「柏木先生とか久米先生もアニメを観ていますよね?それに仙台出張は医局周知のことですから送った(ほう)が良いかと思います、よ?」
 多分アニメのせいなのだろう、店内に入って来た客は他の商品に目もくれず最愛の人が思案顔で見ているお菓子の箱だけがどんどん売れている。マンガやアニメ効果というのは物凄いのだなと実感してしまう。マンガで作者が好きなお菓子として「個人的」に紹介したせいできっと売り上げも桁違いになったのだろう。
「そうだな。では……」
 宅急便の送り状を達筆な文字で書いている最愛の人の指先をついつい見惚れてしまう。年配の店員さんは送り状の住所が目に入ったらしく驚いたような表情を浮かべていることに気付いて苦笑を浮かべてしまう。大学病院の名前だけではなくて医局や教授名をメモや手帳を見ずに流麗な文字で綴っているので病院関係者だということは分かったのだろう。病院の中だと皆がそうなので特に気にしないが、外部の人は美化する傾向にあるのは経験上知っていた。
「すみません、この箱だけは持って帰ります。お代金も別でお願いします」
 その年配の店員さんに言ってお金を払って紙袋を受け取った。
「祐樹お待たせ」
 医局や内科の内田教授・小児科の浜田教授には香川外科の一介の医局員に過ぎない祐樹が送るのは失礼だ。内田教授も浜田教授も至って気さくな人なので気にしないだろうが、秘書や周りの目が怖いので同じ教授職の最愛の人から送るのが「常識」だ。
「祐樹、本当にアニメと同じ紙袋なのだな」
 店内を出て歩きながら、紙袋を高く掲げて切れ長の目を瞠っている。
「そうみたいですね。さてと、これからどこに行きますか?昔ながらの伊達政宗に所縁(ゆかり)の有る観光地は明日の昼に巡るとして」
 彼は何だか考えているようだった。
「……仙台第三高校はここから近いのだろうか?」
 高校?しかも有名な高校でもない。とはいえ有名な高校であってもデートスポットとしてはあまり相応しくない。仙台駅のアーケード街を二人は適度なパーソナルスペースを開けてはいるものの肩を並べて歩きながら聞いてみた。ただ、仙台第三高校という名前に薄っすらと覚えがあった。
「貴方のお望みならばどこでもお連れしますが……。ああ!!浜田教授が一巻時点での主人公の所属高校のモデルだと教えてくださったような気が致します」
 最愛の人が咲き初めた薔薇のような笑みを浮かべて祐樹を見上げている。この表情に()祐樹は弱い。ポケットからスマホを取り出してマップ機能で道順と所要時間を調べた。
「ここからだと1.7キロみたいですね。タクシーで行きますか?それとも徒歩で?」
 白皙の端整で優し気な顔立ちは一見インドア風に見えるが職業柄体力は人並み以上なので徒歩でも充分可能なことは知っている。
「空気がとても綺麗なので徒歩で良いか?散策がてら歩いてみたい」
 確かにこの街の空気は翡翠色といった感じだ。
「では、そうしましょう。生クリームが入っているとはいえ和菓子ですから飲み物はお茶で良いですか?」
 彼が薄紅色に薫る笑みを浮かべたのを確認して自販機を見つけて買っておくことにする。仙台は祐樹も初めてだし、観光地でもない単なる高校の近くに自販機がない場合もあるので。先ほどスマホで見た限りコンビニもなさそうだった。祐樹の高校は京都府の日本海側の田舎の公立だったが、校内には自販機こそあったが周りにはなかったことを思い出して。
「流石は(もり)の都と謳われる場所だな。木の葉を渡る風がとても気持ち良い。そういえば主人公達が通う本編の専門学校は流石にそのままモデルに出来ないだろう?」
 通勤用の速足ではなくてデートモードの歩みを進める。車も走っているけれども街路樹の多さなのか人口密度の差なのか空気がとても美味しい。
「あんな神社仏閣が校内にある学校などは有りませんからね……。尤も建物は張りぼてらしいですけれども」
 他愛のない話を交わしながら夜の道を二人して歩くのもとても楽しい。
「紙袋持ちましょうか?」
 最愛の人も祐樹も習慣的に鞄を持っていない。荷物は今宵の宿のホテルに預けて来たし。ただ、何となく彼だけが紙袋を持っているのは気が引けた。しかも祐樹が購入したお茶も入れてくれているし。
「有難う。しかし、そんなに重くもないので私が持つことにする。仙台第三高校ほどは似ていないし、本編で主人公達が通う学校は色々な場所を作者が混ぜたという説が濃厚なのだけれども、高専と最も似ているのは京都の清水寺だとも考察されているな」
 それは知らなかった。
「何というか……灯台下暗しといった感じですね」
 大学時代から京都に住んでいる祐樹だが清水寺には参詣したことがない。
「夜の学校は怖いらしいですよね?貴方が幽霊とか霊を信じていらっしゃらないのは知っていますが……」
 「呪いが廻る戦い」では呪霊が出やすい所として病院と学校が挙げられているので気になって聞いてみた。





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