子供たちも病棟に居たので食べ物は厳禁だ。最愛の人は「ずんだ生クリーム」を薄紅色の唇に運んでいる。
「ん!美味しい。『ずんだ』は枝豆などをすり潰したモノだろう。程よく残った豆が歯に触れて……。それに生クリームもそれほど甘くない。全体的に和洋折衷という感じの美味しさだな……。仙台の名物として『ずんだ』を使ったお菓子もたくさんあるらしいが、これは食感と味が癖になりそうだ……」
 スマホのライトは消していたので最愛の人の言葉が空気の澄んでいる星よりも煌めいている感じだった。祐樹も恐る恐る「ほうじ茶味」を口にした。念のためにペットボトルのお茶を直ぐにでも飲めるようにしながら。「ほうじ茶味」味は苦みがあっても生クリームは油断が出来ない。一口食べるとほうじ茶のほろ苦さと甘さを控えた生クリームがとても美味だった。
「これなら私でも食べることが出来そうです。貴方の『ずんだ生クリーム』もそれほど甘くないのでしょうか?」
 もし最愛の人が「それほど甘くない」と言ってくれたのなら仙台の土産話として浜田教授や内田教授に報告出来るなと。
「生クリームは甘くないな……。多分『ずんだ』の味を味わって欲しいのではないかと……」
 最愛の人が夜空に紅色の声を零している。
「でしたら、少し貴方が召し上がっている物の味見をしても良いですか?」
 最愛の人の笑みがとても幸せそうだった。
「では半分ずつ食べ合いっこしよう」
 最愛の人がいそいそと食べかけのお菓子を手渡してくれた。祐樹もそれに倣って「ほうじ茶」を手渡した。最愛の人の食べかけの「ずんだ生クリーム味」と一口食べてみると彼の言う通り枝豆らしき粒粒が歯に心地よく当たってとても美味だった。そして危惧していた甘みはさほどではない。
「ほうじ茶の苦みが生クリームで相殺されてとても美味しいそれに祐樹が小児科のハロウィンの催し物で扮した登場人物が好きだと言っていた『ずんだ生クリーム』と、作者が一番好きな『ほうじ茶』を食べることが出来てとても嬉しい。そんなに甘くないので祐樹も大丈夫だろう」人口密度の関係か満点の星、しかも天の川まで見える場所で二人して同じものを食するのも例えようもなく幸せだ。
「原作では祐樹が扮した現代最強の術師がこのおかしを買ってからこの学校がモデルに来た時は、なんて無責任なのかと思っていたが、新幹線のアーケードに店舗が有るのだったらそんなに時間は無駄にしていないのな……?」





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